60話：陰謀と不穏、動く神　作：ヒラーズ

陸也達が謎のガスマスクの集団と戦っている間、クロノヴェイルの地下深くにある小部屋で異変が起きた。

ﾋﾞｰｯ！ﾋﾞｰｯ！

サイレンもうるさく鳴り始め、ガタガタと研究員達が慌てて主任を呼ぶ。

「何があった？」

「分かりません！ですが封印されていた支配神の様子がおかしいんです！」
「どのように？」
「それが…！」

その時だった。

ﾄﾞｵﾝ！と轟音が響き、一部の研究施設が吹き飛ぶ。
監視カメラの映像をみたとたん。

「馬鹿な。ここに黒い巨大な核があったのに……」

映っていたのは先程言っていた黒い巨大な核ではなく、一際美しい少女が立っていた。腰まで伸びている黒髪ロング、海のように蒼い瞳、スレンダーな身体をした彼女はまるで別の色をした海理そのものに似ていた。

「ど……どうします？彼女はこの個室から出てこられません」
「霧島様を呼べ！」
『もう来ている』
「「！！」」

主任が監視カメラを見ると、そこには仮面をつけた男がいた。恐らくこの男が「霧島」だろう。

「貴女が……この地球を支配した神、「支配神クラネリオン」様ですか？」
霧島の問いに少女は微笑みながら答えた。
「ええ、そうよ。でも今の私はそんな名ではないわ」
「となると……？」

少女は「そうね…」と言って辺りを見渡す。
「この姿に似た少女の闇的存在かしら？」

彼女の吐き捨てた言葉が個室に響き、壁を破壊する。
それと同時に全裸であった身体に闇が纏わり憑き、衣服や靴などが構成されていく。あまりにも不自然な現象に研究員達がドン引きする。

しかしその表情を見た彼女はフフフと微笑む。
足を動かそうとすると霧島に肩を掴まれ、止められる。

「どこへ行くのですか？」
「久しぶりに地上の様子を見に行くわ。画面で見るより実際に見た方が実感があるし、それに私とそっくりな人がいる可能性があるわ」

コツコツと個室を出て、廊下を歩く。クスクスと笑いながら階段を上がり、エレベーターのスイッチを押し、上へと上がっていった。

――――新たな災いが……海理達に近づいていたのだ――――




ーーーー




時を戻して公園。
戦闘を終えた陸也達は、目の前の状況を整理する。

「あのガスマスクの集団は何だ？」
「分からん、だが現段階で理解できたものがある」
「何だ？」

陸也は数秒間だけ黙り、言い辛そうにトウマ達に伝えた。
「……これは『複製人間』だ。お前さんらの言葉で言うなら『クローン』と言った方が妥当だろう」
「「複製人間！？」」

陸也は頷き、二人目のガスマスクの男のマスクを剥がす。
その下はスバルに似た人物の顔だった。

「今度は俺！？」
「どうなってんだ？」
「……恐らくだが、事前にお前さんらの遺伝子を奪って作成してたんだろう」

先程「良いデータが取れた」とガスマスクの男の台詞が気になり、陸也が即座に頭を回してたどり着いた結果がこれだろう。

「嫌な予感がするな……今日はもう解散しよう」
「そうだな」
「これって……俺は天界に帰らない方が良いか？」

陸也は「当たり前だ」と言ってツッコミを入れる。

「俺は学生寮に戻る。今日は俺の店に泊まっていけ」
「恩に着るぜ」

そう言ってトウマは飛翔し、空高く飛んでいった。

「クローンの始末は？」
「テレポートでブラックホールか太陽に捨てておく。スバルも気をつけろよ」

スバルは不安そうな顔をしながらも頷き、近くに留めてあるバイクに乗って公園から去った。

「さて、後片付けといきますかね……」

（これは、明日ぐらいにレクス様に知らせておかないとな……）




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翌日の放課後、海理達は陸也を引き連れて屋上で会話をしていた。

「本当に大丈夫？」
「問題ないよ。それに何で皆して怖い顔をしてるんだ？」

陸也は女子寮で起きた出来事を知らない。海理は陸也を抱きしめながら叱る。

「もう！皆心配してたんだよ！！勝手にいなくならないで！」
（あー……これはタイミングをミスったな）

陸也は「分かったよ」と言って謝る。
それから数分して、海理は陸也から情報を聞き出した。

「ツバメさんの兄の情報は？」
「ああ、見つけたよ。かなりやばい場所にいる」

海理は「どんな所？」と聞くと陸也は気に食わない顔をする。
「……クロノヴェイルの西側に位置する商店街だ」
「そこって……」
「かなり治安が悪い地区ッス……！」
「何でそんな所にいるんだよ！」

海理にとってはかなり行き辛い場所に目標が居たのだった。