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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第35話:シークレット・ミッション

第35話:シークレット・ミッション 作:

そこは、デュエリア政府官邸の一室。
薄い灰色のパネルで覆われた壁面に、無数の配線が天井裏から這い降りている。
背後の壁一面には、縦横に連結された巨大なモニターが6面配置され、
モニターの光が暗がりの室内に青白く反射している。
サーバーラックが部屋の奥に整然と並び、内部では冷却ファンが低く唸りを上げている。


その部屋で、黒い革張りの椅子に座りながら、画面をじっと見つめている若い男がいる。
政府官邸に似つかわしくないラフな身なりをしている。

「……」
青緑色の髪を真ん中で分けた男は、
モニターに映る1人の女性の画像を、指を咥えながらじっと見つめていた。

キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/tHDwJaP
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「…やっぱ変っスよねぇ」
男は空中を見つめ、ぽつりと呟く。
その声に後ろにいたもう1人の男が反応した。

「…どうしたんです?静海(ジョンヘ)さん」

もう1人の男は彼を静海(ジョンヘ)と呼んだ。
青緑色の髪をした男の名は「琉 静海(ユ・ジョンヘ)」。
デュエリア政府の情報システム管理事務官だ。

「蒼月さん、これ見てくださいよ」

若くして政府のシステムの中枢を担うその男は、
モニターに映るニュース記事を指差し、
後ろにいる大統領首席補佐官、
「蒼月 貴哉(あおづき たかや)」に問いかける。

キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/cQc8CG5
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「これは…七乃瀬美蘭ですね。彼女がどうしたんです?」

蒼月はモニターに映った1人の金髪の女性の姿を見つめる。
ニーズヘッグ・エンタープライズの七乃瀬美蘭だ。


「これ、昨日フォランセに七乃瀬美蘭が到着したっていうニュース記事なんスけど、
ちょっと気になることがあるんスよね。まあ気のせいかもしれませんけど」

ジョンヘは先輩であろう蒼月に、砕けた敬語で話す。

「貴方にとっての"気のせい"は、
我々にとって重大な事である可能性が高い。
話してみなさい」

ジョンヘの言葉遣いなど気にも留めず、蒼月は彼に話を促す。


「いや、明日フォランセでパルコレがあるじゃないっスか。
彼女、パルコレの時はいつも前日にフォランセに着くんスよ。
でも、今回に限っては2日前なんスよ、空港に着いたの」

パルコレとは西洋の異国「フォランセ」で毎年開催される世界最大規模のファッションイベントだ。
明日がその開催日となるため、美蘭はすでにフォランセへと飛び立っている。

「…そういう時もあるのでは」
蒼月は眉一つ動かさずに冷静に返す。

「ほら、やっぱりそんなリアクションになる!
だから言ったじゃないッスか、気のせいかもって」

「…貴方が気になっているのは、
"このタイミング"で、"フォランセ"で、
"ニーズヘッグ"の七乃瀬美蘭が、違和感のある動きをしている、という点でしょう」

「そう!!まさにそれっスよ!
なんだ、わかってるじゃないっスか!」

革張りの黒い椅子をくるっと回転させ、
ジョンヘは蒼月に人差し指を突き立てる。
蒼月はその指を掴んですっと下に降ろす。

「2年前…政府が持つパラドックス・ブリッジに関する機密情報に、
不審なアクセスの形跡が見つかりました。
そして、恐らく何者かがその情報を持ち出した事がわかった。
しかし、貴方ほどのエンジニアが調査しても、それ以上は掴めなかった」

「えぇ。マキシムさんも、
なんか途中からあんま調べなくていいよ的な雰囲気だったんで、
俺も他のこと優先してましたからね。
でもここに来て、なんか匂うんスよねー。この七乃瀬美蘭の動きは」

ジョンヘは顎に手を置いて目を瞑る。

「…今一度、しっかり確認しておいた方がいいかもしれませんね。
"鍵"について」

ジョンヘが皆まで語る前に、蒼月は彼の意図を全て察知し、
行動に移そうとしている。

「さすが蒼月さん、俺の言いたいこと全部わかってくれますね。
もし情報を持ち出したのがニーズヘッグなら…相当メンドいことになりますよ」

ジョンヘはモニターの美蘭の姿を凝視する。

数秒の沈黙の後、蒼月が口を開く。

「そういえば、七乃瀬美蘭のことに詳しそうでしたが、ファンだったんですか?」

「…いや、別に。勝手に"ココ"が覚えちまうもんで」
ジョンヘは左手の指で頭を頭部をコンコンと軽く叩く。
蒼月は「なるほど」とだけ呟いた。


「痛ってて…」
ジョンヘは突然、頭を押さえて痛みに顔を歪ませる。
すると、ポケットから頭痛薬のケースを取り出し、そこから錠剤を1つ掌に乗せると、
それをテーブルの上に置いていたシュークリームに捻じ込み、
そのシュークリームを丸ごと口に放り込む。

「…今日はシュークリームですか」
薬の錠剤をお菓子に入れて服用するという奇行に出た男に、
蒼月は顔色一つ変えず問いかける。
この光景は日常茶飯事のようだ。

「ふぁい…。…そうなんスよ。駅近くになんか店が出てたもんで。
蒼月さんも食います?」

「いや、私は結構」
蒼月が掌で軽く受け流すと、ジョンヘは少し不満そうな顔つきで、
残りのシュークリームに手を伸ばした。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「部長、ズルいですよ!」

「…何がです?」

ニーズヘッグ・エンタープライズ本社の食堂で、
開発本部長「鄭 紫霞 (ジェン・ズーシャ)」は、後輩に物凄い剣幕で迫られていた。


食堂は、ガラス張りの天井から柔らかな光が差し込む広々とした空間だ。
洗練された内装は、白とグレーを基調とし、シンプルながらも場所全体に未来感を漂わせる。
左右に並ぶビュッフェ台には、まず新鮮な野菜サラダやフルーツ、そして各国の伝統料理が美しく並ぶ。
中央では、ジューシーなステーキやハーブ香る鶏肉、滑らかなパスタが温かい湯気とともに提供され、
右側には手作りデザートのショーケースが輝く。それはまさに世界一の大企業の食堂に相応しいものだった。

ジェンはテーブル席で麻婆豆腐を食べようとしていたが、
スプーンを手に取った瞬間、目の前の後輩が檄を飛ばしてきたため、
その手を止めざるを得なくなっていた。

「最近、やたら海外に出張することが多いじゃないですか!
だからズルいって言ってるんです!」

「…町田君、何か勘違いしていませんか?
出張は遊びじゃないんですよ」

部長であるジェンを問い詰めているのは、
ニーズヘッグ開発部の後輩である「町田 純心」という男だ。

短い黒髪で、背は低く丸い顔をしている。
童顔だが、年齢は30代だ。

キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/sN8gnYy
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「とか言って、ホントは豪遊してるんじゃないんですか?
だって変ですよ!今まではこんな頻度で海外に行ったことなかったのに!」

町田は目の前のステーキを頬張りながら、右手で持っているナイフを指代わりにして、円を描くようにジェンの方を指し示している。

「それはおかしいですね。
なぜ海外出張の頻度が増えたら遊んでいることになるんです?非論理的ですよ」

ジェンは麻婆豆腐を口に運びながら、丁寧な言葉で的確に反論する。
ジェンは普段、後輩であろうと敬語で接するようにしている。
優しそうな顔や声も相まって、このように後輩に遠慮なく無礼な言動を投げかけられてしまうのだろう。

「じゃあ何やってるんですか?海外で」

「現地パートナーとの技術連携が主ですね。
特に発展途上国にヴェルテクス・デュエリアを中継するための基盤作りは急務ですから」

ジェンは即座に回答する。
町田は不満げなからもしぶしぶ納得しようとしている様子だ。


「じゃあ、僕も連れてってくださいよ!
ヤですよ、僕だけ毎日パソコンとにらめっこして!」
町田は諦めず子供のようにまくしたてる。

「そのにらめっこが世界の技術を支えているんですよ」

「…別に僕じゃなくてもいいじゃないですか」

「そんなことはありません。なぜいつもそう自信がないのですか。
君の卓越した能力はニーズヘッグに欠かせません」

「ぶ、部長…!」
町田は目を輝かせる。

「しかし、君には君の役目があります。わかりますね?」

「し、仕方ないなぁ~、部長にそこまで言われちゃ!」
町田は完全に機嫌を取り戻した。どうにかうまく丸め込めたようだ。

「でも、1回ぐらい連れてってくださいよー。
そういえば、美蘭ちゃんもパルコレがあるからって、
今フォランセに行ってますよね。いいなぁ~」

町田は自社のモデル兼デザインディレクターの美蘭の名前を挙げる。

「(今頃、うまくやってくれているといいが…)」
ジェンは窓の外の遠い空を見つめ、1週間前の出来事を回想する。




ニーズヘッグ・エンタープライズ本社、その79Fに位置するシークレットルーム。
ルーカスは、その一室にある高さ2メートルほどの頑丈そうなケースを見つめていた。
そのケースには4つの"鍵"が飾られている。

