第三十話・3　作：KOUBOU（旧名：光芒）

「超融合！？ そんなぁ！！」
「ノレちゃんがいっぱい特殊召喚してくれたおかげで引くことができたよ。ありがとね～、ってことで手札１枚をコストに発動。この効果の発動に相手はカードの効果をチェーンすることはできない。昆虫族となった那々のフィールドのプロパ・ガンダケ、ゼブフェーラ、悪魔の聲、そしてガダーラの４体を融合！」



―――“あまねく騎甲虫を統べる絶対なる王よ。英雄の名をその身に宿し、大地を震わせ出撃せよ！”―――

「おいで！ 那々のフェイバリットモンスター！《超騎甲虫アブソリュート・ヘラクレス》！！」

《超騎甲虫アブソリュート・ヘラクレス》
融合・効果モンスター
星１１/地属性/昆虫族/攻4000/守4000
昆虫族モンスター×４
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが融合召喚に成功した場合、このカードは次の自分ターンの終了時まで他のカードの効果を受けない。
(2)：自分・相手のバトルフェイズ終了時に、自分の墓地の攻撃力３０００以下の昆虫族モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

「融合召喚に成功したアブソリュート・ヘラクレスは次の那々のターンの終了時まで他のカードの効果を受けない」
「昆虫族４体を融合素材に要求、それで攻撃力４０００でその効果……あれ、ぶっちゃけそのモンスター……よ」
「ノレちゃん、デュエリストには触れちゃいけないものがあるんだよ？ そしてノレちゃんはそれに触れちゃったね。那々はスカウト・バギー２体をリンクマーカーにセット。騎甲虫アームド・ホーンをリンク召喚！ そしてアームド・ホーンの効果で手札の昆虫族１体の召喚を行う。《Ｂ・Ｆ－毒針のニードル》を召喚！」

《Ｂ・Ｆ－毒針のニードル》
チューナー・効果モンスター
星２/風属性/昆虫族/攻 400/守 800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「Ｂ・Ｆ－毒針のニードル」以外の「Ｂ・Ｆ」モンスター１体を手札に加える。
(2)：このカード以外の自分フィールドの昆虫族モンスター１体をリリースし、相手フィールドの効果モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

「召喚に成功した毒針のニードルの効果を発動！ デッキからニードル以外のＢ・Ｆモンスター１体を手札に加える。Ｂ・Ｆ－必中のピンを手札に加える。そしてピンの効果を発動。自分のフィールドに昆虫族モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚。そしてアームド・ホーン、ニードル、ピンの３体をリンクマーカーにセット！ リンク召喚！大騎甲虫インヴィシブル・アトラス！！」
「……っ！ ノレは、ノレは天才なんです！ こんなにあっさり負けちゃ……！！」
「どんな天才だって負ける時はあるんだよ。こういうデュエルの世界だとね。そう考えてると、よくできてるよねデュエルモンスターズって。バトル！ 行けーっ！ 那々のでっかいカブトムシたち！ 」

大騎甲虫インヴィシブル・アトラス　ＡＴＫ３０００

ノレ　ＬＰ７０００→ＬＰ４０００

超騎甲虫アブソリュート・ヘラクレス　ＡＴＫ４０００

ノレ　ＬＰ４０００→ＬＰ０





＊




「那々さん！お見事な勝利です！！」
「那々ち～！ 良かったよーっ！！」

　初戦を勝利で飾った那々を出迎えた遊舞とセリーナが手荒い祝福で出迎える。もみくちゃにされながらも那々はプレッシャーのかかる重大な役割をやり遂げたことから安堵の笑みを浮かべていた。

「なんにせよ、一つ取れたのは大きいな」
「そうだね。でも、この負けを取り返さんとお相手さんは全力でぶつかってくる」
「はい。だからこそ、浮かれてばかりもいられません」

　そう言って結衣は敗北したユニオン側の様子を見た。後攻ワンキルを決められる形となったノレは、負けた直後こそ那々に向かってあっかんべーをするような振る舞いをしていたものの、やはり堪えたのだろう。

「ノレちゃん！？ な、なんばしよっとね！？」

　同校の仲間である菊人の胸に飛び込み、強く顔を押さえつけていた。

「こ、これはっ……！ いわゆるラブコメというものですわね！」
「わわわ、少女漫画みたい……」
「ノレちゃん！？ 僕にそれやってよ！」
「ッ……アホくせえ」

　拳を除く三人はノレと菊人の二人の関係にデュエルとは別の意味で興奮している様子を見せる。良く言えば天真爛漫、悪く言えば幼稚なノレであるが、そんな彼女の面倒を甲斐甲斐しく見てきたのが菊人であった。故に他者を見下しがちなノレも菊人の言うことだけは素直に聞き入れていた。

「菊人さん、ノレは自分が情けないです」
「……そうかな？」
「はい。負けるなんて、ただただ悔しいんです」
「そうやね。ばってん、結果は結果やけん。素直に受け止めよう？」
「……はい」
「辛か？辛かったら、しばらくこんままでよかよ。えっと、次は茉莉花さん番ばいね。ノレちゃんはこっちで面倒ば見とくけん。頑張ってね」

　ノレは決してその顔を仲間たちに見せることはしなかった。しかし、今の彼女がどんな顔を、どんな思いをしているかを５人は理解した。彼女の後悔を、彼女の想いを受け止め、ユニオンの次鋒である茉莉花はその長い髪をかき分けて意気揚々とデュエルフィールドに登壇する。

「ノレさんの想い、確かに受け取りましたわ！」
「あなたが私の相手ですね！ いいデュエルにしましょう！！」

　一方でセントラルの次鋒はセリーナ。ルームメイトの那々の勝利に沸き立った彼女もまた、那々の勝ちを無駄にしないために立ち上がった。