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HOME > 遊戯王SS一覧 > 14話:ルームメイトは不良と変人

14話:ルームメイトは不良と変人 作:ヒラーズ

翌日、ガイダンスによる施設紹介が終わったとはいえ、自分のいる部屋のルームメイトの存在を今になって気にし始めた海理は放課後、魔奈と女子寮に戻る。
「そういえば…あんまり気にしませんでしたね…」
「俺様は別の部屋だからな、それではな」
そう言って魔奈と別れ、別々に行動した。
――――確か205号室だったな。
(ええ、そこのはず)

目の前に辿り着きノックをする海理、中からは「どうぞ!」とやたらと元気のいい返事が返る。扉の取っ手に手をとり、引く。
中には二人の少女が立っていた。
「はじめましてッス!私は鬼神 風花ッス!フーカって呼んで欲しいッス!!」
「私は白石 巴、使用デッキはー…」
「すいません、部屋を間違えましたね」
「「いやいや合ってる(ッス)よ!!」」

扉を閉じようとした海理を全力で止め、中に入れる。
悪かったと思っているのか、入れたとたんに謝られ、気が重くなるも話で盛り上げようと焦った。
「あの…一応私達は同い年ッスので、間違えないで欲しいッス」
「あなたの噂は聞いているわ、何も有名なデュエリストだとか…」
「私は別に好きで有名になったんじゃ…」

デレている訳ではない。弟を探すために身についた実力であり、自分に降りかかる火の粉を払うための技術でもある。
「そうそう!ネットニュース見たッスよ!電車事故の解決、飛び降りの阻止。もうこの部屋でアンタを知らない人はいないッス!!」
「……」
「やめなさい、恐らくこの人は好きで目立った訳じゃないと言ってるわよ」
そうやってワイワイ盛り上がっていると上からガタリと音が聞こえ、振り向く。そこには金髪ロングのガラの悪い少女が顔を出す。

「おい、うるせぇぞ!静かに出来ねぇか!!あ゙あん!?」
「あ…起きたッス」
「新しいルームメイトよ。挨拶ぐらいはしたらどうなの?」
やけに口が悪いが、それを巴や風花がなだめている。常に慣れているのだろうかと考え、接した。

「けっ!草薙 水樹(くさなぎ みずき)だ、今後とも夜露死苦」
――――ほう…今更になって不良用語とは古い人間だなこやつは。
(…ていうか死語だと思いましたよ……)

水樹は2段ベッドから飛び降り、着地する。
「随分とガラが悪いですが…元は何かの族だったんですか?」
「あー?アタシの名を知らねぇとはてめぇ…田舎もんか?だったら教えてやってもいいぜ?」
ガラが悪い割に教えてくれるのは何より優しいと思ったのか流れるかのように海理は「教えて」と言ったのだった。
「聞いて驚くなよ?アタシはな、元スターリン・レディースの総長だ!」
「クロノヴェイルでは大変人気の中学生暴走族のリーダーらしいッスよ?」
「らしいじゃねぇ!!そうだったんだよ!!」
「阿呆くさいわね…」
水樹は「何だとぉ!?」と言って巴の胸ぐらを掴み、怒鳴る。
よほど馬鹿にされるのを嫌っているのを理解し、喧嘩を止めた。
「そこまでにしてくれませんか?折角の寮生活なのですし、仲良くしましょう」
「そうッスよ水樹姉貴、ここで喧嘩は駄目ッスよ」
「「……」」

――――これは…この者達をまとめるためのリーダーが必要だな。
(逆に頭が痛くなりそう…)

海理のいる部屋にいるルームメイトは「噂好きの女子」と「語尾に『ッス』と入れる変人」…そして「元暴走族のリーダー」と何やら賑やかな組み合わせの部屋となったと思う海理は少し笑う。
「ふふっ…!」
「あー?なーにが可笑しいんだ?」
「いえ、何でも…。改めて紹介します。白皇 海理です」
そう言って全員に握手をした後、自分の机にあるパイプ椅子に座る。

