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第34話:ただそれだけ 作:湯
~まえがき~
今回から、モンスターのイラストを追加しました。
過去のデュエルやカードリストにも全てモンスターのイラストを追加したので、
ぜひ見てみてください。
ヴェルテクス・デュエリア2次予選 第5試合。
灯と怜央のデュエルは両者譲らず熾烈を極める。
怜央は「爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)」により、灯のフィールドを全て破壊するも、
代償として多くのライフを失った。
--------------------------------------------------
【灯】
LP8000 手札:2
魔法罠:0
カードの位置:
□□□□□
□□□□□
□ □
□□①□□
■■□□□
【怜央】
LP2300 手札:0
①爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト) ATK2800 X素材1
伏せカード:2
--------------------------------------------------
「俺のターン、ドロー!」
灯はデッキトップから素早くカードを引く。
「墓地の魔法カード『ペイントメージ・ポリクローム』を除外して効果発動!
自分フィールドにモンスターがいない時、デッキからペイントメージを特殊召喚できる」
「その効果にチェーンしてトラップ発動!
『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』!
1ターンに1度、相手の特殊召喚されたモンスターに、
デッキから爆焔鉄甲モンスターを装備する」
■爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)
永続罠
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
装備カードを装備している相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
②:相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
その特殊召喚されたモンスター1体を選び、
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を選び、そのモンスターに装備カード扱いとして装備する。
③:自分・相手メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、
自分の除外状態の「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
「チェーン1のペイントメージ・ポリクロームの効果。デッキからペイントメージを特殊召喚する。
来い、ペイントメージ・シャンパーニュ!」
■ペイントメージ・シャンパーニュ
効果モンスター
レベル4/光/魔法使い/攻撃力1900 守備力1100
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分の墓地のレベル4以下の「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから光属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを光属性に変更する。
薄い黄色を基調とした金髪の燕尾服の少年のモンスターが現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/hZhPWdu
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「シャンパーニュの特殊召喚時、効果発動。
墓地のレベル4以下のペイントメージを特殊召喚できる。
墓地のシンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』を選択!」
「その効果にチェーンして罠カード
『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の効果発動!
特殊召喚されたシャンパーニュに、デッキから『爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を装備する」
シャンパーニュの身体に、羅針盤型の手榴弾が鎖を巻き付ける。
「シャンパーニュの効果により、墓地からペイントメージ・カードルを特殊召喚!」
額縁に女性の顔が刻まれたモンスターが再びフィールドに現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4dBZhzU
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
灯と怜央の間に流れる時間がわずかに停止したように、一瞬の間が生じる。
その後、怜央が口を開く。
「デトネイトの効果発動。1ターンに1度、相手モンスターを破壊する。
破壊したモンスターが爆焔鉄甲を装備してた場合、もう1枚カードを破壊できる。
破壊するのは当然、ペイントメージ・シャンパーニュだ」
怜央が人差し指と中指で銃のような形を作り、コンパス・グレネードが巻き付いたシャンパーニュを指し示す。
灯は真剣な表情で自分のモンスターを見つめる。
「お前のフィールドのペイントメージ・カードルは、お互いのターンにいつでもS召喚できる効果を持つ。
本来ならここでカードルの効果を発動して、カードルとシャンパーニュでS召喚すれば、
デトネイトの破壊効果を回避できる。だが、この状況じゃそれはできねえ」
灯はただ怜央の言葉を待つ。その表情には驚きは見て取れない。
怜央がこれから言うことは灯自身も理解しているようだ。
「シャンパーニュに装備されたコンパス・グレネードは、
装備モンスターをいかなる素材にもさせない効果を持つ。
よって、お前はデトネイトの破壊効果を受け入れるしかねえ」
デトネイトは右手に炎を集中させ、一気に放つ。
シャンパーニュは一瞬にして炎の渦に飲み込まれ、破壊される。
「デトネイトがスチームアーミーを装備したモンスターを破壊した時、もう1枚カードを破壊できる。
ペイントメージ・カードルを破壊だ」
シャンパーニュを燃やし尽くした炎はカードルへ向かう。
額縁は一瞬にして燃え上がり、破壊される。灯のフィールドは更地となった。
この後、コンパスグレネードの「装備モンスターの隣のカードが破壊される」強制効果が発動するが、
灯のフィールドにカードはないため、不発に終わる。
「さっそく鉄城選手のモンスターが牙を剥いたァ!
罠カードとXモンスターのコンボにより、2体のモンスターを同時破壊!
まさに花咲選手の"鼻先"を折る…なーんてねぇ!」
実況の多口は、まるで一曲歌い上げたシンガーが如く机に片足を乗せ、実況席のマイクを持っている。
しかしその瞬間、観客達の歓声は一瞬にして引っ込み、静寂が訪れる。
子供達でさえも感情を失ったような真顔だ。
「…さあ、花咲選手、次の一手はあるのでしょうかぁー!!」
多口はまるでこの数秒がなかったかのように、通常運転に戻った。
「(でも、これで一番厄介な効果は使わせた)」
灯は冷静さを保ちながら思考し、手札のカードを1枚ピックアップする。
「手札からペイントメージ・シアンを召喚!」
■ペイントメージ・シアン
効果モンスター
レベル4/水/魔法使い/攻撃力1400 守備力1200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地の「ペイントメージ」モンスター1体を除外して発動できる。
そのモンスターと同じ属性のカード名が異なる「ペイントメージ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから水属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを水属性に変更する。
現れたのは、船乗りのような服を纏った、水色の髪の女性のモンスター。
髪は7:3に分けられ、前髪部分が分厚いアシンメトリーになっている。
手に持っている筆の先は水色の絵の具で染まっている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/fCK4IZy
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「ペイントメージ・シアンの効果発動。
墓地のペイントメージを除外して、そのモンスターと同じ属性で名前の異なるペイントメージを、
デッキから特殊召喚できる。
墓地の水属性『ペイントメージ・フキサチーフ』を除外して、
同じ属性のペイントメージ・オウトロメールを特殊召喚!」
■ペイントメージ・オウトロメール
効果モンスター
レベル2/水/魔法使い/攻撃力900 守備力1100
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターと同じ属性の『ペイントメージ』モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから水属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを水属性に変更する。
現れたのは、ラピスラズリのようなボブヘアの藍色の髪をしたメガネの少女のモンスター。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/L2ww7Ir
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「オウトロメールの効果発動。フィールドのモンスター1体を対象に、
そのモンスターと同じ属性のペイントメージをデッキから特殊召喚できる。
デトネイトと同じ炎属性のペイントメージ・フゼインを特殊召喚!」
■ペイントメージ・フゼイン
効果モンスター/チューナー
レベル2/炎/魔法使い/攻撃力700 守備力800
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのモンスターの属性が3種類以上の場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
②:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が1000アップし、
守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
オウトロメールが手をかざすと、木炭に手足がついた小さなモンスターが勢いよく飛び出す。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/V5EGsFk
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「レベルは4+2+2…8ですね」
治がぽろりと呟く。
「レベル4『ペイントメージ・シアン』、
レベル2『ペイントメージ・オウトロメール』に、
レベル2『ペイントメージ・フゼイン』をチューニング!」
フゼインは光の輪となり、その中にシアンとオウトロメールが飛び込む。
「数多の彩より生まれし華麗なる精霊よ、その手で悪しき魂を塗り潰せ!
シンクロ召喚!レベル8!『ペイントメージ・アールヌーヴォー』!」
■ペイントメージ・アールヌーヴォー
シンクロモンスター
レベル8/光/魔法使い/攻撃力3000 守備力2400
チューナー + チューナー以外のチューナーと異なる属性のモンスター1体以上
①:このカードがフィールドに存在する限り、
このカードのS素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。
②:このカードは、S素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスター全てに攻撃できる。
光の中から現れたのは、虹色の羽を持つ錫杖を持った精霊だった。
白い肌に、白いドレスのようなローブを身に纏い、口元は布で隠されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/MKfQLWs
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
アールヌーヴォーは現れると同時に右手の錫杖を上にかざす。
その瞬間、デトネイトは石化したように色を失う。
「アールヌーヴォーが存在する限り、
S素材としたモンスターと同じ属性の相手フィールドのモンスターは、
効果が無効となる」
「アールヌーヴォーは炎属性のフゼインを素材としてる。
怜央…お前のモンスターはもうエンストだよ」
灯が怜央に絶望を突きつける。
怜央は何かに考えを巡らせるように目を伏せ、陰を作っている。
「なんとぉー!!花咲選手が呼び出したモンスターは、
相手フィールドのモンスターを全て機能停止させる強力な効果を持っていたァ!
この一手で情勢は大きく揺れ動くことでしょう!」
「まだ終わりじゃない。ペイントメージがS召喚された時、
手札のペイントメージ・カラメルを特殊召喚できる!」
■ペイントメージ・カラメル
効果モンスター
レベル4/地/魔法使い/攻撃力1600 守備力1900
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ペイントメージ」Sモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
手札のこのカードを特殊召喚し、自分の墓地から「ペイントメージ」モンスター1体を手札に加える。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから地属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを地属性に変更する。
キャラメル色の髪をした垂れ目の少年のモンスターが姿を現す。
パティシエのような服装をしており、
首元までしっかりとボタンで留められた服に、キャラメル色のスカーフがついている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dZ9g9uO
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「この効果で特殊召喚した時、墓地のペイントメージを1体手札に戻す。
墓地のペイントメージ・パレットを手札に加える。
そして、ペイントメージ・パレットはフィールドにペイントメージがいる時、
手札から特殊召喚できる!」
灯は立て続けにモンスターを呼び出す。
チューナーとチューナー以外のモンスターが揃った。
観客達は攻勢が灯に傾いていることを思い知る。
「レベル4地属性ペイントメージ・カラメルに、
レベル2のペイントメージ・パレットをチューニング!」
「豊かな大地の息吹が、迷いを覚悟に塗り替える」
「シンクロ召喚!現れよ、ペイントメージ・ミレー!」
■ペイントメージ・ミレー
シンクロモンスター
レベル6/地/魔法使い/攻撃力2000 守備力2400
チューナー + チューナー以外の地属性モンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードと同じ属性を持つ自分の墓地の「ペイントメージ」Sモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
③:自分フィールドのこのカードと同じ属性のモンスターの攻撃力は、
フィールドのこのカードと同じ属性のモンスターの数×200アップする。
現れたそのモンスターは、茶色いソバージュの髪をした大人びた女性のモンスター。
枯れ葉のようなカーキ色と黄土色のオーバーサイズなローブを纏っている。
手には木の持ち手に白い刃がついた、筆のようなデザインの大きな鍬を持っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ecIroxE
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「ペイントメージ・ミレーの効果発動。フィールドのモンスターの属性を塗り替える。
デッキから炎属性のペイントメージ・フランボワーズを除外して、
自身を炎属性に塗り替える!」
手にしている筆のような鍬の先端が赤く染まり、それを大きく振るうと、
ミレーの髪や服の色が真っ赤に染まってゆく。
長いソバージュの髪はまるで揺れる炎のようだった。
「ペイントメージ・ミレーの効果発動!
1ターンに1度、自分と同じ属性のペイントメージSモンスターを墓地から特殊召喚できる!
蘇れ、ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ!」
■ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ
シンクロモンスター
レベル7/炎/魔法使い/攻撃力2500 守備力2000
チューナー + 「ペイントメージ・ゴッホ」
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分・相手ターンに発動できる。
相手フィールドのこのカードと同じ属性を持つモンスター全てを破壊し、
破壊したモンスターの中で元々の攻撃力が最も高いモンスターの元々の攻撃力分、
相手にダメージを与える。
②:このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、
自分の墓地の「ペイントメージ・ゴッホ」1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、相手ターンでも効果を発動できる。
炎の騎士は再びフィールドに舞い戻る。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/aekOx30
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「鉄城選手による妨害をもろともせず…花咲選手、3体のSモンスターを呼び出したぁ!
ゴッホ・ソレイユは相手の同じ属性のモンスターを破壊し、攻撃力分ダメージを与える効果を持ちます!
もしこの効果が通れば、鉄城選手のデトネイトは破壊され、2800のダメージを負う!
これは鉄城選手の敗北を意味していますッ!万事休すかぁーー!!」
実況は一番の盛り上がりを見せる。
灯のフィールドには3体のSモンスターが揃い踏みしている。
再び怜央に敗北の危機が訪れる。
これで勝負がつくかもしれない。遊次達は息を呑む。
「ペイントメージ・ミレーは、フィールドのミレーと同じ属性のモンスターの数×200、
ペイントメージの攻撃力をアップさせる。
フィールドにミレーと同じ炎属性が4体。よってペイントメージの攻撃力は800アップする」
ペイントメージ・アールヌーヴォー AT3800
ペイントメージ・ミレー ATK2800
ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK3300
灯のモンスター達を赤いオーラが包む。
子供達はこの時、自分達の未来にも影響する勝負であることを初めて痛感した。
ここで怜央が敗北すれば、チームを良い未来をもたらすという願いは断たれる。
ミオの頬を冷や汗が伝った。
灯にとって勝利は目の前だ。
それを実感した途端、灯の中で何かが沸々と湧き上がっていた。
大きな舞台で実力者を前に、自分は今勝利を掴まんとしている。
灯は湧き上がってきたものをそのまま吐き出すように、言葉を紡ぐ。
「これで私も…君に並べるかな。ねぇ…遊次」
灯は自分自身が口にした言葉に、自分ではっとする。
ふと口をついて出た言葉だが、今たしかに、何かを掴んだ感覚があった。
怜央は俯いたまま何も言わない。
その感情は読み取れなかったが、怒りが溢れ出ているような気がした。
その瞬間、怜央の両眼はこちらを睨んだ。
灯は思わずびくっと震えてしまう。
「ゴッホ・ソレイユの効果発動!
