16話：水樹と魔奈の正義　作：ヒラーズ

（はぁ…何でこうなったんでしょう…）
「大変な事になったね」
「ホントッス、ってかハルも居たんッスか！」

デュエルフィールドに上がる前に、海理は水樹と魔奈に駈け寄り、話しかける。
「いいですか？これはあなたたちの戦いです、自分の起こした根源とは完全に断ち切る勢いで戦って下さい」
「何を言うと思えばそれかよ、んな事くらいわかってるぜ？」
「アホが！海理はお前の心配をしているんだぞ！！」
「へいへい」と言って一足先にフィールドに上がり、ディスクを構え、相方の出方を待った。
「あいつ…反省する気はあるのか？」
ジト目になりつつ魔奈はフィールドに上がり、準備を整える。
それと同時に男子2名が上がり、ディスクを構え、臨戦態勢へと入った。
しかしそれを破るかのように水樹は問いかけた。
「やる前にてめぇらの名、聞いてやるよ」
「むかつくなこの不良め！俺の名は赤木だ！」
「けっ…！木偶だよ！」
各自、自己紹介が終わったとたん天光が声を上げ、ルールを言った。

・基本ルールはリミットブレイクルールを適用する。
・バトルロワイヤルだが実質上2対2のタッグデュエルとして行う。
・互いにサレンダーできない。

「サレンダーができない…」
「キツくは…ないですね」
「はぁ…羨ましいッス、私もデュエルしたいッス！」

「アタシの足を引っ張るなよ？魔・王・様？」
「それは俺様の台詞だ、勝手に取るな女・暴・走・族！」
見た目がアンタッチャブルなコンビとなってしまったが、闘志を鎮めることもなく、デッキをセットし直しシャッフルした。

「それでは始めてくれ！」

「「デュエル！！」」

魔奈　LP8000
手札5
水樹　LP8000
手札5

木偶　LP8000
手札5
赤木　LP8000
手札5


「先攻は俺様だ！ドロー！」
魔奈
手札5→6

先攻を取ったのは魔奈。初手の手札を確認し、行動を始めた。
「俺様は手札からクリバンデットを通常召喚し、カードを2枚伏せてターンエンド！エンドフェイズ時にこのカードをリリースしてデッキトップからカードを5枚めくり、その中から魔法・罠1枚を手札に加え、残りのめくったカードを全て墓地に送る」
『闇黒の魔王ディアボロス』
『邪帝ガイウス』
『闇黒世界－シャドウ・ディストピア－』
『クロス・ソウル』
『悪魔嬢リリス』

めくられたカードはモンスター3体と魔法カード2枚、だが手札に加えるものは既に決まっていた。
「俺様はディストピアを加える！そして効果チェーンで2体目のディアボロスを手札から特殊召喚する！」
闇黒の魔王ディアボロス　ATK3000　☆8

「アタシのターン！」
水樹
手札5→6

「そういえば水樹さんのデッキは見たことないですね」
「どんな戦い方するんだろう…」

「アタシは魔法カード『キッドの財宝』を発動！」

キッドの財宝／Original Card
通常魔法
①：デッキからカードを3枚選択して発動できる。そのカードを裏側のまま墓地に送り、自分から数えて2ターン後にこの効果で墓地に送られたカードを手札に加える。

見たことないカテゴリ、序盤の墓地肥やしにしては裏側のまま墓地に仕込むのは墓地仕込みデッキには大変ながら使い辛い。

「デッキからこのカード3枚を送り、さらに手札から山賊の踊り子カルメンを通常召喚！」

山賊の踊り子カルメン／Original Card
☆3/炎属性/魔法使い族／チューナー／効果　ATK1400／DEF800
①：このカードは相手に直接攻撃できる。
②：このカードがＳ素材として墓地に送られた時、墓地のこのカードを特殊召喚する。
③：１ターンに１度、LPを500払って発動できる。相手フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する。この効果は相手ターンでも発動できる（この効果で裏側表示のモンスターを対象にした場合、リバース効果は発動しない）。