シークレットルームの扉が開き、ジェンが入ってくる。

「『デント・スペイシー』と思われる者の居場所を突き留めました」

「ようやくか。でかしたよ、ジェン」
ルーカスが腕を組みながら目だけでジェンに賞賛を送る。
ジェンはスマートフォンの画像を取り出し、ルーカスに提示する。

その男は50代ほどの太った中年男性だ。
派手な紫色の高級なスーツを着ており、金色の指輪をいくつも着けている。

「フォランセのマルトールにあるキャバレーの常連のようです。監視カメラ映像を確認しました。
エウカリアの整形外科で得た整形後の顔情報…
それを10年経過させたイメージとおおよそ人相が一致しています。
当時より遥かに太っているので照合に手間取りましたが、一致率は93%。候補者の中では最高値です」

ジェンはシークレットルームにあるパソコンでデータを表示しながら説明する。

「この男は『ハワード・ヴィルズ』という名前のようです。
鍵の所持者は皆、顔と名前を変えています。彼がデント・スペイシーである可能性は高いかと」

「ふーん…。もしこの醜い豚が鍵の所持者なら、呆れるね。
政府から金もらって日陰で暮らしてるだけの分際で、
こんな格好してキャバレーなんかでえばってるんだから」

ルーカスは侮蔑の滲んだ眼差しで写真の太った男を見つめる。

「ねえねえ、フォランセって言ったぁ?
アタシたまたま1週間後に行くんだけど、ついでにちゃちゃっと片付けてきてあげよっか?」

先ほどまで後方で、ペットのトカゲ「ゲー君」と戯れていた美蘭が、
ルーカスとジェンの話を聞きつけ、ゲー君を肩に乗せてスキップで近づいてくる。

「ちょうどお前に頼もうと思ってたところだよ。それに、キャバレーだしね」

「おっけー、そのキャバレーに潜入しろってことね。
でもまた外れクジだったらヤだな~。
せっかく準備しても鍵のこと知らないってことばっかりだし」

パラドックス・ブリッジの鍵の所持者は顔と名前を変えているようだ。
その者の隠匿に政府も関わっているということならば、見つけ出すのは相当に苦労するだろう。
関係者を虱潰しに当たっても、その者が鍵の在処を知っているとは限らない。
むしろそうでないケースの方が多いだろう。

「まさか、ここまで時間がかかるとはね。
グール、ビースト、ストライフ、ヒューマン…まだ4つだ」

ルーカスはガラスケースに保管された4つの特徴的な鍵を、神妙な面持ちで見つめる。
ルーカスが挙げた名前は6つに分かれたパラドックス・ブリッジのそれぞれの名称だろう。

「でもでも、アタシらが1個でも鍵をゲットした時点で、政府の計画は終わりなんだからさ。
落ち込むことないよ!」

対して美蘭は楽観的だ。
パラドックス・ブリッジの解放には6つの鍵が必要。
しかし、その内いずれかが欠ければ解放はできない。
4つをニーズヘッグが手にしている今、政府の「モンスターワールド侵攻計画」は頓挫したに等しい。


「なに励ましてんだよ。
奴らに気付かれる前に全ての鍵を手に入れなきゃ、
先にこっちが数の力で押さえられるんだぞ」

「はいはい、わかってますよーだ!
"世界"を人質に取れれば、政府はアタシらに逆らえない…でしょ?」
美蘭は面倒くさそうに答える。

「鍵は精巧なダミーにすり替えていますから、当面は勘付かれないでしょう。
しかし、早いに越したことはありませんね」
ジェンは両者のバランスを取り、この場を諫めようとする。

「ジェンちゃん、そのキャバレーのこと詳しく調べてくれるかな?
特にキャストのことは念入りにね」

「了解しました」

「詳しいことはアタシ達が現地で調べるから。ゲー君、お仕事だよ〜」
美蘭は猫撫で声で肩に乗せたトカゲのゲー君を指で突つきながら、シークレットルームを後にした。







フォランセ マルトール キャバレー「ロゼ」



薄暗い照明に照らされ、煌めく金色の装飾が空間を包むその室内は、まるで夢幻の舞台の一部のようだ。
扉を開けると、曲線を描く豪奢な天井に広がるシャンデリアが、琥珀色の光を部屋中に散らし、来訪者を幻想的な世界へと誘う。

中央のステージでは妖艶なダンサー達が華麗に舞っている。
場内はアルコールの芳醇な香りとともに、力強い音楽と共鳴し、客たちは五感でこの瞬間の贅沢な夜を堪能していた。

ステージの近くの大きなソファ席に、紫のスーツを着た太った男が、
周りに2人の美女をはべらせ、ふんぞり返っていた。
手にはシャンパンのクラスを持っている。

「この前ノーブル賞取ったヤツいんだろ!アイツだってなぁ、オレには頭上がんねえんだよ!」

男は機嫌良さそうに自慢話を語っている。

「えぇ〜、すごーい!ハワードさんって何者なのー!」
隣にいる金髪のロングヘアをした女性がすぐさま男を持ち上げる。

「ハワードさんって、資産家さんなんですよね?
やっぱりそういう人だと、色んな凄い人と繋がりがあるんですね!」

もう1人の真っ赤な髪に黒のメッシュが入った女性も、男の話題に食いつく。

「ま、まあな…。でもアレだぜ、昔世話してやったってヤツだからよ。
今は連絡取ってねえけどな…」

ハワードは少しバツが悪そうな表情になり、言葉の歯切れも悪くなる。

「オレ、だいぶ酔ってきちまったみてぇだ。そろそろ帰るとするかな」

「えぇ〜!まだお話したいのにー!」
金髪の女性がハワードの腕を掴んで媚びた声を出す。

「ハハハ!そりゃ嬉しいな!
てもそんなに話が聞きてぇなら…何も店の中だけじゃなくてもいいんだぜ、マリーちゃん」

ハワードは金髪の女性に顔を近づけながらいやらしい目つきで囁く。
マリーの表情は一瞬凍りつき、赤い髪の女性に軽くアイコンタクトをする。

「あ、ゴメンなさいね!マリーは外せない用事があって…!
代わりに私で良ければご一緒しますよ?」
マリーからのアイコンタクトの意味を瞬時に汲み取り、赤い髪の女性がすぐにフォローを入れる。

「お!オレはフレアちゃんでも構わねえぜ!
この店のNo.1とアフターできるなんて、通い詰めた甲斐があるってもんだ!」

赤髪の女性はこのキャバレーのNo.1であり、フレアという名前のようだ。
ハワードはより一層機嫌をよくする。

「じゃあ、準備してきますね。また…あ・と・で、ね」
フレアはハワードの唇に軽く触れると、会計のために手を挙げて黒服を呼ぶ。
ハワードは鼻の下を伸ばし、溶けたような表情で惚けている。
そのままバックヤードへと戻ると、少し遅れてマリーも入ってくる。

「フレア、ごめんねー!私あの人マジ無理なの!下心丸出しすぎて!」
入るや否やマリーは両手を合わせて謝る。

「ハハ、顔見たらわかるよ。私に任せといて」
「ほんとにありがとぉー!でもフレアも気を付けてよね、何されるかわからないし」

「大丈夫。私、護身術習ってたから」
「そういえばそんなこと言ってたね。頑張って!」
フレアは厚手のコートを羽織ると、笑顔でマリーに手を振ってバックヤードを出る。

フレアは外で待っているハワードの元へ向かう。
コツコツとハイヒールを鳴らし、1歩ずつ歩いてゆく。

フレアの表情は冷たいニヒルな笑みへと変わる。

「(マリーとかいう女、全くアタシを疑わなかったね。
ジェンちゃんとゲー君が調べてくれたおかげかな)」


彼女はスマートフォンで遠隔のカメラ映像を確認する。
そこにはホテルの一室で手足と口を縛られている"本物"のフレアの姿があった。
フレアは憔悴しきった表情だ。もはや抵抗の意思すらない。
時折、カメラの前を横切るトカゲの姿があった。