このカードと同じ属性の相手フィールドのモンスターを全て破壊し、
元々の攻撃力が最も高いモンスターの攻撃力分、相手にダメージを与える!」
灯はほぼ反射的に効果の宣言をする。
ゴッホ・ソレイユは両手に握った剣に炎を纏わせる。
「怜央っ…!」
俯き続ける怜央の姿に、子供達は身を乗り出して視線を送る。
ミオは思わず、雨の中で怜央と初めて出会った時のことを思い出した。
否、思い出してしまった。
居場所を失い、一歩先の未来でさえ真っ暗だったあの時を。
今の境遇はあの時よりは遥かに良いといえるだろう。
怜央がこの大会で勝ち進むごとに、未来への道を光が照らしてゆき、
ずいぶん先まで見えるようになった。
しかし今、その光が一瞬にして全て消えるような気がした。
その暗闇は今自分がいる現実さえも全て飲み込み、またあの地獄へと後戻りする感覚さえ覚えた。
1度抜け出した暗闇に戻ることは、常に暗闇の中にいることよりも遥かに恐ろしい。
怜央が大会で敗北したとしても、すぐにそこへ戻ることはない。
しかし、1度"踏み外す"ことへの恐怖が増幅し、最悪の未来を想起してしまった。
ゴッホ・ソレイユが怜央に向けて剣を振るう。
纏った炎が怜央のフィールドを今にも襲おうとしている。
その瞬間、ミオは思わず声を上げていた。
「怜央ーー!!!負けないで!!」
その声は空を裂くようにまっすぐ怜央に届いた。
その刹那、怜央はデュエルディスクに触れる。
「…罠カード発動!
『爆焔鉄甲甦燻陣(スチームアーミー・スモルダーリバイバル)』」
怜央のフィールドからデトネイトが消える。
そして直後、怜央のフィールドは大量の黒煙に包まれる。
「なっ…」
思わず灯が声を漏らす。
観客達は何が起きたか目を凝らす。
少しずつ煙が晴れてゆく。すると、その中から2つの赤い光が強く光っていた。
「スモルダーリバイバルの効果。
フィールドの爆焔鉄甲1体をリリースし、墓地の爆焔鉄甲Xモンスター1体を復活させる。
デトネイトをリリースし、
墓地から『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』を守備表示で復活させる」
■爆焔鉄甲甦燻陣(スチームアーミー・スモルダーリバイバル)
通常罠
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体をリリースし、
そのモンスター以外の自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その後、デッキから「スチームアーミー」モンスターを2体選び、
そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
この効果で特殊召喚したモンスターは、1ターンに1度、
相手モンスターの効果を受ける場合、代わりにX素材を1つ取り除くことができる。
②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「RUM」魔法カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
しかし、怜央の行動の意図を観客達も、そして灯も理解できなかった。
フィールドにエクスプロードが守備表示で蘇る。
しかしアールヌーヴォーの効果によりそのボディは石化したように色を失う。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/xCmWHEi
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「さらにデッキから2体の爆焔鉄甲を選び、エクスプロードの素材とする。
『堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』と『爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)』を素材とする」
エクスプロードの周囲を2つの光球が廻りだす。
「でも、ゴッホ・ソレイユの効果は無効になっていない!
特殊召喚されたエクスプロードが破壊されて、お前は2400のダメージを受ける!」
ゴッホ・ソレイユが大剣を振るうと、炎の一閃がエクスプロードを襲う。
しかしエクスプロードはその刃を右手で軽々と受け止める。
「えっ…?」
灯の思考は停止した。
エクスプロードは右手を振るうと、炎の剣は一瞬にして消える。
スタジアムには一瞬、静寂が訪れる。
炎の剣を受け止めたエクスプロードには、
オーバーレイユニットが1つなくなっていた。
「スモルダー・リバイバルで復活したXモンスターは、
オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、その効果を受けない。
よって、ゴッホ・ソレイユの破壊効果は効かねえ」
怜央は堂々と前を向く。
その眼には明確に怒りが宿っていた。
その目を見た灯の中に恐怖心が湧き上がってくる。
「もう俺に勝った気でいんのか。ふざけんじゃねえぞ、灯…。
俺が負けねえって言ったら負けねェんだよ…!」
その目は更に怒りを滾らせ、赤く光っているようにさえ感じた。
「なんと鉄城選手、あと1歩のところでリバースカードによって窮地を脱したァ!
しかし依然ピンチには変わりありません!
鉄城選手、このまま流れをモノにできるのかぁ!」
「でも、アールヌーヴォーの効果でエクスプロードの効果は無効になってる。
ゴッホ・ソレイユの効果で負けることは避けられても、状況は良くなってない」
灯も怜央の気迫に押されぬように、強気の姿勢を保とうとする。
怜央は何も言わない。
彼はデュエル中に余計な言葉をあまり挟むことはない。
その姿が更に気迫を強め、対する者に本能的な恐怖を与えるのだ。
「ッ…!バトル!アールヌーヴォーでエクスプロードを攻撃!」
押し寄せる恐怖を振り払うかのように、灯は強く声を放つ。
アールヌーヴォーは錫杖を掲げ、炎の球を作り出す。
そしてそれをエクスプロードに放つ。
「X素材として取り除かれた墓地のバリケイド・ビルダーの効果発動。
墓地から除外し、フィールドのエクスプロードを指定。
これによってこのターン、エクスプロードは戦闘で破壊されねえ」
アールヌーヴォーが放った火球を、エクスプロードの後ろに現れたバリケイド・ビルダーが
大きな鉄の盾で防ぐ。
「このターン、エクスプロードはバトルで破壊されない。
お前は俺を仕留められねえ」
灯は苦虫を嚙み潰したような表情をしている。
「…バトルフェイズは終了だ。カードを1枚伏せて…ターンエンド」
ため込んだ空気を吐き出すように、会場にざわざわとした音が広がる。
「ここで花咲選手ターンエンドだぁー!!
鉄城選手がバトルでも粘りを見せ、ライフを守りきったぁ!
しかし依然、花咲選手の圧倒的有利!鉄城選手は革命を起こせるのだろうかぁ!」
--------------------------------------------------
【灯】
LP8000 手札:0
伏せカード:1
①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK3800
②ペイントメージ・ミレー ATK2800
③ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK3300
カードの位置:
□■□□□
□□②□③
□ ①
□□①□□
■□□□□
【怜央】
LP2300 手札:0
①爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード) DEF2400 X素材1
永続罠:1(マインフィールド)
--------------------------------------------------
「よっしゃぁー!怜央の兄貴が負けるわけねえんだ!」
リアムは立ち上がり、両手を目一杯挙げて喜びを表す。
「怜央ーー!!がんばってー!!」
リアムの勢いに背中を押され、ランランも大きな声で応援する。
「怜央君、花咲さんの猛攻をよく耐えてはいるけど…。
実際、かなり苦しいんじゃ…」
アキトは子供達には聞こえないように、隣のイーサンに小声で話しかける。
「…あぁ。ドローしても怜央の手札はわずか1枚。
おまけにフィールドのモンスターの効果は全て無効。
ここから逆転するのは至難の業だ」
イーサンは静かに答える。
遊次はその会話を聞きながら、1人で思いを巡らせる。
「(確かにここから逆転すんのは無茶だ。
でも…怜央の頭には負けることなんて1mmも浮かんでねえ)」
遊次の視線は怜央の堂々とした姿に集中する。
「(気ィ抜いたら、吞み込まれちまうんだ。アイツの…
勝つために何もかもぶっ壊そうって目に)」
怜央の瞳孔は完全に開いている。
灯はその目を直視できずにいた。それを誤魔化すように思考を巡らせる。
「(アールヌーヴォーの効果無効とゴッホ・ソレイユの全体破壊。
それにミレーの攻撃力アップ。伏せカードだってある。
怜央の手札1枚でひっくり返せるわけない)」
灯は深呼吸し、息を整える。少しずつ恐怖も落ち着いていくのがわかる。
怜央の目も直視できるようになっていた。
「そんなに睨んだって、もう怖くない。
私には頼れるモンスターがいるから」
灯は目の前の3体のシンクロモンスターに視線を移す。
モンスターもそれに応えるように振り返った後、再び怜央の方を向く。
怜央がデッキトップに指をかける。
脳裏には、かつて力の限りを尽くし、ドミノタウンを支配せんとしていた時の記憶が浮かぶ。
どん底から這いあがるために、怜央は全てを壊し、奪ってきた。
8ヶ月前、遊次との戦いによって自分の生き方は変わった。
それでも、変わらない"執念"があった。
内側から怒りが湧き上がってくるのがわかった。
その怒りは、自分を前に勝ちを確信した灯に向けたものでもあり、
同時にここまで追い詰められた自分自身に向けたものでもあった。
「関係ねえ。全部…ぶっ壊してやるよ。
今まで俺がそうしてきたようにな」
指先に力を込める。
「俺のターン…ドロー!!」
渾身の力で1枚のカードを引く。
引いたのは魔法カードだ。
「魔法カード『貪欲な壺』発動!
墓地の5枚のモンスターをデッキに戻し、2枚ドローする!」
怜央の発動したカードに、灯は少し眉を上げる。
怜央がここでドローソースを引き当てることは、まるで必然であったかのように感じた。
怜央は墓地のアイアン・ドライバー、コンパス・グレネード2枚、
ファーネス・メディック、そしてデトネイトを手にして、
それらをデッキとEXデッキにそれぞれ戻し、2枚のカードを引く。
瞬間、灯には怜央の目に炎が付いたように見えた。
「手札から…速攻魔法発動!
『RUM-エクスプロージョン・フォース』!
エクスプロードを指定し、その1つ上のランクを持つモンスターをX召喚する!」
■RUM-エクスプロージョン・フォース
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターよりランクが1つ高い「スチームアーミー」Xモンスター1体を、
対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いでEXデッキから特殊召喚し、
このカードをそのX素材とする。
②:墓地のこのカードを除外し、フィールドのモンスターを2体まで対象として発動できる。
対象のモンスターの数だけフィールド・墓地から「スチームアーミー」モンスターを選び、
対象のフィールドのモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「(罠カードの効果でエクスプロードは1ターンに1度、私が発動した効果を受けないから、
ゴッホ・ソレイユで破壊することはできない。
でも、恐れる必要はない。切り札を呼び出しても、怜央には何も…)」
灯は言い聞かせるように心で呟く。
「フィールドのエクスプロードを素材に、1つ上のランクを持つモンスターをX召喚する!
再び現れろ、『爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)』!」
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RLUlao2
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
焔を纏った鋼鉄の将軍が再びその姿を現す。
しかしアールヌーヴォーによって色は失われ、石化したような状態となる。
それでも怜央の眼差しは一切揺らぐことはなかった。
「デトネイトのX召喚時、効果発動!
相手フィールドのモンスターの効果を、全て無効にする!」
「さらにデトネイトの効果発動!
オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊する。
アールヌーヴォーを破壊だ!」
「なっ…アールヌーヴォーによって炎属性の効果は無効!無駄な足掻きだ!」
無駄だとわかっているにも関わらず、あまりにも迷いなく効果発動を宣言する怜央に、灯は異を唱える。
「…無駄?違ェな。これはテメェの喉元を掻っ切る一手だ…!」
怜央はまるで獲物の喉元へ今にも噛みつかんとする獣のように、
腰を低くし、前傾姿勢で右手を突き出す。
「墓地の『RUM-エクスプロージョン・フォース』の効果発動!
このカードを墓地から除外し、相手モンスターを2体まで選択。
そのモンスターにフィールド・墓地の爆焔鉄甲を装備する!」
「お前のゴッホ・ソレイユに墓地のメルト・コーポラルを装備する。
そしてアールヌーヴォーに…フィールドのデトネイトを装備する!」
「なッ…!」
灯は怜央の意図を瞬時に理解した。
瞬間、灯もデュエルディスクに触れる。
「…やっとわかったよ、怜央の考えが。やっぱり、すごいね。
でも、そうはいかない!
罠カード発動!『ペイントメージ・カラフル・イリュージョン』!」
■ペイントメージ・カラフル・イリュージョン
永続罠
このカード名の①の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、同一チェーン上では1度しか発動できない。
①:自分フィールドに「ペイントメージ」モンスターが存在する場合、
フィールド上のモンスターの属性の数によって以下の効果を得る。
●1種類以上:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。そのカードを破壊する。
●2種類以上:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動する。
そのモンスターはこのターン、1度だけ戦闘・効果では破壊されない。
●3種類以上:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動する。
そのモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで1500ポイントアップする。
●4種類以上:1ターンに1度、相手がモンスター・魔法・罠の効果を発動した場合に発動できる。その効果を無効にする。
「カラフル・イリュージョンの効果発動!
フィールドに属性が2種類以上いる時、フィールドのペイントメージ1体を選択し、
そのモンスターを1度破壊から守ることができる!アールヌーヴォーを選択!」
灯のフィールドには炎属性と光属性がいるため、この効果を使用可能だ。
アールヌーヴォーは虹色のベールに覆われる。
「チェーン3のエクスプロージョン・フォースの効果によって、
2体の爆焔鉄甲がお前のモンスターに装備される」
ゴッホ・ソレイユの背中にメルト・コーポラルが、
アールヌーヴォーにデトネイトが羽交い絞めにするように装備される。
「永続罠『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の効果により、
装備カードを装備した相手モンスターの攻撃力は500ダウンする」
ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK2500
ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK2000
「チェーン2のデトネイトの効果!アールヌーヴォーを破壊する!」
アールヌーヴォーに装備されたデトネイトは、
アールヌーヴォーの背中から右手を上げ、そこから放射状に炎を放った。
観客達は驚きの表情を浮かべる。
「えっ!アールヌーヴォーの効果で、炎属性の効果は無効になるんじゃ…」
観客席のアキトは理解できず声を上げる。
「いや、怜央はそれを搔い潜ったんだ。思いもよらねえ方法でな」
遊次は口角を上げ、怜央に賞賛の視線を送る。
「でも、カラフル・イリュージョンの効果で、アールヌーヴォーは1ターンに1度破壊されない!」
虹色のベールがアールヌーヴォーを炎から守る。
「アールヌーヴォーは、俺の炎属性モンスターの効果を全て無効にできる。
だが、効果発動後にデトネイトが装備カードとして魔法&罠ゾーンに置かれれば、
アールヌーヴォーの効果の範囲外。
そいつが無効にできるのは、あくまでモンスターゾーンの効果だけだからな。
この状態なら、デトネイトの効果は消えねえ」
怜央は自らのプレイの真意を語る。
「破壊効果は挨拶代わりだ。チェーン1のデトネイトの効果。
相手フィールドのモンスター効果を全て無効にする」
フィールドに白い煙が漂い始める。
煙が明けると、ミレーの効果で上がっていたモンスターの攻撃力は元に戻っていた。
--------------------------------------------------
【灯】
LP8000 手札:0
魔法罠:ペイントメージ・カラフル・イリュージョン
カードの位置:
①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK2500
装備カード:爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)
②ペイントメージ・ミレー ATK2000
③ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK2000
装備カード:爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
□■□□□
□□②□③
□ ①
□□□□□
■□■□■
【怜央】
LP2300 手札:1
永続罠:1(マインフィールド)
--------------------------------------------------
「…皆さん、理解できましたでしょうか!
