第147話：竜星　作：光芒

☆TURN01（遊大）

　綾香のデッキは以前までと大きな変化がなければ【竜星】だ。幻竜族で統一されたS召喚メインのテーマであり、破壊されることで後続を呼び出しては強力なSモンスターのS召喚に繋げる戦法を得意としている。
　彼女の父である竜司は【青眼の白龍】を使用しているが、幻竜族という種族はドラゴン族をより高次の存在へと昇華させたものという設定の元に作られている。そんな父や同じくドラゴン族のモンスターを愛用する遊希を超えるために、という意味合いで綾香はこの幻竜族のデッキを使っているのだ。

（竜星モンスターは安易に破壊すれば逆にアドバンテージを取られる。でも先攻を取れたなら、場を固めて竜星モンスターが展開しきる前に叩く）
「俺は手札から魔法カード、螺旋のストライクバーストを発動します。2つの効果のうち、俺はデッキからレベル7のオッドアイズ1体を手札に加える効果を選んで発動します。デッキからレベル7のオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンを手札に」

　綾香はオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンというカードと対峙するのは初めてではある。しかし、遊希からそのカードの存在自体は聞いていた。遊希は生徒会の仕事があった日は最低一度は遊大のことを話しており、そしてそれが故に彼女の遊大に抱く気持ちに皆が確信を持ったのだ。

（アークペンデュラム……あのカードを使い始めてから高海君のデュエルが大きく変わったそうね。じゃあ、どう変わったかお手並み拝見と行こうかしら）
「そして俺はEMドクロバット・ジョーカーを召喚。召喚に成功したドクロバット・ジョーカーの効果でデッキからオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加えます。スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとスケール8のオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンをPゾーンにセッティングします！」

　双方のPゾーンには二色の眼をした真紅の竜と鈍色の竜が浮かび上がる。これで遊大はレベル5から7までのモンスターのP召喚が可能になった。

「そして手札からレベル5のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを守備表示でペンデュラム召喚！ 俺はこれでターンエンドです！」

　モンスターを2体、しかもステータスがさほど高くのないモンスターを出しただけでターンを回す。初動が遅い綾香相手ならともかく、これでは序盤から高い火力を出せる遊希やエヴァ相手でどう戦おうというのか。綾香は訝しんだが、当然遊大がそれだけで済ますわけはない。

「そしてターン終了時にPゾーンのオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果を発動します！ このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加えます。俺が手札に加えるのはEMオッドアイズ・ミノタウロスです。そしてオッドアイズが破壊されたことでアークペンデュラムのP効果を発動します！」
「アークペンデュラムのP効果！？」
「オッドアイズが破壊された時、デッキ・手札からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できます。俺はデッキからレベル8のオッドアイズ・ランサー・ドラゴンを特殊召喚します！」

　現れたのは頭部、胴体、尾部の先端から槍の穂先の如く鋭い刃の伸びたオッドアイズだった。その攻撃力は3000と高く、そしてフィールド・手札のオッドアイズ1体を破壊することで、オッドアイズを破壊から守る効果を持ったオッドアイズ・ランサー・ドラゴン。アークペンデュラムのP効果と組み合わせれば、自身を破壊から守りつつアークペンデュラムのP効果を発動することができる。まさに先攻1ターン目からその力を活かせる攻防一体のモンスターであるといえた。


遊大　LP8000　手札3枚
デッキ：34　モンスター：3（オッドアイズ・ランサー・ドラゴン、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン、EMドクロバット・ジョーカー）魔法・罠：0　墓地：1　Pゾーン：青/赤8（オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン）除外：0　EXデッキ：15（1）
綾香　LP8000　手札5枚
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：15（0）


☆TURN02（綾香）

「私のターン、ドロー！」
（ランサー・ドラゴンは疑似破壊耐性に加えて攻撃時に私の魔法・罠カードの発動を封じる。取り敢えず破壊以外の方法であのカードを除去する必要があるわね）
「私は手札から魔法カード、テラ・フォーミングを発動！ デッキからフィールド魔法1枚を手札に加えるわ！」
（テラ・フォーミング？）

