第73話　深淵より出し者　作：こんにゃく

一騎「くっ…！！」

凄まじい黒風が一騎達を襲う

クーデリカ「なんて…凄まじい力…これは…一体何なの…？」

一騎（正直…こいつの正面に立っていて分かる…）

タラりと冷や汗が噴き出る

一騎（俺の勝てる相手じゃないのかもしれない…）

一騎は初めて心の底からそう思った

一騎（だけど…やるしかないんだ…コイツを…デキレストに出すわけにはいかない！！）

一騎「このデュエル…何がなんでも…勝たせてもらう！！！」

アビス『ほう…』

一騎「俺のターン！！！」
手札５

一騎「俺はスケール２の『Ｃ・(チェンジ)フレア・アーチャー』とスケール8の『Ｃ・(チェンジ)スプロケッター』でペンデュラムスケールをセッティング！！」

頭上に揚がる二つのモンスター

それは天高く浮かぶモンスターの間に振り子が現れ門が開く


アビス『…ペンデュラム召喚』

一騎「これでレベル３から7のモンスターが同時に召喚可能！！！異世界の扉を開き…数多の次元を繋ぐ瞳の力！！！今！！降臨せよ！！！ペンデュラム召喚！！！」

一騎「手札からレベル４！『Ｃ・（チェンジ）アックルホーン』！！！」

人型の牛が猛り現れる


アックルホーン
レベル４/地属性/獣族/ペンデュラムスケール５
攻撃力1800


一騎「そして…レベル７！！！冥界を映す紫煙の眼輝けし竜！！！『ハーデストアイズ・スカイ・ドラゴン』！！！」

ハーデストアイズ「ゴアアア！！！」
レベル7/闇属性/ドラゴン族/ペンデュラムスケール４
攻撃力２５００

一騎「そして！スプロケッターのペンデュラム効果発動！『1ターンに1度ペンデュラム召喚に成功した時デッキからカードを1枚ドローする』！！」
手札２

一騎「俺はこれでターンエンド！」

アビス『…瞳を持つ竜…くっくっく…あっはっは！貴様はつくづく『奴』のような人間だ』

一騎「奴…？」

アビス『我に挑んだ哀れな人間…いや…奴のおかげで我は封印された…忌々しい人間よ』

アビス『我は必ず復活を遂げ…必ずやすべての世界を我が物とする』

クーデリカ「全ての世界ですって！？」

アビス『それこそが我の目的であり我の存在意義である』

クーデリカ「すべての世界だなんて…そんなことできわけない！！異世界は無数に存在するのよ！？あんたがいくら凄くたってできっこない！」

アビス『愚かな…故に貴様たち人間はその程度なのだ…』

一騎「何？」

アビス『我は…アビス…深淵より生まれた闇の神…すべての世界を掌握することなど我にできぬことなどない』

クーデリカ「…何あの自意識過剰」

アビス『手始めにこのデキレストスペースから支配してみせる…それこそが我の目的』

一騎「デキレストスペース…？」

クーデリカ「もしかしたら…あたし達や一騎達の世界をまとめた総称なのかも」

一騎「さっき言ってた銀河ってやつか…」

アビス『その為ならば手段は選ばん…我のターン！』
手札６

アビス『我は永続魔法『多次元回路』発動』

ガガガ！！！という音と共に砂の地面に数多の宇宙が浮かび上がる

アビス『これにより我はデッキからリリース無しでモンスターを召喚できる』

一騎「なっ！？」

アビス『漆黒を司る万物の闇よ、表裏の理から外れ仇なす混沌の悪夢よその大いなる力で光を喰らえ』

山羊のような形状の頭蓋骨に人間の外骨格、そして漆黒のローブを纏い背中には左右非対称の位置にある5枚の翼を生やしている