フレアの正体は変装した美蘭であった。
ジェンが調べたことをもとに、フレアの情報を全てインプットした後、
前日にフォランセに到着した美蘭は、小型カメラを装着したゲー君を店内に潜り込ませ、
その映像をもとに、店でのフレアの言葉遣いや一挙手一投足を完全にコピーしたのだ。

そして今日、フレア本人を日中にオースデュエルでホテルに拘束し、
卓越したメイク技術によって本人と一切の遜色がないほどに見た目を似せ、
キャバレーに潜り込んだのだった。


「(…待っててねゲー君。すぐに終わらせて戻るから)」
フレア…もといフレアに変装した美蘭は、ポケットに携帯をしまうと、
再び普段のフレアを完全に"擬態"したような表情に戻り、キャバレーの外へ出る。
時刻は真夜中。外は暗闇が包んでいる。

「お待たせー!」
美蘭は笑顔でハワードのもとへ駆け寄る。

「待ったよフレアちゃぁーん!この数分が永遠に感じるぐらい!」
「もぉー大げさすぎ!ねえ、私行きたいお店があるんだけど、いいかな?」
「もちろん!どこへでも連れて行ってあげるよ!」

「ほんと!?それじゃあね、あっちの方にある店!」
美蘭は人気のない路地裏の方を指さす。

「ん?どこに行くつもりなんだい?」
ハワードは目を凝らして路地裏の先を見つめる。

「それは行ってのお楽しみ。ほら、行こ!」
美蘭はハワードの腕を引っ張り、路地裏へと誘う。


「ほら着いたよ、ここ!」
美蘭は煌びやかな街並みに似合わない古めかしい建物を指さす。

「フレアちゃん、何だい?ここは」
外見からはどんな店か全く見当もつかない様子だ。
建物からは人がいる気配すら感じない。

「もぉー、ニブいなぁ、ハワードさん。ほら、入ろ?」
美蘭はハワードの唇を人差し指を触れ、妖艶な表情で見つめる。

「あ…あぁーーなるほどなぁ!わ、悪かった!さあ、早く入ろうぜ…」
ハワードの顔はニヤケ面へと変わり、建物の中へ入ってゆく。


古めかしい木製の階段を上がると、蜘蛛の巣が張った広い一室に辿り着く。
照明などはなく、外から漏れるわずかな明かりだけがこの部屋を照らしている。
昔は何かの興業に使われていたようだが、今は完全なる空き家と化していた。

「ず、随分なところじゃねえか」
浮かれていたハワードもさすがに面食らっている様子だ。

「今日はすっごく楽しそうだったね」
美蘭は背を向けたまま、ハワードに語り掛ける。
その声色は少し前までと違い、冷たさをはらんでいた。

「ん…?あ、あぁ。まぁな。
そりゃあ、あんな綺麗な姉ちゃんに囲まれりゃあ誰だって気分良くなるさ!」
ハワードは雰囲気の違うフレアに戸惑ったものの、特に気にする様子はなく明るく答えた。


「ふうん…あの≪コラプス≫を引き起こした悪魔のくせに?」
美蘭が振り返る。その目は、完全にハワードを蔑んでいる眼差しだった。

「…!!なっ…!なぜそれを…!ていうか、フレア…な、なんで…!」

ハワードは突然発せられた言葉に心臓が縮み上がった。
全く状況を把握できておらず、しどろもどろになる。


「まあアタシらは、その悪魔を越える"大王様"にならないといけないんだけどさ」
そう言うと美蘭は赤いウィッグを勢いよく投げ捨て、ブロンドのショートヘアを露わにする。


「なっ…!何者だ、お前は…!」
美蘭の正体には気が付いていないようだ。
世界的モデルであるものの、別人並みのメイクによってその面影が消えているためだろう。


「その反応…やっぱり、アンタが『デント・スペイシー』だよね。
13年前まで政府の研究所に務めてたけど、ある日突然存在ごと消えたっていう。
じゃ、知ってるよねぇ?パラドックス・ブリッジの鍵の場所。教えてよ」
美蘭が右手の平を上に向けて無邪気に言い放つ。

「な、なに言ってんだ!教えるわけねえだろ!
い、いや…んなもん、知らねえ!なんだよパラドックスなんとかって!
知らねえもんは知らねえ!」

ハワードは明らかなぼろを出しながらも、誤魔化そうと必死に言葉を捻りだす。

「はぁ…。誤魔化したって意味ないから。
ほんとおバカさんだよね。ひっそりと暮らしてればいいのに、キャバレーなんか通っちゃってさ」

美蘭は髪の毛先を指でくるくると巻きながら、ため息交じりに話す。

「……フン!そもそも俺が隠れて暮らす筋合いはねえ!
コラプスを引き起こしただぁ?あれはただの"事故"だ!
俺はなんにも悪くねえんだよ!どう生きようが俺の勝手だろ!」

ハワードは観念したのか取り繕うのをやめ、デント・スペイシーとして本心を曝け出した。

「事故、ね。みーんなそう言ってるよ。
まぁアタシは鍵さえ手に入ればどうでもいいから。ねえ、どこにあんの?」

「んなもん、教えるわけねえだろうが!」

「じゃあ…無理やり聞き出すだけだね」
美蘭はデュエルディスクを取り出す。
黒を基調とし、ふちが緑色のごつごつとした材質でできている。

「ハッ、オースデュエルで聞き出そうってか?んなもん、俺が応じなきゃ意味ねえよ!
誰だか知らねえが、考えが甘ェんだよ!今すぐ政府に連絡してやる…!」
ハワードは携帯を取り出すが、数秒後に異変に気付く。

「あ、あれ…繋がらねえ…!」

「無駄だよ。電波は妨害してるから」
美蘭はコートの内側に取り付けられた黒い小さな機械を見せる。

「チクショウ…!だが、結局はオースデュエルがなきゃ鍵の在処はわかんねえだろ!
じゃあ俺が応じなきゃ何もできねえよなぁ!」

「…ないんだよ、拒否権なんて」
美蘭は目を伏せ、にやりと笑う。

「…あァ!?」
ハワードは吠えるように声を上げる。

美蘭が左腕に装着したデュエルディスクを高々と掲げると、
赤い円のような光がハワードと美蘭を包む。


「強制オースデュエル発動」
デュエルディスクから無機質な機械音声が鳴り響く。

「なっ…!強制オースデュエルだと!?」

「これでアンタは必ずオースデュエルを受けなきゃいけない。
それがこの世界のルールだから」

「チッ…、なんで強制オースデュエルなんか…。
まさかお前、警察か…?いやでも、ただの警察がパラドックス・ブリッジのことなんか知るわけ…」

ハワードは理解の範疇を超える状況に頭を整理しようとする。

「ざーんねん。もっと"上"だよ」
美蘭は人差し指を真っ直ぐ立てる。

「上…?…お、お前まさか…!」
目の前の女の顔を改めて見つめると、1人思い当たる人物が脳内でヒットした。

「七乃瀬…美蘭…!?」

「アハッ!ご名答!」
美蘭は口と目を大きく開けて猟奇的に笑う。

「ニーズヘッグはDDASの管理にも携わってるから、
当然、強制オースデュエルの権利を付与することはできる…」

強制オースデュエルとは文字通り、強制的にオースデュエルを発動させる権限だ。
本来は逃走する犯人を拘束するために警察などが持つ権限だ。
また、軍隊が敵対する対象を無力化するために使用することもある。
そのため、この権限を持つ者はごく一部だけだ。

「いやだが、それでも俺を嗅ぎつける理由がねぇ…!
クッソ…何が目的だ!
まさかパラドックス・ブリッジを動かすつもりじゃねえだろうな!?」

「…フフ、さあね~」
美蘭ははぐらかすものの、ハワードは自分の想像が当たっているであろうことを確信した。


「アタシの要求は2つ。
1つ目はパラドックス・ブリッジの鍵にまつわる全ての情報を教えること。
2つ目は、今日起きた出来事について何も真実を話さないこと」

「強制オースデュエルは、発動者が提示した契約内容を相手は必ず呑まなきゃいけないの。
知ってるよね?
その代わり、アンタにはこの条件に見合う契約内容を提示する権利がある。
世界デュエル憲章で、オースデュエルは平等じゃなきゃいけないって決まってるからね〜」