　テラ・フォーミングはフィールド魔法を使うデッキであれば必ずデッキに入るカードと言っていい。そのために公式ルールではデッキに1枚までしか入れられない制限処分を受けている。だが、綾香の竜星は基本的にフィールド魔法を使わない。《チキンレース》のようなデッキを問わず入れられるフィールド魔法でも入れない限りは。

「高海君、私のデッキにフィールド魔法なんてあったっけ？ みたいな顔してる」
「……はい、今までそのカードを使っているのを見たことが無かったので」
「素直ね。でも、決めつけは良くないわ。私たちデュエリストは日々進歩しなければいけない。より強くなるためにね。そして生徒会としてこの学校の全生徒の代表である私たちは日々努力を続けなきゃいけないの。あなたが成長をしているように、私たちも常により上を求めて戦っている。それを教えてあげるわ！ 私はデッキから《セフィラの神託》を手札に加えて、それを発動！」

《セフィラの神託》
フィールド魔法
「セフィラの神託」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1)：このカードの発動時にデッキから「セフィラ」モンスター1体を手札に加える。
(2)：以下のモンスターを、「セフィラ」モンスターを使用して儀式召喚、または「セフィラ」モンスターを素材として特殊召喚した時、自分はそれぞれの効果を1ターンに1度ずつ発動できる。
●儀式：フィールドのモンスター1体をデッキに戻す。
●融合：手札のモンスター1体を特殊召喚する。
●S：デッキのモンスター1体をデッキの一番上に置く。
●X：デッキから1枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。

（【セフィラ】……なるほど）

　セフィラはペンデュラムモンスターを中心に構成されたテーマであり、そこから儀式、融合、シンクロ、エクシーズと様々な召喚法に繋げていくのが特徴だ。ペンデュラムを軸に更に別の召喚法に繋げていくところは遊大の【オッドアイズ】や【魔術師】とも共通している。それが故に遊大はこのデッキの強さをよく知っていた。

「私はデッキから《竜星因子セフィラツバーン》を手札に加えるわ。そして闇竜星-ジョクトを召喚！ そして闇竜星-ジョクトの効果を発動！ 手札の竜星カード2枚を墓地に送ることで、デッキから攻撃力0と守備力0の竜星2体を特殊召喚する！ 来なさい！《秘竜星-セフィラシウゴ》！ 光竜星-リフン！」

《秘竜星-セフィラシウゴ》
ペンデュラム・効果モンスター
星6/地属性/幻竜族/攻0/守2600
【Pスケール：青7/赤7】
(1)：自分は「竜星」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「秘竜星-セフィラシウゴ」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードがP召喚に成功した時、または自分のモンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。デッキから「竜星」魔法・罠カードまたは「セフィラ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

「そして私はレベル6の秘竜星-セフィラシウゴに、レベル1の光竜星-リフンをチューニング！ “天空に輝く星々の光、今その力を集わせ邪なる闇の竜を呼び覚ませ！” シンクロ召喚！ 降臨せよ、邪竜星-ガイザー！！」

　綾香のデッキの中核を為すSモンスターの1体。邪竜星-ガイザーがS召喚される。

（邪竜星-ガイザーは相手の効果の対象にならない……）
「ペルソナ・ドラゴンでこっちのSモンスターを無力化させたかったようだけど、残念だったわね。私のフィールドのジョクトと高海君のアークペンデュラムを対象にガイザーの効果を発動！ そのカードを破壊する！」
「させません！ ガイザーの効果にチェーンしてオッドアイズ・ランサー・ドラゴンの効果を発動します！」

チェーン2（遊大）：オッドアイズ・ランサー・ドラゴン
チェーン1（綾香）：邪竜星-ガイザー

「チェーン2のランサー・ドラゴンの効果！ 自分フィールドのオッドアイズカードが破壊される時、手札・フィールド・Pゾーンのオッドアイズ1枚を代わりに破壊することができます！ ペルソナ・ドラゴンを破壊します！」
「でもチェーン1のガイザーの効果でジョクトは破壊されるわ」

