122話 烈火雷光　作：紅瑠璃

～天界～

黄泉とネメシスは待っていた。試練に送り出した鈴菜を…まぁ、結果はわかっている。鈴菜以外にも試練を与えた人は山と居た。皆耐えられずに、打ち勝つことができずに終えた。

「ねぇ…ネメシス。何千年かの戦い…あなたとヴァルゴは地上に居たのよね。」
「まぁね…本当に醜い…人なんか私は嫌いよ。」
「あなたは一番最初に帰った天使…ヴァルゴは一番最後に帰って来た天使。あなたは義憤を覚え、ヴァルゴは正義を覚えた。あなた達は合わないわね。」

良く良くネメシスとヴァルゴは喧嘩、言い合いをする。黄泉はそれを見ているだけ…とまぁ中立を保っている。黄泉はさらに続ける。

「でも、ネメシス。あなたはヴァルゴも人も本当は好きなのよね…。」

私が人が好き？何をいっているのか。人は身勝手だ…自分で愛し自分で殺す。故に幾年も見るのは血と魂なき体。見飽きるほどの冥界に行く魂。しかしここで不思議なのは何故ヴァルゴはそこまで人の事が好きなのかだ。あれほど醜い戦争を見て、あれほど唱えた正義と平和のあり方を踏みにじられたのに…何故今でも人との交流を止めないのか。ちゃんとは聞いたことがない…。もし…藍野鈴菜がこの試練から帰ってくることがあれば…少し考えを改めて見るのも悪くないだろう。ただ、結果は見えている。期待するのは無駄だろう。

～蜜柑の周囲～

蜜柑、真保、京子、タカミネの前に現れたのは希望皇ホープ。しかし、どこか違う雰囲気が出ている。

「あれはホープじゃにゃい！」
「と言うことは…No.98絶望皇ホープレスか…。」
「ここ…私がやる。先…行って。」

京子が足止めをしている間に皆が先にいく。それでこの場を抜けるようだ。京子は腕に武装した状態で強烈な一撃を与えるとホープレスは怯んだ。そこをついて蜜柑、真保、タカミネは先を急いだ。

～黒羽の周囲～

「お姉ちゃんっ！」

梓はまだ呼ぶ。しかし聞こえてくるのは自分の声。

「下に…降りてみるしかない…。」

黒羽梓は階段を下り一番下を目指す。一番下についたのは3分ぐらい過ぎてからだった。階段を下ることは平日常にやっていることだから早くなっている…しかしずっと下ることにはさすがに息が切れた。

「はぁ…はぁ…お姉ちゃんっ！」

無事に黒羽早百合…お姉ちゃんを見つけたが応答がない気絶をしているのか。…なんだろうか…焦げ臭いのか。異臭がする。そもそもあんな高いとこから落ちて出欠をしていない方が驚きだ…マスター・キー・ビートルの姿もない。

「んくっ…。」

黒羽早百合の目が覚めた。しかし、私を突き飛ばしデュエルディスクをセットし始めた。

「どうしたの？お姉ちゃん。」
「悪いな…お前の姉ちゃんの体は俺が借りている。こうしていれば体の回復は早いだろ…」
「マスター・キー・ビートル？」
「おぅ。俺はお前の姉ちゃんに負けた。がお前にはまだ勝ちも負けてもねぇ。勝負と行こうか。」
「何でそんなことをするの！」
「暇潰しってやつだな…と言ってもお前が負けたら俺はお前の体を借りるがな…一生な！勝負をしなくてもこの体は貰う。」
「そんなこと…させない！」

黒羽梓は床に落ちていたデュエルディスクをセットしデッキもセットする。

～朱音の周囲～

「レイナ…レイナ…。」

全てを燃やし灰に変えてきた朱音。悲しげな顔をして触れたものを燃やしている。魂なき体も機械の波も怪異も全てを燃やした。彼女は泣いている…幼い頃からの仲だった人の死を。しかし涙は流れない…自分の炎で蒸発してしまうから。そんな彼女が次に燃やす相手はNo.30…目の前に現れたNo.30を見つけると素早く駆け寄り触れようとするがNo.30の体は溶け、朱音の後ろに現れた。

「レイナ…レイナァァッ！」

力を奪われ続ける稲荷も見たことがないこんなに荒々しく戦い叫ぶ朱音を…それほど、それ以上に藍野鈴菜は大事な存在と言うことだ。そんな朱音を攻撃するのはNo.30ではなく後ろから現れた怪異…朱音は攻撃対処をその怪異に変えると。手足を引き裂き足で踏みつけ続けた。

「レイナッ！レイナッ！レイナッ！…レイナァァッ！」

既に燃え尽きているのに彼女の目にはなにも写ってない。No.30は朱音に攻撃をする…朱音はそれを避けると攻撃された地面が溶け始めた。触れたら燃やせるがこちらも溶けてしまうと本能的に感じたのか遠距離から炎で攻撃をする…しかしNo.30は怯みもせず炎の中から現れては朱音を攻撃した。体には当たらなかったが左腕に当たってしまった。左腕が溶け始める…苦しい…痛い。だが、触れてしまったらきっと右手も溶けてしまう…。No.30は朱音の右足をつかむと地面に叩きつけた。当然右足も溶けてきた。骨も肉も神経も腐ってきた。そのまま腐りきって溶けてしまうのかと感じた。傷む体で思い出すのは藍野鈴菜の顔、共に過ごしてきた時間だ。

「朱音…立てっ！戦場はまだ終わってない。」

呼び掛けられた言葉に朱音は驚く。幻でも見ているのか…私の前に立っているのは…藍野鈴菜だった。右足と左腕は鈴菜によって溶けている部分のみ切断されていた。にしても鈴菜の右目もない。朱音は炎も回りに纏わせ浮かび上がる。

「鈴菜…鈴菜だよね。死んだって…。」
「確かに死んだ。何でここにいるのか私は…いや、私にも…わからない。とにかくあとで話す！」
「また、隠し事…。」

この二人のコンビは息の合った動きが特徴だ。それはまるで双子のような感じだ。朱音は鈴菜の手を握る…安心感がある。

「さぁ…スピーディーに」
「燃え上がろうか…。」

炎と雷…烈火雷光。ふたりの負傷者がNo.30を葬る。