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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第32話:究極の難題

第32話:究極の難題 作:

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【マルコス】
LP8000 手札:1(エニグマトリクス・ソーマ)

①エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300

伏せカード:1

墓地(上から):ミラー(光☆4)、トリオミノ(炎☆6)、フィールド魔法、Tブロック(罠)、
ヴォイド(闇☆6)、ソーマ(風☆5)、モザイク(地☆5)、アイビー(水☆5)、
フュージョン(魔法)、スクエア(罠)


【遊次】
LP8000 手札:2

①妖義賊-神出鬼没のギルトン ATK2200
②妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800
③妖義賊-怪盗ルパン ATK2100 エニグマトリクス・ゴーストを素材化

Pゾーン:妖義賊-舞蛇のキク、妖義賊-誘惑のカルメン
--------------------------------------------------


ついに始まったヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選。
その2次予選第1試合。遊次と戦うのはマルコス・アルバレスという少年。
学校を廃校から守るという願いを背負って戦うマルコスは、
フィールドや墓地をパズルように組み合わせ、
強力な効果を発揮する「エニグマトリクス」デッキを操る。

マルコスは4体もの素材を融合した切り札「エニグマトリクス・ピラミンクス」を呼び出す。
そのモンスターは、相手モンスターを全て除外する強力な効果を持っていたが、
遊次はたった2枚の手札でその布陣をくぐり抜け、ピラミンクスと伏せカード以外の全てのカードを破壊。

そして今、遊次の前にはアカホシ、ギルトン、ルパン…3体のモンスターが並んでいる。
悠然と立つ遊次のモンスター達を見つめ、マルコスはゆっくりと口を開く。

「それが君の…願いの強さなんだね」
願いをぶつければデッキは応えてくれる。それが遊次の考えだった。
その結果がこのフィールドであるならば、それは遊次の思いの強さの証明だ。

「あぁ。でも願いだけじゃないかもな。
何年も何年も積み重ねてきた俺の人生が、全部デッキに宿ってんだ」

「…デッキに、人生が…」

「そうだ。カードはデュエリストの想いから生まれる。
だから…俺にはわかんない時もあるけど、
多分、モンスターを見れば、自分の人生の色んなことを思い出すはずだ。
それがデュエリストに力を与える。
…なんかファンタジーっぽいかもしれないけど、俺は本気で信じてるぜ」

「…わかる気がするよ。
色んな色のモンスター達を見てると、不思議と力が湧いて来る時がある。
それはカードが僕の人生そのものを意味してるからなのかも」

マルコスが目を瞑ると、頭にふとジグソーパズルが浮かんだ。
様々な色をした小さなピースはまだばらばらだ。頭を整理できていないからだろうか。

「へへ、わかってくれて嬉しいぜ。大体、何言ってんだみたいな顔されっからな。
人生と人生をぶつけ合うから、デュエルは熱くておもしれーんだ」

「怪盗ルパンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、
相手モンスター1体を、効果を無効にして奪う!
俺が奪うのは、エニグマトリクス・ピラミンクス!」

遊次は、マルコスのフィールドに聳え立つ巨大なモンスターを指差す。
エニグマトリクス・ゴーストの効果で一時は対象耐性を得ていたが、
爆炎の予告状によってフィールドが破壊され、それは失われた。
丸腰となったマルコスの切り札を遊次は奪おうとしている。


「これが通れば遊次は相当有利になるね…!」
灯の中では遊次が勝つイメージがかなりできあがっていた。

「俺と当たる前に負けてもらっちゃ困るぜ。1回戦ぐらいさっさと勝ってもらわねえとな」
怜央も遊次が勝ちあがってくることを当然のように認識していた。


マルコスは目を瞑っている間、人生を振り返っていた。
そして、マルコスの頭の中で、
1つずつ色とりどりの小さなピースがはまってゆき、やがては1枚のパズルが完成した。
そこには学校の校庭で笑顔で並んでいるクラスメイトと、担任の先生がいた。

マルコスは目を開く。

「速攻魔法発動!『融合解除』!」
マルコスが発動したカードに、観客達は思わず目を丸くした。

「融合…解除…!」
思わぬ伏せカードの正体に遊次も心から驚く。

ルパンがピラミンクスへ白きマントを被せようとすると、
ピラミンクスの姿は突如として消える。
そしてマルコスのフィールドには4体のブロックの巨人が姿を現した。

エニグマトリクス・ヴォイド ATK2400
エニグマトリクス・ソーマ ATK2200
エニグマトリクス・モザイク ATK2000
エニグマトリクス・アイビー ATK2100


ヴォイドとアイビーは手札から融合素材となったため、初めて特殊召喚された。
ヴォイドは胸に一つの大きな穴が空いた黒いブロックのモンスター。
アイビーは斜めに向いた楕円が刻まれた、青系統のブロックで構成されたモンスターだ。


モンスターデザイン
モザイク:ttps://imgur.com/a/twRJhGp
ソーマ:ttps://imgur.com/a/Kv7zapX
ヴォイド:ttps://imgur.com/a/FkIFvDR
アイビー:ttps://imgur.com/a/iqfdinw


「なんとぉー!!アルバレス選手、伏せられていた最後のカードはまさかの融合解除ぉ!
神楽選手のモンスター奪取を回避しながら、4体ものモンスターを呼び出したぁ!
融合素材を多く要求するアルバレス選手のデッキにとって、これほど有用なカードはないッ!」

完全に遊次に寄っていた会場の空気は、ここにきてがらりと一変する。

「な、なんでアイツのフィールドにモンスターが4体も並んでんだよー!」
リアムは突然の出来事にパニック状態だ。

「融合解除は、融合モンスターをEXデッキに戻して、
融合素材モンスターを墓地から全て復活させるカードだ」

「遊次に奪われる前に融合を解除したことで、ルパンの効果は不発。
更に4体ものモンスターを呼び出した。やられたな…」
怜央とイーサンはリアムに説明しながらも、その状況の厳しさをどんどん実感してゆく。


「この時、特殊召喚された『エニグマトリクス・モザイク』と
『エニグマトリクス・ソーマ』の効果発動!
ソーマの効果でデッキからフィールド魔法『エニグマトリクス・フラクタルラビリンス』を、
モザイクの効果でデッキから罠カード『エニグマトリクス・ツイスト』を手札に加える」

「…驚いたぜ、まさか融合解除とはな。
融合素材になってないゴーストをルパンの素材にしたのが、裏目に出ちまったぜ」

もしギルトンの効果でマルコスの墓地から奪ったのが、ゴーストではなく
ピラミンクスの融合素材となっていたモンスターであれば、この融合解除は防げていた。
融合素材が一式墓地に揃っていない限り、墓地から融合素材を特殊召喚できないためだ。
しかし、ゴーストが墓地から魔法・罠カードの破壊効果を有している以上、
それを奪うことを優先したのは当然の判断だ。
融合解除をピンポイントで読むことなど不可能に近い。


「僕もこのカードを使うとは思ってなかったよ。
あれだけ万全な体制だったのに、あっけなく破壊されちゃったから。
でもフィールド魔法もまた手に入ったし、僕には味方がいっぱいいる」

マルコスのフィールドの色とりどりのモンスター達。
それはマルコスにとって自分の思い出の彩でもあった。
モンスター達がマルコスに勇気を与えている。

「証明するんだ。僕の想いも…遊次さんに負けてないって」
頭の中のパズルが完成したことで、マルコスの目には再び闘志が宿る。
学校を守るという願い。仲間達との思い出。それらがマルコスを再び駆り立てた。

「…いいぜ、かかってこいよ。俺はカードを1枚伏せる。
俺のフィールドのアカホシは自身の効果で、攻撃力2800以下のモンスターの効果を受けない。
ターンエンドだ」

毎ターンモンスターを墓地から呼び出す厄介なフィールド魔法は、
モンスター効果によって再びマルコスの手札に加わった。
さらに4体のモンスターがいるとなると、次のターンの反撃は免れない。

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【マルコス】
LP8000 手札:3(ソーマ、フラクタルラビリンス、ツイスト)

①エニグマトリクス・ヴォイド ATK2400
②エニグマトリクス・ソーマ ATK2200
③エニグマトリクス・モザイク ATK2000
④エニグマトリクス・アイビー ATK2100

墓地(上から):ミラー(光☆4)、トリオミノ(炎☆6)、フィールド魔法、Tブロック(罠)、
フュージョン(魔法)、スクエア(罠)


【遊次】
LP8000 手札:1

①妖義賊-神出鬼没のギルトン ATK2200
②妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800
③妖義賊-怪盗ルパン ATK2100

伏せカード:1
Pゾーン:妖義賊-舞蛇のキク、妖義賊-誘惑のカルメン
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「僕のターン、ドロー!」

