94話 体育祭が近い　作：紅瑠璃

夢月は嬉しそうに笑っている。こないだ、伊月と恋人関係になったからだ。そもそもなぜ好きになったかと言うと…「こんな未熟な私なんかに恋人など…」と言っていたのに、なぜ行動をしたかと言うと…これからの事と、蕪木の事を考えてらしい。蕪木が言うに「夢月が普通の女の子らしいこと、楽しめるか…今の事じゃない。将来に心配なんだ」そう言われたらしい。悲しそうな目だったそうだ。そして、思い返せばスマートフォンの使い方を教えてくれたり、色々と手助けをしてくれた伊月が頭に浮かび、考えていくうちに好きになってしまったと言うことだ。元々は伊月は藍野鈴菜が好きらしいが、藍野鈴菜は見向きもしない理由は１つ…ショタではないから…らしい。さらに今の世は好きと言われたら染まる世界…なのだ。さて、このように嬉しくてたまらない気持ちを真っ先に知られたくないやつにバレた。言わずともわかるであろう黄蜂三咲にだ。

「夢月…好きな人がいるでしょ？いや、それは恋人とも言うか…。」
「なっ！？何を言う」
「合ってたか。いやぁ～熱いねぇ～」

そのおちょくるような口調、態度が嫌いだ。そして、隣にいた藍野鈴菜に一言を入れられた。

「んなことより来週じゃない…体育祭。そのあとは他の町のアストライアーが来るらしいわね」

飲みきったペットボトルを投げ、ゴミ箱に入れる。今ここはアストライアー本部の待機室。宿題をするために来ていた。黄蜂は本を読みに来たのだが、図書館よりも落ち着く…家よりも落ち着く…。扉が開く…神無月風那だ。と…もう一人…夢月には見覚えがあった。

「あ、あの…。」
「き、桐谷 真澄…。神無月！これは一体」

すると部屋の端に置いてある観葉植物から声がする…。いや、観葉植物じゃない…。

「私が呼んだのよ…私は宇佐美真奈子。この刀は弧卯…さて、まず始めに問おうか。あなたたちの目に私は何に見えたかしら？」

宇佐美真奈子…アストライアーのオペレーターであり、高い戦闘力を誇る人…。弧卯は目で見て脳に入る情報を書き換える事ができるが、匂い、味覚、感覚は書き換えられない。完全解放をすれば視力、聴覚、味覚、感覚など全ての運動量を操作できる。みんなの回答は様々だった。観葉植物と答える者、レモンと答えるなど面白い回答だった。

「今は脳に縛りを入れてないからあなたたちの目に写ったのはあなたたちの脳の中で思い浮かんでることよ。さて、ここにいる子達に話しましょ。桐谷真澄は今日からアストライアーに所属したわ」

急に言われても困る。本気なのか…そう感じた。

「わ、わたしっ！変わりたいんです！今までの人生…いろんな人にバカにされたり、いじめられたり…」
「わかる…。私もいじめられてたわ。」

真澄の独り言に宇佐美も入った。ネガティブな二人は何か気が合いそうだ。色々質問すると真澄の扱う物は弓だ…。中距離がまた増えた。ここまででアストライアーには、近距離…猫山蜜柑。宮野京子。夢月暦。伊月十夜。ネア。武蔵剣正。
中距離…藍野鈴菜。弧山朱音。神無月風那。桐谷真澄。
遠距離…黄蜂三咲。
となっている。そうだ…ここで他の町のアストライアーが来ることについて聞いた。

「そうね…ざっと三人来る予定よ…それぞれ別々の町から来るのよ。二人男で一人女。黒瀬有栖と舟片出雲、猿柿稲真よ。みんな面白い子達よ～。三日間滞在するのよ。あとこれも言っとかなきゃ…舟片以外は高校生よ。舟片は大学生。」

前もって情報をもらえれば心の準備ができる。その前に体育祭が近い。来週にある。…さて、頑張らなければ。