フィールドで発動されたデトネイトの効果は、本来アールヌーヴォーによって無効化されます!
しかし、鉄城選手はあろうことか、効果解決前にデトネイトを相手モンスターに装備することで、
アールヌーヴォーの無効効果から逃れたのです!」
「その結果、デトネイトの破壊効果と全体無効効果は有効!
破壊効果は罠カードによって防がれましたが、花咲選手のモンスター効果は全て無効となってしまったァ!
アンビリーバボォー!絶体絶命と思われた鉄城選手、まさかの奇策で一矢報いたァ!」
実況の多口の解説によって、観客達は状況を完全に把握したようだ。
同時に怜央の頭の回転の速さに驚きの声を上げている。
「怜央のデッキの特徴上、爆焔鉄甲を相手モンスターに装備する効果は、
爆弾を相手に着けて、破壊を連鎖させるために使うことがほとんどだ。
しかし怜央は、固定概念に囚われず、
召喚したばかりの切り札を相手に装備させるという一手を打った。
自分のデッキを熟知しているが故の戦術だな」
イーサンは心から感心したように話す。
「アイツは勉強はできねえが、デュエルに関しちゃ異常に鼻が利く。
地獄を生き抜いてきたが故の"本能"ってヤツかもな」
ドモンは腕を組みながら笑みを浮かべる。
「がんばれーー怜央ーー!!」
「負けるな、兄貴ィーー!!」
ランランとリアムは勢いづいた怜央に更なる声援を送る。
「俺のモンスターの効果は、デトネイトによって無効化された。驚いたぜ。
でもお前の想定じゃ、デトネイトでアールヌーヴォーを破壊して、
追加効果でもう1体のモンスターを破壊するつもりだったはずだ」
灯は勝ち気に言い放つ。
「だが、それは叶わなかった。仮にここからゴッホ・ソレイユを破壊できても、
効果でゴッホを復活させ、相手ターンで破壊とダメージを与える効果を使うことができる。
俺のライフを削る前に、お前のライフが焼き切れるのが先だ」
アールヌーヴォーの無効効果とゴッホ・ソレイユの破壊効果を失い、
してやられた形となった灯だが、まだ闘志は失っていなかった。
実際、怜央のフィールドにモンスターはいない。手札はたった1枚。
その状況で灯のフィールドを崩す絵は、誰にも想像できなかった。
「…最後に聞くぜ。戦う理由とやらは見つかったのかよ」
怜央は灯にまっすぐ問いかける。
「…最後?」
灯は疑問を投げかけるも、怜央は何も言わない。
灯は胸に手を当て、言葉を紡ぎだす。
「怜央にも、遊次にも…誰にも、置いて行かれたくない。
追いつきたいって思ったから、私はこの大会に出た。
それと、遊次の願い…ドミノタウンの皆を笑顔にするって願いを叶えたいっていうのも本当。
このデュエルが始まった時は、まだ自分の心を整理できてなかった」
「でも…さっき、何かが見えた気がしたんだ。
怜央に勝てると思った、あの時」
前のターン、ゴッホ・ソレイユによってデトネイトを破壊し、
攻撃力分のダメージを与えれば灯の勝利という場面。
(これで私も…君に並べるかな。ねぇ…遊次)
「(あれは、皆に置いて行かれたくないっていうだけの気持ちじゃない。
もっと、私の心の奥に眠ってるものに触れたような…)」
灯は言葉の続きを紡げずにいた。
まだ自分の心を理解しきったわけではなかった。
「まだ答えは出てねえみたいだな。
なら、俺が感じたことを1つ教えてやる」
怜央は灯の言葉を待たず、先に言葉を投げかける。
灯は怜央を見つめる。
「お前には、どうしてもこの戦いに勝たなきゃならないっていう"執念"がねえ」
「…!」
灯ははっとした。
少なくとも、すぐに怜央に反論することはできなかった。
「まだ戦う理由を探ってるっていう迷いもあるだろうが…それでも、感じねぇ。
遊次と戦ったマルコスって奴にも、死んでも負けられねえって気迫があった」
「だが、お前は違う。
口ではどんなに"遊次の願いを叶えたい"なんて言ってても、感じねえもんは感じねえ」
「なっ…!それは違う!私は本当に…」
灯はすぐに怜央の言葉を否定する。
遊次の願いを叶えたいというのは正真正銘、灯の本心だったからだ。
「"叶えたい願い"と"叶えなきゃならねえ願い"は違ェ。
俺とお前の決定的な差はそこだ」
怜央はデュエルディスクに触れる。
「墓地の『爆焔鉄甲甦燻陣(スチームアーミー・スモルダーリバイバル)』を除外して効果発動。
墓地の『RUM』魔法カードを1枚、手札に加える。
俺は墓地から『RUM-リラプス・フォース』を手札に加える」
このRUMは最初の怜央のターンでデトネイトを呼び出す時に使用したカードだ。
「(RUM…それを使ってまたデトネイトを呼び出す?
でも、デトネイトはこのターンもう効果を使えないはず)」
灯の意識は再びデュエルへと集中する。
「明日、自分が生きてるのかすらもわからねえ…俺はそんな地獄にいた。
居場所のねえガキ共の思いも背負って、二度と奪われねえために戦ってきた。
毎日、毎日な。
だが、いくらもがいても暗闇から抜け出せる気はしなかった」
「遊次と戦って、俺が負けた。だが、あの時から少しずつ光が見えるようになった。
この先に、俺が本当に求めてたモンがあるってわかったからだ」
「チームの…子供達の未来、だね」
灯の言葉に怜央は1度小さく頷く。
怜央の言葉に、観客席の子供達も耳と目を傾けている。
彼は他の誰でもない、自分達のために戦っているのだ。
子供達は今一度それを心に強く留める。
「地獄の底から見上げてたあの空に…もうすぐ届くんだ。
あとちょっと、手を伸ばすだけで…!」
"子供達を良い未来に導く"という願いの成就。
そのためには、ヴェルテクス・デュエリアの優勝こそが、
今の怜央にとって最善のルートであった。
予選を通過し、本戦で優勝する。
そこに到達して初めて、願いを叶えるという報酬が手に入る。
遠い道のりのように見えるが、目の前すら闇に覆われていた昔の怜央からすれば、
今はもう、願いの目の前だった。
「だから…俺は、どうしても勝たなきゃならねえんだ」
怜央は胸の前で強く拳を握る。
「エンストなんざしねェよ…。
この身が燃え尽きようが、俺は"願い"を掴む!」
「『RUM-リラプス・フォース』発動!
墓地の爆焔鉄甲Xモンスター1体を素材に、1つ上のランクのモンスターをX召喚する!」
怜央 LP2300 → 1150
カードの代償として、怜央の身体が燃え、ライフが削られる。
それでも彼は前を見つめ、灯を睨み続ける。
その姿はまさに、願いへの"執着"そのものだった。
灯はただ、その姿を見ていることしかできなかった。
「切り札を隠し持ってんのはお前だけじゃねぇ。
俺にも…見せてねえ力がある」
怜央はEXデッキから1枚の黒きカードを手にする。
「そんな、まさか…」
灯は、自分の身体が打ち震えるのがわかった。
怜央の尋常でない執念の炎が、自分に襲い掛かるのを予感した。
「俺は墓地の『爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)』を選択!
ランクアップエクシーズチェンジ!」
鋼鉄の機関車が現れ、それは地面に浮かんだ黒い渦に呑まれてゆく。
「暴走する鋼鉄の覇者よ、燃え上がる戦士の魂を乗せ、勝利の彼方へ突き進め!」
「エクシーズ召喚!ランク5!
『爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス)』!」
■爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス)
エクシーズモンスター
ランク5/炎/機械/攻撃力2500 守備力3000
レベル5モンスター×2
このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
「スチームアーミー」モンスターを装備した相手モンスターの攻撃力は、
装備している「スチームアーミー」モンスターの攻撃力分ダウンする。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分フィールドの「スチームアーミー」カードは相手の効果で破壊されない。
③:このカードのX素材を2つまで取り除いて発動できる。
取り除いた数だけデッキから「スチームアーミー」モンスターを特殊召喚する。
黒い渦の中から炎の線路が縦横無尽に伸びると、
炎を纏った列車がその上を走り、やがて怜央の前で停車する。
その鋼鉄の列車はレイル・エクスプレスとは異なり、近未来的な姿をしている。
光沢のある赤いボディをしており、車輪と機体の連結部分は機関車のように黒い。
列車の頭部はサイの角を彷彿とさせる頑強なデザインだ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/BcwMtxm
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「『RUM-リラプス・フォース』は発動後、ブレイブロード・エクスプレスの素材となる」
ブレイブロード・エクスプレスの周囲には2つのオーバーレイユニットが回っている。
灯は目の前に現れた巨大な赤き列車に唖然とする。
しかし、すぐに灯のモンスターに異変が起きていることに気が付く。
ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK0
ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK0
「なに、これ…」
ブレイブロード・エクスプレスが現れると同時に、
スチームアーミーが装備されている灯の2体のモンスターの攻撃力が0となっていた。
「なんとぉー!!切り札はデトネイトだけではなかったァー!
さらに、花咲選手のモンスターの攻撃力が0となっているぅ!一体何が起きているのかぁー!!」
「ブレイブロード・エクスプレスがいる限り、
相手モンスターは、装備した爆焔鉄甲の攻撃力分、攻撃力が下がる」
アールヌーヴォーは装備したデトネイトの攻撃力分、
ゴッホ・ソレイユはメルト・コーポラルの攻撃力分、攻撃力が下がっている状況だ。
罠カード『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の攻撃力ダウンも加わり、
2体のモンスターの攻撃力は底を尽きている。
「ブレイブロード・エクスプレスの効果発動!
オーバーレイユニットを2つ取り除き、デッキから爆焔鉄甲を2体、特殊召喚する!
来い、『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』、
『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』!」
■爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1300 守備力1800
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このターン墓地に送られた「爆焔鉄甲 炉衛生兵」以外の
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
③:手札の「スチームアーミー」モンスター1体を捨てて発動できる。
自分はデッキから2枚ドローし、その後1枚選んでデッキの一番下に戻す。
■爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1800 守備力900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を手札に加える。
③:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、相手に800ポイントのダメージを与える。
赤い十字マークが描かれた鉄の帽子を被った銅色の機兵と、
肩から腕にかけてライフルが取り付けられた銅色の機兵が姿を現す。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/pdPIdaY
ttps://imgur.com/a/sp2cODa
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「バーン・スナイパーの特殊召喚時、効果発動。
デッキから爆焔鉄甲1体を手札に加える。
手札に加えるのは『爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』」
「さらにバーン・スナイパーの効果発動。
1ターンに1度、相手の魔法・罠を1枚破壊し、800のダメージを与える。
カラフル・イリュージョンを破壊!」
「っ…!なら、カラフル・イリュージョンの効果発動!
1ターンに1度、相手の魔法・罠を破壊できる!お前のフィールドの永続罠を破壊!」
虹色の波動が怜央の罠カードを襲うが、炎熱の防御層によってそれは防がれる。
「なっ…!」
「残念だったな。ブレイブロード・エクスプレスがいる限り、
俺の『スチームアーミー』カードは相手の効果で破壊されねえ。
チェーン1のバーン・スナイパーの効果でお前の罠カードは破壊される」
灯はバーン・スナイパーの効果でダメージを受ける。
LP8000→7200
灯は手を尽くすも、それを怜央が全て上回る。
灯は怜央の烈火の勢いがまだ続くことを確信した。
「『爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』を召喚!」
ドライバーを手にした錆びた鋼の機兵が現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/G1Rx3tK
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「アイアン・ドライバーの効果発動。
手札を1枚捨て、デッキから爆焔鉄甲1体を特殊召喚し、1体を墓地に送る」
「アイアン・ドライバーの効果で、手札の『爆焔鉄甲 鍵発射弾(キー・ロケットボム)』を捨て、
デッキから『爆焔鉄甲 機動歩兵(マヌーヴァー・インファントリー)』を特殊召喚!
さらに墓地へ『爆焔鉄甲 明照夷弾(ランタン・ナパーム)』を送る」
現れたモンスターは、頭部は角ばったデザインで、中央に単眼のゴーグルが光っている。
手には小銃を抱えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/Qz9HQWx
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「手札から捨てられたキー・ロケットボムの効果発動。
手札から捨てられた場合、墓地の『スチームアーミー』カードを1枚手札に戻す。
選択するのは速攻魔法『爆焔鉄甲加速纏炎(スチームアーミー・ブーストフレイム)』」
「ファーネス・メディックの効果発動!
このターン墓地に送られた爆焔鉄甲1体を特殊召喚できる!
蘇れ、『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』!」
赤と黒のボディをした炎の機兵が、蒸気と共にフィールドに再び現れる。
これで怜央のフィールドには5体のモンスターが並んだ。
「墓地のランタン・ナパームの効果発動。墓地のこのカードを、
爆焔鉄甲Xモンスターのオーバーレイユニットにできる。
ブレイブロード・エクスプレスの素材とする」
「ブレイブロード・エクスプレスを対象に、
速攻魔法『爆焔鉄甲加速纏炎(スチームアーミー・ブーストフレイム)』発動。
攻撃力がX素材の数×500アップし、このターン2度の攻撃を可能とする」
爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス) ATK 2500→3000
「さあ、準備は整ったぜ。覚悟はいいな、灯」
--------------------------------------------------
【灯】
LP7200 手札:0
カードの位置:
①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK0
装備カード:爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)
②ペイントメージ・ミレー ATK2000
③ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK0
装備カード:爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
□□□□□
□□②□③
① ①
②③④⑤□
■□■□■
【怜央】
LP1150 手札:1
①爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス) ATK3000
②爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック) ATK1300
③爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー) ATK1800
④爆焔鉄甲 機動歩兵(マヌーヴァー・インファントリー) ATK1900
⑤爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード) ATK2400
永続罠:1(マインフィールド)
--------------------------------------------------
灯は目の前の巨大な列車と、4体の機兵の威圧感に戦慄する。
この光景こそ、怜央の"願い"への執念そのもの。
灯は俯き、拳を強く握る。心には様々な感情が入り乱れていた。
(お前には、どうしてもこの戦いに勝たなきゃならないっていう"執念"がねえ)
怜央に言われた言葉が頭の中で響いている。
「(…本当は、心のどこかでわかってたのかもしれない)」
(口ではどんなに"遊次の願いを叶えたい"なんて言ってても、感じねえもんは感じねえ)
「(向き合わなきゃいけないんだ。
心の奥に根を張ってる、私の本当の願いと)」
灯は意を決して前を向く。
「信じられません!