「(もし俺がこのまま黙ってても、DDASが俺の思考を読んで勝手に条件を提示しやがる。
クソッ、観念するしかねぇか…)」

DDASは人の記憶にアクセスすることができる。
相手の要求に対して黙秘しようと、脳内では必ず相手が提示した条件に釣り合う条件を想定できているはずだ。
もし強制オースデュエルに応える意思がない場合、DDASがそれを参照し、自動的に契約内容を提示する。
AIによって自動で契約が決定するより、本人の意思で契約内容を決めるのが当然の判断だ。
であれば、己が自主的に契約内容を提示するのが利口である。

「俺が提示する条件も2つだ。
テメェの目的を洗いざらい吐け。それと、テメェの身柄の拘束だ」
ハワードもデュエルディスクを左腕に装着し、戦う意思を見せる。

「決まりだね」
両者はデュエルディスクを構える。
美蘭は余裕な態度で悠然と構え、ハワードは真剣な表情で身構えている。

「契約内容が提示されました。内容確認中…」

プレイヤー1:七乃瀬美蘭
条件①パラドックス・ブリッジにまつわるあらゆる情報の開示
条件②本日発生したあらゆる事象への言及の禁止

プレイヤー2:ハワード・ヴィルズ
条件①ハワード・ヴィルズに接触した目的の開示
条件②七乃瀬美蘭の身柄の拘束


詳細な契約内容は、ソリッドヴィジョンの契約書として両者の前に浮かび上がる。
そこには一切の別の解釈の余地がないほどに徹底された文章が記載されており、
承認した時点で、完全なる両者の意図通りの契約にしかならないようになっている。

2人は指でソリッドヴィジョンの契約書にサインを行うと、DDASがオースデュエルの開始を宣言する。

「契約内容を承認します。
デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」


「デュエル!」
ここに戦いの火蓋が切られる。
ハワードのデュエルディスクのランプが光る。先行はハワードだ。

「俺のターン!『デトリオス・ビニルレイス』を召喚!」

汚れたビニール袋の幽霊のようなモンスターがひらひらと舞って現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/O09Ht68
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「デトリオス・ビニルレイスの召喚時、効果発動。
デッキから『デトリオス』モンスターを1体墓地へ送る。
墓地へ送るのは『デトリオス・ガンクバレル』だ」

「この瞬間、墓地へ送られたガンクバレルの効果発動。
手札から『デトリオス』モンスター1体を特殊召喚できる。
来い、『デトリオス・ミルドランク』!」

現れたのは、灰色の粘ついた液体のボディに、
飲み残しの缶ジュースや様々な容器のゴミが合体したモンスターだ。
スライムのように膨張と収縮を繰り返している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/6aA3c4t
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「うわぁ、きったなーい!」
美蘭はそのモンスターの醜悪な姿に、顔を歪ませ鼻をつまむ。

「おたくの会社が作ったデュエルディスクから生まれたカードだぜ。
そりゃひでえんじゃねえか?まあ俺は割と気に入ってるがな」

「あっそう。アンタの心がよく反映されてるもんねー」

「フン、余裕ぶれんのも今の内だけだぜ。エグいのは見た目だけじゃねえんだよ。
デトリオス・ミルドランクの効果発動!フィールドのデトリオスを2体までリリースすることで、
リリースした数分、デッキから『デトリオス』魔法カードを手札に加える!」

「俺はフィールドの2体のモンスターをリリースして、
デッキから『廃棄物融合(デトリオス・フュージョン)』と
永続魔法『デトリオス・ダストシュート』を手札に加える」

ハワードは一気に2枚の魔法カードを手札に加えた。
2体のリリースという代償があったといえど、これは相当に強力な効果だ。

「さっそくいくぜ。『廃棄物融合(デトリオス・フュージョン)』発動!
墓地の『デトリオス』モンスターをデッキに戻すことで、融合召喚を行う!
デトリオス・ビニルレイスとデトリオス・ミルドランクをデッキに戻して、融合!」


「棄てられし魂の残滓は、蠢く汚泥となりて清きを呑み込む」

「融合召喚!出でよ、『デトリオス・グリースマッドレイン』!」


■デトリオス・グリースマッドレイン
 融合モンスター
 レベル7/闇/悪魔/攻撃力2400 守備力2100
 「デトリオス」モンスター×2
 このカードは墓地のモンスターを素材とした融合召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが融合召喚した場合、墓地の「デトリオス」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ②:相手がカードの効果を発動した場合、
 自分の墓地の「デトリオス」モンスター1体をデッキに戻して発動できる。
 その効果を無効にして破壊する。
 ③:このカードが戦闘・効果で破壊された場合、
 墓地の融合モンスター以外の「デトリオス」モンスター2体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。


その巨大なモンスターは黒いヘドロと油でできたモンスター。
大きな頭部には何本もの泥の触手がついており、目の部分は空洞。
口の部分は排水溝となっており、そこから油と泥が漏れ出ている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/IzOogel
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異形の怪物を前にしても、美蘭は動じることなく凛と立っている。

「デトリオス・グリースマッドレインの効果発動!
融合召喚時、墓地からデトリオスを1体、特殊召喚できる。
来い、『デトリオス・ガンクバレル』!」

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/tB4gPSY
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そのモンスターは、錆びついたドラム缶が胴体になっており、中から生ゴミや泥水が吹き出している。
左右にはぼろぼろになったタイヤが両腕のように付いている。

「デトリオス・ガンクバレルの効果発動!墓地から特殊召喚した場合、
デッキからデトリオス1体を特殊召喚できる。まだまだゴミは増えるぜ。
現れろ、『デトリオス・クラットクラッド』!」

現れたのは、ぼろぼろに破れたビニール傘のようなモンスターだ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/8JH5dWN
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「さらにフィールドにデトリオスが存在する場合、
手札から『デトリオス・バイラルパルプ』を特殊召喚できる!」

現れたモンスターは濡れて破れた新聞紙と泥が混ざった体をしている。
手足は棄てられたフルーツの皮でできており、
それらには胞子がまとわりついている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/CkxkhzB
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「うっわ…マジでキョーレツなんですけど…」
美蘭は髪を指でくるくると巻きながら、その異形のモンスターに顔をしかめる。

「じゃあお望み通りフィールドからどけてやるよ。
デトリオス・クラットクラッドの効果発動!
フィールドのデトリオスを任意の数リリースし、その数だけデッキからデトリオスを墓地に送る。
俺はフィールドの3体を全てリリースし、デッキから3体のデトリオスを墓地へ送る!」

ハワードはデッキから「デトリオス・ラスティゲイル」「デトリオス・ロートチャンク」
「デトリオス・モップモラージュ」の3枚のカードを手に取り、墓地へと送る。


「この時、墓地へ送られた『デトリオス・ロートチャンク』の効果発動。
カードを1枚ドローする」

「永続魔法発動!『デトリオス・ダストシュート』!」

■デトリオス・ダストシュート
 永続魔法
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
 自分の「デトリオス」融合モンスターは相手モンスターの効果を受けない。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 墓地の「デトリオス」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをデッキに戻し、
 その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

ハワードの背後に細長く白い縦長のボックスが現れる。

「デトリオス・ダストシュートの効果発動!
1ターンに1度、墓地から融合素材モンスターをデッキに戻し、融合召喚を行う!」

「俺はデトリオス・クラットクラッドの効果で墓地へ送った3体のモンスターを素材に、融合!」


「錆び付いた忘却の骸よ、軋む怨嗟の慟哭をあげ、腐りゆく世界の王となれ!」

「融合召喚!現れ出でよ、『デトリオス・スクラッグブロウ』!」


■デトリオス・スクラッグブロウ
 融合モンスター
 レベル9/闇/機械/攻撃力3100 守備力3000
 「デトリオス」モンスター×3
 このカードは墓地のモンスターを素材とした融合召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードの攻撃力は、自分の墓地の「デトリオス」モンスターの攻撃力の合計分アップする。
 ②:手札の「デトリオス」モンスターを任意の枚数捨てて発動できる。
 その数だけ相手モンスターを選んで墓地へ送る。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 ③:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 自分の墓地の「デトリオス」モンスターを任意の数デッキに戻し、
 戻したモンスターの攻撃力の合計分、そのモンスターの攻撃力を下げる。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