水樹の前に現れたのは赤い仮面をつけた謎の女性のモンスター。
両腕には火炎を纏っており、左手には鞭のような武器を持っていた。
「…！見たことないモンスター…！」
「カルメン…フランスの小説で載っていた伝説の踊り子…」
見たことないモンスターに驚きを隠せない海理とハルはそのモンスターの性能、次に出されるモンスターが何なのかを分析する。
「まだ行くぜぇ？自分フィールドにレベル5以下のチューナーが存在する時、手札から超紳士ゾロを特殊召喚するぜ！」

超紳士ゾロ／Original Card
☆6/風属性/戦士族／効果　ATK2600／DEF1000
①：自分フィールド上にレベル４以下のモンスターが存在する時、手札、墓地からこのカードを特殊召喚できる。
②：このカードが存在する限り、相手はこのカードしか攻撃できず、お互い１回しか攻撃宣言できない。
③：このカードが相手モンスターを破壊した時、自分の墓地に存在するカードを1枚手札に加える。

超紳士ゾロ…と海理はぶつぶつとつぶやき、分析する。
ハルは気にかけるが、大丈夫と言ってデュエルを見守った。
「飛ばすぜぇ？レベル3のカルメンにレベル6のゾロをチューニング！“人の弱みを握った強者を挫かせ、涙する弱者を守る紳士であり海賊よ！今反逆の旗を掲げ、弱き者達に救いの砲撃を放て！”…シンクロ召喚！出でよ大海賊K・キッド！！」
2体のモンスターが緑色の輪の中に入り、同調する。そして光の柱が放たれ、船に乗った半ば骸骨の船長服を着た海賊が姿を現した。

大海賊K・キッド／Original Card
☆9/水属性/アンデット族／シンクロ／効果　ATK3500/DEF0
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上。
①：S召喚されたこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手の墓地または除外されている魔法・罠をそれぞれ1枚ずつ手札に加える。
②：このカードの攻撃宣言時、相手のフィールド上のカードの効果をバトルフェイズ終了時まで無効にする。またこのカードは相手フィールド上に存在する全てのモンスターに攻撃できる。

意外に強いステータスを持ったモンスターを見てハルは驚くものの、モンスターのかっこよさに声を上げた。
「か…カッコイイ！」
その声に反応したのか、水樹はニコリと笑顔を海理達に見せる。
「ありがとよ！アタシはカッコイイと言われるのが好きでなぁ！このデュエル、ぜってぇ勝つぜ！残念ながら墓地に送られたモンスターは全て戻ってくるぜ！カードを1枚伏せてターンエンド！」

「かっこつけやがって…俺のターン！」
木偶
手札5→6

手札を見た木偶は舌打ちし、逃げの一手を取った。
「モンスターをセットして、カードを3枚伏せてターンエンドだ！」
「オレのターン！」
赤木
手札5→6

「こうなりゃあ…魔法カード『ブラックホール』を発動！」
「なっ…！？」
「てめぇ！自分の仲間のモンスターを道連れにするたぁ聞き捨てならねぇ！」
破壊されるのを考えていなかったのか、魔奈と水樹の顔の表情が険しくなる。

「破壊されることを考えてなかったな？ざまぁねぇな！魔法カード『手札抹殺』を発動！互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分デッキからカードを引くぜ！」
「こしゃくな…！」

「ひゃはは！『ソウル・チャージ』を発動！攻撃権は先攻だからもとよりない！墓地から2体のモンスターを特殊召喚する！よって2000LP失う！」
赤木　LP8000→6000
堕天使スペルピア　ATK2900　☆8
堕天使ゼラート　ATK2800　☆8

「っ！上級モンスターが2体も並んだ！？」
「序盤から何も出来ねぇだろ？2枚伏せてターンエンドだ！」
「エンドフェイズ時に『キッドの財宝』の効果で墓地に送られたカードを全て手札に加えるぜ…！」
水樹
手札2→5

お互い序盤ターンが終わり、このターンから攻撃できるようになった。
だが二人の場にはモンスターはいない。突破するためには先ず魔奈はリリースできる効果を持つモンスターがいなければディアボロスが出せない。それにかわり水樹は問題なくシンクロに繋げられるが、木偶が何を伏せているか分からないため、迂闊にモンスターを召喚できないと言う状況に陥った。

（落ち着け…序盤のターンに軽い布陣を崩されただけだ…まだ間に合う！このドローでリリスを引ければまだ逆転できるはず…！）
魔奈は考えた、きっと海理もこういう状況こそ策を練るのだと…。