少し前まで、鉄城選手のフィールドには、効果が無効となったXモンスター1体しかいませんでした!
しかし今、5体ものモンスターが立ち並んでいる!
対して、花咲選手のモンスターは効果が無効となり、攻撃力は風前の灯火!
この大逆転を誰が予想したでしょうかァー!!」
観客席にいるチームの子供達は、怜央の巻き起こした逆転劇に興奮し、歓喜している。
遊次とイーサンは真剣な表情でデュエルの行く末を見届けようとしている。
灯の姿を見つめ、彼女の心がここで折れることはないということだけは2人とも確信していた。
「行くぜ。バトル!
ブレイブロード・エクスプレスで、ペイントメージ・ミレーを攻撃!」
列車は全体に炎を纏い、それは大きな渦となる。
灯のフィールドに向かって炎の線路が引かれると、列車はミレーに向かって猛進する。
ミレーは手にしていた大きな鍬を構えるも、あえなく破壊され、巨大な炎の渦は灯ごと飲み込む。
「うあああああ!!」
灯 LP7200 → 6200
灯のフィールドに残されたのは、爆焔鉄甲が装備され弱体化した2体のモンスターのみだ。
「ブレイブロード・エクスプレスは、速攻魔法により2度の攻撃が可能!
ペイントメージ・アールヌーヴォーに追撃ッ!」
線路はU字を描き一度怜央のフィールドへと戻る。
その後、アールヌーヴォーへと伸びてゆき、業火の列車はスピードを落とすことなく突進する。
地を抉るほどの巨大な炎の渦はアールヌーヴォーを破壊し、再び灯を襲う。
「うああああっ!!」
灯 LP6200 → 3200
灯は後方へ吹き飛ばされ、そのまま倒れる。
しかし、すぐに地へ腕をつき、必死に立ち上がろうとする。
ヴェルテクス・デュエリアに参戦を決めた時のことが、灯の脳裏に蘇る。
それは、メインシティで七乃瀬美蘭の大きな看板を目にした時だ。
「(あのとき私は、自分の力で上り詰めたあの子を見て…置いて行かれたくないと思った。
それと同じ気持ちを、ヴェルテクス・デュエリアのずっと先で待ってる遊次にも感じたんだ。
だから私は衝動的に、この大会に出ることを決めた)」
立ち上がった灯の姿を見て、怜央はバトルを続行する。
「バーン・スナイパーで、ゴッホ・ソレイユを攻撃!」
バーン・スナイパーは手にしたライフルのスコープを除き、一発の銃弾を放つ。
銃弾が一瞬にしてゴッホ・ソレイユを貫くと、その体は宙へと浮き、爆ぜる。
灯 LP3200 → 1400
灯は右手で攻撃から顔を庇うようにすると、その手を下ろし、再びフィールドに視線を向ける。
「(あの時感じた、遊次に置いて行かれたくないって気持ちが…多分、私の本当の願いに繋がってる。
でも、私はそれに気付いてなかった。いや、気付かないふりをしてた)」
「(だってその願いは…
子供達の未来のために戦う怜央と、町の人達の笑顔のために戦う遊次に比べて、
ずっとちっぽけで…ずっと自分勝手なものだから)」
「(だから私は、この大会に賭ける願いを、
"遊次の願いを叶える"なんてことにして、戦う理由にしてた。
でも…それは私の心の奥の奥にある、本当の願いじゃない)」
灯は心の中で"戦う理由"への答えを求めながらも、最後まで戦う意思を止めていない。
「ゴッホ・ソレイユが破壊された時、墓地のペイントメージ・ゴッホを蘇らせることができる!
来い、ペイントメージ・ゴッホ!」
ガラ空きとなった灯のフィールドに、炎の筆の剣を持った戦士が守備表示で現れる。
ペイントメージ・ゴッホ DEF1500
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ND1RphH
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「ゴッホ・ソレイユの効果で特殊召喚されたゴッホは、
相手モンスターを破壊して攻撃力分のダメージを与える効果を、相手ターンに使用可能となる!
しかし、鉄城選手のブレイブロード・エクスプレスによって、爆焔鉄甲カードは効果で破壊することができない!
せっかく呼び出したゴッホは、壁モンスターとしての役割しか果たせない!」
実況の多口が戦況を分析する。
「マヌーヴァー・インファントリーで、守備表示のゴッホを攻撃!」
マヌーヴァー・インファントリーが手にした小銃を乱射すると、あえなくゴッホは破壊される。
これで正真正銘、灯のフィールドにはモンスターがいなくなった。
伏せカードも、手札もない。
これこそがこのデュエルの終着点であることを、誰しもが理解した。
灯は目を瞑り、自らの心に最後の問いかけをする。
「(私の本当の願いは…きっと、あの時から始まってたんだ)」
灯は、かつて遊次と公園で約束をした時の、遠い記憶へと思いを馳せる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「私、遊次に出会ってから、ほんとに毎日が楽しくて…。すっごくきらきらしてた。
遊次には、人を笑顔にする力があるんだよ。
遊次なら絶っ対、この町の人達を元気にできる!」
「だから、私も君の傍で、君を守って、君を支え続けられたらいいなって」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「(私も遊次の夢を叶えたいと、心から思った。そこに嘘はないんだ。
でも…そのもっと奥に、私のほんとの気持ちがある)」
灯はゆっくりと目を開く。
怜央は灯が答えを得たことを理解した。
そして、ゆっくりと右手を振り下ろす。
「『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』でダイレクトアタック!」
エクスプロードが左手のバーナーを灯に向ける。
灯は真っ直ぐとそれを見つめている。
観客席の灯の父は目を見開き、母は目を閉じ、娘の敗北を受け入れようとしている。
あの時、私が遊次の傍で、遊次を支え続けたいと思ったのは…
ただ、君の傍にいたかったから。
ただ、それだけだったんだ。
私がこの大会に出なかったら、遊次がもっと遠くに行っちゃう気がした。
美蘭の看板を見た時、遠くにいったあの子を見て…そこに遊次を重ねてたんだ。
遊次の夢を手伝いたいって…傍で支え続けたいって思ったのも、嘘じゃない。
でも私にとって一番大事なのは、君の傍にいることだったんだ。
私の願いは、君の隣にいること。
ただそれだけ。
エクスプロードの左手のバーナーから炎が放たれる。
これにて、勝負は決した。
灯は、敗北した。
しかし同時に、自分自身の本当の願いに辿り着いた。
灯 LP1400 → 0
「決まったァーー!!
2回戦にコマを進めたのは、鉄城怜央ッ!!」
会場は観客達の大喝采で埋め尽くされる。
子供達は怜央の勝利に歓喜している。
遊次とイーサンは、彼らの戦いそのものに敬意を示し、ただ静かに拍手を送った。
戦いが終わるとともに、灯の体から全ての力が抜け落ちた。
灯はそのままフィールドに座り込む。
怜央は灯の前まで歩みを進め、彼女を見下ろしながら問いかける。
「見つかったのかよ。戦う理由ってヤツは」
「…うん」
灯は小さな声で呟くように応えた。
灯は、両手で顔を覆っている。
怜央は灯を見下ろし続ける。
しばらく考えた後、怜央が口を開く。
「俺は、俺を信じてついてきた奴らに報いるためなら、命も惜しくねえ。
命賭けられるぐらい大事なモンなら、それがお前の戦う理由だ」
怜央は灯に背中を向ける。
「俺はお前に勝った。なら、俺がやるべきことは1つだけだ。
…俺が全員ブッ潰して、テッペンとってやる。
だから…」
「ここで全部出しきっとけ。そうすりゃ、後は立ち上がるだけだ」
怜央が歩みを進め、その場から立ち去る。
残された灯の顔は、悔し涙でぐちゃぐちゃに濡れていた。
灯はこの戦いを経て、自分の本当の願いを知った。
この大会に出なければ、遊次に置いて行かれる気がした。
遊次はいつも前に歩み続けるからだ。
自分も同じように前に進まなければ、自分の心に根差す"願い"が揺らぐ気がした。
それが、灯にとっての戦う理由だった。
しかし、この敗北によって、それは果たせなかったことになる。
遊次に置いて行かれるという焦燥は、未だ灯の胸に燻り続けているのだ。
自分自身の本当の願いを知らないまま戦いに臨んだとはいえ、灯は100%の力を出して、怜央に敗北した。
それは、自分の願いが、怜央の願いに及ばなかったという意味に等しかった。
言葉にできない悔しさが涙として溢れ、それはしばらく止まらなかった。
それから1時間後、同時進行していた他の参加者たちのデュエルも全て決着がついた。
遊次たち一同は、スタジアムの大画面前に集まっていた。
1回戦の結果が発表されるためだ。
(灯、怜央!マジですげーデュエルだった!)
戦いが終わった2人を笑顔で迎える遊次の姿を、灯は思い出している。
(怜央、お前デトネイトだけじゃなくて、あんなヤベーカード持ってたのかよ!
絶対に勝ち上がってこいよ!お前と戦えるのは決勝戦だからな!)
遊次の激励の言葉に怜央も対抗心を燃やしていた。
そして遊次は灯の方を向き、またとびきりの笑顔を見せた。
(灯、すげー強くなったな!)
灯がフィールドで泣いていたことには特に触れず、遊次はただ自分の思いをぶつけた。
(…うん、ありがとう)
灯はその真っ直ぐさに素直に感謝した。
(改めて思ったぜ。
お前がNextにいてくれれば、俺の夢は絶対に叶うってな!)
遊次は灯の肩に手を置き、優しい笑顔で語り掛ける。
灯は、また涙が溢れそうになった。
しかしそれは、悔しさや哀しみからではなく、喜びと安心感からだった。
「お前がいてくれれば、俺の夢は絶対に叶う」
この言葉は、遊次に置いて行かれると焦りを募らせていた灯を救う一言だった。
「さーて、次の相手は誰かなぁ~~!」
遊次はすでに次の自分の戦いのことで頭がいっぱいだった。
「(勝手に置いていかれるなんて焦って…あんなに泣いたのがバカみたい)」
灯はその姿を微笑みながら見つめる。
「(でも、私の戦う理由は、これからも絶対に変わらない。
遊次の隣で、遊次の夢を叶えるために…私はもっと強くなってみせる)」
灯は心の中で決意する。
そして、会場にアナウンスが流れる。
「それでは、1回戦の結果を発表します」
大画面にトーナメント表が映し出される。
会場中のデュエリスト達が、一斉にそこへ視線を集める。
トーナメント表:
ttps://imgur.com/a/Bta0JUz
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「お、俺の次の対戦相手は…『空蝉空海』って奴か。早く戦いてえー!」
「気が早いな。2回戦は1週間後だぞ」
いつもと変わらぬ調子ではしゃぐ遊次に、イーサンが冷静に水を差す。
「俺の相手は…"虹野譲"ってヤツか。誰が相手だろうとブッ潰すだけだ」
怜央も次の戦いへ闘志を燃やす。
「…!」
突如、怜央は背後から視線を感じる。
振り向くと、車椅子に乗った桃色の瞳を持つ青年が、妖しさをはらんだ目で怜央を見つめていた。
「(アイツが…虹野譲か)」
視線の正体を怜央は瞬時に理解した。
怜央は彼に真っ向から視線をぶつける。
数秒見つめあった後、虹野譲は車椅子のタイヤを転がし、踵を返す。
「鉄城怜央クン…か。君の願いへの執着は相当なモノだ。
でも…」
譲は車椅子を転がしながら一人呟く。
("叶えたい願い"と"叶えなきゃならねえ願い"は違ェ。
俺とお前の決定的な差はそこだ)
会場で怜央が灯に放った言葉を、譲は思い返していた。
怜央と灯がデュエルを行っていた時、別のフィールドで譲も戦っていたが、
早々に勝利し、2人のデュエルを観戦していたのだ。
「(君の願いは、"叶えなきゃならない願い"なんかじゃない。
君は次の戦いで、きっとそれを思い知ることになる)」
譲は後ろを振り返り、怜央の背中に強い視線を送る。
その瞳は、強い敵意に満ちていた。
スタジアムの外の緑豊かな公園で、ある男は1人、
道路を走る車や、街を行きかう人々を見つめていた。
その男は法衣を纏い、大きな黒い数珠を肩から下げた僧侶だった。
「…欲が渦巻いている。汚らわしい、欲望が」
男は手を合わせながら目を瞑り、呟く。
「全て、浄化せねばならない。私の"願い"の力で」
男は公園から、道行くある1人の男の姿を凝視していた。
それは仲間達とともに帰路へつく、遊次の姿だった。
1週間後、激戦は再び始まる。
【隕石衝突まで…残り293日】
第34話「ただそれだけ」完
この世界とモンスターワールドを繋ぐ装置≪パラドックス・ブリッジ≫。
それを起動するための6つの鍵は世界に点在している。
ニーズヘッグはすでにその内の4つを手にしていた。
残り2つの鍵の在処を探るため、七乃瀬美蘭は、
卓越した変装技術で、西洋の国「フォランセ」の高級キャバレーに潜入する。
14年前にパラドックス・ブリッジの開発に携わった男から情報を引き出すため、
美蘭は特権「強制オースデュエル」を発動。
変幻自在の「リザージュ」デッキは幻影のように相手を惑わせる。
次回 第35話「シークレット・ミッション」
今回から、モンスターのイラストを追加しました。
過去のデュエルやカードリストにも全てモンスターのイラストを追加したので、
ぜひ見てみてください。
ヴェルテクス・デュエリア2次予選 第5試合。
灯と怜央のデュエルは両者譲らず熾烈を極める。
怜央は「爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)」により、灯のフィールドを全て破壊するも、
代償として多くのライフを失った。
--------------------------------------------------
【灯】
LP8000 手札:2
魔法罠:0
カードの位置:
□□□□□
□□□□□
□ □
□□①□□
■■□□□
【怜央】
LP2300 手札:0
①爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト) ATK2800 X素材1
伏せカード:2
--------------------------------------------------
「俺のターン、ドロー!」
灯はデッキトップから素早くカードを引く。
「墓地の魔法カード『ペイントメージ・ポリクローム』を除外して効果発動!