「この瞬間、怪盗ルパンの効果発動!
相手から奪ったモンスターをX素材にしてる場合、墓地の予告状を除外できる。
一攫千金の予告状を除外!」

「そして一攫千金の予告状の効果発動!
このカードが墓地から除外された時、手札が1枚以下であればカードを3枚ドローできる!」

遊次はデッキから一気に3枚のカードを引く。
ここでドローした1枚の罠カードを遊次は見つめる。

「神楽選手、ここで破格の手札補充!
もし次の神楽選手のターンが回って来れば、反撃の材料は十分にあるでしょう!」


「手札からフィールド魔法『エニグマトリクス・フラクタルラビリンス』を再び発動!」

■エニグマトリクス・フラクタルラビリンス
 フィールド魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードの発動時の処理として、
 「エニグマトリクス」モンスター1体をデッキから手札に加えることができる。
 ②:自分の墓地の「エニグマトリクス」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。
 この効果は相手ターンでも発動できる。

フィールドは再び幾何学模様のカラフルな空間へと変化する。

「発動時、デッキから『エニグマトリクス』モンスター1体を手札に加える。
手札に加えるのは『エニグマトリクス・ミラー』」
ミラーは前のターンに罠カードの効果で手札に加えたものと同名モンスターだ。

「エニグマトリクス・モザイクの効果発動。
1ターンに1度、デッキから『エニグマトリクス』カードを1枚墓地に送れる。
3枚目の『エニグマトリクス・ミラー』を墓地に送る」

「墓地の『エニグマトリクス・フュージョン』の効果発動。
手札を1枚捨てて、墓地からこのカードを手札に加える。
僕は手札の『エニグマトリクス・ツイスト』を捨てて、手札に加える」

「墓地に捨てられた『エニグマトリクス・ツイスト』の効果発動。
このカードが墓地に送られた時、デッキから『エニグマトリクス』カード1枚を墓地に送る。
『エニグマトリクス・アイビー』を墓地へ!」


「フィールドのエニグマトリクス・アイビーの効果発動!
墓地に罠カードが2枚並んでいる時、
相手フィールドのモンスター1体をこのカードに装備できる!ルパンを装備する!」

マルコスの墓地には『エニグマトリクス・Tブロック』と
『エニグマトリクス・スクエア』という罠カードが連続して2枚並んでいる。
先ほどエニグマトリクス・フュージョンが墓地から手札に加わったことで、
この並びが生まれたのだ。

「(ここでルパンが吸収されたら、
ルパンの素材のエニグマトリクス・ゴーストがマルコスの墓地に行っちまう。
そうなればゴーストの効果で俺の伏せカードは破壊される。それなら…)」

「罠カード発動!『妖義賊の影縛り』!
相手が発動したカードと同じ種類のカードを自分フィールドから墓地に送ることで、
その効果を無効にして、更にそのカードを奪う!」


■妖義賊の影縛り
 通常罠
 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手がカードの効果を発動した場合、そのカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)の
 このカード以外の自分のカード1枚をフィールドから墓地に送って発動できる。その効果を無効にする。
 その後、そのカードがモンスターカードの場合、そのカードを自分フィールドに特殊召喚し、
 魔法・罠カードの場合、自分フィールドにセットする。
 無効にした魔法カードがPカードだった場合、自分のPゾーンにセットする。


「俺は神出鬼没のギルトンを墓地に送って、
エニグマトリクス・アイビーの効果を無効にし、そのモンスターをいただくぜ!」

ギルトンが黒いもやに包まれてフィールドから姿を消すと、
そこから黒い影が2本、アイビーに向かって勢いよく伸びてゆく。
その2本の影はアイビーを縛りつけ、そのまま遊次のフィールドへとモンスターを運ぶ。

「自分のモンスターを守り、相手モンスターまで奪う!
これは強力なトラップだぁ!」


「魔法カード『エニグマトリクス・フュージョン』発動!
フィールドの3体のエニグマトリクスと、手札の『エニグマトリクス・ソーマ』で融合!
再び現れよ、『エニグマトリクス・ピラミンクス』!」


■エニグマトリクス・ピラミンクス
 融合モンスター
 レベル9/光/岩石/攻撃力3300 守備力3500
 「エニグマトリクス」モンスター×4
 このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の墓地に同じレベルのモンスターが3体並んでいる場合に発動できる。
 相手フィールドのモンスターを全て除外する。この効果は相手ターンでも発動できる。
 ②:自分の墓地にカードが上からモンスター・魔法・罠の順番で並んでいる限り、
 モンスターゾーンのこのカードは相手の効果で破壊されない。
 ③:このカードが墓地に存在する場合、
 自分の墓地の「エニグマトリクス」カード4枚を除外して発動できる。
 このカードを特殊召喚する。


再び現れた5メートル級のブロックの巨体。
胸部にはいくつものブロックが重なりピラミッド型を形成しており、その頂点が前方に向いている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/2vtal1W
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

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【マルコス】
LP8000 手札:2(エニグマトリクス・ミラー)

①エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300

墓地(上から):フュージョン(魔法)、ソーマ(風☆5)、ヴォイド(闇☆6)、
ソーマ(風☆5)、モザイク(地☆5)、ツイスト(罠)、
ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、トリオミノ(炎☆6)、
フィールド魔法、Tブロック(罠)、スクエア(罠)


【遊次】
LP8000 手札:4(妖義賊の即日決行)

①妖義賊-美巧のアカホシ ATK2800
②妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
③エニグマトリクス・アイビー ATK2100

Pゾーン:妖義賊-舞蛇のキク、妖義賊-誘惑のカルメン
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「出たーー!アルバレス選手のエースモンスター!
このモンスターの全体除外効果の発動条件は、同じレベルのモンスターが墓地に3体並ぶこと!
しかしそれはすでに、今融合素材として送られたモンスターによって満たされている!」

多口は素早く盤面状況を伝える。
遊次のターンでは下級モンスター1体に対して除外効果を使わざるを得なかったが、
今度は遊次のフィールドの3体のモンスターが除外される状況だ。
伏せカードもない以上、誰の目から見ても抵抗できないのは明らかだ。

「この時、融合素材になったソーマの効果発動!カードを1枚ドローする。
チェーンして、ピラミンクスの効果発動!
墓地に同じレベルのモンスターが3体並んでいる時、相手モンスターを全て除外する!」

「やはりここで除外効果だぁー!神楽選手の伏せカードは0!絶体絶命のピンチです!」
観客席から両手を握り、灯は不安そうに遊次を見つめる。
遊次は真っ直ぐと目の前のピラミンクスを見上げている。

「…誰が、絶体絶命のピンチだって?」
遊次は手札から1枚のカードを取り、高く掲げる。
遊次の行動に会場中が注目する。

「手札から罠カード発動!『妖義賊の秘技』!」

「手札から…トラップ…!?」
マルコスは目を丸くする。

「このカードはフィールドに妖義賊がいる時、手札からも発動できる。
この効果で、相手フィールドのモンスターを1体奪う!
奪うのは当然、エニグマトリクス・ピラミンクス!」

遊次は目の前のブロックの巨体に人差し指を突きつける。

■妖義賊の秘技
 通常罠
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターのコントロールを得る。
 自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合、
 この効果は手札からも発動できる。
 ②:自分・相手ターンのエンドフェイズ時、このカードが墓地に存在し、
 自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
 このカードを自分フィールドにセットする。
 この効果でセットしたこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。


「まさかぁーー!手札から罠カードを発動するとはぁ!
どこまでも我々の予想を裏切る男、それが神楽遊次だぁー!!」
会場は歓声に包まれる。灯やイーサン達も胸をなでおろした。

「…でも、ピラミンクスの効果が無効になるわけじゃない!
僕のフィールドで除外効果が発動した時点で、
その後にピラミンクスを奪っても、君のモンスターの除外は確定してる!」
熱気を帯びた会場に水を差すようにマルコスは言葉をぶつける。

「…あぁ、お前のピラミンクスごとな」
だがマルコスの指摘は当然、遊次も理解していた。
自分のモンスターは全て除外されてしまうが、そこにマルコスの切り札も巻き込めば、
確実にマルコスにとって大きな損失になる。それが遊次の狙いだった。
フィールドに妖義賊がいなければ手札から罠カードは発動できないため、
発動タイミングもここしかない。

遊次のフィールドのルパンとアカホシが、ピラミンクスに向かって手をかざすと、
マルコスのフィールドのピラミンクスは遊次のフィールドへと移動した。
そしてその後、ピラミンクスの光は大きな輝きを放ち、フィールドを包む。
その光が消えた後、お互いのフィールドにはモンスターは残っていなかった。

「ピラミンクスの効果で、神楽選手のモンスターは除外されてしまった!
しかしアルバレス選手のピラミンクスも、自らの効果で同時に除外され、
お互いのフィールドからモンスターが消え去ったぁ!」

さすがにマルコスもショックを受けたようだ。顔が強張っている。

「(…やりようによっては、もう1度フィールドにモンスターを4体並べて、
ピラミンクスを融合召喚することはできる。でも…それじゃダメだ。
遊次さんの墓地の『妖義賊の秘技』は、
フィールドにモンスターがいない時、エンドフェイズにフィールドにセットできる。
次の遊次さんのターンでそれを発動されれば、ピラミンクスを奪われておしまいだ)」

