第１話 異世界へ 前半　作：こんにゃく

遊木町…人口4000人程のこの町は今とある『ゲーム』が流行っていた。

「いっけぇぇ『銀河眼の光子竜』！！」

テーブルの上で少年二人が向かい合ってカードを並べている光景が広がる

遊戯王…それがこの町で一大ブームを巻き起こしているものだ。１０年以上も前から存在するカードゲームなのだが漫画、アニメと幅広い要素があり今では巨大なコンテンツとして広まっている。

そしてこの町に一人、まったく「勝てない」デュエリストがいた。

「だぁぁ！負けたぁ！」

彼の名前は『小鳥遊 一騎』、現在16歳の少年は目の前にいる小学生程度の少年にたった今敗北したところだった。

少年「ねぇ一兄そろそろそのデッキ使うの止めたら？つまんないよぉ」

一騎「うっせ！これが俺のデッキなんだ！文句言うなよなぁ」

少年「でも全然楽しくないよぉ今時『ブラックマジシャン』なんていれる人いないよ？」

一騎「はぁ？ブラックマジシャン格好いいだろうが！！何言ってんだよ！！」

少年「でもぉ…」

「そうだぞ一騎」

二人の横から大柄な男が話しかけてきた、身長は195㎝頭には赤い鉢巻きを着けた男、彼は『太刀洗 通』。一騎の幼馴染みで親友である。

一騎「通ぅ…別に良いだろう何使ってもよぉ…」

通「確かにどんなものを使おうがお前の勝手だが一言だけ言わせてくれお前のデッキは主人公デッキではない、ただのごちゃ混ぜだ」

少年「そうだよぉ『EｰHEROスパークマン』出してそれをリリースして『ブラックマジシャン』なんて何時の時代だよ」

一騎「う…うるせぇ！俺は主人公デッキが好きなんだ！」

通「むぅ…ならなぜ『別々』に作らない？『遊星』の『ジャンド』や『遊馬』の『ランク４軸ホープ』などファンデッキはいくらでもあるだろ」

一騎「いや『ジャンド』は少し違う気もするけど…とにかく！俺は全部入れたいんだ！」

少年「それで何も出来なくちゃ意味ないじゃん！」

一騎「うっ」ｸﾞｻｯ

通「一騎…遊戯王は相手も楽しませてなんぼだ自分ばかり良けりゃいいってもんじゃねぇ」

一騎「うー…そうだなぁ…」

通「今日はもう遅い、明日一緒にデッキでも考えるか？」

現在時刻は5時、もうすぐ日は落ち辺りは暗くなり始める。一騎と通は学校の帰りにカードショップに立ち寄りデュエルをしていたため帰宅することにしたのだった

一騎「…そーする」

「あっいたいた♪一騎ぃ！通！」

ショップに入り一騎達の名前を呼ぶ少女。『桜ノ宮 遊姫』彼女は一騎達の幼馴染みであり一騎達の通う学園ではアイドル的な存在であり誰にでも優しく接するため一部男子からは『天使』と言われている。

