5話：電車事故に終止符を　作：ヒラーズ

夜中、彼女は夢をみる。
それは悪夢と思える夢、弟が何者かに殺害され、墓の前で泣き叫ぶ自分。
親からも見捨てられた自分と弟が追い詰められる恐ろしい夢。
以上の夢を見て海理は目を覚ます。




「――――！！」
ガバリと起き上がり、辺りを見渡す。
辺りは明るく、窓の外を見ると清々しい朝を迎え、途中で目覚まし時計のアラームが鳴り響く。
「…」ｶﾁｯ

――――どうした？随分とうなされていたが？――――

メサイア・ドラゴンも心配で話しかけるが、海理は「大丈夫です」と一点張りし、そのままシャワーを浴び、朝の支度を整える。
その途中、スマートフォンのニュースを見る。

ニュース
『事故を阻止？謎の少女出現！
昨日午前10時半頃、暴走していた電車の運転席に謎の少女が現れ、暴走する電車を止めた。
乗車していた乗客は彼女はデュエルアカデミア・クロック・ジャパンの制服を着ていたと言っており、止めた後いなくなったと供述している。
けが人は5人程度で済み、他の乗客は「救世主が来てくれた」と供述していた。

原因はストレスか　NEW！
昨日午後4時頃、テツジマ鉄道会社の社長、鉄島 叩樹氏の謝罪会見が行われた。テツジマ社長はこの事に対し「全ては長時間によるストレスが原因で起きてはならない事が起きてしまったことを深くお詫び申し上げます」と供述しており、暴走を止めた少女の件を話すと「その少女には大変ながら感謝している」と言った。尚この事件を踏まえて、全鉄道会社では労働時間の見直しを提案した』


「…」
（モロバレしてません！？この都市の情報網どうなっているんですか！？）
――――しかも証拠画像までも撮られておるな――――

（何でこうなったんでしょう…）








しばらくして放課後、海理はわざと遅れて夜まで、駅に居座る。
頭の中にあの言葉が残ったのか不安になったのだった。
―――――あやつを倒したとしても完全に解決した事にはならん。一時的な凌ぎになるだけだ―――――

その言葉が頭の中に過ぎり、千里眼を使い、犯人を捜していた。
あの事件は終わっていない。その事が海理の不安を駆り立てたのであった。
時は過ぎて午後8時半、走る電車が少なくなった時間帯、動きがあった。

（…ん？あそこに居る人、何をやっているんでしょうか？）

何かに気づいたのか視界をズームアップし、誰も居ない線路の上で怪しい男を見つける。見た目はサングラスで目を隠し、マスクをつけた中年の男性。そして怪しい会話を聞く。
『ああ、そうだ。昨日解き放った精霊が何者かにやられているんだ。折角事故を起こしてやってるんだ。誰も私だとは気づいておらんよ』
（これは…）
――――奴が犯人か…どうする？捕らえるのか？――――
（当たり前です…！）

千里眼を解除し、能力を行使して怪しい男の目の前に転移する。
「ぬお！？何だ小娘！」
怪しい男はいきなり目の前に現れた海理に驚き、後ずさる。
「あなたですか？事故を起こさせた元凶は？」
その言葉に図星だったのか、背を向け逃げ始める。
「あっ！待ちなさい！！」
後を追いかけ、駅によじ登る途中で捕まえ、ホームで話をする。
「何故分かった？」
「会話…聞こえてましたが？」
「！？」
怪しい男はディスクを腕につけ、サングラスとマスクを外す。
その姿に海理は見覚えがあった。
「…！テツジマ鉄道会社の社長…鉄島 叩樹さん…まさか…あなたが犯人！？」
いきなりの事実に驚き、焦る。
だが目の前にいる人物は間違えなくニュースで謝罪会見にいた鉄島社長である事は変わりない。
「どうして事故を起こさせたんですか！！」
「ふん、その口ぶりからするとお前が「救世主」か？若い者だな」
海理はその言葉に微動だする事なく会話を続ける。
「何故、そんな事を…？」
「簡単だ。我が社の地位を守るためでもあり、会社競争で多くの別会社を蹴落とすためだ」
（蹴落とす！？）

「けが人が出てるんですよ！？地位もへったくれもないじゃないですか！」
「だからだよ」
「っ！？」
「別に誰も私がやったと気づいておらんし、大体はストレスや病気で片付く。この【精神操作】の能力がそうさせてくれる」
精神操作、他人の精神を乗っ取り、本人の意思とは別の行動を取らせるいわば洗脳である。
その事実を知った海理は怒りを覚えた。
「人々の暮らしを社会地位の防衛に使って、よりにもよってけが人まで出しておいて反省する気がない……あなた、最低です」
鉄島は「はははっ」と笑い、ディスクを構える。
「私が勝ったら、警察に出頭して貰います！！」
「では私が勝ったら、お前の精神を乗っ取って、私しか見えぬ売女にしてやろう。ここまで事実を知ったんだ。ついでに何故この能力を持ったのか教えてやろう」
「…？」
鉄島は一枚のカードをかざし、1体のモンスターを出す。
そのモンスターはメイド服を着た半機械化した女性の姿をしていた。
そのモンスターに対し、メサイア・ドラゴンが干渉し、話す。
――――こやつ…精霊使いだったか。それならば可能なはずだ――――
（精霊使い！？）

「ほう？コイツが見えているようだな？コイツの名は「洗脳機マザーブレイン」だ」
【お呼びですか？ご主人】
「うむ、私の仕事がバレた。デュエルで私が勝利した後、この小娘を洗脳せよ」
【了解致しました】
――――気をつけよ、こやつは只者ではないぞ！！――――
（それくらい承知の上です…！！）




「「デュエル！！」」


鉄島　LP8000
手札5

海理　LP8000
手札5