41話：大会中止！？動くネクロ　作：ヒラーズ

「大会中止だと…！？」
「ど…どう言う事ッスか！？」
魔奈と風花が焦り、辺りを見る。
この焦りには無理もない―――だが海理と陸也はある気配に気づいていた。
どことなくあふれ出す負の力。ネクロマンサー（死霊使い）ならではの気配である。

（この気配は……奴か！）
――――ご主人様…。
（分かっている、行くぞ！！）
――――海理…この気配は…！
（やはり嫌な気配はこれでしたか…！行きましょう！！）

海理と陸也は慌ててデュエルフィールドに上がり、原因を確かめる。
それぞれ同じ目的だったのか同じ場所を見て、辺りの状況を確認した。

「隠れているつもりか？出てこい、ネクロ！」
「あなたが大会荒しの犯人なのは分かっています！投降しなさい！！」

その時だった。
相手側の入場口から人影が見えた。
黒髪ショートの翡翠眼で右目には魔方陣のようなものが描かれている。
――――間違いない…ネクロであるが…











陸也と同じ、15歳の少年に若返っている。

「…どうしたんだい？鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔は？」
「あ…いや…お前こそどうした。見た目以上に若返ってるんだが…」
「？友達ですか？」
海理の頭上に？が浮かぶが、陸也はむしろ驚いた表情になる。
「ああ…これかい？君も影響を受けたのか…これは困ったねぇ…」

ネクロはため息を吐き、やれやれとした態度を取った後、海理を見て冷たい笑みを浮かべた。
「……フッ…壊しがいがありそうな娘だが…足りんなぁ…」
「はぁ…？」
「やめろネクロ。姉さんを怒らせない方が良いぞ」
「ははっ！冗談に決まってるじゃないか！君の姉さんなんて怒ったら怖いに決まってるじゃあないのかね？まぁその分…」
ネクロは海理を見つめ、若干にニヤける。

「怒ったら可愛くなくなるからねぇ…」
「……それで？何しに来たんですか？あなたのせいで大会が中止になったのですが…？」
海理は怒りを抑えつつ、質問をする。
だがそれを押すかのようにネクロが答えた。

「嫌ねぇ…私の雇い主がねぇ…「お前はもう用済みだ」って言われてねぇ…任務として海理ちゃんの始末を任されたんだよ。恨まないでくれ。まぁ私を退けられたら良い方向に進んでくれて結構なんだがねぇ」

要するに『裏切られた』と言われ、憂さ晴らしにこの世界をめちゃくちゃにしてやるという魂胆になり、今の状況を作ったと言ったネクロに対して海理は敬語ながらまるでため口のように言った。

「くだらないです…！そんなもののためにこんな事をするなんて！酷すぎます！」
「へぇ…これがくだらなく思うんだ？じゃあ君は眼科へ行きなさい」
「おい…」
「んん？」
ﾄﾞｶﾞｧ！

陸也がネクロを思いっきり殴り、壁まで吹っ飛ばす。
勢いよく飛んでいったのか、壁がひび割れ、崩れる。
人外のパンチ力を後ろで見ていた魔奈達は陸也と海理を見てゾッとした。
「なんて奴だ…狂ってるぞあの威力は…」

「いやぁ…なかなかのパンチ力だねぇ…けど、不老不死の私らには意味はないんじゃないのかい？」
「お前の煽りよりはマシな方だ。それにその任務はガセだ」
「……ガセ！？」
陸也の発言に違和感を抱いた海理は陸也にも質問した。
「ガセとはどう言う事ですか？」

陸也は「要するに騙されたんだ」と言って冷たい眼でネクロを見つめ、嘲笑う。しかしネクロはつられて笑い。不気味さを増させる。

「はっはっはっはっ…そういうわけだ！本当の黒幕は誰だろうねぇ？まぁ邪魔しに来たのは変わらないさ」
「…下がっててくれ、姉さん。コイツは俺が倒す」

陸也がディスクを構えたとたんだった。
「陸也…あなたが下がりなさい。これは、私に対する挑戦状。狙いは私です」
「へぇ…？何も言ってないのに分かるんだ？陸也君よりエスパーだねぇ…海理ちゃんは」
ネクロはディスクを構え、デッキをセットし、シャッフルする。
海理も同じ事をしてコンピュータを起動させる。

先攻：海理
後攻：ネクロ


「ほう…私が後攻とは珍しい」
「覚悟…して下さいね？ネクロさん」
その言葉にネクロは笑い、指をさした。
「いや何…君は陸也君以上に面白い女性だ！正直壊すのが勿体ない位だよ…クククッ…！覚悟？覚悟なら出来ているさ！いつでも討たれる準備もしていてなかなか来なくて心配していた頃合いだよ」





「「デュエル！！」」

海理　LP8000
手札5

ネクロ　LP8000
手札5










同時刻、クロノヴェイルの地下深くの最下層では…

「あのネクロマンサーから奪った神は？」
「只今、この地下に眠る支配神の力となって吸収されつつあります」
「ご苦労、標本となった天使どもは？」
「明日、最終調整に入って、堕天使にする実験が開始されます。最低でも後15時間が必要かと…」
「いや、焦らなくても良い。どうせ天界の連中は、これが身内ないで起きた抗争に気づいておらん」
「そうですね、【古代の熾天使（エルダーセラフィム）】のあなたなら、気づかれないでしょう」


極秘裏に陰謀が進んでいた…。