92話 6番目の傲慢　作：紅瑠璃

「ここは…」

あぁそうだ…朱音の家か。昨日はハロウィンパーティーをして…そうだ、俺一人が男でウハウハしてたら加奈人が居て…そういえば俺を誘ったのは夢月だったか。

「うぅ…ねみー。」

他人の家で寝ると朝早く起きる事が多々ある。にしても、体の上が重たいような…。俺…伊月は夢月と同じ部屋で寝かされ、伊月が床で寝て夢月がベッドの上。ゆっくり目をあける…眠いが自分の体の上の重いものを確認するために目をあける。そこにいたのは…。

「なっ！？む、夢月…。」

ベッドから転げ落ちてきた夢月が伊月の体の上で寝ていた。伊月からすると色々当たっているし、当てている。意識しないようにしても意識してしまう。そのとき、伊月の頭の中に色々と考えが浮かんだ。

「抱き締めてしまいたい…く、口づけ…もっとその先も…。いやいや、待てよ…。それで嫌われては、こいつなぁ～寝てるとはいえ根性で覚えてたり、起きるかもしれないしな…」

男としてそんな考えが起きるのだが、逆に男としてそんな考えは捨てるべきなのだろう。…しかし！

「これぐらいはいいだろ。」

気づかないふりして、抱き枕を抱く感覚で抱きついて寝ることにした。
そのまま朝を迎えた。
今朱音の家にいるのは伊月と鈴菜と夢月と猫山と朱音と鈴木とネア。この中で一番早く起きるのは…。

「んぅ…はぅ！？い、伊月…殿…な、な、なんと…。わ、私はもしやはしたないことを…。」

夢月 暦だ。後で理解するのだが、この時はまだ何か、勘違いしている。次に起きるのは猫山 蜜柑。鈴木とネアが同時刻で起き、伊月が起き、鈴菜が起きる。残りは朱音だ。しかし、この朱音が中々起きない。鈴菜が言うには小学生、中学のときから寝坊が多いらしい…目覚まし時計でも起きないから蜜柑に起こしてもらっているのだという。中々目覚めないので先に朝食を取ることにした。今日は学校はない…だからゆっくりと昨日の残り物を食べることができた。

「さて、朝食を食べたことだし俺は帰るとするよ。」
「待て伊月殿。先程はすまなかったな。うむ。私も帰ろう…蕪木様が心配なさるだろう。」
「ネア、私たちも帰ろうか。」
「千聖が言うのなら。」

そうして、四人は自分が持ってきた物を持って変えることにした。千聖はあの鉄の塊を再度着こんで周りから見ると変質者だが、本人はこの格好が気に入っているらしい。

「夢月…やはり不意打ちとかには弱いんだな」
「うむ。私としても恥ずかしい限りだ。」

朱音の家を出て15分。道を二人で歩いていたところ後ろから声が聞こえた。

「おはようございます！」

その声の人は宮野 空。宮野 空は散歩なのだろう。

「うむ。おはよう。」
「お二人はさっきまでパーティーしてたの？」
「うむ。さすがだな…先程まで弧山殿の自宅でパーティーと言うものをしていたのだ。」

三人で歩いていたのだが二人…夢月と宮野の二人で会話をしている。まぁ男である伊月には話についていけそうにない話題だったから何とも思わない。そんな時だった。後ろから何かで撃たれたような感覚がした。のだが、痛みはなければ血は出ていない。そのまま倒れて視界が狭くなることはなかった。ただ単に…ただ単に夢月を独り占めしたいと感じた。そして、押し倒し、影の中に入る。伊月 十夜の能力…影を操る。影の中の世界に引きずり込んだり、影で戦わせたりする…。突然押し倒され、影の世界に来た夢月にしたら不意すぎて状況に追い付けていない。空からしたら伊月さんが変わって夢月を押し倒した。

「お前は俺の事を好きになってくれるよな？好きになれよ。」
「な、何を言っている！…は、離せ！」

今、刀は持ってない。伊月が夢月を押さえる力が強くて抜け出せない。このまま、伊月に好き勝手にされてしまうのか…。そんなことが頭をよぎっていた。