一騎「なっ！！！こいつは！！！」

その姿に一騎は見覚えがあった

アビス『現れよ！『深淵暗黒神ダークネス』！！！』

ダークネス「…」
レベル12/闇属性/悪魔族
攻撃力3000

クーデリカ「な…なにあれ…気持ち悪い…」

一騎「どうして…どうしてお前が！！そいつを！！！」

一騎（だって…だってそいつは…）

一騎の頭にあるものがよぎるそれは

一騎（そいつは…遊戯王ＧＸにでてきたラスボスじゃないか…！！）

アビス『ほう…こいつに見覚えがあるのか人間よ』

一騎「…答えろどうしておまえが…！！」

アビス『良かろう…貴様の質問に答えてやろう』

一騎「…」

アビス『このカード…ダークネスは我の力を分け与えた我のカードだ』

一騎「なんだと…？」

アビス『そう…そして我はこのカード異世界の狭間に置くことで外側からファラリス世界とデキレスト世界を繋ごうと考えた』

クーデリカ「なっ…！！」

アビス『そして…その最中…面白い現象が起こった』

一騎「面白い現象だと…？」

アビス『このカードは次元の狭間を縫うように移動し多次元の存在を我に教えてくれたのだ』

一騎「つまり…この世界とは別の世界…」

アビス『そしてこのカードはある一定の場所で留まり世界を創造し始めた…カードの表は光を生み出しカードの裏は闇を生み出した…』

一騎「…それが…あの…遊戯王の世界…」

アビス『本来ならば我が直接手にかけるべきだったが我には力が足りない…だからこそダークネスに全てを任せていたのだが…』

アビス『このカードが我の手に戻っているということは…我が封じられていた間にどうやら何者かに敗北し…力を失ったようだ』

一騎（…！間違いない…それは十代の事だ…つまり…あの世界は存在するってことなんだ！！）

一騎（待てよ…だとしたら…もしかしたら…他の世界も…）

アビス『しかしだ…このカードには我の力の半分を与えたというのに…この結果というのはいささか怒りを覚える』

一騎「！」ゾクッ

一騎は一瞬にして背筋が凍った

一騎（あのダークネスが力の半分？…確かにあいつはデュエルじゃ小物臭がするなんて思ったりもしたけど闇があれば何度でも復活出来たり闇の世界を作り出したりできるまさに闇の神って感じだった）

一騎「それが…こいつの半分…だっていうのか」

アビス『まぁよい…過ぎたことだ…我は深淵暗黒神ダークネスでハーデストアイズを攻撃』

アビス『ヘル・ダークネス！』

闇…そうとしか言い表せない闇がハーデストアイズを包み込む


ダークネス
攻撃力3000
↓
ハーデストアイズ
攻撃力2500


アビス『ダークネスは戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手にそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与えることが可能』

一騎「なんだと！？」

クーデリカ「このままハーデストアイズが破壊されたら…一騎は3000のダメージを！！」

アビス『散り行くがよい…ハーデストアイズ！』

一騎「そうはいかねぇ！！俺はＣ・（チェンジ）アックルホーンの効果発動！『1ターンに1度、自分フィールドのペンデュラムモンスターが攻撃対象となった時このカードを破壊することでそのモンスターの戦闘破壊を無効にする』！」