マルコスはピラミンクスを呼び出すだけではなく、その先の更なるルートを思い描いていたようだ。
しかしそれも遊次の秘策によって水泡に帰したも同然だ。

「マルコス君!!諦めるな!!!」
突如、マルコスの後ろから太い男の声が聞こえる。

「せ、先生…!」
振り向くと、担任の先生が体を乗り出し、必死の形相で自分を見ていた。

「君は誰よりも真面目な子だ!
勉強も、デュエルも、コツコツと積み上げてゆく…それが君の素晴らしいところなんだよ!」

先生の言葉を聞き、マルコスは思い出した。
他のクラスメイトにはわかりやすい得意分野がある。しかし、自分にはそれがなかった。
個性がないと悩んでいた時、
先生は「コツコツと1歩1歩積み上げていけるのが君の素晴らしいところなんだ」と褒めてくれた。

デュエルの授業で、パズルデッキをうまく操るマルコスを見て、先生は感心していた。
自分では気づいていなくても、周りはマルコスの素晴らしさを知っている。
その言葉がマルコスの背中を後押しした。
ヴェルテクス・デュエリアに向けても人一倍鍛錬をし、それは着実に実を結んだ。
その結果、今がある。
今までマルコスが積み上げてきたものを全て見てきたからこそ、先生は「諦めるな」と言った。

一瞬でマルコスはその意図を理解し、観客席に向かって強く頷いた。
再び遊次の方を向くと、デッキトップに指をかける。

「チェーン1のエニグマトリクス・ソーマの効果によって、カードを1枚ドローする…!」
マルコスは目を瞑る。友人達の応援や先生の言葉。全てを胸にマルコスは1枚のカードを引く。
引いたカードを見た瞳は大きく開いた。

「…どうやら、応えてくれたみたいだよ。僕のデッキが」
マルコスは引いたカードを表向きにする。

「魔法カード『エニグマトリクス・コンプリート』発動!
除外されている『エニグマトリクス』モンスターを1体、特殊召喚する!
僕は、除外されたエニグマトリクス・ピラミンクスを復活させる!」

マルコスのフィールドから一点の白く強い光が放たれる。
その光は大きくなってゆき輪郭が明確になってゆく。
それはやがて5メートルほどまで大きくなり、光は色と質感を持ったモンスターへと変わる。

エニグマトリクス・ピラミンクスが再び姿を現した。
その姿に会場は騒然となる。
マルコスの友人と先生は一斉に立ち上がり、喜びの声を上げる。

「…ヤバすぎんぜ、マルコス…!」
遊次は、自分の渾身の一手を覆されるも、笑っていた。
焦りをはらんだ表情であるものの、彼はこの状況を心から楽しんでいる。

「うおおおおおお!!まさに奇跡のドロー!アルバレス選手、繋ぎ止めたァ!
結果的には、神楽選手のフィールドだけがガラ空き!
この一手で勝負が決まるのかぁーー!!」

ここからのマルコスの展開によっては遊次の敗北すらもあり得る状況。
Nextの面々は息を呑む。

「ただしこの効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃できない。
でも…まだまだいくよ」
マルコスは自信を取り戻し、完全に勢いづいている。

「手札から『エニグマトリクス・ミラー』を召喚!」


■エニグマトリクス・ミラー
 効果モンスター
 レベル4/光/岩石/攻撃力1600 守備力1200
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚した場合に発動できる。
 自分の墓地の「エニグマトリクス・ミラー」を可能な限り特殊召喚する。
 ②:相手モンスターが自分の「エニグマトリクス」モンスターに攻撃する
 攻撃宣言時に発動できる。その相手モンスターを破壊し、
 そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。


鏡のように反射したブロックのボディを持つモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dQUvDyl
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「エニグマトリクス・ミラーの召喚時、効果発動!
墓地のエニグマトリクス・ミラーを可能な限り特殊召喚できる。
墓地から2体のミラーを特殊召喚!」

もう2体、エニグマトリクス・ミラーがフィールドに現れる。

「さらにフィールド魔法『エニグマトリクス・フラクタルラビリンス』の効果発動。
墓地の『エニグマトリクス』モンスターを1体、攻撃表示で特殊召喚できる。
来て、『エニグマトリクス・ゴースト』!」


高さ約3メートルの黒い巨体が現れる。角ばった直方体や三角形が互いに接合し、
角がエッジを持った鋭いパズルのボディをしている。顔の中央に赤い単眼が輝きを放っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/9ziaP7B
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「ただしこの効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃できない」

「アルバレス選手のフィールドが埋まったぁ!
だがピラミンクスとゴーストは特殊召喚時の制約によって攻撃できない!
これだけモンスターを並べながらも、まだ神楽選手のライフを削ることはできないぞぉー!」

マルコスのカードは高レベルモンスターを容易に特殊召喚できる反面、
攻撃に対して制約がかかっている場合が多い。このまま総攻撃とはいかないようだ。

「(あれだけモンスターを並べて何もしないはずがない。なんだか嫌な予感がする…)」
観客席の灯は不安そうにフィールドを見つめていた。

そして、その直感は的中することとなる。


「エニグマトリクス・ゴーストの効果発動!手札・フィールドから融合召喚を行う!
僕はフィールドの5体のモンスターと、手札の『エニグマトリクス・ギア』で融合!」

「なっ…!」
遊次はかつてない衝撃に襲われた。

「6体融合か…面白いものが見れそうだね」
観客席の車椅子の青年はフィールドを見つめながら、
手に持っている1枚のカードに向かって話しかけている。


「賢人の遊戯の果てに現れし叡智の結晶よ、究極の難題となりて立ちはだかれ」

「融合召喚!僕の最強の切り札!『エニグマトリクス・ルービック』!」


■エニグマトリクス・ルービック
 融合モンスター
 レベル12/地/岩石/攻撃力4000 守備力4000
 「エニグマトリクス」モンスター×6
 このカード名の④の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の墓地に6種類の属性のモンスターが並んでいる限り、
 自分の「エニグマトリクス」モンスターは相手が発動した効果を受けない。
 ②:相手のモンスターと同じ縦列のメインモンスターゾーンに
 自分の「エニグマトリクス」モンスターが存在する場合、
 その相手モンスターの効果は無効となる。
 ③:相手の魔法・罠カードと同じ縦列に
 自分の「エニグマトリクス」魔法・罠カードが存在すれば、
 その相手の魔法・罠カードの効果は無効となる。
 ④:自分・相手ターンに発動できる。自分の墓地・除外状態の
 「エニグマトリクス」魔法・罠カード1枚を自分フィールドにセットする。
 この効果でセットしたカードは、セットしたターンに発動できない。


現れたモンスターは今までのモンスターとは明らかに異質な存在だった。
6メートルほどの人型のそれは、巨体でありながら人間に近い細身なボディをしている。
その体は全てルービックキューブで象られ、頭部はキューブそのものだ。
身体には螺旋上にキューブがうねり、掌には様々な形に変化可能なキューブが大量に浮かんでいる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/lc65bgE
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「な、なんと!!6体ものモンスターを素材にした融合モンスターが現れたぁ!
これこそが正真正銘、アルバレス選手の切り札だァ!」
観客は現れたブロックの巨人に目を奪われていた。

「…まだこんなもんを隠してたってのか…!」
その圧倒的な風格と威圧感に遊次でさえも気圧される。

「融合素材となった『エニグマトリクス・ギア』の効果発動。
墓地のエニグマトリクス魔法・罠を1枚手札に加える。
罠カード『エニグマトリクス・ツイスト』を手札に加える」


「さらに墓地のエニグマトリクス・ピラミンクスの効果発動!
墓地の『エニグマトリクス』カードを4枚除外して、墓地から特殊召喚できる!
墓地の『エニグマトリクス・ソーマ』、『エニグマトリクス・フュージョン』、
『エニグマトリクス・コンプリート』、『エニグマトリクス・ギア』を除外して特殊召喚!」

再び、胸部がピラミッド型のブロックとなっている巨体が姿を現す。
二体の超巨大モンスターが遊次の目の前に並ぶ。
イーサンと怜央は目を見開き、灯は口元を手で押さえ言葉も出ない様子だ。

「アルバレス選手の2体の切り札が並んだーー!圧倒的迫力ッ!
対する神楽選手のフィールドにモンスターはいない!
前回大会の予選通過者が、まさか第1試合でやられてしまうのかァーー!!」
実況の多口はもはやマルコスの勝利を確信しているようだ。

「行くよ遊次さん。これが僕の全力!バトルフェイズ!
エニグマトリクス・ピラミンクスで遊次さんにダイレクトアタック!」

ピラミンクスは胸部のピラミッドに高密度の光を充填させ、ビームとして放つ。
ビームは直線を描き遊次に突き刺さる。

「ぐぁあああっ!!」
遊次 LP8000 → 4700

「エニグマトリクス・ルービックでダイレクトアタック!」
息をつく間もなく次の攻撃が遊次に襲い掛かる。
ルービックは右腕を掲げると、そこから青・青・黄…色とりどりの巨大なパズルが現れ、
ブロックが回転すると、パズルはハンマーの形へと変わる。
それを見た遊次は来る攻撃へ覚悟を決める。
ルービックは巨大ハンマーを振り回し、地面を抉り取るように遊次へぶつける。