現れたモンスターは、錆び付いた巨人と形容すべき姿をしていた。
メインとなるボディは廃棄され錆びついた車。
冷蔵庫やテレビ…捨てられた家電用品や粗大ごみの断片が重なり合って巨人の姿を形成し、
その身体を破れてぼろぼろとなった大きなカーキ色の布が覆い、マントのようになっている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/07sFWKo
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「アハ、カッコいいの持ってんじゃん」
今までのヘドロや泥のモンスターとは異なるハワードの切り札を前に、美蘭は妖しい笑みを浮かべる。


「スクラッグブロウは、墓地のデトリオスの攻撃力の合計分、攻撃力を上げることができる」
デトリオス・スクラッグブロウ ATK7400

墓地のデトリオスは以下の3種類だ。
よって攻撃力は4300アップしている。

デトリオス・ガンクバレル:ATK1200
デトリオス・クラットクラッド:ATK1100
デトリオス:バイラルパルプ:ATK1000


「これが俺の切り札だ。コイツは1ターンに1度、手札のデトリオスを捨てて、
その数だけ相手のモンスターを墓地に送ることができて、
さらに相手モンスターの攻撃力を下げる効果もある」

「もう1体のグリースマッドレインは、墓地のデトリオスを1体デッキに戻して、
相手が発動した効果を無効にして破壊できる。
そして永続魔法『デトリオス・ダストシュート』によって、
俺の融合モンスターは相手モンスターの効果を受けねえ」


--------------------------------------------------
【ハワード】
LP8000 手札:3

①デトリオス・グリースマッドレイン ATK2400
②デトリオス・スクラッグブロウ ATK7400

永続魔法:デトリオス・ダストシュート


【美蘭】
LP8000 手札:5
魔法罠:0
--------------------------------------------------

「俺を罠にハメたこと…後悔すんじゃねえぞ。
鍵の所持者ってのはなァ…鍵を守るのに相応しい力を持ってるってことなんだよ!」

ハワードは力を誇示するように両手を広げ、豪快に笑う。
美蘭は無言で2体の巨体を見上げている。

「確かに力はあるかもね。
でも、その力が自分の首を絞めることもあるんだよ」

「…あァ?」
美蘭の思わせぶりな発言を理解できず、ハワードは眉を曲げる。


「アタシのターン、ドロー」
ハワードのことなど気にも留めず、美蘭はカードを引く。


「手札から『リザージュ・ナイロ』をしょーかんっ!」
美蘭はまるで踊るように、楽し気にカードをデュエルディスクに置く。


■リザージュ・ナイロ
 効果モンスター
 レベル4/地/爬虫類/攻撃力1600 守備力1000
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから「リザージュ」モンスター1体を墓地へ送る。
 ②:このカードがカードによって効果を得ていない場合、
 自分の墓地の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはエンドフェイズまでそのモンスターと同じ効果を得る。


現れたのは、銀色の鋭角な鱗が鏡面のように輝いているトカゲのモンスターだ。
眼光は紫紺に明滅し、水面のように揺らめいて見える。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/d87looG
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「リザージュ・ナイロの効果発動っ!
1ターンに1度、デッキから『リザージュ』モンスターを1体、墓地に送る。
『リザージュ・マキュラータ』ちゃんを墓地に送るよー」

「…やけにご機嫌じゃねえか。
テメェが負ければどうなるのかわかってんのかよ」

もし敗北すれば彼女の身柄は拘束され、実質的には陽の光を浴びられないに等しい。
にも拘わらず、彼女の態度はそれを全く思わせない。
その余裕の姿がハワードの神経を逆撫でした。

「え~?だって負けないし。あれ、もしかして怒ってるの?
じゃあ、もっと怒らせてあげよっか。
魔法カード『リザージュ・カレイドスコープ』発動!」


■リザージュ・カレイドスコープ
 通常魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:LPを1000払い、相手フィールドのモンスター1体と
 自分フィールドの「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 その相手モンスターを破壊し、対象の自分モンスターは破壊したモンスターの効果を得る。
 ②:自分フィールドにカードによって効果を得た「リザージュ」モンスターが存在する場合、
 墓地のこのカードを除外し、フィールドの表側モンスター1体を対象として発動できる。
 自分フィールドに「リザージュトークン」1体を攻撃表示で特殊召喚する。
 このトークンは攻撃力・守備力・種族・属性が対象のモンスターと同じになり、
 対象のモンスターがフィールドを離れた時、破壊される。


「この魔法カードはね、ライフを1000払うかわりに、
アンタのモンスターを1体破壊して、
そのモンスターの効果を、アタシのリザージュに"コピー"できるの。
だから、アンタの『デトリオス・スクラッグブロウ』を破壊して、
その効果を『リザージュ・ナイロ』がもらっちゃうね」

美蘭 LP8000 → 7000

デトリオス融合モンスターは永続魔法によってモンスター効果への耐性を持っているが、
魔法カードによる破壊は有効だ。

「なんだと…!んなことさせるかよ!
デトリオス・グリースマッドレインの効果発動!
墓地のデトリオスを1体デッキに戻して、相手が発動した効果を無効にする!」

ハワードが墓地の「デトリオス・バイラルパルプ」をデッキに戻すと、
美蘭の発動した魔法カードはたちまち泥に覆われ、無効化されてしまう。

「墓地のデトリオスが減ったことで、スクラッグブロウの攻撃力は下がる」
デトリオス・スクラッグブロウ ATK6400

「何かと思えば、大したことねえじゃねえか!
その程度でキレるほど俺は落ちぶれてねえ」

「ふーん。ちなみにウチの副社長がアンタのこと、
逃げ回ってるくせにキャバレーでえばってる醜い豚って言ってたけど」

「なんだとォ!?ふざけんじゃねえ!!」

「アハハ、怒った怒った!」
美蘭は予想通りのリアクションに、指を差しながら笑う。

「ん、待てよ…副社長…?
まさかとは思ってたが、パラドックス・ブリッジを狙ってんのも
ニーズヘッグぐるみってことかよ」

「あ、ヤバ…うっかり口滑らせちゃった。
まぁいっか。どうせアタシが勝ったらアンタは何も喋れないし」

このオースデュエルで美蘭が勝てば、誓約によりこの日に起きた出来事は全て語れなくなる。
美蘭はさして重大に捉えず、そのままデュエルを続行する。

「墓地の『リザージュ・マキュラータ』の効果発動!
この子は、フィールドにリザージュがいる時、墓地から特殊召喚できちゃう優秀なモンスターだよ。
おいで、リザージュ・マキュラータ!」


■リザージュ・マキュラータ
 効果モンスター/チューナー
 レベル1/地/爬虫類/攻撃力500 守備力200
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが墓地に存在し、
 自分フィールドに「リザージュ」モンスターが存在する場合に発動できる。
 墓地のこのカードを特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
 ②:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはそのモンスターと同じレベルになる。


現れたのは、鏡面のようなモザイクに覆われた、銀色の小型のトカゲ。
耳孔の部分には、光を反射する六角形のクリスタルが埋め込まれている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/DtZRh6s
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「(チューナーが来たか。
スクラッグブロウは相手モンスターを全て墓地送りにできるが、
永続魔法でモンスターの効果は受けねえんだ。焦る必要はねえ)」
ハワードは眼前に並ぶ眩く光を反射させる2体のモンスターを見つめ思考する。

「レベル4『リザージュ・ナイロ』に、
レベル1『リザージュ・マキュラータ』をチューニング!」

美蘭が人差し指を高く上げると、マキュラータが光の輪となり、
ナイロがその中へと入ってゆく。

「気ままなる空の狩人よ、愚かな獲物を嘲笑い、風を裂いて影を攫え!」

「シンクロ召喚!空も飛べちゃうすごい子!
『ハイリザージュ・フライドラコ』!」


■ハイリザージュ・フライドラコ
  シンクロモンスター
 レベル5/地/爬虫類/攻撃力1500 守備力1900
 チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できず、
 ②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
 ①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターとこのカードを持ち主の魔法&罠ゾーンに置く。
 ②:相手の表側の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードの効果は、このカードがフィールドに存在する限り無効となり、
 このカードはそのカードと同じ効果を得る。
 この効果は相手ターンでも発動でき、魔法&罠ゾーンでも発動できる。
 この効果で得た効果がカード名・種族・属性を参照する場合、
 それらを「リザージュ」カードに変更する(参照するカードの種類は変更できない)。
 ③:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する場合に発動できる。
 このカードをモンスターゾーンに特殊召喚する。