　ガイザーの放った闇の波動によって破壊されそうになるアークペンデュラムをランサー・ドラゴンがその力を使って守る。その代償としてペルソナ・ドラゴンが破壊されるが、Pゾーンにアークペンデュラムが存在する限り、ペルソナ・ドラゴンの犠牲は決して無駄にはならない。

「破壊されたジョクト、そして墓地のリフンの効果を発動！」
「それにチェーンしてアークペンデュラムのP効果を発動します！」

チェーン3（遊大）：オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン
チェーン2（綾香）：光竜星-リフン
チェーン1（綾香）：闇竜星-ジョクト

「チェーン3のアークペンデュラムの効果で、デッキからオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚します！」
「チェーン2のリフンの効果！ 自分フィールドの竜星が破壊された時、墓地のこのカードを特殊召喚！ そしてチェーン1のジョクトの効果で地竜星-ヘイカンを特殊召喚するわ！」

　果たして今はどちらのターンなのか、と言わんばかりにフィールドのモンスターが入れ替わり立ち替わり現れる。破壊をトリガーにターン問わずに展開できるのが竜星の強みではあるが、遊大のオッドアイズもまたアークペンデュラムの登場によって、竜星に匹敵する展開力を得たのだ。

「ガイザーの効果を上手くかわしたつもりかもしれないけど、こんなもんじゃ止まらないわよ！ 私はレベル7のガイザーにレベル1のリフンをチューニング！ “天空に輝く星々の光、今その力を集わせ高貴なる光の竜を呼び覚ませ！” シンクロ召喚！ 降臨せよ、輝竜星-ショウフク！！」

　ガイザーに次いで現れたのはガイザー同様に綾香のデッキを支えるSモンスターである輝竜星-ショウフク。ガイザーに比べて火力こそ劣るが、 切り返しの力は時にガイザーをも上回る。

「自身の効果で墓地から特殊召喚されたリフンはゲームから除外される。でもシンクロ召喚に成功したショウフクの効果を発動するわ。このカードのS素材になった竜星の元々の属性の数だけフィールドのカードを持ち主のデッキに戻す！ 素材にした属性は闇と光！ よって2枚のカードをデッキに戻させてもらうわ！」
「2枚バウンス……」
「もちろん戻すのはこの2枚！ 消えなさい、ランサー・ドラゴン、アークペンデュラム！！」

　ショウフクの放った光を受けて、ランサー・ドラゴンとアークペンデュラムはまるで天に昇るかのように消えていく。以前遊希はこの効果を速攻魔法であるRUM-光波昇華を使うことで避けていたが、今の遊大にそのような芸当ができるカードはなかった。

「オッドアイズも私の竜星と同じように破壊には強いかもしれないけど、バウンスには無力みたいね。遊希より強くなりたいんだったら、これくらい回避できないといけないわね？」
「っ……」
「さあ、まだまだ行くわよ！ 私はPゾーンに2枚のカードをセッティング！ スケール1の竜星因子セフィラツバーンとスケール5の《智天の神星竜》よ！」

《竜星因子セフィラツバーン》
ペンデュラム・効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻0/守2100
【Pスケール：青1/赤1】
(1)：自分は「テラナイト」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「竜星因士-セフィラツバーン」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・反転召喚・P召喚に成功した場合、このカード以外の自分のモンスターゾーン・Pゾーンの、「テラナイト」カードまたは「セフィラ」カード1枚と、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