「ぐあああああっーー!!」
衝撃で遊次の体は大きく吹き飛ぶ。
遊次 LP4700 → 700


「圧倒的パワッーー!!神楽選手のライフを一気に残り700にまで追いつめたァ!
しかし神楽選手もなんとか命を繋ぎ止めているぅ!」

「遊次…」
灯は祈るように両手を握っている。
Unchained Hound Dogsの子供達も、あまりの光景に息を飲む他なかった。

「残念ながらライフは削り切れなかった。でも、もう勝負はついてるよ、遊次さん。
同じレベルのモンスターが3体墓地に並んでることで、
エニグマトリクス・ピラミンクスは1ターンに1度、相手の全てのモンスターを除外できる」

「さらにエニグマトリクス・ルービックの効果で、
墓地に6種類の属性のモンスターが並んでいる限り、
『エニグマトリクス』は相手の効果を受けない。
当然、すでにパズルは完成してるよ」

遊次がマルコスの墓地を確認すると、確かに6種類の属性のモンスターが連続して並んでいた。
エニグマトリクス・ピラミンクスを墓地から特殊召喚する時、
パズルに不要なカードを除外することで、この連続性を完成させていたのだ。

遊次も、まさかここまで追い詰められるとは思っていなかった。
これこそが数万人の中から予選を勝ち上がってきた者の実力だと思い知らされた。


「墓地のエニグマトリクス・ゴーストの効果発動。
このカードを除外して、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する。
Pカードは魔法カードとして扱われるため、君のPゾーンの『誘惑のカルメン』を破壊!」

マルコスの背後から半透明のエニグマトリクス・ゴーストが現れ、遊次の頭上のカルメンへ向かう。
ゴーストは幽霊さながらにカルメンの体を通過すると、カルメンは苦しみ悶え、破壊される。

「カードを1枚伏せてエンドフェイズに入る」
マルコスは遊次の残ったもう1枚のPカード「妖義賊-舞蛇のキク」と同じ位置に、カードを伏せる。

「君の墓地の『妖義賊の秘技』はフィールドにモンスターがいない時、墓地からセットできるよね。
さあ、セットするといいよ」

「…全部お見通しってわけか」
マルコスは遊次の行動を読んでいた。
遊次にも、マルコスの考えが手に取るようにわかった。

「エンドフェイズ、自分のフィールドにモンスターがいない時、
墓地の罠カード『妖義賊の秘技』を自分フィールドにセットする」
遊次は真ん中の魔法・罠ゾーンに罠カードをセットする。

「カードがセットされた時、エニグマトリクス・ルービックの効果発動。1ターンに1度、
墓地または除外状態の『エニグマトリクス』魔法・罠カードを1枚、自分フィールドにセットできる。
今君がカードをセットした場所の正面に、
墓地の『エニグマトリクス・Tブロック』をセット」

「エニグマトリクス・ルービックの効果で、
君のメインモンスターゾーンのモンスターの正面に
僕の「エニグマトリクス」モンスターがいれば、
そのモンスターの効果は無効になる。
魔法・罠も同じさ。この効果はルービックがいる限り有効だ」


「な、なんとォ!ルービックは、カードの位置を相手に合わせれば、
その効果を封じるという強力な効果を持っていたぁ!
今、神楽選手の魔法・罠ゾーンのカードの正面には、アルバレス選手の魔法・罠がある!
つまりPゾーンの『舞蛇のキク』とセットした『妖義賊の秘技」は封じられたということ!」


「その上、ルービックは1ターン1度、墓地・除外状態の魔法・罠をセット可能!
仮に神楽選手が手札から新たな魔法カードを発動しても、
ルービックの効果で、発動した魔法と同じ位置にカードをセットすれば、
神楽選手の魔法カードの効果は無効となってしまう!」

実況の多口はルービックの凶悪な性能を解説する。

「そんな…」
灯はあまりにも強力なマルコスの切り札の効果に戦慄していた。

「だが、モンスターの特殊召喚はフィールド魔法によって1度、
魔法・罠のセットはルービックによって1度。
それさえ超えればチャンスはあるはずだ」
決して突破口がないわけではない。イーサンはそこに希望を託している。


「おまけに神楽選手のライフはたった700!対して、アルバレス選手のライフは8000のまま!
アンビリーバボォー!!なんという番狂わせ!
まさか前回の本戦出場者が、1回戦から敗れてしまうのかぁー!!」
実況者はマルコスの勝利を確信し、下馬評が覆ったことへの興奮を露わにする。


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【マルコス】
LP8000 手札:0

①エニグマトリクス・ルービック ATK4000
②エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300

墓地(上から):ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、
ヴォイド(闇☆6)、ソーマ(風☆5)、モザイク(地☆5)、
アイビー(水☆5)、トリオミノ(炎☆6)、フィールド魔法、スクエア(罠)

伏せカード:2(●ツイスト、★Tブロック)

【遊次】
LP700 手札:3(妖義賊の即日決行)

伏せカード:1(■妖義賊の秘技)
Pゾーン:▲妖義賊-舞蛇のキク


【フィールド】
マルコス
●□★□□
□①□②□
 □ □
□□□□□
▲□■□□
遊次
--------------------------------------------------

「…ふざけんじゃねえぞ遊次。何が"2次予選で待ってる"だ。
こんなとこで負けたらタダじゃおかねえからな…」

怜央は観客席から遊次を睨みつける。
自分の知っている遊次なら、こんなところで負けるはずがない。
しかし、状況はあまりにも劣勢だった。この怒りは遊次へのものでもあり、
敗北すらもありえると考えてしまう自分に対してのものでもあるのだろう。


「僕はこれでターンエンド。君の夢が大きいことはわかってる。
でも、僕だって皆の思いを背負ってるんだ。
だから遊次さん…ここであなたを倒す!」

マルコスはただ1つの勝利へ迷いなく進もうとしている。
その瞳を見て遊次は思いを巡らせる。

「(皆の思い…)」
遊次は左斜め向こうの観客席へ視線を移す。
そこには、仲間がいた。
まるで自分の事のように遊次のデュエルを真剣な表情で見つめている。

遊次の視線は灯にフォーカスされる。
今にも泣きそうな顔をしている。

「(…なんで灯が泣きそうな顔してんだ。
お前もこれからこのフィールドで戦うんだぞ)」
つい頭の中で軽口を叩く。しかし、すぐに遊次は思い直す。

「(灯にあんな顔させちゃダメだろ。
…俺は、なんのために戦ってきたんだ)」
遊次の頭には、かつての思い出が蘇る。


だからさ、なんかわかんねーけど、恩返ししたいんだ!
皆の悩みとかをパーっと解決したりさ、なんかこう…とにかく、明るくしてえんだよ!

「(俺は、なんのためにNextを始めたんだ)」
かつて夕日とともに誓った過去を思い出す。

一生懸命前向いてさ、明るく振舞ってるけど、でも、心はどこか暗いんだ。
だから、みんなが心から笑えるようにさ、ちょっとでもその手助けしてえんだ!


「(ドミノタウンのみんなの笑顔が見たい。心から笑ってる姿を。
…この道の先にあるんだよ。なのに…なんでこんなとこで立ち止まってんだ、俺は!)」

遊次は力強く目を開く。
マルコスは先ほどまでの遊次と覇気が違うことにすぐに気がついた。
そして、観客席の灯も。

これまで、デュエルを楽しむ気持ちに身を任せてきた。
しかし今一度、最も大切なものは何かを見つめ直し、
遊次はそこへ向かって、力強く1歩を踏み出そうとしている。

「(こんなもんじゃねえだろ、俺の願いは!)」
デッキトップに指をかける。


「俺のターン…ドロー!」
運命の1枚。このドローで全てが決まる。

引いたカードは速攻魔法だった。
その瞬間、遊次の頭の中には数多の展開ルートと、複数の未来が浮かんだ。
フィールドのカードを見渡し、思考を張り巡らせている。

「遊次さん、大丈夫かな…」
観客席のリクが、動かない遊次の姿を心配そうに見つめている。

「1つのミスも許されない状況だ。今も頭を回して打開策を考えてるはずだよ」
沈黙は諦めや敗北を意味するものではない。これは嵐の前の静けさであるはずだと、
イーサンは遊次への信頼を言葉にする。


「(俺が超えなきゃならない壁は1つ…2つ…いや、3つか?
それができなきゃ多分、俺は負ける)」
遊次は意を決し、手札からカードを1枚取り、ついに動き出す。

「手札の『妖義賊-戴火(たいか)のプロメテ』は、
自分フィールドに相手から奪ったカードがない時、特殊召喚できる!」

遊次はマルコスのモンスターが正面にいない、右端のモンスターゾーンに特殊召喚する。

■妖義賊-戴火のプロメテ
 ペンデュラムモンスター/チューナー
 レベル4/火/炎/攻撃力1000 守備力200 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
 このカードを効果を無効化して自分フィールドに特殊召喚する。
 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
 自分のデッキの上からカードを5枚めくり、
 その中から「ミスティックラン」カード1枚を選んで手札に加える。
 残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。
 【モンスター効果】
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在しない場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
 相手の除外状態のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 ③:このカードがフィールドからEXデッキに表側表示で加わった場合に発動できる。
 このカードをPゾーンに置く。


