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第四話・1 作:KOUBOU(旧名:光芒)






「ふーっ……ここまで来れば安心かな」

 結衣とのデュエルが終わった後、一目散にデュエルフィールドから立ち去った遊舞。人気のない廊下の端。自動販売機の脇に隠れるようにしてしゃがみこむ。だいぶ走ったからかさすがの遊舞も肩で息を整えていた。

「ゆいゆいには悪いことしちゃったかな。でも、今色々と質問攻めされると辛いんだよね☆」
「どうして?」
「いや、だってアタシのデッキのカードにはデータに無いカードが……ってうわっ!」

 追っ手を撒いたと思って安堵していた遊舞の前にはニコニコと笑う遊大が立っていた。しかし、笑っているのは顔の下半分であり、赤と緑の美しいオッドアイに笑みはない。そんな遊大とは対照的に、どうして追いつかれてしまったのか、と目を白黒させる遊舞は逃げようとするが、袋小路に追い込まれてしまった。

「データに無いカード、ゲイルアイズ。君はあのカードをどこで手に入れたのか、教えてもらえないかな?」
「教えろ、って言われて素直に教えるほど、アタシ素直じゃないよーだ。べー☆」

 そう言ってあっかんべー、とばかりに舌を出す遊舞。先ほどのデュエルの時もそうだが、愛らしい外見と軽妙な口調の割に随分と性根の据わったところも見せてくる。遊大はいつの間にかこの一人の美少女のことをもっと知ってみたいと思ってしまっていた。

「そっか。まあ無理に聞き出すつもりはないよ。どちらにせよ俺が見逃しても他の人が動く。出身地、家族構成、経歴とか……受験の時に出したよね」
「うん、というかそういうの出さないと受けれないしね。どうぞ調べてください。アタシは清廉潔白、不純物の一切ない美少女ですので」

 そう言ってフフンと鼻を鳴らす遊舞。小憎たらしい様相ではあるものの、何故か不快感を抱かせなかった。どこまでも不思議な魅力を持つ遊舞に遊大はますます興味を持つ。

「そういうことを自分で言ってしまう人ほど胡散臭いんだよね」
「……むー、センパイの意地悪」
「意地悪でもいいよ。俺は君を、風花 遊舞という名のデュエリストのことを知ってみたいからね」

 そう言って煌めく双眸で遊舞を捉える遊大。セントラル校屈指の美少年である遊大に見つめられたとあってはさすがの遊舞を目を反らさざるを得ない。

「……真剣な顔でそういうこと言っちゃうの、ほんとズルい。ま、今のアタシに言えることは一つだけだよ☆」

 そう言って、怪しい笑みを浮かべた遊舞はぐっと顔を遊大に近づけてくる。年頃の少女らしい香水もしくはヘアスプレーの甘い香りが香ってくる。二人はあの時キスされた時と同じくらいの近さまで接近していた。





―――アタシは……この世界で一番高海 遊大のことが好き。誰よりも近くにいたい―――





 耳元で囁くようにそう告げる遊大。例え恋人がいたとしても、遊舞のような美少女にこう言われてしまえばそれを魅力的に感じない男性はいないだろう。ただ、遊大の中にはあくまで天都 遊希という一人の女性がいた。

「……そういうことは気軽に言うものじゃないと思うけど?」
「気軽じゃないし、本気だもん」
「そう。それだったら残念。俺には君よりも大事にしたい人がいるから」
「うん、知ってる。でもアタシはそんなあなただからずっと傍にいたいと思ってるし、大好きなんだ☆ ま、ちょっと謎の多い生徒が一人くらいいた方が面白いじゃん。それじゃ、アタシはここで退散させてもらいますね☆ おやすみなさい、センパイ?」

 そう言いながら遊大の脇をすり抜けて走り去っていく遊舞。まさにその名が示す通り、風の如く掴みどころのない少女だった。

(……はっきり言って怪しさしかない。でも、気になるのも事実だし、何より彼女のデュエルタクティクスは結衣さんを前にしても見劣りしていなかった)

 ちょうど一年前、入学したばかりの遊大は珍しいカードこそ使えどもデュエリストとしての実力は良くて中の上といったところだった。今の自分があるのは遊希をはじめ周囲の人間に恵まれたからにある。

(俺にはできるのかな。彼女のようなすごいデュエリストを育てることが……)









(はぁ……情けないです)

 デュエルが終わった後、気を失ってしまった結衣。意識を取り戻してからは保健室で養護教諭に体調面の不安がないことを伝えると、自室に戻って休むようにと言われた。
 体調面では問題ないものの、結衣は精神面では疲弊しきっていた。自分より上の成績を修めていたとはいえ、デュエリストとして何の実績のない遊舞に後攻ワンターンキルを決められるなどプロデュエリストにあるまじき失態ではないか。結衣はそんなネガティブな気持ちに捉われていた。

(いやいや、負けても引きずらないのが大事です。遊希さんやエヴァさんも下は向いていませんでしたから。同室の方にも迷惑をかけないようにしないと)

 しかし、かつての自分とはもう違う。結衣は困難に直面しても下を向かない強さを身につけた。故に彼女は今プロデュエリストとして生きている。プロとは常勝ではいられないし、負けが込むこともある。そんな時に腐らずやっていけるかどうかが大事なのだ。

「部屋はここですね、もう同室の人は来ているでしょうか」

 そう言ってノックと共に寮の自室のドアを開ける結衣。ドアを開けた彼女の眼に飛び込んできたのは―――





「やっほー☆ さっきぶりだね、ゆいゆい♪」





 結衣の中にあった緊張および気遣いの気持ちがパーン、と音を立てて吹き飛んだ。






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