66話：偉業を捨てた魔女の翼　作：ヒラーズ

アリアドネ　LP500
手札０
伏せ1枚

ノイエ　LP8000
手札２
場　《ＭＳＭ－デンドロビウム》《ＭＳＭ－ウイングゼロＥＷ》
伏せ０


「私のターン！」
アリアドネ
手札０→1

「己ぇ……打つ手がないとは……ターンエンドだ」
「私のターン」
ノイエ
手札２→３

「トドメです！ウイングゼロＥＷでダイレクトアタック！！」
ツインバスターライフルの銃口がアリアドネに向けられ、強力なビームが放たれる。

アリアドネ　LP－3000
「クソがぁぁぁぁッ！！！！」

着弾した場所が大爆発を引き起こし、アリアドネが吹っ飛ばされてデュエルが終わった。





ーーーー





脅威を退けたノイエは、出入り口を抜けようと足を進める。

「何故だ、ノイエ……。お前のような優秀な魔女が、どうして夜会を去るんだ？これではプラムの二の舞になるぞ……！」

「……」

ノイエは立ち止まり、アリアドネの方へ振り向く。

「……確かに私の師匠は何も言わず、夜会を去りました。ですが、陸也から聞いた真実で目を覚ましました。私はもうあなたの駒じゃありません。夜会の魔女ではなく……一人の魔女として。陸也の母であり、私の師であるプラムもそうでした」
「ノイエ！」
ハナコが止めようと走るが……。

「ごめんね、ハナコ。途中で抜けちゃって」
ノイエがハナコに謝る。予想外の事だったのか、ハナコは足を止める。
「……また、こっちに戻ってきてくれる？」
「……再び此処に暗雲が訪れるなら此処に戻りましょう」

そう言ってノイエは空間魔法を行使して都から去った。
「……ハナコ達がアリアドネの駒……それはどういうことなの？」




ーーーー



クロノヴェイル東側方面。ノイエの実家前。
ノイエはドアの鍵を開け、中に入る。
「……ただいま。」

家の中は静寂に包まれ、返事の声もない。
ただの一軒家の割には綺麗に掃除されており、居間やキッチン、和室など綺麗になっている。

「変わらないわね。私が居なくなって数十年は経ってるのに新しい感じが残ってる……」

辺りを見渡した後、ノイエは和室に入る。そこには一つの仏壇が置いてあった。写真にはノイエと同じく、魔女帽子とローブを着込んだ若い女性が写った写真が飾られていた。

「ただいま、お母さん。今……戻ったよ」

あれから3年。
ノイエ・フロンタルの名を置き、実名「白石 巴」として実家で一人暮らしを満喫し、体も成長している時期。学園生活に明け暮れていようと準備をしていたノイエに、ある一通の手紙が届く。

「私宛？」
怪しみながらも中身を確認する。その内容を見た彼女は驚愕する。
「転生した陸也さんの姉がクロノヴェイルに来る？」

思ってもいない事に気づかされたノイエ。表情が少し険しくなるも、冷静に考える。

（陸也さんに姉が？少し探っておく必要がありますね）


ーーーー


そして、今に至る。

「……」

（本当に陸也さんの姉ならば、この事件も解決してくれるのかしら？）

少しの間考える。巴として海理に出会い、今ではルームメイトであり、友達だ。早々簡単にこんな悩みを受け入れてくれるのだろうか？

「……けど、迷っている暇はないわ。どの道、私の正体は陸也さんにもう見破られているはず……海理にバレるのも時間の問題。なら相談しに行くしかないわ」

そう言って図書室を去った。
その途中、巴は招待状に紛れ込んだ1枚の小さい紙を黙読する。
内容は単純かつストレートで書かれていた。

『助けて』

それだけであった。