遊姫「やっぱりここにいたんだね二人とも、もう帰る？」

一騎「あぁなーんか冷めちまったみたいだし今から帰りますよっと」

遊姫「…？どうかしたの？」ｺｿｺｿ

通「まぁいつものことだ気にすんな」ｺｿｺｿ

一騎「なーにコソコソ話てんだよ置いてくぞ！」

二人は一騎の後を追いかけカードショップを後にした。

通とは道中で別れるのだが遊姫と一騎は家が隣同士のため別れることは無い。

遊姫「へぇ～また勝てなかったんだ」

一騎「まぁ仕方ねぇっちゃ仕方ねぇんだけどよ俺は憧れてんだよ『主人公』に」

遊姫「ふふっ相変わらずね小学生の頃から変わってない」

一騎「な…なんだよわりぃかよ」

遊姫「ううん良いことだよ変わんないって言うのは」ﾆｺﾆｺ

一騎「あーあ…俺がアニメの世界の住人ならこのデッキでもガツンとこう…いけんだけどなぁ！」

遊姫「はいはい…ほら行くよ？」

一騎「やっぱ馬鹿にしてんじゃねぇかよ！」

遊姫と一騎はお互いに家路に着いたのだった。そしてその夜

一騎「うーん…」

一騎は自分のデッキを見ているそこには

『オシリスの天空竜』『ブラックマジシャン』『EHEROネオス』『スターダストドラゴン』『No.39希望皇ホープ』『オッドアイズペンデュラムドラゴン』…

どれも自分が憧れた『主人公』が使っていたカード達これを１つのデッキに入れることが一騎のポリシーであり誇りだった。今更変える気などさらさら無い。

一騎（明日はどうすっかな…考えても埒があかねぇし…今日はもう寝るかな）

一騎はデッキを片付けベッドに飛び込んだ…しかし次に目を開けた時彼の目に写った物は自分の知らない世界だった。

一騎「ん？…うーん…ここは…？」

森 辺り一面に木々が生え新鮮な…都会ではけして味わうことの出来ない空気を吸える…家ではないことは確かだと一騎は悟った

一騎「あれ？俺家に居たよな…夢？」

服を確認するが寝間着であり頬をつねるが痛いだけ、夢ならば覚めるがその様子は全くない

一騎「夢じゃねぇのか…ならここはどこだよ！！」

すぐさま立ち上がり歩み始める、行けども行けども同じ木々が生い茂る光景が続く、一時間程度は歩いただろうかそこであることに気づく

一騎「ん？」

ポケットに違和感があった、それを確認すると

一騎「これ…俺のデッキ？どうして…」

その瞬間だった、ドゴォォンと音が鳴り響く、さながら爆撃機が爆弾を落としたかのような衝撃が辺りに広がり思わず一騎はその場に倒れこむ

一騎「うっつ…いってぇ…なんなんだ？」

一騎は音が鳴った方向に向かって歩く、それは好奇心、そして目の前に衝撃的な光景が入った

一騎「っ！！」

人が倒れている。白い鎧を見に纏ったさながらRPGのキャラクターのような人間が数人倒れている、しかしその美しい鎧はボロボロで素人の目でも分かる彼らはもう…

一騎「なんだよ…これ…」

「だれだ」

衝撃的な光景の前に言葉を失っていた一騎は突然声を掛けられる。その声の主は倒れている騎士達とは正反対、漆黒の鎧を見に纏い顔が隠れていても分かるほどこちらを警戒している

一騎「い…いやまって！俺は…」

「貴様も『シンクリス』の人間か？」

一騎「は？シンクロ？」

「『シンクロ』…やはりそうか…ならば容赦はしない！！」

そう言うと黒騎士は腕に着いていた『ある物』を起動させる、それは一騎がよく知っているものだった。

一騎「『デュエルディスク』！？」

アニメでしか見たことがない『それ』は光輝きそれは紛れもなく本物だと一騎は思った

黒騎士「さぁこい！！『ホワイトティラー』は全て殲滅する！！」

一騎「さっきから何訳の分からないことを！！」

黒騎士「その気が無いのならこちらからいくぞ！！俺のターン！！」

一騎「っておい！！？」

一騎は周りを確認する、そこには先ほどの白い鎧を着た人間が目にはいった、そしてそこからデュエルディスクを拝借した

一騎（なんかよくわかんねぇけどアニメの世界みたいなとこに来たってことか！？くぅぅぅ夢が叶ったって訳だ！）

一騎はご機嫌な様子でディスクを腕につけデッキを挿入する

一騎（アニメみてぇだ…まさか俺がこれを着けるなんて…それにしてもあいつ勝手に…）

黒騎士「俺は手札から『ＢＢ（バーサク・ブレイダー） ハンニバル・ヘンリー』を通常召喚！！」

『ＢＢ ハンニバル・ヘンリー』闇 レベル１
攻撃力0 守備力0

一騎（すげぇ！！モンスターが実体化した！？）

黒騎士「そしてハンニバル・ヘンリーのモンスター効果を発動！！フィールドにこのモンスターのみの場合相手に500ポイントのダメージを与える！！『ハンニバル・スラッシュ』！！」

その瞬間モンスターが放った攻撃は一騎を襲う、数十メートル吹き飛ばされ木に衝突する

一騎「がっ！？…かはッ…え…？」

一騎 ライフ3500

その一撃で一騎は倒れこむ、重い…あまりにも重い一撃は一騎に恐怖心を与えるのは充分だった

一騎「ダメージが現実に…？」ｹﾞﾎｯｹﾞﾎ

黒騎士「なにを当たり前のことを…この世界でライフが尽きるということは死を意味する…」

一騎「なっ！？なんだって…」

後半へ続く