《智天の神星竜（セフィラ・トーラ・グラマトン）》
特殊召喚・ペンデュラム・効果モンスター
星11/地属性/岩石族/攻3450/守2950
【Pスケール：青5/赤5】
「智天の神星龍」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：自分メインフェイズに発動できる。デッキから「セフィラ」Pモンスター1体を選び、自分のエクストラデッキに表側表示で加え、このカードのPスケールをターン終了時まで、そのPモンスターのPスケールと同じにする。
【モンスター効果】
このカードは通常召喚できない。このカードがエクストラデッキに表側表示で存在し、「セフィラ」モンスター3体以上を含む自分フィールドのモンスター全てをリリースした場合のみ特殊召喚できる。
(1)：このカードが特殊召喚に成功したターン、自分は通常のP召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに「セフィラ」モンスターをP召喚できる。
(2)：1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。デッキから「セフィラ」モンスター1体を特殊召喚する。

「Pゾーンの智天の神星竜の効果を発動！ デッキからセフィラモンスター1体を選んで自分のEXデッキに表側表示で加える。そして智天の神星竜のPスケールをそのモンスターのPスケールと同じにする。私がEXデッキに加えるのはスケール7の《覚星輝士-セフィラビュート》よ！」

智天の神星竜　Pスケール：5→7

「これで私はレベル2から6までのモンスターをペンデュラム召喚できるようになったわ。まあ、セフィラモンスターしかペンデュラムできないわけだけど……ということで私はEXデッキからレベル6のセフィラシウゴとレベル4のセフィラビュートをペンデュラム召喚！ EXデッキから現れなさい！」

《覚星輝士-セフィラビュート》
ペンデュラム・効果モンスター
星4/光属性/悪魔族/攻1900/守0
【Pスケール：青7/赤7】
(1)：自分は「テラナイト」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「覚星輝士-セフィラビュート」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・反転召喚・P召喚に成功した場合、このカード以外の自分のモンスターゾーン・Pゾーンの、「テラナイト」カードまたは「セフィラ」カード1枚と、相手フィールドにセットされたカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

「P召喚に成功したセフィラシウゴの効果を発動。デッキから竜星もしくセフィラの魔法・罠カード1枚を選んで手札に加える。私が手札に加えるのは《竜星の九支》。そしてショウフクの効果を発動。セフィラシウゴを破壊し、墓地のレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。特殊召喚するのはレベル2のジョクトよ！」

　既にレベル8のSモンスターであるショウフクが存在しているのにも関わらず、更にモンスターを展開する綾香。受動的なイメージのあった竜星だが、別カテゴリーのカードと組ませることでここまで能動的に動けるようになるものなのか。遊大は目まぐるしく変化する盤面に目を奪われるばかりだった。

「さあ、このモンスターはどう突破するのか見せてもらおうかしら！ 私はレベル4のセフィラビュート、レベル3のヘイカンに、レベル2のチューナーモンスター、ジョクトをチューニング！ “天空に輝く星々の光、今その力を集わせ鳳を為して世界に舞い踊れ！！” シンクロ召喚！ 飛翔せよ！《幻竜星-チョウホウ》！！」

《幻竜星-チョウホウ》
シンクロ・効果モンスター
星9/光属性/幻竜族/攻2800/守2200
チューナー＋チューナー以外のモンスター1体以上
(1)：S召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はこのカードのS素材とした「竜星」モンスターと元々の属性が同じモンスターの効果を発動できない。
(2)：S召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキからチューナー1体を手札に加える。
(3)：1ターンに1度、相手フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。そのモンスター1体と元々の属性が同じ幻竜族モンスター1体を自分のデッキから守備表示で特殊召喚する。

「まさか……1ターンで3種類の竜星をシンクロ召喚するなんて……」
「その様子だと、チョウホウの効果は理解しているようね。幻竜星-チョウホウが存在する限り、このカードのS素材とした竜星モンスターと元々の属性が同じモンスターの効果をあなたは発動できない」

　チョウホウの素材になった竜星は地属性のヘイカンと闇属性のジョクト。これが意味することはわかっていた。

「高海君、あなたのメインデッキに入るオッドアイズモンスターの種族は大半が闇属性。あなたにとってどうしても勝ちたいデュエルだとは思うけど……あなたのオッドアイズ、封じさせてもらったわ！！」