一騎「ぐぅぅ！！！」バシュウ…！
ライフ4000→3500

クーデリカ「ハーデストアイズが破壊されなかったことでダークネスの効果は発動しない！！やった！流石は一騎！！」

アビス『ほう…やるではないか人間…瞳の竜を従えることだけはある…我はカード1枚セットしターンエンド』
手札４

一騎「さっきから…瞳の竜とか…深淵とか…なんなんだよ…！！」

アビス『…自身の力にも気づかぬとは…やはり人間とは愚かな存在よ』

一騎「ダークネスすら操っちまうお前が凄いのは分かった…でも…お前は何者なんだ…何を知っている」

アビス『我は神…だが全知全能ではない』

クーデリカ「…いきなり謙虚」

アビス『我は深淵より生まれ闇を統べる…光の世界の事など知らん…いうなれば瞳の力とは光の世界の力だ』

クーデリカ「つまりあんたも知らないってことね」

アビス『知らないのではない興味がないのだ』

クーデリカ「その割には色んな世界を手に入れようとしてるじゃない！」

アビス『世界を手に入れる…だがそこに光は必要ない』

クーデリカ「なっ…勝手な奴…！！」

アビス『我にとって全ての世界は等しく我の物…それ以外に価値などはない』

クーデリカ「一騎！お願い！！こんな身勝手な奴倒しちゃって！！」

一騎「ああ！当たり前だ！！」

一騎（それにこいつは…本来の力は今出せていない…だったら…倒すのは今しかねぇ！！）

一騎「俺のターン！！ドロォォ！」
手札３

一騎「俺は再びペンデュラム召喚をする！！来い！俺のモンスター！！」

一騎「エクストラデッキからＣ・（チェンジ）アックルホーン！！」

アックルホーン
攻撃力1800

一騎「手札からＣ・（チェンジ）銀狼ファング！！！」

ファング
レベル４/闇属性/獣族/ペンデュラムスケール６
攻撃力1800

アビス『…』

一騎「それだけじゃない！！俺はフレア・アーチャーのペンデュラム効果『1ターンに1度エンドフェイズまで相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を自分フィールドのＣ・（チェンジ）モンスター1体につき300ポイントダウンさせる！！！』」

ダークネス
攻撃力3000→2400

一騎「そして！スプロケッターのペンデュラム効果によりデッキからカードを１枚ドローする！」
手札３

クーデリカ「よし！これでダークネスの攻撃力を下げた！！これならハーデストアイズで！！」

一騎「バトルだ！！！ハーデストアイズでダークネスを攻撃！！！」

一騎「この瞬間ファングのモンスター効果発動！『攻撃宣言時、自分フィールドのペンデュラムモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで300アップさせる！！』」

ハーデストアイズ
攻撃力2500→2800

ファング
攻撃力1800→2100

アックルホーン
攻撃力1800→2100

一騎「いっけぇぇ！ハーデストアイズ！！！召雷のストライク・バーストォォォ！！！」

ズガンッ！っと閃光が闇を貫く

一騎「そしてハーデストアイズがバトルで相手モンスターを破壊した時そのダメージは2倍になる！！！」

ハーデストアイズ
攻撃力2800
↓
ダークネス
攻撃力2400

アビス『…』
ライフ4000→3200

クーデリカ「やった！あのモンスターをやっつけた！」

一騎「これで最後だ！！ファングそしてアックルホーンでダイレクトアタックだ！！！」

2匹の獣がアビスへと襲い掛かる

クーデリカ「この攻撃が通れば…一騎の勝ち…！！！」

アビス『永続トラップ『深淵の塊』を発動』

アビス『このカードは我のフィールドにモンスターが存在しない時深淵トークンを1体特殊召喚する』

深淵トークン
レベル1/闇属性/悪魔族/トークン
攻撃力０

一騎「！？」

クーデリカ「どういう事…？今更攻撃力０のトークンを出したって…」

アビス『そして墓地のダークネスの効果を発動、我のフィールドに闇属性モンスターが1体存在する時そのモンスターをリリースすることで墓地から特殊召喚する』

ダークネス
攻撃力3000

一騎「なに！！！？」

再び闇が噴き出しその姿を現す

アビス『ダークネスは闇が存在する限り何度でも蘇り光を喰らう』

クーデリカ「深淵の塊はフィールドにモンスターが存在しない時何度でもトークンを特殊召喚でき…ダークネスは闇属性のモンスターをリリースすれば何度でも蘇ることができる…」