その小さき飛竜は美蘭の頭上で、羽のように広げた皮膜を使って浮かんでいる。
皮膜は鏡面のように滑らかで、光を受けて緑色に反射している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/7IeEWCn
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「ハイリザージュ・フライドラコの効果発動。
1ターンに1度、相手の表側の魔法・罠を選ぶと、
フライドラコがいる限りその効果は無効になっちゃって、
それをフライドラコの効果としてコピーできるの。
永続魔法『デトリオス・ダストシュート』を無効にするよ」

「魔法・罠の効果をコピーだと…?
だが、デトリオス・ダストシュートをコピーしたところで意味ねえだろ。
この永続魔法はあくまで、デトリオスをモンスター効果から守るカードだからな」

「バカだね~アンタ。ちゃんと効果を読みなよ。
フライドラコがコピーした相手の効果は、リザージュカードに適用できるんだよ。
つまり、その永続魔法をコピーしたら…
リザージュはアンタのモンスターの効果を受けないってことになるね」

----------------------------------------------
この効果で得た効果がカード名・種族・属性を参照する場合、
それらを「リザージュ」カードに変更する
(参照するカードの種類は変更できない)。
----------------------------------------------
この効果テキストこそが「リザージュ」の要だ。
これによって、コピーした効果が
特定の名称を持つモンスター、または特定の種族・属性に限定するものだったとしても、
それを「リザージュ」に適用できるようになるのだ。

また、手札からコストとして特定の名称を持つカードを捨てて発動するような効果の場合も、
手札からリザージュを捨てて発動できるようになるということだ。

ただし、「参照するカードの種類は変更できない」というテキストも存在する以上、
例えば魔法カードを捨てて発動するような効果の場合、
それを「リザージュ」モンスターを捨てて発動できるようにはならない。
この場合はあくまで「リザージュ」魔法カードを捨てなければならない。


「チッ…つまりこの効果が通れば、俺のモンスターは耐性を失って、
お前のモンスターはモンスターの効果を受けなくなっちまうわけか。
それならしゃあねえ…!
『デトリオス・スクラッグブロウ』の効果発動!
手札の『デトリオス』モンスターを捨て、お前のフライドラコを墓地に送る!」

美蘭はハワードの抵抗を予期していたように小さく笑みを浮かべる。
フライドラコは相手モンスターと自分自身を魔法・罠ゾーンに置く効果もあるが、
それはあくまで起動効果だ。チェーンして回避することはできない。

スクラッグブロウが腕を振るうと、フライドラコを巨大な泥が拘束する。
フライドラコは翼を掴まれたことで地に落ち、そのまま泥へと飲み込まれてゆく。
フライドラコの無効効果はあくまで自身がフィールドにいる限り有効なものだ。
墓地へ送られた以上、デトリオス・ダストシュートの効果耐性は未だ持続されている。


「残念だったな!
せっかく召喚したSモンスターも、あっけなくお終いだ。
さらに今手札から捨てた『デトリオス・ダーティーパペット』の攻撃力分、
スクラッグブロウは攻撃力を上げるぜ」

デトリオス・スクラッグブロウ ATK7900

状況はハワードの優勢に見えるが、美蘭は余裕の態度を崩さない。
ここまでは予想の範囲内ということだろう。

「でもこれで、うざったい効果は使い切ったよね。
こっからが本番だよ。
自分フィールドにモンスターがいない時、
『リザージュ・ペクティナータ』は手札から特殊召喚できる!」


■リザージュ・ペクティナータ
 効果モンスター
 レベル3/地/爬虫類/攻撃力1400 守備力1200
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:自分の墓地のSモンスター以外の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ③:このカードがカードによって効果を得ていない場合、
 自分の手札の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはエンドフェイズまでそのモンスターと同じ効果を得る。


そのモンスターは光を反射する群青色の皮膚を持ったトカゲだ。
背中から尻尾にかけて櫛状に並んだクリスタル状の棘が伸びている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/T5SRNE3
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「効果はつどー!墓地のSモンスター以外のリザージュを特殊召喚できるよ。
リザージュ・ナイロ、復活っ!」

紫色の瞳を持ったプリズムに輝くトカゲが再びフィールドに現れる。

「リザージュ・ナイロの効果発動。墓地のリザージュの効果をエンドフェイズまでコピーできる。
アタシがコピーするのは…Sモンスター『ハイリザージュ・フライドラコ』!」

ナイロの銀色の皮膚は眩さを増し、きらきらと点滅する。
すると、幻影のようにハイリザージュ・フライドラコの姿が浮かんだり消えたりする。

「なんだと…!」
1度排除したモンスターが眼前に姿を現したことで、ハワードは動揺する。

「これから起きること、わかるよね?
ハイリザージュ・フライドラコの効果を得たリザージュ・ナイロの効果発動!
相手の表側の魔法・罠1枚の効果を無効にして、その効果を得る!
アンタの永続魔法『デトリオス・ダストシュート』を無効にして、コピー!」

ナイロの皮膚が点滅すると、フライドラコの姿へと変わり、
翼のような皮膜を大きく広げる。
すると、ハワードのフィールドの永続魔法は石化し、
フライドラコの姿をしたナイロがカードからエネルギーを吸収する。


「この効果でコピーした効果は、リザージュにも適用されるようになる。
つまり、永続魔法をコピーしたナイロがいる限り、
アタシのリザージュは、アンタのモンスター効果を受けなくなるってコト。
いい子だね~ナイロ~!」

美蘭が目の前にいるナイロの頭を撫でると、ナイロも気持ちよさそうに目を細め、鳴き声を上げる。
ハワードはそれを疎ましそうな目で見ている。

「さてと!じゃあそろそろ仕上げといくよ、みんな!」
美蘭は立ち上がると、自分のモンスター達に声をかける。

「仕上げだァ…?いくら俺のモンスター効果が効かねえからって、
この攻撃力7900を超えて、俺にダメージを与えられるわけねえ!
それに、グリースマッドレインは破壊された時、墓地からデトリオスを2体呼び出せる!
こけおどしの言葉は通用しねえぞ」
まるで勝ったような物言いの美蘭に、ハワードは青筋を立てる。

「はぁ…。その威勢の良さもそろそろメンドくなってきたよ。
アタシは今、早く帰ってシャワー浴びたいの。
だから…ここからはノンストップでいくよ」

美蘭は真剣な表情に変わる。
ハワードはその一瞬、冷たい殺気のようなものを感じ、寒気を覚える。

「リザージュ・ペクティナータの効果発動。
1ターンに1度、手札のリザージュの効果をコピーできる。
手札の『リザージュ・フラヴィマ』の効果を得る」

「フラヴィマの効果を得た、ペクティナータの効果発動!
1ターンに1度、デッキから『リザージュ』チューナーを特殊召喚できる。
おいで、『リザージュ・ミッチェル』」

ペクティナータは、コピーしたフラヴィマの姿へと変わる。
黒い肌に黄色い宝石が埋め込まれたような見た目をしたトカゲだ。
鳴き声を上げると、フィールドに新たなモンスターが現れる。


■リザージュ・ミッチェル
 効果モンスター/チューナー
 レベル2/地/爬虫類/攻撃力1000 守備力200
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドにこのカード以外のカードによって効果を得た
 「リザージュ」モンスターが存在する場合、
 自分の墓地の「リザージュ」カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。
 ②:自分の墓地の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはエンドフェイズまで、そのモンスターと同じレベルになる。

現れたのは、オレンジ色に光る小さなトカゲだ。
首元には小さなトゲが無数に生えており、それらは1つ1つが宝石のように輝いている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/8G4WFp5
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「リザージュ・ミッチェルの効果発動。
墓地のリザージュ1体のレベルをコピーできる。
『リザージュ・マキュラータ』のレベルをコピーして、
ミッチェルちゃんのレベルは1になる」