「なぁ…あいつ、呪われた子供か?」「さぁ…?怖がらない時点でだいぶ肝が据わってるだとか…」
「なら話かけてくるッス」
「あっ…オイ!」

テクテクと風花が近づき、話しかけようとするが…。
「むっ…!」
素早い動きで腕を掴み、関節技で投げ飛ばす。
「ぐえっ!」
「…!すみません!怪我はないですか!?」
反応的だったとはいえ、投げ飛ばしたとは思っていなかったのか急遽手を取り、立たせる。
「いやー…さすが電車事故を止めただけはあるッスね!デュエルも物理(フィジカル)も強い!」
「お怪我は?」
風花は「大丈夫ッス!」と言って逆に喜ぶ。
そして自分のバッグから白くて大きい毛玉のようなものを取り出す。
「これ、私のケサランパサランッス、いつの間にかこの女子寮にまで入ってきてるんッスよ不思議ッスよね」
(なんで私が投げたはずのケサランパサランがここにあるんですか!?)
――――恐らく誰かが拾ったのではないか?
「前くらいにあちこち飛んでたので捕まえたんッス!可愛いッスよねぇ」
「…そうですね」
これを捨てたのは自分だと言うのは口が裂けても言えない…そう思い、苦笑いするも巴によって見破られた。
「もしかして…ケサランパサランを外に放したのはあなただったのね」
「あ……バレました?」
海理は申し訳ない顔をして風花達に話し、理由も言った。









「そうだったんッスか」
「確かに一人暮らしには不要ね」
「…」
「ごめんなさい」
辺りが重い空気に包まれる…確実に自分が悪い。
そう考え込んだ矢先に風花が口を割る。
「別にいいんじゃないッスか?人によっているいらないがあるから問題ない気がするッス」
「…」
意外な言葉に呆気をとられたのか段々と周りが穏やかになった。
恐らく風花はこの部屋の中のムードメーカーのような存在なのだろう。
「それよりもデュエルして欲しいッス!あの凄腕デュエリストが目の前にいるんッスから闘志が燃えまくりッスよ!」
「や・め・な・さ・い!今何時だと思うの!?」
巴の注意に海理は時計を確認した。
「…!!大変!もうこんな時間じゃないですか!」
「はぁー…もう飯の時間かよ!」
「でも今日はごちそうらしいッスよ?」
(不老不死の私は食べる必要があるのでしょうか…?)

あまり乗り気のしない海理の背中を水樹はポンと叩き、同情するかのように言った。

「まぁいいじゃねぇか、タダでごちそうが出るんなら安いじゃねぇか!」
「でも人混みは…」
――――言うと思ったぞ、まぁ良いだろう?仲間は多ければ良いものだ。
(何故…?)
――――例えお前を呪われた子供だと思っても、このルームメイトは嫌ったりせんだろう。
(仲間…ですか…)












アカデミア・クロック・ジャパンの敷地は存外に広く、日本中のあちこちから生徒を募集するという事はそれなりの広くなければならない。
新入生歓迎セレモニーは大広間で行われ、その大広間は低学年のみならず全校生徒が入りきっても余裕なくらいの広さである。

「よっしゃあ!ご馳走ッス!」
「豪華なタダ飯だ、きちんと腹に入れておかないとな!」
(やっぱりご馳走目当てじゃないですか…)

溜息をついた時、遠くの方から聞き覚えのある声がした。
「あっ!海理さん!」
「お前も迷っていたのか?」
目の前まで魔奈とハルが歩み寄り、同じ席に座る。
「バイキング形式で助かったね」
「全くだ」
魔奈達が持っている皿には多くの料理が盛られていた。
よく見てみると魔奈は肉料理が多く、それとは逆にハルは野菜料理が多く盛られているのが分かる。
「魔奈さん、そんなに肉料理を食べると太りますよ」
「うん、しっかり野菜も取らないと体に良くないよ?」
「う…五月蠅い!何を取ろうが俺様の勝手だろう!」

そうやって魔奈達との絆の輪ができあがっていく。
僅かながらでも友情が深められたと言う事を実感した海理はハルと一緒に料理を選びに行くのであった。


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