クーデリカ「…まさに不死身…！！」

一騎「く…そ…俺は…カードを1枚セット…これでターンエンド」
手札２

アビス『ふむ…』ジリ…

アビスの体が一瞬だけぼやける

アビス『やはりこの程度では我の体を維持はできぬか…だが…貴様を葬るには十分だ』

一騎「…く」

アビス『…では肩慣らしに我の力を使って見せよう…』

アビス『我は神…深淵を司る大いなる闇…我が望むものは全てを掌握する…』

ゴゴゴッ！！！アビスの腕に闇が集まる

それは周りの物を巻き込み砂塵が舞い上がる

一騎「っ…！！なんだ！？」

クーデリカ「な…なんて力…吸い込まれそう…！！！」

アビス『アビス・ドロォォォ！！！』バシュン

一騎「な…！！？」

アビス『これでこのカードは我が望むカードに書き換わった』

クーデリカ「書き換わった！？」

アビス『ふむ…まだ我の力が足りぬか…まぁまずまずのカードと言ったところか』

一騎「なっ！？カードの書き換えって…そんなドン・サウザンドみたいなことまで！！？」

アビス『ドン・サウザンドだと？…ほう懐かしい名だ』

一騎「なに？…どういうことだ…？」

アビス『…数千年前…そうちょうどダークネスを放った頃か我は意識だけを多次元に飛ばし世界を彷徨っていた』

アビス『そしてある世界にてそやつは存在していた…そこは光の溢れる世界だったがそやつはまるで黒いシミであった』

アビス『そやつは力を欲していた…その世界を破壊する力を…我は使えると思った』

一騎「使える…？」

アビス『そやつを利用すれば我が例え手を下さなくともその世界を手にすることができると考え…奴に力を…我の力ソロモンズを与えた…』

一騎「そ…そんな」

一騎（ソロモンズ…まさか…ドン・サウザンドはソロモンズを元にナンバーズを…？そしてその力はいつしかアストラルとドン・サウザンドの記憶となったのか…？）

アビス『ドン・サウザンド…奴もまた我に近しい存在であった』

一騎「待てよ…っていうことは…こいつは…」

クーデリカ「一騎…？」

一騎はジリッと後ずさりをする

一騎「こいつは…俺が見てきたラスボスを…本当の意味で操っていた真のラスボスっていうことなのかよ…！」

一騎は恐怖した、自分の目の前に立つ影が恐ろしかった

アビス『ふん…だが所詮奴は小童…あの世界を手にすることも破壊することもできんだろう…例え近しいとはいえ奴もまた不完全』

アビス『あの世界もいずれは我の物となる…それまでの余興にはなったであろう』

一騎「…っふざけんな」

アビス『なに？』

一騎「ふざけんな！！その世界は…主人公が守った世界なんだ！！」

一騎の頭に歴代の主人公達が過る

一騎「色んな葛藤や…絆それに希望が…その思いが救った世界なんだ…その世界をまたお前に曇らせやしねぇ！！」

一騎「お前の好きにはさせねぇ！！！絶対にだ！！！」

アビス『…面白い…ならば止めて見せよ人間…貴様の希望が眩む前に』

アビス『我は多次元回路の効果によりデッキから『深淵運命神ヴォルガマ』を召喚』

ヴォルガマ
レベル12/闇属性/悪魔族
攻撃力3300

時計が体に張り付いた五足の軟体生物が出現する

クーデリカ「うぇ…またキモいモンスターだ…」

アビス『更に我は手札から『深淵共有（アビス・ネットワーク）』を発動』

アビス『我は手札のレベル12『深淵暗黒神官ダゴン』と同じくレベル12の『深淵暗黒神官ヒュドラ』そしてフィールドの深淵暗黒神ダークネスと深淵運命神ヴォルガマを素材としてオーバレイ』

一騎「なっ！？」

アビス『我は4体のモンスターを素材としてオーバレイネットワークを構築！』

アビス『混沌無欠の闇よ、天を翻し、地を万上に、数多の愚行を許し世界を反転せよ、万物の者どもよこの者に跪け！！』

アビス『降臨せよ！！！『深淵愚公闇神ガタノトーア』！！！』

その姿は闇の者

全てを喰らい何物にも属さないまさに怪物

ガタノトーア
ランク12/闇属性/悪魔族/エクシーズ
攻撃力4800

クーデリカ「な…」

一騎「な…なんだよ…こいつ…」

その闇は一騎達はおろか異世界の狭間すら飲み込んいく

…

シンクリス上空

闇が押し出てくる

それは大気を包み光を消す

べクト「おいおいおい…今度は何だってんだ！？」

通「分からねぇだが…やばいってことだけはわかる」

遊姫「これって…」

トラクリボー『まさか…この感じ…』

遊姫「トラちゃん？どうかしたの？」

トラクリボー『え…ええ…この感じはもしかしたら奴が復活したのかも…って』

遊姫「やつ？」

トラクリボー『ええ…大いなる闇…闇そのものよ』

…

一騎「くっ…」

アビス『むぅ…今の我ではコイツを操ることで精一杯か…まぁよい…ではまた一厘の花を摘むとしよう』

一騎「くっ…」

アビス『精々足掻くといい人間…貴様の最後がデキレストの最後だ』

一騎「…俺は…負けない…絶対にデキレストを守ってみせる！！」

…

続く


一騎「俺に襲い掛かる闇…それは俺があこがれていた主人公たちを苦しめたラスボスを操っていた奴だった…だったらなおさら倒さなくちゃならねぇ…このデュエル…絶対に勝つ！！！」

一騎「次回『貫く光』一気に駆け上がれ！！」