128話 ノースウェムコ　作：紅瑠璃

風那の言葉…「ご飯の時間だよ♪」その言葉にいっせいに町に降下してきては瓦礫を…機械を…怪異を…実体を手にしたナンバーズを捕食し始めた。その光景を見ていた鈴菜は恐怖に似たものを感じた。彼らは敵味方の認識はできていると思うが万が一の事があるかもしれない。逆方向に足を走らせた。

～渚町上空～

「町１つ…3つかな？埋まっちゃった。」

上空から神無月風那は自らが呼んだ「銀色鬼楊魔早苗蜻蛉」に食べられる町を悲しそうな表情で眺めていた。中学の通学路、友人の家、遠出するときに使う駅、幼いときに捨てられた河川敷近くの橋。全て消えていく…１垓の腹の中に消えていく。

「お腹いっぱいになったぁ？…ってならないか。殻蜻蛉の殻を捨てたらこの子達を止められるものは私しかいない。くっふふ…あっはははっ！その多財餓鬼の胃袋をもっと私に見せてよ！ねぇ！銀色鬼楊魔早苗蜻蛉！」

何をむきになっているのだろう…悲しくなる。でも、自分の出した怪異が自分の住んでいた町を食べる光景を見ているとなんだか落ち着ける。

～蜜柑の周囲～

調べていない部屋は少なくなってきた。そういえば外の状況がわからない…近くの窓から見てみると遠くでいっぱい何かが飛んでいるのを見た。

「んみゃぁ～。」
「猫山蜜柑さん…。もうそろそろだ。」

とある扉のドアを開ける…そこにはシゲミツがいた。シゲミツの後ろには何枚ものカードと大きな機械があった。シゲミツは私と猫山蜜柑に気づくとさも当然かのように「やぁ。タカミネ。」と言った。

「このナンバーズネットワーク…とやらを止めろ。シゲミツ！」
「もう、止まらないさ…カードの能力を抑えられるのはサイコデュエリストのみ。」

サイコデュエリスト…カグラは地下にいる。確か宮野真保もいた。心配をしているが今は目の前のことだ。

「にゃ、にゃらその機械を止めろ」
「ふははっ…この機械は私が作ったのでね…止めさせないよ。」
「シゲミツ…なぜこんなことをしたのだ…。」
「君は…あのときいなかったね。俺とカグラ、トヨフミ。俺たちはとある女に助言じみたことを言われてねぇ。」
「とある…女？」
「いや、とあるモンスター…とでも言えるか。ノースウェムコにね。」

ノースウェムコ。シゲミツはそう言った…ノースウェムコと言ったら儀式モンスターの「救世の美神ノースウェムコ」しか知らない…どうやらそれであっているようだ。

「俺が見たのはノースウェムコと異世界の景色だった。俺はあの女が言った平和を実現するため…」
「平和…それは笑顔の架け橋じゃないのか？」
「…その答えに気づくのは少し遅かった…。いや、本当は気づいていながら否定していたのかもな。それにせっかく実体をあげたと言うのに…ナンバーズ達はやられるばかり…。さて、ナンバーズを操れたり、抑えられるのはサイコデュエリストのみ。と言ったね。」

シゲミツは手元に置いてあるカードを手に取る。

「だが、サイコデュエリストでなくとも一応は使えるのさ。ただし、押さえることも操ることも出来ないけどね。No.77！」

ナンバーズに合図を取ると回りの7枚のカードは光だす。それと同時に蜜柑が苦しみだす。No.77の回りを漂う7枚のカード…私はその中にとある関係性を見つけた。「No.101からNo.107…。」

「そうだ…。コイツらは人の心に根を張る。そしてNo.77で操れる…ってカグラが言っててな。その女の子にはNo.103がついているわけだな。」

～渚町～

「ぐはっ！あ…ぁ…。」

私…藍野鈴菜は朱音の所に向かう途中苦しくなって倒れてしまった。体が裂けてしまう感覚。訳がわからない物に恐怖する自分がいた。

「シユ…。はぁ…はぁ…。いか…なきゃ…。」

苦しみながらも進むが力尽きてしまう。遠くで炎が上がっている…朱音の炎だろう。もう、体が言うことを聞かない…意識が遠のく。

～渚町上空～

「もう、なんにもないねぇ～」

風那は空っぽの町を眺めていた。しかし次の瞬間、風那は瓦礫の中に埋もれていた。たった数秒の間の記憶がない…。まばたきをする感覚で次目を開けたら瓦礫の中にいたのだ。背中には痛みがある。

「んぅ…なんだ…。鈴菜…さん？」

近くには藍野鈴菜がいる…まだ何が起きたのか理解できないまま起き上がろうとした時鈴菜の膝蹴りをするのを見た…「あぁ、この人に蹴られたのか。今この人は何かに乗っ取られている」そう察知し顔を蹴られ気絶してしまう。

～桐谷の周囲～

私は現在宇佐見真奈子さんと行動をしている。私は普段は後方支援を得意とするがこの人に支援なんか要らないだろう。

「ん？桐谷…三秒後。敵来るわよ」
「えっ？あ、はいっ！」

この人の目は全て見えているようだから…。そして私の目の前に現れたのは夢月暦さんだった。しかしその様子はどこかおかしい。

「夢月さん？…っ！」

まるで瞬間移動でもしたかのように目の前に現れては刀で突き刺そうとしてきた。これには驚きながらもギリギリ交わせた。これは操られているのかもしれない。私は宇佐見さんほどではないがそれなりに目がよい。また人の顔を、態度を気にするせいか１つ１つの動作も逃さない。それらを持って見ると夢月さんの動きではない…と確信つけた。私は刀を構える。

～タカミネコーポレーション～

「ぐにゃぁぁ…」

蜜柑はそのまま私に襲いかかってきた。私は避けるしかなかった。

「タカミネ。怪異はなぜ生まれるか知ってるか？」
「厳密には知らないが…感情だろ？」

怪異が生まれるのは感情からだ。嬉しいや悲しいといった感情を元に生まれる。しかしそれと何が関係するかはわからない

「この7枚には憤怒、嫉妬、色欲、強欲、傲慢、悪食、怠惰の心があってねそれら…感情をもっとも強い奴らを手にいれ、怪異を作り出すわけだ。さて、タカミネ。すまないが、ここで散ってくれ。」

シゲミツは銃を取り出すと私に向けた。私は蜜柑の手をおさえつけているのでいっぱいだ。その手を離したら攻撃をされ、離さなかったら銃で撃たれる。

「お前はこんなことして嬉しいのかっ！人を恐怖させ、平和と言えるのか。」
「もう、自分でも何をしたいのかさっぱりだ。人とは愚かだな…じゃぁな。俺の親友…。」

銃の引き金を引く…部屋中に銃声が響いた…。