自分フィールドにモンスターがいない時、デッキからペイントメージを特殊召喚できる」
「その効果にチェーンしてトラップ発動!
『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』!
1ターンに1度、相手の特殊召喚されたモンスターに、
デッキから爆焔鉄甲モンスターを装備する」
■爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)
永続罠
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
装備カードを装備している相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
②:相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
その特殊召喚されたモンスター1体を選び、
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を選び、そのモンスターに装備カード扱いとして装備する。
③:自分・相手メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、
自分の除外状態の「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
「チェーン1のペイントメージ・ポリクロームの効果。デッキからペイントメージを特殊召喚する。
来い、ペイントメージ・シャンパーニュ!」
■ペイントメージ・シャンパーニュ
効果モンスター
レベル4/光/魔法使い/攻撃力1900 守備力1100
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分の墓地のレベル4以下の「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから光属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを光属性に変更する。
薄い黄色を基調とした金髪の燕尾服の少年のモンスターが現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/hZhPWdu
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「シャンパーニュの特殊召喚時、効果発動。
墓地のレベル4以下のペイントメージを特殊召喚できる。
墓地のシンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』を選択!」
「その効果にチェーンして罠カード
『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の効果発動!
特殊召喚されたシャンパーニュに、デッキから『爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を装備する」
シャンパーニュの身体に、羅針盤型の手榴弾が鎖を巻き付ける。
「シャンパーニュの効果により、墓地からペイントメージ・カードルを特殊召喚!」
額縁に女性の顔が刻まれたモンスターが再びフィールドに現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4dBZhzU
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
灯と怜央の間に流れる時間がわずかに停止したように、一瞬の間が生じる。
その後、怜央が口を開く。
「デトネイトの効果発動。1ターンに1度、相手モンスターを破壊する。
破壊したモンスターが爆焔鉄甲を装備してた場合、もう1枚カードを破壊できる。
破壊するのは当然、ペイントメージ・シャンパーニュだ」
怜央が人差し指と中指で銃のような形を作り、コンパス・グレネードが巻き付いたシャンパーニュを指し示す。
灯は真剣な表情で自分のモンスターを見つめる。
「お前のフィールドのペイントメージ・カードルは、お互いのターンにいつでもS召喚できる効果を持つ。
本来ならここでカードルの効果を発動して、カードルとシャンパーニュでS召喚すれば、
デトネイトの破壊効果を回避できる。だが、この状況じゃそれはできねえ」
灯はただ怜央の言葉を待つ。その表情には驚きは見て取れない。
怜央がこれから言うことは灯自身も理解しているようだ。
「シャンパーニュに装備されたコンパス・グレネードは、
装備モンスターをいかなる素材にもさせない効果を持つ。
よって、お前はデトネイトの破壊効果を受け入れるしかねえ」
デトネイトは右手に炎を集中させ、一気に放つ。
シャンパーニュは一瞬にして炎の渦に飲み込まれ、破壊される。
「デトネイトがスチームアーミーを装備したモンスターを破壊した時、もう1枚カードを破壊できる。
ペイントメージ・カードルを破壊だ」
シャンパーニュを燃やし尽くした炎はカードルへ向かう。
額縁は一瞬にして燃え上がり、破壊される。灯のフィールドは更地となった。
この後、コンパスグレネードの「装備モンスターの隣のカードが破壊される」強制効果が発動するが、
灯のフィールドにカードはないため、不発に終わる。
「さっそく鉄城選手のモンスターが牙を剥いたァ!
罠カードとXモンスターのコンボにより、2体のモンスターを同時破壊!
まさに花咲選手の"鼻先"を折る…なーんてねぇ!」
実況の多口は、まるで一曲歌い上げたシンガーが如く机に片足を乗せ、実況席のマイクを持っている。
しかしその瞬間、観客達の歓声は一瞬にして引っ込み、静寂が訪れる。
子供達でさえも感情を失ったような真顔だ。
「…さあ、花咲選手、次の一手はあるのでしょうかぁー!!」
多口はまるでこの数秒がなかったかのように、通常運転に戻った。
「(でも、これで一番厄介な効果は使わせた)」
灯は冷静さを保ちながら思考し、手札のカードを1枚ピックアップする。
「手札からペイントメージ・シアンを召喚!」
■ペイントメージ・シアン
効果モンスター
レベル4/水/魔法使い/攻撃力1400 守備力1200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地の「ペイントメージ」モンスター1体を除外して発動できる。
そのモンスターと同じ属性のカード名が異なる「ペイントメージ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから水属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを水属性に変更する。
現れたのは、船乗りのような服を纏った、水色の髪の女性のモンスター。
髪は7:3に分けられ、前髪部分が分厚いアシンメトリーになっている。
手に持っている筆の先は水色の絵の具で染まっている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/fCK4IZy
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「ペイントメージ・シアンの効果発動。
墓地のペイントメージを除外して、そのモンスターと同じ属性で名前の異なるペイントメージを、
デッキから特殊召喚できる。
墓地の水属性『ペイントメージ・フキサチーフ』を除外して、
同じ属性のペイントメージ・オウトロメールを特殊召喚!」
■ペイントメージ・オウトロメール
効果モンスター
レベル2/水/魔法使い/攻撃力900 守備力1100
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターと同じ属性の『ペイントメージ』モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから水属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを水属性に変更する。
現れたのは、ラピスラズリのようなボブヘアの藍色の髪をしたメガネの少女のモンスター。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/L2ww7Ir
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「オウトロメールの効果発動。フィールドのモンスター1体を対象に、
そのモンスターと同じ属性のペイントメージをデッキから特殊召喚できる。
デトネイトと同じ炎属性のペイントメージ・フゼインを特殊召喚!」
■ペイントメージ・フゼイン
効果モンスター/チューナー
レベル2/炎/魔法使い/攻撃力700 守備力800
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのモンスターの属性が3種類以上の場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
②:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が1000アップし、
守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
オウトロメールが手をかざすと、木炭に手足がついた小さなモンスターが勢いよく飛び出す。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/V5EGsFk
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「レベルは4+2+2…8ですね」
治がぽろりと呟く。
「レベル4『ペイントメージ・シアン』、
レベル2『ペイントメージ・オウトロメール』に、
レベル2『ペイントメージ・フゼイン』をチューニング!」
フゼインは光の輪となり、その中にシアンとオウトロメールが飛び込む。
「数多の彩より生まれし華麗なる精霊よ、その手で悪しき魂を塗り潰せ!
シンクロ召喚!レベル8!『ペイントメージ・アールヌーヴォー』!」
■ペイントメージ・アールヌーヴォー
シンクロモンスター
レベル8/光/魔法使い/攻撃力3000 守備力2400
チューナー + チューナー以外のチューナーと異なる属性のモンスター1体以上
①:このカードがフィールドに存在する限り、
このカードのS素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。
②:このカードは、S素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスター全てに攻撃できる。
光の中から現れたのは、虹色の羽を持つ錫杖を持った精霊だった。
白い肌に、白いドレスのようなローブを身に纏い、口元は布で隠されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/MKfQLWs
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アールヌーヴォーは現れると同時に右手の錫杖を上にかざす。
その瞬間、デトネイトは石化したように色を失う。
「アールヌーヴォーが存在する限り、
S素材としたモンスターと同じ属性の相手フィールドのモンスターは、
効果が無効となる」
「アールヌーヴォーは炎属性のフゼインを素材としてる。
怜央…お前のモンスターはもうエンストだよ」
灯が怜央に絶望を突きつける。
怜央は何かに考えを巡らせるように目を伏せ、陰を作っている。
「なんとぉー!!花咲選手が呼び出したモンスターは、
相手フィールドのモンスターを全て機能停止させる強力な効果を持っていたァ!
この一手で情勢は大きく揺れ動くことでしょう!」
「まだ終わりじゃない。ペイントメージがS召喚された時、
手札のペイントメージ・カラメルを特殊召喚できる!」
■ペイントメージ・カラメル
効果モンスター
レベル4/地/魔法使い/攻撃力1600 守備力1900
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ペイントメージ」Sモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
手札のこのカードを特殊召喚し、自分の墓地から「ペイントメージ」モンスター1体を手札に加える。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから地属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを地属性に変更する。
キャラメル色の髪をした垂れ目の少年のモンスターが姿を現す。
パティシエのような服装をしており、
首元までしっかりとボタンで留められた服に、キャラメル色のスカーフがついている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dZ9g9uO
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「この効果で特殊召喚した時、墓地のペイントメージを1体手札に戻す。
墓地のペイントメージ・パレットを手札に加える。
そして、ペイントメージ・パレットはフィールドにペイントメージがいる時、
手札から特殊召喚できる!」
灯は立て続けにモンスターを呼び出す。
チューナーとチューナー以外のモンスターが揃った。
観客達は攻勢が灯に傾いていることを思い知る。
「レベル4地属性ペイントメージ・カラメルに、
レベル2のペイントメージ・パレットをチューニング!」
「豊かな大地の息吹が、迷いを覚悟に塗り替える」
「シンクロ召喚!現れよ、ペイントメージ・ミレー!」
■ペイントメージ・ミレー
シンクロモンスター
レベル6/地/魔法使い/攻撃力2000 守備力2400
チューナー + チューナー以外の地属性モンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードと同じ属性を持つ自分の墓地の「ペイントメージ」Sモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
③:自分フィールドのこのカードと同じ属性のモンスターの攻撃力は、
フィールドのこのカードと同じ属性のモンスターの数×200アップする。
現れたそのモンスターは、茶色いソバージュの髪をした大人びた女性のモンスター。
枯れ葉のようなカーキ色と黄土色のオーバーサイズなローブを纏っている。
手には木の持ち手に白い刃がついた、筆のようなデザインの大きな鍬を持っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ecIroxE
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「ペイントメージ・ミレーの効果発動。フィールドのモンスターの属性を塗り替える。
デッキから炎属性のペイントメージ・フランボワーズを除外して、
自身を炎属性に塗り替える!」
手にしている筆のような鍬の先端が赤く染まり、それを大きく振るうと、
ミレーの髪や服の色が真っ赤に染まってゆく。
長いソバージュの髪はまるで揺れる炎のようだった。
「ペイントメージ・ミレーの効果発動!
1ターンに1度、自分と同じ属性のペイントメージSモンスターを墓地から特殊召喚できる!
蘇れ、ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ!」
■ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ
シンクロモンスター
レベル7/炎/魔法使い/攻撃力2500 守備力2000
チューナー + 「ペイントメージ・ゴッホ」
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分・相手ターンに発動できる。
相手フィールドのこのカードと同じ属性を持つモンスター全てを破壊し、
破壊したモンスターの中で元々の攻撃力が最も高いモンスターの元々の攻撃力分、
相手にダメージを与える。
②:このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、
自分の墓地の「ペイントメージ・ゴッホ」1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、相手ターンでも効果を発動できる。
炎の騎士は再びフィールドに舞い戻る。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/aekOx30
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「鉄城選手による妨害をもろともせず…花咲選手、3体のSモンスターを呼び出したぁ!
ゴッホ・ソレイユは相手の同じ属性のモンスターを破壊し、攻撃力分ダメージを与える効果を持ちます!
もしこの効果が通れば、鉄城選手のデトネイトは破壊され、2800のダメージを負う!
これは鉄城選手の敗北を意味していますッ!万事休すかぁーー!!」
実況は一番の盛り上がりを見せる。
灯のフィールドには3体のSモンスターが揃い踏みしている。
再び怜央に敗北の危機が訪れる。
これで勝負がつくかもしれない。遊次達は息を呑む。
「ペイントメージ・ミレーは、フィールドのミレーと同じ属性のモンスターの数×200、
ペイントメージの攻撃力をアップさせる。
フィールドにミレーと同じ炎属性が4体。よってペイントメージの攻撃力は800アップする」
ペイントメージ・アールヌーヴォー AT3800
ペイントメージ・ミレー ATK2800
ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK3300
灯のモンスター達を赤いオーラが包む。
子供達はこの時、自分達の未来にも影響する勝負であることを初めて痛感した。
ここで怜央が敗北すれば、チームを良い未来をもたらすという願いは断たれる。
ミオの頬を冷や汗が伝った。
灯にとって勝利は目の前だ。
それを実感した途端、灯の中で何かが沸々と湧き上がっていた。
大きな舞台で実力者を前に、自分は今勝利を掴まんとしている。
灯は湧き上がってきたものをそのまま吐き出すように、言葉を紡ぐ。
「これで私も…君に並べるかな。ねぇ…遊次」
灯は自分自身が口にした言葉に、自分ではっとする。
ふと口をついて出た言葉だが、今たしかに、何かを掴んだ感覚があった。
怜央は俯いたまま何も言わない。
その感情は読み取れなかったが、怒りが溢れ出ているような気がした。
その瞬間、怜央の両眼はこちらを睨んだ。
灯は思わずびくっと震えてしまう。
「ゴッホ・ソレイユの効果発動!