「長き沈黙を破り、神楽選手がついに動き出したぁ!
この絶望的な状況をひっくり返すことができるのかぁー!!」
会場に再び熱を与えようと、実況の多口は声を上げる。


現れたのは、一頭身の火の玉にポップな顔がついた小さなモンスターだ。
いたずらをする子供のように邪気を含んだ笑みを浮かべている。
マルコスはそのモンスターをただ見つめている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「…どうした?このモンスターの正面にモンスターを特殊召喚しなくていいのか?
効果を使っちまうぞ」

遊次はマルコスを煽る。
マルコスはフィールド魔法の効果で、1ターン1度、墓地からモンスターを特殊召喚できる。
「戴火のプロメテ」の正面に特殊召喚すれば、ルービックの効果で、プロメテは効果を無効化される。


「…そのモンスターは、フィールドの妖義賊をリリースして効果を発動するカードだよね。
もしそのカードの正面に僕がモンスターを特殊召喚しても、
プロメテ自身をリリースされちゃったら、フィールドから離れた以上、その効果は無効にできない。
だから僕は何もしないよ」

マルコスは冷静に答える。
遊次は「ふーん」と言って少し残念そうな顔をする。

「フィールドのカード効果を無効にする永続効果が、
フィールドを離れたモンスターに適用されないなんて、小学校で習うことだよ。
僕のプレイングミスを誘ってるのかもしれないけど、そんな間違いはしない」

「引っかからなかったか~。じゃ、遠慮なく効果を使わせてもらうぜ。
戴火のプロメテの効果発動!フィールドの妖義賊1体をリリースして、
相手の除外されているモンスター1体を奪う!
プロメテ自身をリリースして、
除外されてるお前の『エニグマトリクス・ゴースト』をもらうぜ!」

遊次はエニグマトリクス・ルービックの正面にゴーストを特殊召喚する。
ゴーストの発動する効果は無効になることとなるが、
遊次に発動可能な効果はなく、支障はないだろう。
フィールドに、黒いブロックの単眼のモンスターが姿を現す。


「(1つ目の壁は越えたか…。
もしプロメテをピラミンクスで除外されてたらマジで終わってたぜ。
まあ下級モンスター1体にそんな効果使うわけねーけど)」

遊次は内心でほっと息をつく。
遊次の勝利へのルートにはプロメテは必要不可欠だったようだ。
マルコスからすれば、下級モンスター1体に除外効果を大盤振る舞いする道理がない。
自分の除外モンスターを奪われるとしても、それ1つでは戦況は変わらず、
まだ遊次の手札は3枚ある以上、ここで除外効果を切る判断は下すはずがない。

対処するとしたらその後の遊次の動きだ。
そこに臨機応変にフィールド魔法での特殊召喚や、
ルービックの魔法・罠セットで対処することができ、
仮に対処できない事態が発生した時、
二の矢として除外効果を使うべきというのが一般的な考えだろう。


「戴火のプロメテの効果発動!
このカードがフィールドからEXデッキに表側で加わった場合、
Pゾーンに置くことができる!」

遊次の頭上に火の玉の小さなモンスターが浮かび上がる。

「戴火のプロメテのP効果発動!
相手から奪ったカードが自分フィールドにある時、デッキから5枚カードをめくり、
その中から『ミスティックラン』カード1枚を手札に加える」

遊次はマルコスを見つめる。何か意思を送るかのように。
マルコスもその視線には気が付いていた。

「(…ルービックの効果でプロメテの正面に魔法・罠をセットすれば、
プロメテのP効果は無効にできる。でも…)」
マルコスは遊次の強い眼を見る。何か強い意志を感じ、思わず目を逸らしてしまった。

「(…遊次さんの手札には、前のターン手札に加えた速攻魔法『妖義賊の即日決行』がある。
無効にするならそっちだ。カードを手札に加えるだけのプロメテに使うべきじゃない。
惑わされちゃダメだ)」

マルコスはルービックの効果でプロメテと同じ縦列にカードをセットすることはなく、
そのままスルーした。
ただカードをサーチするだけの効果を止めれば、後続の魔法・罠カードを止められない。
そのリスクを負ってプロメテを止めるのは理に適っていない。

「(ふぅ…手札に速攻魔法が見えてるし、やっぱここは止めてこねえよな。
でも万が一止められてたら負けてたぜ)」

遊次は綱渡りをしているような気分だった。
プロメテを除外されたり、
プロメテのサーチ効果を止められた時点で勝利へのルートは途絶える。
マルコスの視点に立てばそのようなプレイはほとんどありえないが、
内心ヒヤヒヤしっぱなしだった。
これにて第2の壁は越えたといえる。

「(ここが正念場だ。ここであのカードを引けなきゃ、俺は負ける…!
応えてくれ、俺のデッキ!)」
遊次は強く願い、デッキの上から5枚のカードを手に取る。

「…来たぁーー!!
俺はこの5枚の中から魔法カード『妖義賊の復活』を手札に加える!
残りの4枚はデッキの一番下に戻す」
遊次はどうやら第3の壁も越えたようだ。

「おっと神楽選手、ここでキーカードを引き当てたようだぁ!
まさかアルバレス選手の強靭な布陣を突破できるのかぁー!?」

遊次の様子を見て、Nextの面々は少しずつ希望を抱き始める。

「(魔法カードを手札に加えた…。でも、遊次さんが魔法を発動しても、
ルービックの効果で同じ場所にカードをセットすれば、それを無効にできる。
怖がることはない…)」

喜ぶ遊次と盛り上がりを見せる会場。マルコスは一抹の不安を覚えたものの、
それを冷静な思考で振り払おうとする。


「手札から『妖義賊-士君子のブラックバード』を召喚!」
遊次はモンスターゾーンの左端にモンスターを召喚する。

■妖義賊-士君子のブラックバード
 効果モンスター
 レベル4/地/鳥獣/攻撃力1500 守備力1400
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを破壊する。その後、破壊したその魔法・罠カードを自分フィールドにセットする。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
 代わりに墓地の「予告状」カードを除外することができる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/HvbmmGT
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「ブラックバードの効果発動!
1ターンに1度、相手の魔法・罠カードを1枚破壊し、そのカードを奪う!
俺はセットされた『エニグマトリクス・Tブロック』を破壊だ!」
遊次はマルコスの魔法&罠ゾーンの真ん中、
「妖義賊の秘技」の正面にセットされたカードを指定する。

「そうはいかないよ!
フィールド魔法『エニグマトリクス・フラクタルラビリンス』の効果発動!
1ターンに1度、墓地からエニグマトリクスを攻撃表示で特殊召喚する!
来て、エニグマトリクス・ミラー!」

鏡のブロックでできた巨人が姿を現す。

「エニグマトリクス・ミラーはブラックバードの正面に特殊召喚された。
エニグマトリクス・ルービックの効果で、その効果は無効になるよ」

ルービックが巨大な手をブラックバードにかざすと、
重力がかかったようにブラックバードの体は動かなくなり、効果は無効化される。

「さっそくルービックの強力な制圧が神楽選手を襲う!
ここで伏せカードが破壊されれば、
その正面にある神楽選手の罠カード『妖義賊の秘技』が発動可能になってしまう!
今はルービックの効果で、エニグマトリクスはカード効果を受けないとはいえ、
今後そのパズルが崩される危険もある以上、止めるべきと判断したのでしょう!」

多口は瞬時にフィールドの状況を把握し、マルコスのプレイの意図を的確に伝える。


「これ以上モンスターを呼ぶギミックがなきゃ、
ここから遊次は自由にモンスター効果を使えるはずだ。
だけど、まだピラミンクスの全体除外効果と、
ルービックによる魔法・罠のセットが残ってる。道は険しいな…」

イーサンは改めてマルコスのフィールドの強固さを思い知る。

--------------------------------------------------
【マルコス】
LP8000 手札:0

①エニグマトリクス・ルービック ATK4000
②エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300
③エニグマトリクス・ミラー ATK1900

墓地(上から):ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、
ヴォイド(闇☆6)、ソーマ(風☆5)、モザイク(地☆5)、アイビー(水☆5)、
トリオミノ(炎☆6)、フィールド魔法、スクエア(罠)

伏せカード:2(●ツイスト、★Tブロック)

【遊次】
LP700 手札:3(妖義賊の即日決行、妖義賊の復活)

①妖義賊-士君子のブラックバード ATK1500
②エニグマトリクス・ゴースト ATK2400

伏せカード:1(■妖義賊の秘技)
Pゾーン:▲妖義賊-舞蛇のキク、▼妖義賊-戴火のプロメテ

【フィールド】
マルコス
●□★□□
③①□②□
 □ □
①□□②□
▲□■□▼
遊次

--------------------------------------------------

「手札から魔法カード『妖義賊の復活』を発動!
相手から奪ったモンスターがいる時、墓地の妖義賊1体を特殊召喚できる。
墓地の『妖義賊-脱出のシェパード』を特殊召喚するぜ!」

「そうはさせない!
チェーンして『エニグマトリクス・ルービック』の効果発動!
1ターンに1度、墓地・除外状態のエニグマトリクス魔法・罠を1枚セットできる!
除外されてる『エニグマトリクス・フュージョン』を、
『妖義賊の復活』と同じ縦列にセット!」


