84話 ハプニング　作：紅瑠璃

後半になってもBとCの勢いは収まらない。と言うか、四人だけだが…。流石のバスケ部の神田も疲れている。

「朱音～…。もうそろそろ終了のホイッスルが鳴るよ。」
「三咲ちゃん。いきなり何を？」
「なぁに…私は一応蜜柑の動きを観察済みだ相当疲れるけどやろうと思えば蜜柑の動きを真似できる。」
「…。蜜柑も疲れてる。私一人じゃ勝てない…と？」
「お察しが良くて！」

黄蜂は蜜柑がやった大ジャンプをして、点を入れた。蜜柑は今、動けるほどのスタミナはない。猫は疲れやすいと言うのがよく分かる。C組の人からボールが投げられた。が、取ることが出来ずB組の人に取られ、点を取られた。蜜柑から汗は流れてないが朱音にはわかる。「もう、蜜柑は動けない」朱音一人でなんとかするしかない。

「シ…ユ。…ミ、ミカも！」
「へぇ、大層な事で…でも猫山蜜柑…あなたはもう動けない。」
「うるさい！私はお前に嫉妬する！」
「まさか！？お前、レヴィアタンを使ってまでこんな行事に勝ちたいか？はっ！上等だ！…かかってきな。」

蜜柑は黄蜂に嫉妬すればするほど黄蜂と同じような動きをしてくる。黄蜂はみんなに見られない物質。スタンドを出して動く。残り30秒…同点までもってきている。次の１点で勝敗がつく。黄蜂がシュートをするが、蜜柑の脚力スゴいため取られてしまい、朱音に渡る。朱音がシュートのフォームの体制に入ると、二人係で止められそうになる。が、それも読んでたようで真上にボールを投げる。観客も、コートの皆も上を見上げると蜜柑が既に空中にいたのだ。そして、ボールを受け取り、ゴール目掛けて、投げる。

「やった！ゴールしたよ！シユ！」
「蜜柑！ホイッスルがまだなってないよぉ！」

喜びもつかの間、黄蜂がそう叫ぶと鈴菜の行動…端から端までの超ロングシュートをする。蜜柑が丁度着地した時に起きた事だ。あと3秒…C組がボールを蜜柑に投げる。あと2秒…神田がパスカットをする。あと1秒…神田がシュートをする。そして、終了のホイッスルが鳴る。C組が負けた。決勝はB組とD組の試合となった。次の試合まで10分ある。 黄蜂は一人、誰も来ないようなとこにむかった。

「うむ。黄蜂とか…それよりも鈴木殿が…」
「私が…どうしたって？」
「す、鈴木殿！何故ここに！」
「あの怪我…ネアに頼んでつけてもらったのよ。とはいえ、保健室の先生はスゴいわね♪本当病院にいるようだったわ。」
「…傷口が…ない。」
「そうなのよ！スゴいでしょ！」

あれほどの怪我をしておきながら傷口がないことに疑問しかない。すると黄蜂が帰って来た。夢月は黄蜂が嫌いだが、聞いてみよう。すると答えは簡単だった。

「Mの能力…。生きてたのね。てか、今生き返ったばっかしなんだからゆっくりさせてほしいわぁ～。」
「疲れを取るために一度死んだのか。」
「私、そうしないと疲れないんでね。それよりもMの能力を持った亜人。」
「M？どんな能力なのだ？」
「私も知りたいな～。」

夢月と千聖に質問されたのです黄蜂は語る。

「M…Medical(メディカル)。その名の通り治療を専門と扱う亜人そして、スタンド。おもに空間切断をして、メスとか使うことなく治療を行うの。千聖はおそらく目隠しされたでしょ？」
「あっ！された！不思議に思ったけどそう言うことね！」
「頭の傷口付近の空間をスタンドで切断して、スタンドで治して、また空間を元に戻す。」
「いい亜人なのね！」
「逆に人体改造も出来るわけよ。さて、決勝が始まるわ。」

その時だ。突然体育館の屋根が壊れたかと思うと大きな怪異がこちらを覗いていた。蜜柑と朱音にはわかった。姿は少し変わってるが、紛れもなく神隠しだった。 体育館中がパニックになり、我一足先に出ようとする女子生徒。流石に皆の居るなかでは戦うことが出来ない。

「風那ってこの約束を守ったのね。偉いけど、悪いやつだ。」
「どうする！まだ生徒や職員がいる。戦うことが出来ない。」
「とりあえず残ってる人の誘導とかしにゃいと…」

上を見上げると宇佐美が見下ろしていた。彼女はアストライアーと言う怪異退治の専門家のオペレーターでアストライアーの中では2番目の強さを誇る。そんな彼女は刀を抜いて何かを喋る。直後、皆の視界が真っ暗になり、声も聞こえなくなり、匂いもわからなくなり、心臓の鼓動さえわからなくなった…。宇佐美が刀に喋った言葉は「月夜巡れ…血の眼見開け…一寸先の宴に酔しれ…円弧連鎖月見兎」…その能力。範囲内の視力、聴覚、味覚、感覚等感じることが出来るもの全てを0～120％操ることができる。その代わりに納刀するまで目から血を流す。…なん分たったのか…視力が戻ったときにはアストライアーの人以外誰もいなかった。いや、アストライアーの人以外にも一人いる。

「杉山！」
「黄蜂か！…久しいな。」
「杉山こそ…。」
「あのさ…私には何もないの？」

宇佐美の問いによく分からない間があく。

「私なんか…私なんて…どうでもいいのよ…はぁ。」

宇佐美は確かに強い。しかし、ネガティブ思考なのだ。それよりも黄蜂が反応した杉山こそがMの能力を持つ、亜人なのだ。

「それより…球技大会決勝戦…出来ないね…。」
「うむ。その通りだな。」

倒れてる神隠しを見て杉山が口を開く。

「さて、この怪異を倒してしまったが…アストライアーはこれを使うのか？」
「使いたいな。という訳で杉山！あなたも本部に来てもらえると助かる。あなたのMedical…世界のために役立ててもらうわよ？」
「その前に…メディカルナース。」

ナース姿をしたスタンドが現れると体育館を治した。元の姿に戻ったのだ。怪異による負傷者は無いが、このような事件があったため学校側から保護者宛にプリントを作成した。その後生徒は球技大会を中断し、教師の指示通り帰宅した。もちろん黄蜂や夢月、朱音たちもだ

「私たち…負け損じゃん。私だけ泣いて…恥ずかしかったわぁ」
「でも加奈人のためだもんね」
「…加奈人君にあいたーい！」

その２日後何事もなかったかのように学校が始まった。まぁこんなことがよくある世界なら普通なのだろう。そう考えながら、人々は歩く。