断章：動き　作：ヒラーズ

白き救世者が気ままに3週間、クロノヴェイルで過ごしている間。
ある罪人世界の1つの国が動き出していた…。









レクス公国領内「レクス城」、城内の司令室にて―

「ぼくの初任務…？」
彼の名は「ハルバード・リンクス」、5年前に百騎兵（陸也）と共に悪神「異界の夢」を倒し、英雄となった。その後即座に英雄の肩書きを捨て追放者としてレクス公国の住人となり、陸也と共に任務や未開の地の探索など様々な行動をしている。

「そうだ、ある別次元の地球で悪神が動いたという情報が出たんだ。いきなり辛いことだと思うけど…君はその世界に赴き、その世界の監視及び噂の少女の手伝いだ」
偉そうに言うが、割と優しく接する車椅子に座った少年は「レクス・マキナ・プロトコル」、陸也の上司であり、レクス公国の主、追放世界の神格でもある。

「陸也君の助けなしの任務だ。君の力が試される」
「でも…陸也さんは別世界での任務に行ってるんだよね…？大丈夫なの？」
レクスは「問題はないよ」と言い、真剣な顔をして1枚の書類を渡す。
「これは？」
「その世界の転生者及び危険人物リストだ。行く前に確認してくれ」
ハルはリストを確認し、その中に聞いたことがある名が書かれている事に気づく。その名は…

『白皇 海理』

「…！？」
「そう、陸也君のお姉さんだ。まさか転生していたとはね…」
「陸也さんには言ってあるの…？」
「いや、帰還後に伝えるつもりだから、ノープロブレムだよ」
そう言ってハルをある場所に案内し、その場で説明する。
「これは異世界とここを繋ぐ時空間ゲートを作る機械「ヘヴンポータル」だ。これを使って陸也君や他の追放者は任務先に行くんだよ、帰還する際もこれを使う。まあ普段はクロノス・ノアなどの時空船を利用するけど、今回はヘヴン・ポータルを使って向かってくれ」
「荷物は…？」
「既に君の拠点に置いてある。武器は…これだ」
レクスは机から警棒らしきものを取り出し、渡す。
「警棒？」
「普通の警棒じゃない、これは「超電磁警棒」、僕らの開発斑が作ってくれた非殺傷用の武器だ…と言っても電力が強すぎるから下手すると人が死 ぬ」
渡した警棒の説明を聞き、ハルは以下の事を頭に入れた。

任務
悪神の動きを確かめるため世界番号00869番の別次元地球へ向かい、その世界の脅威たる者の排除と白き救世者「白皇 海理」の監視及び行動を助力する。
その世界には他の国の追放者がいるため、彼女の敵になったものは極秘裏に処理し、証拠を抹殺する事（やり方は問わない）。リストに載っている危険人物は出会い次第、極秘裏で排除せよ。リストは自動で更新されるため、排除した人物の名に印鑑を押しておくことを忘れる事ないように。世界滞在期間は無期限。完了して4日後に帰還する事。

拠点について
クロノヴェイルという時計都市の古い時計屋「時械」とデュエルアカデミア・クロック・ジャパンという学舎が隠れ蓑となるだろう。
くれぐれもその施設のルールに従う事。

渡された警棒
名は「ハイプラズマ・スティック」。陸也の持つアーティファクト「科学神の超電磁鈍槌」と同じ性能を誇る特殊警棒。壊れにくく、最大電力、電圧は4000億ボルトの超電力を持ち、停電時を備え充電は自動で行われる。威力も調整でき、非殺傷なら100万ボルトで十分だろう。

注意事項
ならべくはバレないように行動すること。
白き救世者に敵として見られた場合、即和解させ、警戒を解かせよ。


「尚だけど、授業でデュエルをする場合はサボるかあまり敵意を向けないようにしてくれ」
「分かった」
「協力者は多くいた方が良いが、あまり変な事はしないでね」
レクスは装置をいじり、ポータルを起動させる。
たちまち次元の裂け目が現れ、裂け目が大きく開く。
「この先の世界に…陸也さんのお姉さんが…」
「無事に帰ってくる事を祈る」
「…うん！行ってくる！」
ハルは次元の裂け目に飛び込み、姿を消す。
それをレクスが見届け、裂け目を閉じらせ、消滅させる。
「…ハル君、幸運を祈るよ」
そう言ったとたん、後ろの扉が開く。
その扉から白髪で白いバンダナをつけた軍人らしき少年が現れ、レクスに話す。
「ただいま帰還しましたが…いいのですか？ハルだけ行かせて…？」
「良いんだよ、陸也君。彼は進んで異世界に旅だったんだ。無事に帰ることを祈ろう。何かあれば君を出撃させるから」
「…」
（どうしよう…すげぇ心配だ…地形の把握が上手いとはいえ、その世界の常識を理解しているのだろうか…？）



追放世界から使者が送られ、海理たちのいるアカデミアに波乱と受難が始まろうとしていた。







「ハルバード・リンクスです！世界樹の子供です！『ハル』と呼んで下さい。よろしくお願いします」