7話：二つ目の覚醒と勝利　作：ヒラーズ

「…」
引いたカードを見た海理は、少しながら沈黙する。
「どうした？黙っているが良いカードでも引けたか？」
鉄島は煽るが、その言葉を聞いた海理の口はニヤける。
「フフ…」
「…？何がおかしい？」
「失礼、続けます。魔法カード『ブラックホール』です！あなたのモンスターは破壊されませんが、白眼は私の墓地に戻ります」
マザーブレイン以外のモンスターが墓地に落とされ、鉄島の場にモンスターが1体のみとなった。
「ふん…」
「さらに魔法カード『ソウル・チャージ』！墓地から2体の白眼を特殊召喚し、2000LP失います。レベル8の白眼の聖龍2体でオーバーレイネットワークを構築！エクシーズ召喚！！」
海理　LP5000→3000

その時、海理の頭の中に声が響く。

――――ようやく我の出番か――――
「！？」
海理はいきなり頭を両手で押さえ始め、苦しむ。
「む？どうした？」
【ご主人、お気をつけを…この者、賊霊使いです】
「ぐ……あ…がぁっ…！」
――――確かにこの者の犯した罪は重いだろう。だがどうやってその罪を伝える？――――
「…！」
――――もう一人のお前が我との契約をすると望んでいる――――
「い…痛い…！」
あふれ出す汗、その中には血も混じり、相当苦しんでるとお互いは理解した。
――――よかろう、ならば契約だ――――
「…！？」

――――願いを重ね召喚せよ！時にお前の奇跡は罪人を裁く光の刃へと化し敵に断罪を与えん――――

――――我は汝、汝は我。我は…精霊界から追放されし賊精霊なり！――――

「…行きます“勇敢なる救世は新たな力へと変え、革命、救済、人々の願いを込めて出来上がる。白き瞳を持つ救世の龍よ、絶望を希望に変え飛翔しなさい！！”


――――出でよ！ランク8、白眼の処刑竜！！――――

白眼の処刑竜（ホワイトアイズ・エクスキューショナー・ドラゴン）／Original Card
ランク8/光属性/ドラゴン族／エクシーズ／効果　ATK3800／DEF3000
レベル8モンスター×2体
このカードのX召喚は無効化できない。
①：このカードは戦闘では破壊されず、カード効果を受けない。
②：1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールドに表側表示に存在する効果モンスターの効果を無効にし、そのモンスターを全て破壊する。この効果は他のカード効果を無視して適用される。
③：このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分このカードの攻撃力をアップさせ、破壊したモンスターのレベル、ランク、LINKの数分だけ続けて攻撃できる。

海理の前に現れたのは左腕が斧に変化した巨大な竜。
氷で出来た斧は鈍く光り、刃先がマザーブレインに向く。

――――汝の罪、今ここで我が刈り取る！――――

「何だこのモンスターは…！？」
「バトル！処刑竜でマザーブレインを攻撃！救世の断罪斬（ホープオブジャッジメントザッパー）！！」
処刑竜の振り下ろした斧が半機械化の精霊を真っ二つに両断する。
その光景はまさに「処刑」そのものを見せていた。
【申し訳ありません…ご主人】
鉄島　LP1500→1200

「おのれ！よくもマザーブレインを！」
「まだバトルは終わってません！処刑竜の効果により、破壊したモンスターの攻撃力分このカードの攻撃力を加算し、破壊したモンスターのレベル、ランク、LINKの数分だけ続けて攻撃できます！3500上がり、現攻撃力は7300となり10回攻撃できます！！今まで人々の命を玩具のように弄んだ罪をその身で償いなさい！」
突撃してくる処刑竜、その恐ろしさを思い知らせてくるかのように
処刑竜の断罪斧が連続で振り下ろされ、滅多切りにする。
「ぐあああ！！」
鉄島　LP1200→0（－71800）


You WIN！
海理

You Lose…
鉄島









「馬鹿な…この私が…」
「さぁ、約束通り警察に出頭してくれますね？」
――――まぁ待て、海理よ。我に提案がある――――
（どうしたんですか？）

――――先ずはこうだ――――
魔王救世龍が現れ、やられた精霊のカードを2枚の白紙のカードに変える。
【ここまで…ですか…】
「そんな…私の精霊のカードが白紙のカードに…！」
――――これ以上悪さをされると海理の生活に負担がかかる、これでもう悪さはできまい――――
（そんな力が…！）

「私の計画が…私の夢が…こんな小娘に…！」
――――では最後にだ…おい――――
――――任せよ――――

処刑竜が現れ、鉄島の体に霊体の腕を入れる。
そして体から黒い球体を取り出し、握り潰す。
（…今の黒い球体は？）
――――あれは歪んだ欲望の「核（コア）」だ。砕けば欲望自体が消え、廃人化しかけるものの、心は変わるだろう――――
――――しかもこやつは我らの事と自身が持つ精霊の事も覚えていない。汝らが戦う前に暴走させていた電車も落ち着きも取り戻し、この事件はもう起こらないだろう――――
（じゃあ…！）

――――完全解決だ。後は改心するのを待て――――

そう言って白眼達はカードに戻る。
辺りは静寂が還るが数分もしないうちに最後の電車が駅に到着し、乗客が慌てて電車を降りる。
その様子を別側のホームで見ていた海理は能力を使い、自宅へ転移する。

（これでようやく楽になる…疲れました）





















それから3日後、海理は自宅でスマートフォンのネットニュースを開く。
「…！」

ニュース
『驚きの事実！犯人は社長か　NEW
昨日午後3時、テツジマ鉄道会社の本社で会見が行われ、鉄島 叩樹社長が出席した。いきなり謝罪の会見が行われ、泣いてわめくも「電車事故の犯人は自分」と自白し、多くのスクープとなった。尚、2日前には常に自首しており、警察は余罪があると考え、調べを進めている。この事を引き金に鉄道業界には大きな波紋を呼んだ』

そのニュースを見た海理はニコリと笑い、スマートフォンを閉じ、登校する。
「これでちょっとは人々の生活も良くなるでしょう」
天気は晴れ、電車に乗る海理は満員電車に揺られながら、アカデミアを目指して歩く。