97話 体育祭　作：紅瑠璃

今日は体育祭…。嫌な体育祭。文化体育館で行う体育祭は第１競技に入ろうとしていた。体育祭はA～Hの8組を赤、青、緑、黄の四つに分けそれぞれ点数を競い合う物だ。AとFは赤。BとHは青。CとGは緑。DとEは黄。１競技目は徒競走。走る系統は全て鈴菜が任されている。

「はぁ…めんどいな」
「にゃう？」
「み、蜜柑！あなたも出るとはね…。」

独り言で言っていたので蜜柑がいるとは知らなかった。鈴菜は自分が出る種目以外知らなかったし、前日練習では黄蜂と蜜柑は外が寒すぎて学校に行っていない。

「あー。次かぁ。」

自分の前の人達が走った。鈴菜から見たら遅い…遅すぎる。スタートラインに立つ。先生がスターターピストルを構える。スタート！その走りはまるでチーター。らしい。だんとつで、ぶっちぎりで１位。

「…余裕ね。」
「にゃっは！…レイ速いね…。」
「当然。」

２種目、３種目と次々に終わっていく。次は玉運びとなった。下では夢月と伊月、黄蜂と藤崎がいた。黄蜂はいつもと変わらぬダルそうな顔。夢月は伊月とくっついていた。恋人関係であろうとよそでやってほしい物だ。

「伊月…私たちの仕事をするまでだ」
「おっおぅ。」

開始のホイッスルがなる。２組とも順調だったが黄蜂が動く。

「ブリザード・シュティンガー…行け。」

黄蜂がスタンドを出す。標的は今、まさに玉に触ろうとしている夢月だ。ブリザード・シュティンガーが夢月の膝に攻撃する。

「ぬわっ！？」

思わず後ろに倒れそうになる…しかし彼女は倒れなかった。それは…

「い、いぃ…伊月！？人前でこのような姿…は、恥ずかしいっ！」
「大丈夫かよ…どうせ黄蜂だろ？気にするな。俺がいる。」

文化体育館の会場の真ん中で夢月は伊月にお姫様だっこされて倒れずにすんだが回りの目線は勿論真ん中にいく。つまり、伊月にお姫様だっこされている夢月と夢月をお姫様だっこしている伊月は注目の的だった。
この種目は黄色の勝ちとなった。

「…まぁ、どっちに転んでも面白いからいっか。」
「い、伊月…もうよい。下ろしてくれ。」

黄蜂が二人に近づいた。

「やぁやぁ。お暑いねぇ～お二人とも。」
「黄蜂！お前の仕業か！」
「証拠ないなぁ～。ふふっじゃぁね。」

もうお昼休みまで3種目だ。綱引きと玉入れとムカデ競技だ。
今は綱引き…男子の種目だ。

「伊月ぃ！頑張れ！」

夢月が伊月の事を応援する。前の夢月とは違う人みたいだ。前は人とは最低限の付き合い、アストライアーの人と何処かに出掛けるなどはなかったが今では伊月と何処かに出掛けることはあると言う。女の子らしい服装も着る。しかし、以前より弱くなった気がする。

「今までは修行してたのにな。」
「何？今はしてないの？」

黄蜂が言った言葉にたいして鈴菜が反応する。黄蜂がスタンドで攻撃しても黄蜂が１本取ることはできなかったが…今では互角の戦いだ。徐々に進化はしている。が、進化するスピードが落ちていると説明する。

「ま、私じゃないからどうでも良いのだけどね…さて、玉入れの招集だ。行かなきゃ。」
「どうでもいい…ならなぜそんなこと言った？本当は気にしているんでしょ？」
「…知らないわねぇ～。」

鈴菜の隣から移動する。本当は気にしている…同じアストライアーの仲間だから。…仲間…本当に仲間なのか？人は信用できない。私は昔、親にも先生にも友達にも裏切られた。いや、ただ一人だけ私を守ってくれた子がいた。その子は私を守るために…。

「っ！…思い出したくない…」

私の氷は全てを凍てつかせる…けども自分の記憶は凍らせることは出来ない…フラッシュバックが辛い。綱引きが終わる…他の事に集中しなきゃ。