このカードと同じ属性の相手フィールドのモンスターを全て破壊し、
元々の攻撃力が最も高いモンスターの攻撃力分、相手にダメージを与える!」
灯はほぼ反射的に効果の宣言をする。
ゴッホ・ソレイユは両手に握った剣に炎を纏わせる。
「怜央っ…!」
俯き続ける怜央の姿に、子供達は身を乗り出して視線を送る。
ミオは思わず、雨の中で怜央と初めて出会った時のことを思い出した。
否、思い出してしまった。
居場所を失い、一歩先の未来でさえ真っ暗だったあの時を。
今の境遇はあの時よりは遥かに良いといえるだろう。
怜央がこの大会で勝ち進むごとに、未来への道を光が照らしてゆき、
ずいぶん先まで見えるようになった。
しかし今、その光が一瞬にして全て消えるような気がした。
その暗闇は今自分がいる現実さえも全て飲み込み、またあの地獄へと後戻りする感覚さえ覚えた。
1度抜け出した暗闇に戻ることは、常に暗闇の中にいることよりも遥かに恐ろしい。
怜央が大会で敗北したとしても、すぐにそこへ戻ることはない。
しかし、1度"踏み外す"ことへの恐怖が増幅し、最悪の未来を想起してしまった。
ゴッホ・ソレイユが怜央に向けて剣を振るう。
纏った炎が怜央のフィールドを今にも襲おうとしている。
その瞬間、ミオは思わず声を上げていた。
「怜央ーー!!!負けないで!!」
その声は空を裂くようにまっすぐ怜央に届いた。
その刹那、怜央はデュエルディスクに触れる。
「…罠カード発動!
『爆焔鉄甲甦燻陣(スチームアーミー・スモルダーリバイバル)』」
怜央のフィールドからデトネイトが消える。
そして直後、怜央のフィールドは大量の黒煙に包まれる。
「なっ…」
思わず灯が声を漏らす。
観客達は何が起きたか目を凝らす。
少しずつ煙が晴れてゆく。すると、その中から2つの赤い光が強く光っていた。
「スモルダーリバイバルの効果。
フィールドの爆焔鉄甲1体をリリースし、墓地の爆焔鉄甲Xモンスター1体を復活させる。
デトネイトをリリースし、
墓地から『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』を守備表示で復活させる」
■爆焔鉄甲甦燻陣(スチームアーミー・スモルダーリバイバル)
通常罠
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体をリリースし、
そのモンスター以外の自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その後、デッキから「スチームアーミー」モンスターを2体選び、
そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
この効果で特殊召喚したモンスターは、1ターンに1度、
相手モンスターの効果を受ける場合、代わりにX素材を1つ取り除くことができる。
②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「RUM」魔法カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
しかし、怜央の行動の意図を観客達も、そして灯も理解できなかった。
フィールドにエクスプロードが守備表示で蘇る。
しかしアールヌーヴォーの効果によりそのボディは石化したように色を失う。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/xCmWHEi
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「さらにデッキから2体の爆焔鉄甲を選び、エクスプロードの素材とする。
『堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』と『爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)』を素材とする」
エクスプロードの周囲を2つの光球が廻りだす。
「でも、ゴッホ・ソレイユの効果は無効になっていない!
特殊召喚されたエクスプロードが破壊されて、お前は2400のダメージを受ける!」
ゴッホ・ソレイユが大剣を振るうと、炎の一閃がエクスプロードを襲う。
しかしエクスプロードはその刃を右手で軽々と受け止める。
「えっ…?」
灯の思考は停止した。
エクスプロードは右手を振るうと、炎の剣は一瞬にして消える。
スタジアムには一瞬、静寂が訪れる。
炎の剣を受け止めたエクスプロードには、
オーバーレイユニットが1つなくなっていた。
「スモルダー・リバイバルで復活したXモンスターは、
オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、その効果を受けない。
よって、ゴッホ・ソレイユの破壊効果は効かねえ」
怜央は堂々と前を向く。
その眼には明確に怒りが宿っていた。
その目を見た灯の中に恐怖心が湧き上がってくる。
「もう俺に勝った気でいんのか。ふざけんじゃねえぞ、灯…。
俺が負けねえって言ったら負けねェんだよ…!」
その目は更に怒りを滾らせ、赤く光っているようにさえ感じた。
「なんと鉄城選手、あと1歩のところでリバースカードによって窮地を脱したァ!
しかし依然ピンチには変わりありません!
鉄城選手、このまま流れをモノにできるのかぁ!」
「でも、アールヌーヴォーの効果でエクスプロードの効果は無効になってる。
ゴッホ・ソレイユの効果で負けることは避けられても、状況は良くなってない」
灯も怜央の気迫に押されぬように、強気の姿勢を保とうとする。
怜央は何も言わない。
彼はデュエル中に余計な言葉をあまり挟むことはない。
その姿が更に気迫を強め、対する者に本能的な恐怖を与えるのだ。
「ッ…!バトル!アールヌーヴォーでエクスプロードを攻撃!」
押し寄せる恐怖を振り払うかのように、灯は強く声を放つ。
アールヌーヴォーは錫杖を掲げ、炎の球を作り出す。
そしてそれをエクスプロードに放つ。
「X素材として取り除かれた墓地のバリケイド・ビルダーの効果発動。
墓地から除外し、フィールドのエクスプロードを指定。
これによってこのターン、エクスプロードは戦闘で破壊されねえ」
アールヌーヴォーが放った火球を、エクスプロードの後ろに現れたバリケイド・ビルダーが
大きな鉄の盾で防ぐ。
「このターン、エクスプロードはバトルで破壊されない。
お前は俺を仕留められねえ」
灯は苦虫を嚙み潰したような表情をしている。
「…バトルフェイズは終了だ。カードを1枚伏せて…ターンエンド」
ため込んだ空気を吐き出すように、会場にざわざわとした音が広がる。
「ここで花咲選手ターンエンドだぁー!!
鉄城選手がバトルでも粘りを見せ、ライフを守りきったぁ!
しかし依然、花咲選手の圧倒的有利!鉄城選手は革命を起こせるのだろうかぁ!」
--------------------------------------------------
【灯】
LP8000 手札:0
伏せカード:1
①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK3800
②ペイントメージ・ミレー ATK2800
③ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK3300
カードの位置:
□■□□□
□□②□③
□ ①
□□①□□
■□□□□
【怜央】
LP2300 手札:0
①爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード) DEF2400 X素材1
永続罠:1(マインフィールド)
--------------------------------------------------
「よっしゃぁー!怜央の兄貴が負けるわけねえんだ!」
リアムは立ち上がり、両手を目一杯挙げて喜びを表す。
「怜央ーー!!がんばってー!!」
リアムの勢いに背中を押され、ランランも大きな声で応援する。
「怜央君、花咲さんの猛攻をよく耐えてはいるけど…。
実際、かなり苦しいんじゃ…」
アキトは子供達には聞こえないように、隣のイーサンに小声で話しかける。
「…あぁ。ドローしても怜央の手札はわずか1枚。
おまけにフィールドのモンスターの効果は全て無効。
ここから逆転するのは至難の業だ」
イーサンは静かに答える。
遊次はその会話を聞きながら、1人で思いを巡らせる。
「(確かにここから逆転すんのは無茶だ。
でも…怜央の頭には負けることなんて1mmも浮かんでねえ)」
遊次の視線は怜央の堂々とした姿に集中する。
「(気ィ抜いたら、吞み込まれちまうんだ。アイツの…
勝つために何もかもぶっ壊そうって目に)」
怜央の瞳孔は完全に開いている。
灯はその目を直視できずにいた。それを誤魔化すように思考を巡らせる。
「(アールヌーヴォーの効果無効とゴッホ・ソレイユの全体破壊。
それにミレーの攻撃力アップ。伏せカードだってある。
怜央の手札1枚でひっくり返せるわけない)」
灯は深呼吸し、息を整える。少しずつ恐怖も落ち着いていくのがわかる。
怜央の目も直視できるようになっていた。
「そんなに睨んだって、もう怖くない。
私には頼れるモンスターがいるから」
灯は目の前の3体のシンクロモンスターに視線を移す。
モンスターもそれに応えるように振り返った後、再び怜央の方を向く。
怜央がデッキトップに指をかける。
脳裏には、かつて力の限りを尽くし、ドミノタウンを支配せんとしていた時の記憶が浮かぶ。
どん底から這いあがるために、怜央は全てを壊し、奪ってきた。
8ヶ月前、遊次との戦いによって自分の生き方は変わった。
それでも、変わらない"執念"があった。
内側から怒りが湧き上がってくるのがわかった。
その怒りは、自分を前に勝ちを確信した灯に向けたものでもあり、
同時にここまで追い詰められた自分自身に向けたものでもあった。
「関係ねえ。全部…ぶっ壊してやるよ。
今まで俺がそうしてきたようにな」
指先に力を込める。
「俺のターン…ドロー!!」
渾身の力で1枚のカードを引く。
引いたのは魔法カードだ。
「魔法カード『貪欲な壺』発動!
墓地の5枚のモンスターをデッキに戻し、2枚ドローする!」
怜央の発動したカードに、灯は少し眉を上げる。
怜央がここでドローソースを引き当てることは、まるで必然であったかのように感じた。
怜央は墓地のアイアン・ドライバー、コンパス・グレネード2枚、
ファーネス・メディック、そしてデトネイトを手にして、
それらをデッキとEXデッキにそれぞれ戻し、2枚のカードを引く。
瞬間、灯には怜央の目に炎が付いたように見えた。
「手札から…速攻魔法発動!
『RUM-エクスプロージョン・フォース』!
エクスプロードを指定し、その1つ上のランクを持つモンスターをX召喚する!」
■RUM-エクスプロージョン・フォース
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターよりランクが1つ高い「スチームアーミー」Xモンスター1体を、
対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いでEXデッキから特殊召喚し、
このカードをそのX素材とする。
②:墓地のこのカードを除外し、フィールドのモンスターを2体まで対象として発動できる。
対象のモンスターの数だけフィールド・墓地から「スチームアーミー」モンスターを選び、
対象のフィールドのモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「(罠カードの効果でエクスプロードは1ターンに1度、私が発動した効果を受けないから、
ゴッホ・ソレイユで破壊することはできない。
でも、恐れる必要はない。切り札を呼び出しても、怜央には何も…)」
灯は言い聞かせるように心で呟く。
「フィールドのエクスプロードを素材に、1つ上のランクを持つモンスターをX召喚する!
再び現れろ、『爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)』!」
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RLUlao2
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
焔を纏った鋼鉄の将軍が再びその姿を現す。
しかしアールヌーヴォーによって色は失われ、石化したような状態となる。
それでも怜央の眼差しは一切揺らぐことはなかった。
「デトネイトのX召喚時、効果発動!
相手フィールドのモンスターの効果を、全て無効にする!」
「さらにデトネイトの効果発動!
オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊する。
アールヌーヴォーを破壊だ!」
「なっ…アールヌーヴォーによって炎属性の効果は無効!無駄な足掻きだ!」
無駄だとわかっているにも関わらず、あまりにも迷いなく効果発動を宣言する怜央に、灯は異を唱える。
「…無駄?違ェな。これはテメェの喉元を掻っ切る一手だ…!」
怜央はまるで獲物の喉元へ今にも噛みつかんとする獣のように、
腰を低くし、前傾姿勢で右手を突き出す。
「墓地の『RUM-エクスプロージョン・フォース』の効果発動!
このカードを墓地から除外し、相手モンスターを2体まで選択。
そのモンスターにフィールド・墓地の爆焔鉄甲を装備する!」
「お前のゴッホ・ソレイユに墓地のメルト・コーポラルを装備する。
そしてアールヌーヴォーに…フィールドのデトネイトを装備する!」
「なッ…!」
灯は怜央の意図を瞬時に理解した。
瞬間、灯もデュエルディスクに触れる。
「…やっとわかったよ、怜央の考えが。やっぱり、すごいね。
でも、そうはいかない!
罠カード発動!『ペイントメージ・カラフル・イリュージョン』!」
■ペイントメージ・カラフル・イリュージョン
永続罠
このカード名の①の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、同一チェーン上では1度しか発動できない。
①:自分フィールドに「ペイントメージ」モンスターが存在する場合、
フィールド上のモンスターの属性の数によって以下の効果を得る。
●1種類以上:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。そのカードを破壊する。
●2種類以上:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動する。
そのモンスターはこのターン、1度だけ戦闘・効果では破壊されない。
●3種類以上:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動する。
そのモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで1500ポイントアップする。
●4種類以上:1ターンに1度、相手がモンスター・魔法・罠の効果を発動した場合に発動できる。その効果を無効にする。
「カラフル・イリュージョンの効果発動!
フィールドに属性が2種類以上いる時、フィールドのペイントメージ1体を選択し、
そのモンスターを1度破壊から守ることができる!アールヌーヴォーを選択!」
灯のフィールドには炎属性と光属性がいるため、この効果を使用可能だ。
アールヌーヴォーは虹色のベールに覆われる。
「チェーン3のエクスプロージョン・フォースの効果によって、
2体の爆焔鉄甲がお前のモンスターに装備される」
ゴッホ・ソレイユの背中にメルト・コーポラルが、
アールヌーヴォーにデトネイトが羽交い絞めにするように装備される。
「永続罠『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の効果により、
装備カードを装備した相手モンスターの攻撃力は500ダウンする」
ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK2500
ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK2000
「チェーン2のデトネイトの効果!アールヌーヴォーを破壊する!」
アールヌーヴォーに装備されたデトネイトは、
アールヌーヴォーの背中から右手を上げ、そこから放射状に炎を放った。
観客達は驚きの表情を浮かべる。
「えっ!アールヌーヴォーの効果で、炎属性の効果は無効になるんじゃ…」
観客席のアキトは理解できず声を上げる。
「いや、怜央はそれを搔い潜ったんだ。思いもよらねえ方法でな」
遊次は口角を上げ、怜央に賞賛の視線を送る。
「でも、カラフル・イリュージョンの効果で、アールヌーヴォーは1ターンに1度破壊されない!」
虹色のベールがアールヌーヴォーを炎から守る。
「アールヌーヴォーは、俺の炎属性モンスターの効果を全て無効にできる。
だが、効果発動後にデトネイトが装備カードとして魔法&罠ゾーンに置かれれば、
アールヌーヴォーの効果の範囲外。
そいつが無効にできるのは、あくまでモンスターゾーンの効果だけだからな。
この状態なら、デトネイトの効果は消えねえ」
怜央は自らのプレイの真意を語る。
「破壊効果は挨拶代わりだ。チェーン1のデトネイトの効果。
相手フィールドのモンスター効果を全て無効にする」
フィールドに白い煙が漂い始める。
煙が明けると、ミレーの効果で上がっていたモンスターの攻撃力は元に戻っていた。
--------------------------------------------------
【灯】
LP8000 手札:0
魔法罠:ペイントメージ・カラフル・イリュージョン
カードの位置:
①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK2500
装備カード:爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)
②ペイントメージ・ミレー ATK2000
③ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK2000
装備カード:爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
□■□□□
□□②□③
□ ①
□□□□□
■□■□■
【怜央】
LP2300 手札:1
永続罠:1(マインフィールド)
--------------------------------------------------
「…皆さん、理解できましたでしょうか!
