88話 １番目の悪食　作：紅瑠璃

真保はかなり困っていた。今日は空と散歩に出て昼食をとったのだが、空が「お腹すいた…次いこ！」と言い出し、今6件目となる。空は中学一年の女子…育ち盛りだから多少は多く食べることはあるだろう…普段の空はかなりの大食いで「食のダイソン」と言われてるらしい。掃除機かと気になるが本人は気にならないらしい。にしてもたくさん食べても太らないのだから驚きだ。さて、空は食べ終えた。

「お腹すいた…次いこ！」
「はぁ…ちょっと食べすぎじゃない？」
「だって…お腹空くんだもん…」

実質早く帰って薬を作りたい…。しかし、空一人を置いていくわけにいかない…仕方がないまだ試作中の非常食を渡してみるか…実験もかねて。そう考えた真保は白衣の中からスティック状の食べ物を取りだし渡す。１本食べればかなりのカロリーが取れ、食べ物が入らないだろう。しかし、３本渡してみた。

「…何これ？」
「美味しいものだよ♪食べるとね…お腹がふくれるよ」
「んむんむ…んー。パサパサする…確かにお腹がふくれた。味がない♪」

そう。その試作中の非常食はパサパサして、味がない。今度はそれに味をつけることをしなくては…。それよりも実験は成功のようだ。とりあえず家に向かった。
家では姉の京子が荒れていた。

「真保…銀河眼の光子竜が…再録。」
「痛い痛い痛い！肩を掴まないで！外れる！はぁ…今度の箱？良かったね」
「いや、持ってるから興味ない。」
「ないんだ！？」

そんなやり取りの中、空がリビングに入り「お腹がすいた」と言い出してきた。仕方がなく先程のスティック状の非常食を渡そうとする。そのときだ。

「あーむっ！」
「いっ！？」

空が私の手ごと食べてきた。まずい！このままでは本当に食べられる。 無理矢理引き抜く…歯形が残ってる…痛い。こんなことは初めてだ。

「空！何か変じゃない？異常なほどの食事…。」
「おかしくないよ！」

空に手をかざす…私はサイコデュエリスト…カードが取りついていればすぐわかる。探知しないといけないけど…見つけた。No.101が見えた。しかし、見つけたはいいがこの先どうするか…。とりあえず姉に相談するか。

「おねーちゃん…空にカードが取りついてるよ」
「…番号は？」
「101だよ。」

いきなり殴る構えを取り、その拳を出す。すると空の人格が入れ替わり表の人格が出てきた。

「なんだよ…」
「十六夜 空…あなたの中にカードが取りついてる…多分、宮野 空の方に」
「そうか…はぁ…。どうやったら取り除ける？」

視線が真保に向かう…今までの経験からしてデュエルをして、空が負ければ取り除けるだろうと考え提案する。もちろん宮野 京子がやる気満々だったがおねーちゃんに任せると危ない。

「私がやるよ。おねーちゃんだと危ないし。」

十六夜空の人格が収まり、裏の人格…宮野 空が出てくる。宮野空は十六夜空の存在を知らない。また本当は存在しない人格なのだ。

「お腹すいたぁ！」

手をかざし、No.101を揺さぶる。徐々に空の様子が変わっていく。

「その腕…頂戴！」
「っ！？あ、危ない…私が食べ物に見えているようね…。」
「お腹がすいたよぉ。真保おねーちゃ～ん。」

腕にかぶり付く。引き離すように外に出し。住宅地から離れる。デュエルがしやすいように…腰にデュエルシューターは装備されている。デュエルシューター…私が名付けた自作のデュエルディスク。普段は射撃ができ、デュエルをするときはデュエルディスクへと変形する。普段は左腕にカードを持つが、サイコデュエリストだからカードを浮かばせることはできる。…ここら辺で良いだろう。ちゃんと空はついてきていた。

「空…デュエルよ！」

〈デュエルシューター…ディスクモード…スタート！〉

気分で音声をつけたが、中々盛り上がる…一人だが…盛り上がる。

「私のターン…。私はモンスター伏せてエンド」
「私のタァーン！バッドセブン・ルシファー召喚！効果でバッドセブン・ベルゼブルを特殊召喚し、エクシーズ！No.101！攻撃」
「うぐ…破壊されたDNA－005の効果発動。相手のモンスターのコントロールを得る。」
「っち…一枚伏せてエンド。」
「ドロー。DNA－003召喚！このカードは自分フィールドのモンスターと同じ名前と攻撃力を得る。私のNo.101を指定するし、バトル！」
「バッド・クリティカル発動。相手フィールドのNo.101～No.107の１体のコントロールを得る。」
「っ…攻撃をせずに一枚伏せてエンド…」
「ドロー。ふふっ私が引いたのは…RUM－七皇の剣！」
「なっ！私はカウンター罠、DNA－生命進化論を発動。カードの効果を無効にし破壊する。その後手札のDNAモンスターのチューナーと、フィールドのDNAモンスターを墓地に送りシンクロ召喚をする。手札のDNA－002とフィールドのDNA－003でシンクロ！レベルは5。DNA－EX003を守備で出す。」
「なるほどNo.101に食べられないようにか…だけど…甘い！パンケーキよりも甘い！手札のRUM－オーバー・セブン発動！墓地のRUM－七皇の剣を除外し、その効果を適応する！現れろ…CNo.101！さぁ～て、あなたのDNA－EX003を吸収！バトル！」
「うぐっ！…やばい…このデッキじゃ遅すぎる！ドロー!くっそ…カルテットシンクロ発動。デッキのチューナーモンスターとチューナー以外のモンスター４体を墓地に送り、シンクロ召喚をする。DNA－003が1体、DNA－006が１体、DNA－001が１体、チューナーのDNA－002を墓地に送り、レベルは9…トリシューラをシンクロする。３枚を除外するわ…CNo.101とRUM－オーバー・セブン。手札のそのカードを除外するわ！No.101にバトル！」
「ふふっ身代わりは使わないわ」

この時察していた。わざわざ身代わりにする効果を使わなくても次のターン、私は負けると言うことを…エンドの宣言をする。

「ドロー。ふふっ…手札のRUM－オーバーハンドレッド・カオスフォース発動。墓地の同名No.101～107を２体特殊召喚し、それらを素材に同じ番号のCNo.を特殊召喚する。来いっ！CNo.101…相手のトリシューラを吸収！さぁ～て、メインディッシュと行こうか！CNo.101１体でエクシーズ召喚…CX冀望皇バリアン…攻撃力は？」
「よ、4000…」
「終わりだよ。真保おねーちゃん！」
「うぐわぁ！？…」
「安心してぇ～。残さず食べてあげる♪」

食べられる…逃げようにも動けない…空が私の腕をつかみ口をあける。そのときだった。 蜜柑が止めに入った…。 どうやら日向ぼっこをしていたのだろう。

「空！それ以上は一線を超える…一線を超えたら私はあにゃたを倒さなくてはいけにゃい！…真保…大丈夫？」
「ま、まぁね…。それより、空を…止めて。」
「お腹すいた…お腹すいた…お腹すいたぁ！美味しそうな蜜柑さん♪どんな味がするのかなぁ～♪」

お互いにカードの能力でデュエルディスクを作り出す。中学生はカードの力に依存しやすい…。早く助けないと…そんな気持ちでいっぱいだった。