リザージュ・ミッチェル ☆2→1

「さらにリザージュ・ミッチェルの効果発動。
カードによって効果を得た他のリザージュがフィールドにいる時、
墓地のリザージュカード1枚を手札に加えられる。
『リザージュ・マキュラータ』を手札に加えるね」


「おまたせ、そろそろ本当の仕上げだよ。
墓地の魔法カード『リザージュ・カレイドスコープ』の効果発動!
フィールドにカードによって効果を得たリザージュがいる時、
このカードを墓地から除外して、
フィールドのモンスター1体と全く同じステータスのリザージュトークンを特殊召喚できる!」

「アタシはフィールドのリザージュ・ナイロをコピーしたトークンを特殊召喚」

フィールドにはリザージュ・ナイロと同じ、銀色の肌に紫の瞳を持ったトークンが現れる。
それはまるで映し鏡のようだった。

--------------------------------------------------
【ハワード】
LP8000 手札:2

①デトリオス・グリースマッドレイン ATK2400
②デトリオス・スクラッグブロウ ATK7900

永続魔法:デトリオス・ダストシュート(無効)


【美蘭】
LP7000 手札:3

①リザージュ・ペクティナータ DEF1200 ☆3
(リザージュ・フラヴィマの効果を得ている)

②リザージュ・ナイロ DEF1000 ☆4
(デトリオス・ダストシュートと
リザージュ・フライドラコの効果を得ている)

③リザージュ・ミッチェル DEF200 ☆1
(リザージュ・マキュラータのレベルを得ている)

④リザージュ・トークン DEF1000 ☆4
(リザージュ・ナイロをコピー)

魔法罠:0
--------------------------------------------------

美蘭のフィールドには4体の煌びやかな大小のトカゲが並ぶ。

「さあいくよ、みんな。
アタシはレベル4『リザージュ・トークン』と、
レベル3『リザージュ・ペクティナータ』に、
レベル1『リザージュ・ミッチェル』をチューニング!」

ミッチェルが1つの光の輪となり、その中に2体のモンスターが飛び込む。
ハワードはこれから現れようとしているシンクロモンスターに神経を集中させている。


「幾色にも変貌するその姿の前に、真贋を問うことなど無価値と知れ」


「シンクロ召喚!現れよ!
『ハイリザージュ・セイラウス』!」


■ハイリザージュ・セイラウス
  シンクロモンスター
 レベル8/地/爬虫類/攻撃力2700 守備力2300
 チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 このモンスターは対象のモンスターと同じ効果を得る。
 この効果で得た効果がカード名・種族・属性を参照する場合、
 それらを「リザージュ」カードに変更する(参照するカードの種類は変更できない)。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 ②:このカードがフィールドから墓地に送られた場合に発動できる。
 デッキから「リザージュ」罠カード1枚をセットする。
 この効果でセットしたカードはセットしたターンでも発動できる。


現れたのは、黄金に輝く巨大なエリマキトカゲだった。
全身の皮膚は光を反射してプリズムの如く輝いており、
頭部から左右に大きく張り出したフリルは、
光を受けるたびに微細な万華鏡模様を浮かべる。
直立した姿勢で、後肢はしっかりと地を踏みしめ、細長い前肢がやや胸元に添えられる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/CcNUiyp
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「コイツが…お前の切り札ってわけか…!」
甲高い雄たけびを上げるセイラウスに、ハワードは無意識化で慄いていた。
真っ赤に輝くその瞳は、真っ直ぐハワードを見つめていた。

「ハイリザージュ・セイラウスの効果発動。
相手フィールドのモンスターの効果をコピーできる。
アンタの切り札『デトリオス・スクラッグブロウ』の効果をコピーさせてもらうね」

「な…なんだと…!」
ハワードが目を丸くしていると、セイラウスは大きな雄叫びを上げる。
すると、その姿は形や色を即座に変え、スクラッグブロウと全く同じ姿へと変わる。
そしてすぐに元の姿へと戻った。

「だ…だが!コピーしたところで、スクラッグブロウの効果は、
手札か墓地にデトリオスがいなきゃ使えねえ!」

「アンタ、ほんと学ばないね。
1回食らったこと、もう忘れちゃったの?」

その瞬間、ハイリザージュ・セイラウスの攻撃力が一気に上昇した。

ハイリザージュ・セイラウス ATK6600

「ま、まさか…!」
その瞬間、ハワードは全てを完全に理解した。
ハワードの顔がどんどんと青ざめていく。
それを見て美蘭は猟奇的な笑顔を浮かべる。

「アハッ!ハイリザージュ・セイラウスが奪った効果は『リザージュ』カードを参照できる!
『デトリオス・スクラッグブロウ』は、
墓地のデトリオスの攻撃力の合計分、攻撃力がアップする効果があるよね」

「つまりぃ…この効果をコピーして『リザージュ』を参照できるようになったら、
アタシのセイラウスちゃんは、墓地のリザージュの合計分、攻撃力が上がるってこと!」

現在、美蘭の墓地には
フライドラコ、ペクティナータ、ミッチェルの3体のモンスターが存在している。
相手のスクラッグブロウから奪った効果が、
リザージュを参照できるようになり、セイラウスの攻撃力の上昇に繋がっている。


「ふ、ふざけんじゃねえ…!こんなもんデタラメだ!」

焦りを募らせたハワードは外にまで響き渡る声で叫ぶ。
その姿は、まるで自らの顛末を悟ったかのようだった。

「フフ…そうだよ!デタラメ!だから面白いんじゃん!」
美蘭は両手を広げて目を見開き、
ステージを楽しむショーマンのように笑っている。

「見せてあげるよ、もっとデタラメなイリュージョンを。
ハイリザージュ・セイラウスの効果発動!
アンタから奪ったスクラッグブロウの効果を使う!
手札のリザージュモンスター2枚を捨てて、
アンタのモンスターを2体、墓地に送る!」

セイラウスはスクラッグブロウの全ての効果を、
「リザージュ」としての効果に書き換えて使用できる。
スクラッグブロウの「デトリオス」を任意の数捨てて
その数だけ相手モンスターを墓地へ送る効果は、リザージュをコストとして使用できるのだ。

セイラウスの皮膚が光を反射し、目の前のスクラッグブロウを映し出す。
すると、セイラウスの姿は一瞬にしてスクラッグブロウに変わる。
姿をコピーしたセイラウスが錆び付いた機械の腕を振るうと、
ハワードの2体の融合モンスターは地面に現れた泥へと飲み込まれてゆく。

「待て…!待てぇええええ!!!」
ただ無慈悲に呑み込まれゆく2体の巨体に、ハワードは必死に手を伸ばす。

「デトリオス・スクラッグブロウの効果発動ォオオ!!
墓地のデトリオスを全てデッキに戻して、その攻撃力分、
ハイリザージュ・セイラウスの攻撃力を下げる!!」

泥にその身の半分以上を埋めたスクラッグブロウが最後の力を振り絞り、
墓地のモンスターから集めた汚泥のような黒い球体をセイラウスへとぶつける。

しかし、それはセイラウスに届く前に、
目の前に現れた飛行するトカゲによって阻まれる。

「あ、あぁああ…!」
抵抗虚しく、ハワードのフィールドから一瞬にしてモンスターが消え去る。
目の前のセイラウスとフライドラコの幻影を纏ったナイロは、
変わらずハワードの目の前で悠然と煌いていた。

「はぁ…ほんと時間の無駄。
リザージュ・ナイロがハイリザージュ・フライドラコの効果をコピーして、
アンタの永続魔法の効果を奪ったこと、忘れたの?
その効果で、アタシはアンタのモンスター効果を一切受け付けないの」

「さらに、今手札から2体のリザージュが捨てられたから、
アンタから奪ったモンスターの効果で、その攻撃力の合計がセイラウスちゃんに足されるよ」

手札から捨てたのは墓地から回収したリザージュ・マキュラータと、
元々持っていたリザージュ・フラヴィマだ。
その攻撃力の合計がセイラウスに加算される。

ハイリザージュ・セイラウス ATK8800

ハワードのフィールドにモンスターはいない。
そして、目の前には攻撃力8000を超えたモンスター。

すなわちそれは、ハワードの敗北を意味していた。


「ふざけんなああああ!!こんなことがあってたまるかぁ!
こんなもん無効に決まってんだろうがァ!!
強制オースデュエルをこんな使い方していいわけねえ!!」

ハワードは開いた瞳孔で辺りを動き回り、叫び散らかす。
その姿を美蘭は冷たい瞳で見つめる。

「ほんと、最後まで見苦しいね。
約束は守ろうよ、人としてさ」

「てめえ!!パラドックス・ブリッジを奪って何するつもりだぁ!!?
アレが何なのかわかってるだろッ!
てめえらみてえなもんが、無暗に開放していいわけねえ!!」

美蘭の言葉など耳にも入らず、ハワードは叫び続ける。

「でも、アンタらはそれをやろうとしてたじゃん。
モンスターワールドとこの世界が繋がれば、
向こうのエネルギーがこっちに流れ込んで、モンスターが実体化できるようになる」

