59話：永く生きた者達の宴　作：ヒラーズ

トウマとスバルが雑談をしてる中、ある一つの人影がトウマ達を見つめる。
白いショートヘアに白と青の混じった軍服。間違いなく陸也だった。

「俺が……何だって？」

陸也がそう言ってズケズケとトウマ達の会話に入る。

「うおおお！？陸也！？」
「き……君が！？」

「ほぅ……お前がスバルか。若いな」
「若いって……君だって若いだろ！」

陸也は少し笑い、何もない所から一本の刀を取り出す。
そしていつでも鞘から抜けれるように腰にぶら下げる。

「それは『見た目』だ。こう見えて俺は何億年も生きている。見た目で判断するのは良くないぞ、若いの」

「……その刀は？」

トウマの単純な質問に陸也はすんなり答える。

「この刀か？一般の日本刀に見えて10㎝も短いだろ？」
「まぁ……」
「こいつは魔刀《星辰》。この名は通称だが本名は『星辰－星始ノ剣』だ」
「何だそりゃ！カッコイイな！！」

陸也は武器の説明をせず、無理矢理本題に戻す。

「それで？俺に何の用なんだ」
「君とデュエルがしたい……って駄目？」

駄目に決まってるだろ、と言いたい口になりかけるが。陸也は別の方に話を持ちかける。

「別に駄目とは言わん。だがタダでは駄目だ」
「君の姉とは協力するし、危害は加えないし、任務の邪魔をしない」
「違う、そうじゃない」
「じゃあ何だ？」

スバルが理由を聞こうとした時、陸也の表情が険しくなる。
トウマは「どうした？」と言って話しかけるが、陸也は無言で魔刀を握った。

「……いつまでそこに隠れている？もしかして気配を感じられていないと思っていたのか？」
「！？」

陸也は「出てこい！」と言って魔刀を鞘から抜き、気配がある方向に真空刃を飛ばす。飛ばした真空刃は公園の看板にぶち当たり、鋼で出来た設置物を切り裂いた。

「……」

そこにはガスマスクをつけ、武装した一人の人物だった。

「……何者だ？」
「それを言う気はない」

陸也の表情はさらに険しくなり、相手のエンブレムを見つめる。

（竜の牙に剣をクロスさせた紋章……この世界の組織の者か）

「どうして聞きたければ、俺達を倒してみな！」
「俺達？」

トウマが首を傾げると、辺りから無数の殺気が漂った。

「おいおい……何かたくさんいるぞ……！？」

陸也達の前にガスマスクをつけ、武装した謎の集団が現れる。
数は数十人を超え、陸也達を囲んだ。

「すげぇ……初っ端から世界を敵に回してるのか？」
「さぁな、だがこれだけは言える。どうやら俺達はこいつらにとって『害』らしいな」
「待てよ……こいつら全員を相手にするのか？」
「……永く生きていればこういう経験もする。構えろ」

（それに丁度良い。チンピラどもを相手にするのは飽きていた頃だ。姉さんには悪いが、表側の悪党を始末して有名になって貰おう。裏は俺達だな）

「畜生……手荒な真似はしたくねーけど……やるしかねぇ！」
「『楽な人生はない』、か。楽しむのも良いが、こういうこともあるって事か」

トウマは両手に光の玉を生成し、中から双剣らしき武器を取り出す。
スバルはポケットから少し大きめの拳銃を取り出し、構える。

「さて……永く生きた者達の『血』の宴と行こうか…！」

陸也達は戦闘態勢に入り、謎の集団に向かって突撃していった。








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一方、アカデミアの女子寮では。

「陸也が急用でいない？」
「ああ、自分の事を聞かれたらそう伝えるように、と陸也が言った」

食堂で海理達が話し合いをしていた。
何分か経っても陸也が戻ってこない事を不安になり、友達を集めていたのだった。

「何があったんです？」
「分からん。俺様も理由を聞いたが『お前には関係のない事だ』と言われた」
「アタシも聞こうとしてたんだけどさ、能力を使われて逃げられた」
「まさかで言うッスけど……映画みたいな状況になってるとかッスかねぇ…」
「どんな？」

海理の問いに風花は腕を組み、考える。
その時、巴が珍しく口を開いた。

「どこかのスパイアクション映画みたいな感じかしら？」
「……たぶん、そうじゃないッスか？聞いてはいけない情報を手に入れて大変な目に遭ってるとか……それしか考えられないッス」

その言葉に海理は机を思いっきり叩き、「それはあり得ません！撤回しなさい！！」と怒鳴り、その声で近くの窓ガラスにヒビが入り、辺りは静寂に包まれる。その事に気づき、海理は申し訳なさそうに声のトーンを下げ、冷静さを取り戻した。

「……すいません。続けて下さい」

（今の怒鳴り方、迫力があったぞ……）
（怖かったッス…）
（やべぇな……海理って怒ると結構怖いんだな……）
（正直、驚いたわ……）

能ある鷹は爪を隠す……その恐ろしき表情を見たのは魔奈達以外は存在しない。
ある意味ではトラウマを生み出す最悪の引き金となっていたのだった。
その後、海理は魔法でひび割れた窓ガラスを修復し、自室で眠りについた。






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そして公園の方ではーーーー

「ぜぇ……ぜぇ……これで何人目だよ……」
「どんだけいるんだ……」
「分からん。せいぜい40人も斬ったが、減る様子もないな」

陸也達の戦闘は長時間まで行われ、辺りは死屍累々の山が出来上がっていた。
トウマは疲れ果て、息が上がり、スバルは弾薬を確認し、陸也は単独で何十人もの相手を斬っている。トウマとスバルから見て、それは舞いのようだった。

「まだ引かないのか？」
「いや、十分だ。引け！」

別のガスマスクの男が合図すると、陸也達を囲んでいたガスマスクの集団が消える。

「ふ……面白いデータがとれた。さらばだ」

そう言ってガスマスクの男も立ち去り、辺りは完全に静寂に包まれた。

「……嵐は去ったな」
「ふぅ……一時はどうなるかと思ったぜ」
「陸也……君は本当にこんな人達と相手してるのか？」
「……」

陸也は無言で倒した敵のガスマスクを剥がす。

しかしそのマスクの下を見た陸也達は驚きの表情を見せた。

「な……！？」
「これは……」
「お……俺！？」

そのマスクの下にはトウマと同じ顔をした人物だった。
陸也は冷静に考え、状況を整理する。

（どう言う事だ……？トウマがもう一人？まさかあの製法がこの世界にもあるのか……！？）

「奴らは……一体……」