フィールドで発動されたデトネイトの効果は、本来アールヌーヴォーによって無効化されます!
しかし、鉄城選手はあろうことか、効果解決前にデトネイトを相手モンスターに装備することで、
アールヌーヴォーの無効効果から逃れたのです!」
「その結果、デトネイトの破壊効果と全体無効効果は有効!
破壊効果は罠カードによって防がれましたが、花咲選手のモンスター効果は全て無効となってしまったァ!
アンビリーバボォー!絶体絶命と思われた鉄城選手、まさかの奇策で一矢報いたァ!」
実況の多口の解説によって、観客達は状況を完全に把握したようだ。
同時に怜央の頭の回転の速さに驚きの声を上げている。
「怜央のデッキの特徴上、爆焔鉄甲を相手モンスターに装備する効果は、
爆弾を相手に着けて、破壊を連鎖させるために使うことがほとんどだ。
しかし怜央は、固定概念に囚われず、
召喚したばかりの切り札を相手に装備させるという一手を打った。
自分のデッキを熟知しているが故の戦術だな」
イーサンは心から感心したように話す。
「アイツは勉強はできねえが、デュエルに関しちゃ異常に鼻が利く。
地獄を生き抜いてきたが故の"本能"ってヤツかもな」
ドモンは腕を組みながら笑みを浮かべる。
「がんばれーー怜央ーー!!」
「負けるな、兄貴ィーー!!」
ランランとリアムは勢いづいた怜央に更なる声援を送る。
「俺のモンスターの効果は、デトネイトによって無効化された。驚いたぜ。
でもお前の想定じゃ、デトネイトでアールヌーヴォーを破壊して、
追加効果でもう1体のモンスターを破壊するつもりだったはずだ」
灯は勝ち気に言い放つ。
「だが、それは叶わなかった。仮にここからゴッホ・ソレイユを破壊できても、
効果でゴッホを復活させ、相手ターンで破壊とダメージを与える効果を使うことができる。
俺のライフを削る前に、お前のライフが焼き切れるのが先だ」
アールヌーヴォーの無効効果とゴッホ・ソレイユの破壊効果を失い、
してやられた形となった灯だが、まだ闘志は失っていなかった。
実際、怜央のフィールドにモンスターはいない。手札はたった1枚。
その状況で灯のフィールドを崩す絵は、誰にも想像できなかった。
「…最後に聞くぜ。戦う理由とやらは見つかったのかよ」
怜央は灯にまっすぐ問いかける。
「…最後?」
灯は疑問を投げかけるも、怜央は何も言わない。
灯は胸に手を当て、言葉を紡ぎだす。
「怜央にも、遊次にも…誰にも、置いて行かれたくない。
追いつきたいって思ったから、私はこの大会に出た。
それと、遊次の願い…ドミノタウンの皆を笑顔にするって願いを叶えたいっていうのも本当。
このデュエルが始まった時は、まだ自分の心を整理できてなかった」
「でも…さっき、何かが見えた気がしたんだ。
怜央に勝てると思った、あの時」
前のターン、ゴッホ・ソレイユによってデトネイトを破壊し、
攻撃力分のダメージを与えれば灯の勝利という場面。
(これで私も…君に並べるかな。ねぇ…遊次)
「(あれは、皆に置いて行かれたくないっていうだけの気持ちじゃない。
もっと、私の心の奥に眠ってるものに触れたような…)」
灯は言葉の続きを紡げずにいた。
まだ自分の心を理解しきったわけではなかった。
「まだ答えは出てねえみたいだな。
なら、俺が感じたことを1つ教えてやる」
怜央は灯の言葉を待たず、先に言葉を投げかける。
灯は怜央を見つめる。
「お前には、どうしてもこの戦いに勝たなきゃならないっていう"執念"がねえ」
「…!」
灯ははっとした。
少なくとも、すぐに怜央に反論することはできなかった。
「まだ戦う理由を探ってるっていう迷いもあるだろうが…それでも、感じねぇ。
遊次と戦ったマルコスって奴にも、死んでも負けられねえって気迫があった」
「だが、お前は違う。
口ではどんなに"遊次の願いを叶えたい"なんて言ってても、感じねえもんは感じねえ」
「なっ…!それは違う!私は本当に…」
灯はすぐに怜央の言葉を否定する。
遊次の願いを叶えたいというのは正真正銘、灯の本心だったからだ。
「"叶えたい願い"と"叶えなきゃならねえ願い"は違ェ。
俺とお前の決定的な差はそこだ」
怜央はデュエルディスクに触れる。
「墓地の『爆焔鉄甲甦燻陣(スチームアーミー・スモルダーリバイバル)』を除外して効果発動。
墓地の『RUM』魔法カードを1枚、手札に加える。
俺は墓地から『RUM-リラプス・フォース』を手札に加える」
このRUMは最初の怜央のターンでデトネイトを呼び出す時に使用したカードだ。
「(RUM…それを使ってまたデトネイトを呼び出す?
でも、デトネイトはこのターンもう効果を使えないはず)」
灯の意識は再びデュエルへと集中する。
「明日、自分が生きてるのかすらもわからねえ…俺はそんな地獄にいた。
居場所のねえガキ共の思いも背負って、二度と奪われねえために戦ってきた。
毎日、毎日な。
だが、いくらもがいても暗闇から抜け出せる気はしなかった」
「遊次と戦って、俺が負けた。だが、あの時から少しずつ光が見えるようになった。
この先に、俺が本当に求めてたモンがあるってわかったからだ」
「チームの…子供達の未来、だね」
灯の言葉に怜央は1度小さく頷く。
怜央の言葉に、観客席の子供達も耳と目を傾けている。
彼は他の誰でもない、自分達のために戦っているのだ。
子供達は今一度それを心に強く留める。
「地獄の底から見上げてたあの空に…もうすぐ届くんだ。
あとちょっと、手を伸ばすだけで…!」
"子供達を良い未来に導く"という願いの成就。
そのためには、ヴェルテクス・デュエリアの優勝こそが、
今の怜央にとって最善のルートであった。
予選を通過し、本戦で優勝する。
そこに到達して初めて、願いを叶えるという報酬が手に入る。
遠い道のりのように見えるが、目の前すら闇に覆われていた昔の怜央からすれば、
今はもう、願いの目の前だった。
「だから…俺は、どうしても勝たなきゃならねえんだ」
怜央は胸の前で強く拳を握る。
「エンストなんざしねェよ…。
この身が燃え尽きようが、俺は"願い"を掴む!」
「『RUM-リラプス・フォース』発動!
墓地の爆焔鉄甲Xモンスター1体を素材に、1つ上のランクのモンスターをX召喚する!」
怜央 LP2300 → 1150
カードの代償として、怜央の身体が燃え、ライフが削られる。
それでも彼は前を見つめ、灯を睨み続ける。
その姿はまさに、願いへの"執着"そのものだった。
灯はただ、その姿を見ていることしかできなかった。
「切り札を隠し持ってんのはお前だけじゃねぇ。
俺にも…見せてねえ力がある」
怜央はEXデッキから1枚の黒きカードを手にする。
「そんな、まさか…」
灯は、自分の身体が打ち震えるのがわかった。
怜央の尋常でない執念の炎が、自分に襲い掛かるのを予感した。
「俺は墓地の『爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)』を選択!
ランクアップエクシーズチェンジ!」
鋼鉄の機関車が現れ、それは地面に浮かんだ黒い渦に呑まれてゆく。
「暴走する鋼鉄の覇者よ、燃え上がる戦士の魂を乗せ、勝利の彼方へ突き進め!」
「エクシーズ召喚!ランク5!
『爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス)』!」
■爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス)
エクシーズモンスター
ランク5/炎/機械/攻撃力2500 守備力3000
レベル5モンスター×2
このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
「スチームアーミー」モンスターを装備した相手モンスターの攻撃力は、
装備している「スチームアーミー」モンスターの攻撃力分ダウンする。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分フィールドの「スチームアーミー」カードは相手の効果で破壊されない。
③:このカードのX素材を2つまで取り除いて発動できる。
取り除いた数だけデッキから「スチームアーミー」モンスターを特殊召喚する。
黒い渦の中から炎の線路が縦横無尽に伸びると、
炎を纏った列車がその上を走り、やがて怜央の前で停車する。
その鋼鉄の列車はレイル・エクスプレスとは異なり、近未来的な姿をしている。
光沢のある赤いボディをしており、車輪と機体の連結部分は機関車のように黒い。
列車の頭部はサイの角を彷彿とさせる頑強なデザインだ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/BcwMtxm
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「『RUM-リラプス・フォース』は発動後、ブレイブロード・エクスプレスの素材となる」
ブレイブロード・エクスプレスの周囲には2つのオーバーレイユニットが回っている。
灯は目の前に現れた巨大な赤き列車に唖然とする。
しかし、すぐに灯のモンスターに異変が起きていることに気が付く。
ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK0
ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK0
「なに、これ…」
ブレイブロード・エクスプレスが現れると同時に、
スチームアーミーが装備されている灯の2体のモンスターの攻撃力が0となっていた。
「なんとぉー!!切り札はデトネイトだけではなかったァー!
さらに、花咲選手のモンスターの攻撃力が0となっているぅ!一体何が起きているのかぁー!!」
「ブレイブロード・エクスプレスがいる限り、
相手モンスターは、装備した爆焔鉄甲の攻撃力分、攻撃力が下がる」
アールヌーヴォーは装備したデトネイトの攻撃力分、
ゴッホ・ソレイユはメルト・コーポラルの攻撃力分、攻撃力が下がっている状況だ。
罠カード『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の攻撃力ダウンも加わり、
2体のモンスターの攻撃力は底を尽きている。
「ブレイブロード・エクスプレスの効果発動!
オーバーレイユニットを2つ取り除き、デッキから爆焔鉄甲を2体、特殊召喚する!
来い、『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』、
『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』!」
■爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1300 守備力1800
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このターン墓地に送られた「爆焔鉄甲 炉衛生兵」以外の
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
③:手札の「スチームアーミー」モンスター1体を捨てて発動できる。
自分はデッキから2枚ドローし、その後1枚選んでデッキの一番下に戻す。
■爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1800 守備力900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を手札に加える。
③:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、相手に800ポイントのダメージを与える。
赤い十字マークが描かれた鉄の帽子を被った銅色の機兵と、
肩から腕にかけてライフルが取り付けられた銅色の機兵が姿を現す。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/pdPIdaY
ttps://imgur.com/a/sp2cODa
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「バーン・スナイパーの特殊召喚時、効果発動。
デッキから爆焔鉄甲1体を手札に加える。
手札に加えるのは『爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』」
「さらにバーン・スナイパーの効果発動。
1ターンに1度、相手の魔法・罠を1枚破壊し、800のダメージを与える。
カラフル・イリュージョンを破壊!」
「っ…!なら、カラフル・イリュージョンの効果発動!
1ターンに1度、相手の魔法・罠を破壊できる!お前のフィールドの永続罠を破壊!」
虹色の波動が怜央の罠カードを襲うが、炎熱の防御層によってそれは防がれる。
「なっ…!」
「残念だったな。ブレイブロード・エクスプレスがいる限り、
俺の『スチームアーミー』カードは相手の効果で破壊されねえ。
チェーン1のバーン・スナイパーの効果でお前の罠カードは破壊される」
灯はバーン・スナイパーの効果でダメージを受ける。
LP8000→7200
灯は手を尽くすも、それを怜央が全て上回る。
灯は怜央の烈火の勢いがまだ続くことを確信した。
「『爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』を召喚!」
ドライバーを手にした錆びた鋼の機兵が現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/G1Rx3tK
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「アイアン・ドライバーの効果発動。
手札を1枚捨て、デッキから爆焔鉄甲1体を特殊召喚し、1体を墓地に送る」
「アイアン・ドライバーの効果で、手札の『爆焔鉄甲 鍵発射弾(キー・ロケットボム)』を捨て、
デッキから『爆焔鉄甲 機動歩兵(マヌーヴァー・インファントリー)』を特殊召喚!
さらに墓地へ『爆焔鉄甲 明照夷弾(ランタン・ナパーム)』を送る」
現れたモンスターは、頭部は角ばったデザインで、中央に単眼のゴーグルが光っている。
手には小銃を抱えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/Qz9HQWx
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「手札から捨てられたキー・ロケットボムの効果発動。
手札から捨てられた場合、墓地の『スチームアーミー』カードを1枚手札に戻す。
選択するのは速攻魔法『爆焔鉄甲加速纏炎(スチームアーミー・ブーストフレイム)』」
「ファーネス・メディックの効果発動!
このターン墓地に送られた爆焔鉄甲1体を特殊召喚できる!
蘇れ、『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』!」
赤と黒のボディをした炎の機兵が、蒸気と共にフィールドに再び現れる。
これで怜央のフィールドには5体のモンスターが並んだ。
「墓地のランタン・ナパームの効果発動。墓地のこのカードを、
爆焔鉄甲Xモンスターのオーバーレイユニットにできる。
ブレイブロード・エクスプレスの素材とする」
「ブレイブロード・エクスプレスを対象に、
速攻魔法『爆焔鉄甲加速纏炎(スチームアーミー・ブーストフレイム)』発動。
攻撃力がX素材の数×500アップし、このターン2度の攻撃を可能とする」
爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス) ATK 2500→3000
「さあ、準備は整ったぜ。覚悟はいいな、灯」
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【灯】
LP7200 手札:0
カードの位置:
①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK0
装備カード:爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)
②ペイントメージ・ミレー ATK2000
③ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ATK0
装備カード:爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
□□□□□
□□②□③
① ①
②③④⑤□
■□■□■
【怜央】
LP1150 手札:1
①爆焔鉄甲 暴燃烈車(ブレイブロード・エクスプレス) ATK3000
②爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック) ATK1300
③爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー) ATK1800
④爆焔鉄甲 機動歩兵(マヌーヴァー・インファントリー) ATK1900
⑤爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード) ATK2400
永続罠:1(マインフィールド)
--------------------------------------------------
灯は目の前の巨大な列車と、4体の機兵の威圧感に戦慄する。
この光景こそ、怜央の"願い"への執念そのもの。
灯は俯き、拳を強く握る。心には様々な感情が入り乱れていた。
(お前には、どうしてもこの戦いに勝たなきゃならないっていう"執念"がねえ)
怜央に言われた言葉が頭の中で響いている。
「(…本当は、心のどこかでわかってたのかもしれない)」
(口ではどんなに"遊次の願いを叶えたい"なんて言ってても、感じねえもんは感じねえ)
「(向き合わなきゃいけないんだ。
心の奥に根を張ってる、私の本当の願いと)」
灯は意を決して前を向く。
「信じられません!
