9話：友達の頼み　作：ヒラーズ

魔奈の姉が病院に搬送されて翌日、休日だったのか自宅にて海理はスマートフォンでネットニュースのサイトを開き、情報を探っていた。
「…相変わらず更新が速いですね。そしてまた私のことが載ってる…」

ニュース
飛び降り自 殺未遂、奇跡の無事　NEW
『昨日午後8時、クロッカーズ事務所にて飛び降り自 殺があった。
被害に遭ったのは黒皇 魔奈の姉「黒皇 魔姫（こくおう まき）」。彼女は人気アイドルグループ『クロッカーズ』のリーダーであり、黒皇商会の現会長である。
17歳という若さで会長の座を手に取り、今の生活を支えている希望の星。
命に別状はないと診断され、治療後意識が戻るが「プロデューサーには会いたくない」と供述しており、事務所内でトラブルがあったと見て警察が調査を進めている

救世主少女、飛び降り自 殺を未遂に　NEW
上記の事件の同時刻、事件発生時、電車事故を止めた救世主少女の姿を見たと言う情報が出た。彼女は転移の他に重力を操る術を持っていると近くに居合わせた男性が供述していた。彼女の謎は深まるばかりで、超心理学者や宗教関係の者達との間では注目の的となっている』

「…」
何かがある、そう決め海理は魔奈に連絡チャットを入れる。
チャット

海理：起きてます？

魔奈：ああ、バッチリだ。

海理：ニュース…見ました。
よかったですね。

魔奈：…

海理：どうしたんですか？

魔奈：いや、ずっとおかしいと思っていたのだ。
姉上が風邪なはずがない。

魔奈：俺様と姉上は同じアカデミアの生徒だ。
風邪ならいち早く俺様が気づくはずだ。
気づかずに風邪を引いたのは正直おかしい。

海理：まさか…ニュースで言っていたプロデューサーの事…ですか？

魔奈：俺様はそう睨んでいる。海理はどう思う？

海理：チャット内では言えませんが、これだけは言えます。
恐らくですが「体罰」的なものをされて、精神が追い詰められていた…
っとしか考えられません。

魔奈：そうか…済まんな、早朝から。

海理：いいえ、友達として考えられる答えを出しただけです。

魔奈：気を取り直そう。今日時間、空いているか？

「…」
特に予定はない。
だが、魔奈の事で何かをやりかねないとおもったのか、
「ないですよ」と返信した。

魔奈：よし、ではクロノヴェイルの「東公園」で待つ。
遅れるなよ？

そう表示され、チャットを閉じる。
ネットで場所を検索し、海理はその場所に転移する。















数分後、魔奈が到着し、合流する。
「済まん、遅れたな」
「いいですよ。それまで肉まんを食べていたので」
そう言ってビニール袋からもう一つの中華まんを出し、魔奈に渡す。
「…中身は？」
「ピザです」
魔奈は「ピザまんか…」と言ってもぐもぐと食べ始め数分。
食べ終えた魔奈は会話をし始める。
「それで…チャットでも言えぬ事とは何だ？」
「そうですね、そろそろ良いでしょう」




「何！？姉上が脅されている！？」
「声が大きいです！」
海理はあの時、魔姫の体を見て考えていた。
擦り傷、沢山の絆創膏や湿布、明らかに子供にできる怪我ではない。
ましてや飛び降りにまで追い詰められている時点で明らかに異常である。
その事を配慮して考えた結果、ここまできたのだった。
「つまり…プロデューサーに直談判するしかない…と」
「あなたたちのプロデューサーがどんな人か分からない以上、それしか考えられません」
「やはり…あのクソプロデューサーのせいか…！くそっ！それ以外あり得んからな…」
魔奈は拳を強く握り、怒りに耐える。
「…俺様達を担当しているプロデューサーは元プロデュエリスト、「反旗 始芽（はんき はじめ）」だ。警察も親も教師すらも恐れる存在だ…」
「なるほど…権力を握るデュエリストですか…」
「クソッ！始芽め！よくも姉上を…！！」
怒り狂いかける魔奈だが、海理がなだめ、落ち着かせ、会話を続けた。
「権力を握るプロデューサー…訳ありですね」
「どうする…！？初手から八方塞がりだぞ…！？」
焦る魔奈に海理は考え込む、その中で一つだけ、ある方法を思いついた。
「…じゃあ、魔奈さん」
「何だ？」
「もし、ライブの練習時にそのプロデューサーを呼んで、私を誘って下さい」
その言葉に魔奈は「は…？」と言う。
「良い作戦を思いついたんです」
「そ…その作戦は？」
海理はにっこりと笑い、作戦を伝える。








「そっ…そんなの作戦なのか！？」
「ええ、少々荒いですけど何とかなります。後は空いている時間に誘えば作戦開始します」
こんな状況になっても笑顔を見せる海理の思惑に魔奈はドン引きした。
「もし…失敗したら…どうなる！？」
「フフ…大丈夫です、失敗しませんので安心して下さい」
悪顔ではない、だがこれ以上姉と同じ被害者を出させまいと思った魔奈はあえて作戦に乗ったのであった。