58話：時を切り裂く「世界」の暗示　作：ヒラーズ

「でけぇ……君の最終兵器か？」

「どうでしょう？実はまだエースは決めていないんです」

海理の前に現れたシンクロモンスターは高速で空中を舞い、大きな竜巻を作り出す。

「な……何だ！？俺のPモンスターと手札が！？」

竜巻に巻き込まれたのはスバルの手札とPゾーンにセットされていたPモンスター。竜巻に吹き飛ばされ、デッキの1番下に戻される。効果はデッキバウンスだろう。

（すげぇ……これが「世界」の暗示の力かよ…！）

白眼の皇燕（ホワイトアイズ・エンペラー・スワロー）／Original Card
☆12/光属性/鳥獣族／シンクロ／効果　ATK3800／DEF1000
チューナー２体+チューナー以外の「ホワイトアイズ」モンスター１体
①：このカードがＳ召喚に成功した時、相手の手札、フィールドのカードを全てデッキの１番下に戻す。
②：このカードが表側表示で存在する限り、相手はモンスター効果、または罠を発動できない。
③：Ｓ召喚されたこのカードが戦闘・効果によってフィールドから離れた時、相手に２５００のダメージを与える。
④：１ターンに１度、デッキの上からカードを４枚めくり墓地に送って発動できる。このターン、めくったカードが「ホワイトアイズ」モンスターだった場合、このカードは墓地に送った「ホワイトアイズ」モンスター１体につき、１度のバトルフェイズに続けて攻撃できる。

「んな！？何だこの効果は……！？」
――――かなり危険だぞ！

「これで終わりです！デッキトップからカードを4枚めくります！」

『白眼の聖龍』
『白眼の亜聖龍』
『白眼の轟咆』
『白眼の子竜』

「魔法が1枚、残りは全てモンスター！あなたを守るカードはありません！皇燕でダイレクトアタック！スワロー・オブ・ヘヴン！！」

白き瞳の燕がスバルに襲いかかり、LPを削りきった。

「さすが白き邪神の姉だな。想像以上だ」

スバル　LP5000→0

WINS
海理

Lose…
スバル




ーーーー








「さぁ、勝ちましたよ。あなたの目的、じっくり聞かせて貰います」

「おいおい、警察の取り調べじゃないんだし、無理矢理は……」

その言葉を言ったとたん、海理は魔力を増幅させ、スバルを睨みつける。

「わかった、わかったって！そんな怖い顔をするなよ」

焦ったスバルはベンチに座り、その隣に海理が座る。淡々とスバルは目的を語り、話を聞き終えた後、海理が口を開かせ問いかけた。

「なるほど……この都市のどこかに、かつて地球を支配した神が眠っていると？あなたはそれを倒すためここにやってきた……という事ですか？」

「ああ、そいつの存在が別世界にまで影響していてな。倒さない限り改善の余地がない。俺はそれを解決するために来たんだ」

スバルから語られる思いも寄らない事実。海理は「陸也もこれが目的で此処に来たのかも」と考える。

（もしかしたら……陸也の任務って……）
――――恐らくその神の抹殺だろうな。

その時だった。

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ！

「！！」

海理のスマートフォンに着信音が鳴る。
陸也からのメールだった。

『急に時が止まったが、何があった？』

メールを見た海理は少し驚く。どうやら陸也も影響を受けずに動けているようだった。すぐに返信し、「今、スバルっていう時空を超えた人と交戦してました」とメールを打ち、送る。

「……」

「大変だな、救世者様も」

海理は溜息を吐き、ベンチから立つ。
その時、スバルが声をかけた。

「ここで会ったのも何だ。困ったら俺に頼っても良いぞ」

その言葉を聞き、海理は「ありがとうございます」と言って公園を去る。
その直後、スバルの精霊の力が消え、時を動かした。

「神を追う邪神、人を救う救世者。面白くなってきたな……」

スバルは後ろを向き、ベンチの後ろにある木に話しかける。

「だろ？熾天使トウマ？見てたんだろ」

「相変わらず、勘の鋭い奴だな。お前は」

木の陰からトウマが現れ、やれやれとした顔をする。

「はぁ……わざわざ天界に来て、俺に頼み事をして海理に合わせてやったけど、そもそもお前の目的は陸也だろ？」

「それもそうだが、その姉と戦うのもまた一興だろ？」

スバルはケタケタと笑い、場を和ます。トウマは少し翼を動かし、浮遊した。

「しかし……ネクロの情報が正しければ、天界の一部の連中が犯行を犯してるのに天界の長は黙ったままか？」

トウマは「それは俺が知りたいよ」と言って、ため息を吐く。
彼もまた陸也、海理と同じく苦労人であった。