「こっちの世界と繋がったモンスターワールドに、召喚したモンスターで攻撃を仕掛けて、
そのままモンスターワールドが滅びれば、
モンスターワールドから出てきたあのでっかい隕石ごと消える。
それがアンタらの計画ってヤツでしょ?アタシ、全部知ってるんだからね」


「……何者なんだよ、てめぇら…」
ハワードは、がくんと力が抜けたように床に膝をつく。


「この世界を救う、大王様だよ」

美蘭は人差し指をハワードへ向け、最後の指令を出す。

「ハイリザージュ・セイラウスで、ダイレクトアタック」

セイラウスは咆哮とともに大口を開けて上を向き、フリルを全開まで開く。
全身は光を反射してさらに黄金色に光り、その輝きにハワードは目を開けていられなくなる。

そして、全身の黄金の点滅とともに、
セイラウスの口と大きなフリルから、エネルギーが放射される。


「ぐああああああああああ!!!」
ハワード LP8000 → 0

ハワードは膝をついたまま、身が焼き切れる感覚をおぼえながら、
放射される光の中へと消えていった。






「…やはり、そうでしたか」

大統領補佐官「蒼月貴哉」は、携帯電話を耳に当て誰かと話している。
その後、電話を切ると、背を向けている"ある男"に声をかける。


「閣下。やはり予想通り、パラドックス・ブリッジの鍵は奪われていました。
それも、すでに"5つ"」

蒼月は深刻な表情で、電話で聞いた内容を、大統領「マキシム・ハイド」に話す。
マキシムは静かに振り返る。


「なっ…!なんだと!?」
しかし、紫に近いピンク色のストレートヘアの女性が、大統領よりも先に大声を上げて反応した。
彼女はアリシア・ローレンス。蒼月と同じく大統領補佐官の1人だ。

キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/sh2bXY1
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「どういうことだ、蒼月!鍵が盗まれた…!?」

「えぇ。鍵を何度かハンマーで強く叩いたところ、見事に壊れたとのことです。
本物は"何があっても"破壊できませんからね」

「そんな…。鍵はリスク分散のために、世界中に秘匿されている。
それがほとんど奪われるなど…」
アリシアの視線はあちらこちらに移る。
これからどうすべきかということに、必死に考えを巡らせている。


「犯人はニーズヘッグでしょう。彼らならやりかねません。
"また"、ジョンヘさんが勘づいてくれましてね」

蒼月がマキシムの奥に座っている青緑色の髪の男に視線を送ると、
ジョンヘはピースサインを返した後、補足する。

「でも、ぶっちゃけ勘ッスよ?何も証拠はないんで。
鍵の所有者5人に確認したところ、不自然なほど何も喋りませんでした。
明らかに口封じっしょ。
それに鍵の保管施設に通ずる道の監視カメラも、ピンポイントで停止させられてました。
こんなこと、奴ら以外にできないッスよ」

ジョンヘは椅子をくるくると回しながら、あっけらかんと言い放つ。

「な、何故そんな気楽な態度なのだ!異常事態だぞ、これは!」
アリシアは煮え切れない様子で、焦りを募らせていた。

「ま、予想はしておったがな。
奴らが我々の《モンスターワールド侵攻計画》を知れば、
意地でもモンスターワールドを守ろうとするだろう。
それこそ、どんな手段を使ってでもな」

ようやくマキシムが口を開く。
ニーズヘッグがパラドックス・ブリッジの鍵を手中に収めた以上、
政府の「モンスターワールド侵攻計画」は破綻したことになる。
しかし、それにも関わらず意外にもマキシムは穏やかな様子だ。

「2年前に漏れた機密情報は、ニーズヘッグに渡っていたのでしょう。
当然、我々の計画のことも。ですが、すぐに奪い返します。
残された"デーヴァ"の鍵の護衛も強化するように通達します」

蒼月はデュエルディスクを手に取りながら、
戦意の宿った眼差しでマキシムに強く訴える。


「…いや、よい」

「…よい?」
蒼月はマキシムの言葉の意図を理解できず、反復する。


「モンスターワールドのエネルギーによってモンスターを実体化できるようになれば、
我々人類は、強力な"兵器"を手にしたのと同義だ。
しかし、向こうの世界にはそれがわんさかいる。
数万人の兵が召喚したモンスターで攻め入ったとしても、
1つの世界を滅ぼすなど至難の業だ」

「だから私も、ぶっちゃけ無理筋だと思っていたんだ。
モンスターワールドを物理的に攻撃して、隕石を消滅させるなどな。
ガッハッハッハ!」

「……」
元も子もないマキシムの言葉に、蒼月は呆気に取られているようだ。
それはアリシアやジョンヘも同様だった。視線はマキシムに集まる。

「しかし、安心せよ、皆の者。
すでに新たな計画は思いついておる」

「…どのような計画でしょうか?
これまで進めてきた計画はどうなるのです?」

展開が二転三転することに苛立っているのか、
アリシアがマキシムを問い詰める。


「ガハハ、焦りは禁物だよアリシア君。
大丈夫だ、計画は私の頭の中にある。いずれ君達にも話そう」

マキシムはメインシティの全貌を見渡せる窓まで歩くと、
そこから見える真っ赤なドームを見つめる。

そこはデュエルドーム。ヴェルテクス・デュエリア本戦の会場だ。


「じゃあ、最後の鍵はどうするんスか?」
ジョンヘが椅子の背もたれから身を乗り出して話しかける。


「…そんなもの、奪わせておけばよい」

マキシムは大きく口角を上げ、白い歯を剥き出しにして笑った。
アリシアは、どうしようもなく理解不能な男の笑顔に、恐怖を覚えていた。







「よくやった、美蘭」

ニーズヘッグ・エンタープライズ本社のシークレットルームにて、
オスカーはケースに入った5つ目の鍵を見つめながら、
淡々としたトーンで美蘭を賞賛する。


「わぁーーい!やったやったー!褒められちゃったー!」
美蘭は敬愛するオスカーの賞賛の言葉に、飛び上がって歓喜の気持ちを表す。


「残る鍵は1つ、"デーヴァ"ですね」
ジェンはケースの空いた1つの枠を見つめ、静かに言う。

「こっちでも関係者を詰めてるけど、全部ハズレだ。
あと1つだってのに、手間かけさせてくれるよ」
ルーカスは吐き捨てるように言う。


「…立ち返るべきは、原点か」
ルーカスの言葉を聞き、オスカーは呟く。


「ここが正念場だ。この計画は必ず成し遂げなければならない。
ここまで情報が出なければ、もう政府関係者は当てにならないだろう。
立ち返るは原点…"DTDL"だ」

DTDL…デュエルモンスターズ技術開発研究所
(DuelMonsters Technology Development Laboratory)の略称であり、
かつて神楽天聖がドミノタウンで所長を務めていた研究所だ。


「全ての始まりは、あの研究所にある。
その存在はコラプスと共に、政府によって葬り去られた。
だが、必ず糸口はある。何としてでも手繰り寄せるのだ」

3人は静かに頷く。

オスカーはマントを翻すと、シークレットルームを後にした。




第35話「シークレット・ミッション」完



ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選2回戦。
遊次の相手は「空蝉空心(うつせみくうしん)」だ。
彼は人々の欲望を忌み嫌い、欲望が世界を滅ぼすと信じている。

先行で盤石な布陣を敷く遊次に対して、空蝉が繰り出したのは、
再度召喚することで効果を得る「デュアル」モンスター。
しかしそのモンスターは、ただのデュアルとは明らかに一線を画す効果を持っていた。


「我が『練武』は、2度の召喚と更なる鍛錬を経て…
"デュアル"を超えた"トリプル"へと成るのだ!」


次回 第36話「欲なき世界」
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