「やはりアルバレス選手が対抗してきたぁ!
この効果が通れば、『妖義賊の復活』と同じ縦列にカードがセットされ、
ルービックの効果で無効となってしまう!
この魔法カードを引いた時、神楽選手は歓喜しました!
しかし裏を返せば、これを無効化されると、
神楽選手の希望は断たれてしまうのではないでしょうかァ!!」

会場中の全員が、ここが正念場でありターニングポイントだと理解した。
この効果が通るかどうか、それが今後の勝敗を左右すると。
この効果が無効化されてしまえば、遊次に勝利はないと。

しかし、そんなことは当の本人も理解しているはずだ。
その上で、遊次はこのカードを引いた瞬間、歓喜の声を上げたのである。

Nextの3人はわかっていた。

遊次にはこの状況を打破する方法があるのだと。


「…速攻魔法、発動。『妖義賊の大爆破』!
相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、カードを2枚破壊できる!」


■妖義賊の大爆破
 速攻魔法
 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
 フィールドのカードを2枚選び、そのカードを破壊する。


遊次は得意げな笑顔を浮かべている。しかし、観客達はまだその意図を掴めていなかった。
それはマルコスさえも同様だ。

「…僕の『エニグマトリクス』モンスターは、
ルービックの効果で、相手のカードの効果を受けない!
それに今から僕がセットしようとしてるカードは、
まだフィールドにはないから当然、破壊できない。
君の発動した魔法カードの無効は、免れないはずだ!」

マルコスは焦りを含んだ声で遊次に畳みかける。

「…俺が破壊するのは、
俺の『妖義賊の秘技』の正面にあるお前の罠『エニグマトリクス・Tブロック』と…
発動中の魔法『妖義賊の復活』だ!」

「なっ…!」
マルコスは完全に意表を突かれた。
その瞬間、遊次の意図を完全に理解した。まるでパズルのピースがはまったかのように。

フィールドに大爆破が起きる。
マルコスのフィールドの罠カードと、遊次が発動中の『妖義賊の復活』が破壊された。


「遊次はなんで自分のカードを破壊したんだ…?」
デュエルに疎いアキトはその意図を全く理解できていなかった。

「ルービックが無効にできるのは、あくまでフィールドにあるカードだけだ。
自分から墓地に送っちまえば無効にされるこたぁねえ。遊次はそれを狙った。
…よく的確にそんな手を思いつくもんだぜ」
ドモンはアキトへ説明しながら、相手の穴を突いて行く遊次のプレイに感心する。


「…ルービックの効果で、除外されている『エニグマトリクス・フュージョン』を、
君の『妖義賊の秘技』の正面にセットする」

妖義賊の大爆破によって、妖義賊の秘技の正面のカードが破壊されてしまったため、
それを補うように、マルコスは同じ場所にカードをセットした。
そうでなければ「妖義賊の秘技」の効果を無効にできないためである。
遊次がわざわざその正面のカードを破壊したこともあり、警戒するのは当然だ。


「チェーン1で発動した『妖義賊の復活』は、破壊され墓地にあることで、
ルービックの効果の範囲外だ!墓地から『脱出のシェパード』を特殊召喚!」
フィールドにカーキ色のジャケットを纏った二足歩行のシェパード犬のモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mbD8bgW
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「な…なんという奇策でしょうかぁ!!
発動したカードの正面に相手のカードがあれば、その効果は無効となる…。
ならば発動後にフィールドから消せばいいという、大胆な発想!
そしてこの絶体絶命の窮地にそれを思いつく柔軟な頭脳!
この男は何度我々を驚かせれば気が済むのでしょうかぁ!」

予想を超えた遊次のデュエルに会場は沸き上がる。
このピンチに大勢の味方を得たような感覚になり、灯は少しずつ平常心を取り戻してゆく。
しかし、怜央は腕を組み真剣な表情のままだ。

「安心すんのはまだ早ェだろ。よく見ろ、事態はほとんどよくなってねえ」
怜央は顎でフィールドを指示した。灯ははっとしてフィールドを見る。


「シェパードの特殊召喚時、『エニグマトリクス・ピラミンクス』の効果発動!
君のフィールドのモンスターを、全て除外する!!」

観客達の歓声を切り裂くように、マルコスは効果の発動を宣言した。
会場中の視線が再びフィールドに集まると、その瞬間、フィールドは眩い光に包まれた。

再び観客達が目を開くと、遊次のフィールドからモンスターが消えていた。

「ア…アルバレス選手、なんとも無慈悲な一手!!
神楽選手がいくつものカードを繋いで作り上げたフィールドを、
一瞬にして消し去ってしまったァ!神楽選手の手札はわずか1枚!
対してアルバレス選手のフィールドは、未だ揺るぎなき強靭さを誇っています!
もはや神楽選手に成す術があるとは思えない…!」

観客達は一瞬にして夢から覚めたような感覚だった。
誰しもがデュエルの終焉を予感した。
映画でエンドロールが流れ始めた時のように、
帰り支度を始めようかという心持ちにさえさせる一手だった。


「なんでも屋の人…負けちゃうの?」
唖然としているドモン達に、ランランが無遠慮に問いかける。
ドモンやダニエラは何も答えられなかった。ここから逆転する術など到底思いつかない。

「負けねえよ」
そんな中、怜央は一言で否定する。

「でも…」

「負けねえ。アイツが『妖義賊の復活』を引き当てた時、あんだけはしゃいでたんだ。
あの時のアイツに、今の光景が見えてなかったと思うか?」

ダニエラの言葉を遮り、怜央は整然と言葉を紡ぐ。
希望を失いかけていた灯達は、その言葉でまた頭の中がクリーンになった気がした。
確かにその通りだ。
異常なまでの視野の広さを誇る遊次が、これを想定していないはずがない。
その答え合わせをするかのように、遊次は口を開いた。

「でもこれで、ピラミンクスの除外効果は使わせたぜ」
必死に並べたモンスター達を一瞬にして消された遊次だが、
腰に両手を当て、あっけらかんと笑っていた。

「遊次…!」
その姿に、灯達の希望は完全に復活した。

「脱出のシェパードは、自身をリリースして相手の墓地からモンスターを2体奪える。
そうなりゃ、お前の墓地のモンスターを奪って、
『同じレベルのモンスターが3体並んでる』っていうパズルを崩せる。
そうなると、ピラミンクスは除外効果を使えねえ。
シェパードは自分をリリースすればフィールドから離れるから、
ルービックの効果でも無効にできねえ」

「つまり、シェパードを出せば、
お前は絶対にピラミンクスの効果を使わなきゃいけねえってわけだ。
ここまで来るのに苦労したぜ」
自分の苦労を理解してもらいたいのか、遊次は自らの策略を得意げに喋る。


「(…確かに、もう遊次さんの行動を妨害する術はない。
だけどエニグマトリクス・ミラーは相手が攻撃してきた時、
そのモンスターを破壊して攻撃力分ダメージを与えられる。
それに…)」

マルコスは自身の魔法罠ゾーンの真ん中に伏せられた
罠カード「エニグマトリクス・ツイスト」に視線を向ける。

「(まだまだデュエルはこれからだよ…!)」


「じゃ、こっからは好きにやらせてもらうぜ。
俺のPスケールは、2~8!よって、レベル3~7のモンスターを召喚可能!
ペンデュラム召喚!EXデッキから現れろ!『妖義賊-誘惑のカルメン』」

■妖義賊-誘惑のカルメン
 ペンデュラムモンスター
 レベル5/闇/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
 ①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースして発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。
 ②:相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを自分の手札に加える。
 【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の墓地のモンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 対象の自分の墓地の「ミスティックラン」モンスターを相手フィールドに特殊召喚し、
 対象の相手フィールドのモンスターのコントロールを得る。
 ②:このカードが「ミスティックラン」モンスターの融合・S・X・L召喚の素材となった場合、
 または「ミスティックラン」モンスターの儀式召喚のリリースとして使用された場合に発動できる。
 EXデッキの表側表示のこのカードを手札に加える。


フィールドに紫色のローブを着た妖艶な女モンスターが現れる。
前のターンでPゾーンから破壊されEXデッキに置かれていたカルメンは、
P召喚によってEXモンスターゾーンに舞い降りた。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dwkEFaw
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「ルービックが封じられるのは、あくまでメインモンスターゾーンだけだ。
EXモンスターゾーンにいるカルメンの効果は無効にできないぜ」

「…気付いていたんだね。
でもそのモンスターの効果を見る限り、有用な効果は見当たらないよ」

「まあ、そうかもな。誘惑のカルメンの効果発動!
相手モンスター1体と、自分のモンスター1体を対象にして発動。
自分の墓地のモンスターを相手フィールドに特殊召喚して、
対象の相手モンスターを奪う!
俺の墓地の『妖義賊-深緑のロビン』をお前に渡して、
お前のエニグマトリクス・ルービックを奪う!」

遊次の行動を理解できず、マルコスは眉をしかめる。

「まさか忘れてないよね?
墓地に6種類のモンスターが並んでることで、エニグマトリクスモンスターは効果を受けない。
僕のモンスターは奪えないよ!」

「…な、なんだってー!?うっかり間違えちまったぜ…!
ってことは、お前のモンスターは奪えないまま、
俺のモンスターだけがお前のフィールドに特殊召喚されちまうってことか!
かぁ~~!やっちまった!」