少し前まで、鉄城選手のフィールドには、効果が無効となったXモンスター1体しかいませんでした!
しかし今、5体ものモンスターが立ち並んでいる!
対して、花咲選手のモンスターは効果が無効となり、攻撃力は風前の灯火!
この大逆転を誰が予想したでしょうかァー!!」
観客席にいるチームの子供達は、怜央の巻き起こした逆転劇に興奮し、歓喜している。
遊次とイーサンは真剣な表情でデュエルの行く末を見届けようとしている。
灯の姿を見つめ、彼女の心がここで折れることはないということだけは2人とも確信していた。
「行くぜ。バトル!
ブレイブロード・エクスプレスで、ペイントメージ・ミレーを攻撃!」
列車は全体に炎を纏い、それは大きな渦となる。
灯のフィールドに向かって炎の線路が引かれると、列車はミレーに向かって猛進する。
ミレーは手にしていた大きな鍬を構えるも、あえなく破壊され、巨大な炎の渦は灯ごと飲み込む。
「うあああああ!!」
灯 LP7200 → 6200
灯のフィールドに残されたのは、爆焔鉄甲が装備され弱体化した2体のモンスターのみだ。
「ブレイブロード・エクスプレスは、速攻魔法により2度の攻撃が可能!
ペイントメージ・アールヌーヴォーに追撃ッ!」
線路はU字を描き一度怜央のフィールドへと戻る。
その後、アールヌーヴォーへと伸びてゆき、業火の列車はスピードを落とすことなく突進する。
地を抉るほどの巨大な炎の渦はアールヌーヴォーを破壊し、再び灯を襲う。
「うああああっ!!」
灯 LP6200 → 3200
灯は後方へ吹き飛ばされ、そのまま倒れる。
しかし、すぐに地へ腕をつき、必死に立ち上がろうとする。
ヴェルテクス・デュエリアに参戦を決めた時のことが、灯の脳裏に蘇る。
それは、メインシティで七乃瀬美蘭の大きな看板を目にした時だ。
「(あのとき私は、自分の力で上り詰めたあの子を見て…置いて行かれたくないと思った。
それと同じ気持ちを、ヴェルテクス・デュエリアのずっと先で待ってる遊次にも感じたんだ。
だから私は衝動的に、この大会に出ることを決めた)」
立ち上がった灯の姿を見て、怜央はバトルを続行する。
「バーン・スナイパーで、ゴッホ・ソレイユを攻撃!」
バーン・スナイパーは手にしたライフルのスコープを除き、一発の銃弾を放つ。
銃弾が一瞬にしてゴッホ・ソレイユを貫くと、その体は宙へと浮き、爆ぜる。
灯 LP3200 → 1400
灯は右手で攻撃から顔を庇うようにすると、その手を下ろし、再びフィールドに視線を向ける。
「(あの時感じた、遊次に置いて行かれたくないって気持ちが…多分、私の本当の願いに繋がってる。
でも、私はそれに気付いてなかった。いや、気付かないふりをしてた)」
「(だってその願いは…
子供達の未来のために戦う怜央と、町の人達の笑顔のために戦う遊次に比べて、
ずっとちっぽけで…ずっと自分勝手なものだから)」
「(だから私は、この大会に賭ける願いを、
"遊次の願いを叶える"なんてことにして、戦う理由にしてた。
でも…それは私の心の奥の奥にある、本当の願いじゃない)」
灯は心の中で"戦う理由"への答えを求めながらも、最後まで戦う意思を止めていない。
「ゴッホ・ソレイユが破壊された時、墓地のペイントメージ・ゴッホを蘇らせることができる!
来い、ペイントメージ・ゴッホ!」
ガラ空きとなった灯のフィールドに、炎の筆の剣を持った戦士が守備表示で現れる。
ペイントメージ・ゴッホ DEF1500
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ND1RphH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「ゴッホ・ソレイユの効果で特殊召喚されたゴッホは、
相手モンスターを破壊して攻撃力分のダメージを与える効果を、相手ターンに使用可能となる!
しかし、鉄城選手のブレイブロード・エクスプレスによって、爆焔鉄甲カードは効果で破壊することができない!
せっかく呼び出したゴッホは、壁モンスターとしての役割しか果たせない!」
実況の多口が戦況を分析する。
「マヌーヴァー・インファントリーで、守備表示のゴッホを攻撃!」
マヌーヴァー・インファントリーが手にした小銃を乱射すると、あえなくゴッホは破壊される。
これで正真正銘、灯のフィールドにはモンスターがいなくなった。
伏せカードも、手札もない。
これこそがこのデュエルの終着点であることを、誰しもが理解した。
灯は目を瞑り、自らの心に最後の問いかけをする。
「(私の本当の願いは…きっと、あの時から始まってたんだ)」
灯は、かつて遊次と公園で約束をした時の、遠い記憶へと思いを馳せる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「私、遊次に出会ってから、ほんとに毎日が楽しくて…。すっごくきらきらしてた。
遊次には、人を笑顔にする力があるんだよ。
遊次なら絶っ対、この町の人達を元気にできる!」
「だから、私も君の傍で、君を守って、君を支え続けられたらいいなって」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「(私も遊次の夢を叶えたいと、心から思った。そこに嘘はないんだ。
でも…そのもっと奥に、私のほんとの気持ちがある)」
灯はゆっくりと目を開く。
怜央は灯が答えを得たことを理解した。
そして、ゆっくりと右手を振り下ろす。
「『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』でダイレクトアタック!」
エクスプロードが左手のバーナーを灯に向ける。
灯は真っ直ぐとそれを見つめている。
観客席の灯の父は目を見開き、母は目を閉じ、娘の敗北を受け入れようとしている。
あの時、私が遊次の傍で、遊次を支え続けたいと思ったのは…
ただ、君の傍にいたかったから。
ただ、それだけだったんだ。
私がこの大会に出なかったら、遊次がもっと遠くに行っちゃう気がした。
美蘭の看板を見た時、遠くにいったあの子を見て…そこに遊次を重ねてたんだ。
遊次の夢を手伝いたいって…傍で支え続けたいって思ったのも、嘘じゃない。
でも私にとって一番大事なのは、君の傍にいることだったんだ。
私の願いは、君の隣にいること。
ただそれだけ。
エクスプロードの左手のバーナーから炎が放たれる。
これにて、勝負は決した。
灯は、敗北した。
しかし同時に、自分自身の本当の願いに辿り着いた。
灯 LP1400 → 0
「決まったァーー!!
2回戦にコマを進めたのは、鉄城怜央ッ!!」
会場は観客達の大喝采で埋め尽くされる。
子供達は怜央の勝利に歓喜している。
遊次とイーサンは、彼らの戦いそのものに敬意を示し、ただ静かに拍手を送った。
戦いが終わるとともに、灯の体から全ての力が抜け落ちた。
灯はそのままフィールドに座り込む。
怜央は灯の前まで歩みを進め、彼女を見下ろしながら問いかける。
「見つかったのかよ。戦う理由ってヤツは」
「…うん」
灯は小さな声で呟くように応えた。
灯は、両手で顔を覆っている。
怜央は灯を見下ろし続ける。
しばらく考えた後、怜央が口を開く。
「俺は、俺を信じてついてきた奴らに報いるためなら、命も惜しくねえ。
命賭けられるぐらい大事なモンなら、それがお前の戦う理由だ」
怜央は灯に背中を向ける。
「俺はお前に勝った。なら、俺がやるべきことは1つだけだ。
…俺が全員ブッ潰して、テッペンとってやる。
だから…」
「ここで全部出しきっとけ。そうすりゃ、後は立ち上がるだけだ」
怜央が歩みを進め、その場から立ち去る。
残された灯の顔は、悔し涙でぐちゃぐちゃに濡れていた。
灯はこの戦いを経て、自分の本当の願いを知った。
この大会に出なければ、遊次に置いて行かれる気がした。
遊次はいつも前に歩み続けるからだ。
自分も同じように前に進まなければ、自分の心に根差す"願い"が揺らぐ気がした。
それが、灯にとっての戦う理由だった。
しかし、この敗北によって、それは果たせなかったことになる。
遊次に置いて行かれるという焦燥は、未だ灯の胸に燻り続けているのだ。
自分自身の本当の願いを知らないまま戦いに臨んだとはいえ、灯は100%の力を出して、怜央に敗北した。
それは、自分の願いが、怜央の願いに及ばなかったという意味に等しかった。
言葉にできない悔しさが涙として溢れ、それはしばらく止まらなかった。
それから1時間後、同時進行していた他の参加者たちのデュエルも全て決着がついた。
遊次たち一同は、スタジアムの大画面前に集まっていた。
1回戦の結果が発表されるためだ。
(灯、怜央!マジですげーデュエルだった!)
戦いが終わった2人を笑顔で迎える遊次の姿を、灯は思い出している。
(怜央、お前デトネイトだけじゃなくて、あんなヤベーカード持ってたのかよ!
絶対に勝ち上がってこいよ!お前と戦えるのは決勝戦だからな!)
遊次の激励の言葉に怜央も対抗心を燃やしていた。
そして遊次は灯の方を向き、またとびきりの笑顔を見せた。
(灯、すげー強くなったな!)
灯がフィールドで泣いていたことには特に触れず、遊次はただ自分の思いをぶつけた。
(…うん、ありがとう)
灯はその真っ直ぐさに素直に感謝した。
(改めて思ったぜ。
お前がNextにいてくれれば、俺の夢は絶対に叶うってな!)
遊次は灯の肩に手を置き、優しい笑顔で語り掛ける。
灯は、また涙が溢れそうになった。
しかしそれは、悔しさや哀しみからではなく、喜びと安心感からだった。
「お前がいてくれれば、俺の夢は絶対に叶う」
この言葉は、遊次に置いて行かれると焦りを募らせていた灯を救う一言だった。
「さーて、次の相手は誰かなぁ~~!」
遊次はすでに次の自分の戦いのことで頭がいっぱいだった。
「(勝手に置いていかれるなんて焦って…あんなに泣いたのがバカみたい)」
灯はその姿を微笑みながら見つめる。
「(でも、私の戦う理由は、これからも絶対に変わらない。
遊次の隣で、遊次の夢を叶えるために…私はもっと強くなってみせる)」
灯は心の中で決意する。
そして、会場にアナウンスが流れる。
「それでは、1回戦の結果を発表します」
大画面にトーナメント表が映し出される。
会場中のデュエリスト達が、一斉にそこへ視線を集める。
トーナメント表:
ttps://imgur.com/a/Bta0JUz
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「お、俺の次の対戦相手は…『空蝉空海』って奴か。早く戦いてえー!」
「気が早いな。2回戦は1週間後だぞ」
いつもと変わらぬ調子ではしゃぐ遊次に、イーサンが冷静に水を差す。
「俺の相手は…"虹野譲"ってヤツか。誰が相手だろうとブッ潰すだけだ」
怜央も次の戦いへ闘志を燃やす。
「…!」
突如、怜央は背後から視線を感じる。
振り向くと、車椅子に乗った桃色の瞳を持つ青年が、妖しさをはらんだ目で怜央を見つめていた。
「(アイツが…虹野譲か)」
視線の正体を怜央は瞬時に理解した。
怜央は彼に真っ向から視線をぶつける。
数秒見つめあった後、虹野譲は車椅子のタイヤを転がし、踵を返す。
「鉄城怜央クン…か。君の願いへの執着は相当なモノだ。
でも…」
譲は車椅子を転がしながら一人呟く。
("叶えたい願い"と"叶えなきゃならねえ願い"は違ェ。
俺とお前の決定的な差はそこだ)
会場で怜央が灯に放った言葉を、譲は思い返していた。
怜央と灯がデュエルを行っていた時、別のフィールドで譲も戦っていたが、
早々に勝利し、2人のデュエルを観戦していたのだ。
「(君の願いは、"叶えなきゃならない願い"なんかじゃない。
君は次の戦いで、きっとそれを思い知ることになる)」
譲は後ろを振り返り、怜央の背中に強い視線を送る。
その瞳は、強い敵意に満ちていた。
スタジアムの外の緑豊かな公園で、ある男は1人、
道路を走る車や、街を行きかう人々を見つめていた。
その男は法衣を纏い、大きな黒い数珠を肩から下げた僧侶だった。
「…欲が渦巻いている。汚らわしい、欲望が」
男は手を合わせながら目を瞑り、呟く。
「全て、浄化せねばならない。私の"願い"の力で」
男は公園から、道行くある1人の男の姿を凝視していた。
それは仲間達とともに帰路へつく、遊次の姿だった。
1週間後、激戦は再び始まる。
【隕石衝突まで…残り293日】
第34話「ただそれだけ」完
この世界とモンスターワールドを繋ぐ装置≪パラドックス・ブリッジ≫。
それを起動するための6つの鍵は世界に点在している。
ニーズヘッグはすでにその内の4つを手にしていた。
残り2つの鍵の在処を探るため、七乃瀬美蘭は、
卓越した変装技術で、西洋の国「フォランセ」の高級キャバレーに潜入する。
14年前にパラドックス・ブリッジの開発に携わった男から情報を引き出すため、
美蘭は特権「強制オースデュエル」を発動。
変幻自在の「リザージュ」デッキは幻影のように相手を惑わせる。
次回 第35話「シークレット・ミッション」
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