マルコスのフィールドの中央に深緑のロビンが特殊召喚される。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/PHAQB1t
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遊次はわざとらしく頭を抱えて見せる。
彼の行動は会場の全員が理解不能だった。
マルコスはその得体の知れなさに少し嫌悪感すら抱いた。

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【マルコス】
LP8000 手札:0

①エニグマトリクス・ルービック ATK4000
②エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300
③エニグマトリクス・ミラー ATK1900
④妖義賊-深緑のロビン ATK1800

墓地(上から):ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、
ヴォイド(闇☆6)、ソーマ(風☆5)、モザイク(地☆5)、アイビー(水☆5)、
トリオミノ(炎☆6)、フィールド魔法、スクエア(罠)

伏せカード:2(●ツイスト、★フュージョン)

【遊次】
LP700 手札:1(妖義賊の即日決行)

①妖義賊-誘惑のカルメン ATK2000

伏せカード:1(■妖義賊の秘技)
Pゾーン:▲妖義賊-舞蛇のキク、▼妖義賊-戴火のプロメテ

【フィールド】
マルコス
●□★□□
③①④②□
 ① □
□□□□□
▲□■□▼
遊次

--------------------------------------------------

「神楽選手、まさかのプレイングミスかぁ!?
彼にしてはずいぶん初歩的なミスのように思えます!
果たしてこれは策略なのか、はたまた河童の川流れなのかぁ!」


「Pゾーンの戴火のプロメテの効果発動!
自分フィールドに妖義賊がいる時、Pゾーンのこのカードを
効果を無効にして特殊召喚できる!」
遊次の頭上から火の玉のモンスターがフィールドへ降りてくる。

「墓地の『妖義賊の復活』を除外して効果発動!墓地の予告状カードを除外する!
墓地の『儀式の予告状』を除外!」
儀式の予告状は前の遊次のターン、手札からコストとして捨てられたカードだ。

「儀式の予告状が除外された時、効果発動!
フィールド・手札からそのモンスターのレベル以上になるようにモンスターをリリースして、
手札またはデッキから、儀式召喚する!」


「来たーー!遊次のにーちゃんの切り札だ!」
リアムは右手を突き上げて歓迎する。

「俺はフィールドのカルメンとプロメテをリリースし、
デッキから儀式召喚を執り行う!」

「桜吹雪の舞う中に、現れたるは荒野の義賊!
儀式召喚!俺の相棒、『妖義賊-ゴエモン』!」

■妖義賊-ゴエモン
 儀式モンスター
 レベル7/地/戦士/攻撃力2500 守備力2000
 「予告状」儀式魔法カードにより降臨。
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:元々の持ち主が相手となるカードが自分フィールドに存在する限り、
 自分フィールドのモンスターは相手の効果の対象にならない。
 ②:相手の墓地のモンスター、または魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
 モンスターカードの場合、そのカードを自分フィールドに特殊召喚し、
 魔法・罠カードの場合、自分フィールドにセットする。
 ③:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをリリースして儀式召喚された場合、以下の効果を得る。
 元々の持ち主が相手となる自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動する。
 そのモンスターの元々の攻撃力分、自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力をアップする。


桜吹雪と共に現れたのは、大剣を携えた戦士のモンスター。
メタリックなボディは赤き紋様が描かれており、光を反射して鋭く輝いている。
頭には後ろ向きのパーツがついており、まるで鳥の尾羽のように背後に伸びている。
その目は赤く光り、ただならぬ存在感を示している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/YnblaqH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「この時、儀式召喚のためにリリースされた誘惑のカルメンの効果発動!
EXデッキの表側のこのカードを手札に加える」

--------------------------------------------------
【マルコス】
LP8000 手札:0

①エニグマトリクス・ルービック ATK4000
②エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300
③エニグマトリクス・ミラー ATK1900
④妖義賊-深緑のロビン ATK1800

墓地(上から):ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、
ヴォイド(闇☆6)、ソーマ(風☆5)、モザイク(地☆5)、アイビー(水☆5)、
トリオミノ(炎☆6)、フィールド魔法、スクエア(罠)

伏せカード:2(●ツイスト、★フュージョン)

【遊次】
LP700 手札:2(妖義賊の即日決行、妖義賊-誘惑のカルメン)

①妖義賊-ゴエモン ATK2500

伏せカード:1(■妖義賊の秘技)
Pゾーン:▲妖義賊-舞蛇のキク

【フィールド】
マルコス
●□★□□
③①④②□
 □ □
□□①□□
▲□■□□
遊次

--------------------------------------------------

ゴエモンが儀式召喚されたのは、マルコスのフィールドに特殊召喚された深緑のロビンの正面だ。
マルコスははっとした顔で口を開く。

「さっき僕のフィールドに妖義賊を特殊召喚したのは、
その正面にゴエモンを呼び出すため…!」

「その通りだ。ルービックで無効にできるのは、
あくまで俺のモンスターの正面にエニグマトリクスがいる時だけ。
ゴエモンの正面にいるのがエニグマトリクスじゃなきゃ、
効果は無効にできねえよな?」

遊次はしてやったりというように、したたかに笑う。
マルコスにはまだ、モンスターを呼び出すギミックがあるかもしれない。
それを警戒して、あらかじめエニグマトリクス以外を相手フィールドに召喚することで、
ゴエモンの効果を無効にできないようにしたのだ。

「やはり先ほどのプレイはミスではなく作戦だったぁ!
何度も何度も、見事なまでにアルバレス選手の包囲網をくぐり抜けてゆくぅ!」
実況の多口の言葉は過去最大レベルに熱を帯びている。


「ゴエモンの効果発動!1ターンに1度、相手の墓地のカードを奪うことができる!
ゴエモンの正面にエニグマトリクスはいないから、この効果は止められねえ。
…この時を待ってたんだ、俺は!」

遊次は会場の歓声を味方にするように拳を高く突き上げる。
マルコスは遊次の言葉の真意に気付き、青ざめた顔をする。

「俺はお前の墓地の『エニグマトリクス・トリオミノ』を奪う!」


■エニグマトリクス・トリオミノ
 融合モンスター
 レベル6/炎/岩石/攻撃力2600 守備力3000
 「エニグマトリクス」モンスター×3
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが融合召喚した場合に発動できる。
 デッキ・墓地・除外状態から「エニグマトリクス」カード1枚を手札に加える。
 ②:このカードをリリースし、
 墓地の「エニグマトリクス」モンスター3体を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。
 この効果で手札に加えたモンスターはこのターン、召喚・特殊召喚できない。
 ③:自分の墓地に同じ属性のモンスターが3体並んでいる場合、
 相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを除外する。
 さらに除外したカードと同名カードを相手の手札・デッキ・EXデッキから全て除外する。


遊次のフィールドに、
赤とオレンジのグラデーションで彩色されたブロックのモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/i4vSfUE
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

トリオミノは正面にモンスターがいないモンスターゾーンに特殊召喚されたため、
効果は無効にならない。

「あのモンスターは、アルバレス選手の最初のターンで姿を現した融合モンスター!
即刻リリースされずっと墓地で眠っていましたが、
まさか神楽選手のモンスターとしてここに復活したぁ!」


「それに…気付いてるか?お前のパズルは、もう崩れちまってるって」
遊次の言葉を聞き、マルコスは不安な表情に変わる。

「エニグマトリクス・ルービックの効果で、
墓地に6種類の属性のモンスターが並んでる限り、
『エニグマトリクス』モンスターはカードの効果を受けない。
でも、俺がトリオミノを奪ったことで、お前の墓地から炎属性が消えた。
つまり…もうお前のエニグマトリクスは無敵じゃない」

遊次の言葉を聞き、またも観客はざわざわと沸き上がる。

「なんとぉー!!!難攻不落かと思われたアルバレス選手の布陣に、
ついに…ついに穴が空いたぁーー!!
ここまでの道のりは遠かった!いくつもの困難があった!
しかし今、確実に神楽選手は逆転への一歩を進んでいます!」

次第に大きくなってゆく観客達の声。
マルコスは不快そうに顔をしかめ、耳を塞いだ。
最初に会場に立った時の緊張感など大きく上回るほどに、
今マルコスは、このステージに立っていたくなかった。


「みんな、知ってるか?エニグマトリクス・トリオミノには、まだ見ぬ第3の効果があるってな。
トリオミノの効果発動!
1ターンに1度、自分の墓地に同じ属性のモンスターが3体並んでる時、
相手のカード1枚を除外し、そのカードと同名カードを全てデッキから除外できる!」

「なっ…んなこと、できんのかよ…!」
先ほどまで腕を組んで冷静にデュエルを見ていた怜央が、身を乗り出して驚く。

「何を言ってるんだ!
君も言った通り、その効果は墓地にパズルが揃っていなきゃ発動できない!」
マルコスは必死の形相で反論する。


「パズルなら…もう完成してるぜ」
遊次は静かに笑う。
マルコスは目を丸くする。

「そ、そんなはずがない…!そんな都合よくパズルが完成してるわ……け…」
デュエルディスクで遊次の墓地のカードを確認したマルコスは、
真実を知り、驚愕する。


「俺の墓地には地属性のジロキチ、サルバトーレ、イルチメが連続して並んでる。
最初の俺のターンで、リンク3の『神出鬼没のギルトン』を召喚した時、
リンク素材にした3体だ。その時点でパズルは完成してたんだよ」

「そんな…バカな…」
観客達もマルコスと同じような反応をしていた。

「俺は相手がモンスターを召喚する度に、いつも考えることがある。
そいつを俺が奪った時、どう使おうかってな」

遊次は、マルコスがトリオミノを初めて融合召喚した時から、
そのモンスターを奪って自分が使うことを思い描いていたのだ。

「どういう頭してやがるんだ、あいつ…」
いつもは考え無しに突っ走る遊次が、
デュエルになると信じられないほどの視野の広さをもって、戦況を塗り替えてゆく。
怜央は、絶体絶命の盤面で異次元のデュエルを見せ続ける遊次に心からの畏怖をおぼえた。


「なんということでしょうかぁ!?
彼は最初のターンから、アルバレス選手のモンスターを奪い、
その効果を利用するために、密かに墓地でパズルを完成させていたというのかぁ!
信じられない!未だに信じられません!」

今まで諦めずにマルコスを応援し続けていた友人達でさえも、
この事実には絶句するしかなかった。もはや会場は遊次が支配していた。
マルコスの心に、また深い絶望感が押し寄せる。

「このままルービックを除外すれば、
マルコス君は一気に防御力を失う上に、EXデッキからルービックを全部除外できるから、
次のターンのマルコスの手を大きく狭められるってわけだね!」

アキトはデュエルに疎いながらも状況を把握し、得意げに語る。
だがイーサンが即刻それを否定する。

「いや、除外すべきはルービックじゃない。遊次もわかってるはずだ」


「エニグマトリクス・トリオミノの効果で除外するのは…
お前の真ん中の伏せカード『エニグマトリクス・フュージョン』だ」

「…」

マルコスは俯いたまま抵抗しない。
トリオミノが拳をふりかざすと、勢いよく火球がマルコスのフィールドを襲う。
魔法&罠ゾーンの真ん中のエニグマトリクス・フュージョンが除外される。
その後、デッキから自動的に2枚のエニグマトリクス・フュージョンが飛び出す。
マルコスは俯いたままそれを手に取り、除外ゾーンへと送る。

「せっかく強い除去効果を使えるのに、モンスターに使わないのか…」
アキトは未だに真意を理解できず、首をかしげている。

「…回り道するのが、勝利への近道になることもあるんですよ」
灯は次々とマルコスを追い詰めてゆく遊次に、安心しきった表情を見せる。


「罠カード『妖義賊の秘技』発動!相手モンスターを1体奪う!
このカードの正面のカードは今トリオミノで除外した!もう無効にはならねえぜ。
俺が奪うのは…お前のフィールドに特殊召喚した『妖義賊-深緑のロビン』!」

遊次のフィールドのゴエモンが手をかざすと、
その手を取るようにロビンが遊次のフィールドへ素早く移動する。

「おっとぉー!?せっかく相手モンスターを奪えるようになったのに、
奪ったのはまさかの自分のモンスター!なぜもっと強力なモンスターを奪わないのか!?」


「(…遊次さんが何をする気なのか、完全にはわからない。
でも、僕が考えることは一つだ。
次のターン、遊次さんのたった700のライフを削ればいい)」
マルコスは伏せてある罠カードを見つめる。

「(罠カード『エニグマトリクス・ツイスト』は、
自分フィールドに融合モンスターがいない時、
墓地から融合素材を除外することで融合できるカード。
仮に僕のモンスターが全てやられても、
墓地のモンスター6体を融合すれば、またルービックを呼び出せる)」

「(この状況で、今の僕のモンスターを全て除去した上で、
更に守備力4000のルービックを倒すなんて不可能。
いくら自由に動き回ったとしても、次の僕のターンさえ来れば…)」

マルコスは、勝利への可能性を捨てていなかった。
フィールドにはまだ罠カードも、
相手の攻撃モンスターを破壊してダメージを与える「エニグマトリクス・ミラー」もある。
希望を失うにはまだ早すぎる。マルコスは心を持ち直して前を向く。

「手札の『妖義賊-誘惑のカルメン』をPスケールにセッティング!
そして、そのP効果を発動!1ターンに1度、相手の墓地のモンスターを1体、俺の手札に加える!
お前の墓地から『エニグマトリクス・モザイク』を奪うぜ」

頭上のカルメンが手招きすると、それに誘われるように、
半透明のエニグマトリクス・モザイクが浮かび上がり、遊次の元へ向かう。


「手札から速攻魔法『妖義賊の即日決行』を発動!
妖義賊1体をリリースして、デッキから『予告状』カードを1枚墓地に送る」


■妖義賊の即日決行
 速攻魔法
 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:フィールド上の「ミスティックラン」モンスター1体をリリースして発動する。
 デッキから「予告状」魔法カードを1枚墓地に送る。
 その後、そのカードを墓地から除外する。
 この効果の発動後、この効果で除外したカード以外の「予告状」魔法カードの効果は使用できない。


「俺はロビンをリリースして、デッキから『融合の予告状』を墓地に送る。
そして、即日決行の効果で除外する!」


「この瞬間、除外された融合の予告状の効果を発動!
チェーンして、リリースされた『深緑のロビン』の効果を発動!
こいつがリリースされた時、相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にする。
お前のエニグマトリクス・ミラーは、
俺の攻撃モンスターを破壊して、攻撃力分ダメージを与える厄介なモンスターだ。
だから無効にさせてもらうぜ」

即日決行を発動するためには妖義賊をリリースする必要がある。
カルメンの効果で相手フィールドにロビンを特殊召喚し、それを奪うという行動には、
間接的に自分のリリース要因を確保するという意味合いがあったのだ。


「くっ…」
マルコスは苦い顔をする。残った2つの妨害のうち、1つが潰されてしまった。

「チェーン1の融合の予告状の効果!手札・フィールドから融合召喚を行う。
フィールドのゴエモンと、手札のエニグマトリクス・モザイクで融合!」


「悪しきを挫く至高の剣士が、闇夜を斬り裂く一閃を放つ。
融合召喚!現れよ、『妖義賊-快傑ゾロ』!」


■妖義賊-快傑ゾロ
 融合モンスター
 レベル7/光/獣/攻撃力2800 守備力1800
 「ミスティックラン」モンスター + 元々の持ち主が相手となるモンスター
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動できる。
 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在し、
 相手が魔法・罠カードの効果を発動した場合に発動できる。
 その発動を無効にして破壊する。

現れたのは、青い二角帽子を被り、目に黒いマスクを着けた狐の戦士だ。
サーベルを携え、貴族のような青いジャケットに白いスカーフを巻き、高貴な姿をしている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/R2ef2Uj
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「あのモンスターは…」
アキトは遊次と初めて再会した後、詐欺師とのデュエルをNextに依頼した時を思い出す。
その時、遊次が詐欺師を倒すために呼び出したのがゾロだった。


「これが俺の…お前に勝つための答えだ」

--------------------------------------------------
【マルコス】
LP8000 手札:0

①エニグマトリクス・ルービック ATK4000
②エニグマトリクス・ピラミンクス ATK3300
③エニグマトリクス・ミラー ATK1900

墓地(上から):モザイク(地☆5)、ミラー(光☆4)、ミラー(光☆4)、
ヴォイド(闇☆6)、ソーマ(風☆5)、アイビー(水☆5)、
フィールド魔法、スクエア(罠)

伏せカード:1(●エニグマトリクス・ツイスト)

【遊次】
LP700 手札:0

①妖義賊-快傑ゾロ ATK2800
②エニグマトリクス・トリオミノ ATK2600

Pゾーン:▲妖義賊-舞蛇のキク、▼妖義賊-誘惑のカルメン

【フィールド】
マルコス
●□□□□
③①□②□
 □ □
□□①□②
▲□□□▼
遊次

--------------------------------------------------

ライフ差7300。
突破不可能と思われたマルコスの制圧的盤面を幾度も潜り抜け、
辿りついた境地。それがこのフィールドだった。


「数多の召喚方法をここまで華麗に操るとは…!
しかし、彼のモンスターの攻撃力では、
アルバレス選手のモンスターには届かない!依然、壁は高いように見える!
この状況をどう打破するのかぁー!」

風は遊次に吹いている。
しかし、ここからどうマルコスのモンスターに立ち向かうかは想像できず、
観客達も、マルコスが負けるイメージはついていなかった。


「バトルフェイズ!快傑ゾロで、エニグマトリクス・ピラミンクスを攻撃!」

「(…まずい、精神的な疲れからか、状況を把握できてない…!)」

マルコスはまだ盤面を整理できていない様子だ。
彼にできることは、もし融合モンスターがフィールドからいなくなった時、
伏せてある「エニグマトリクス・ツイスト」を発動し、
再びルービックを融合召喚することだけだ。

今まで意識の糸を張り続けた反動からか、
自分ができることは決まりきっているという状況が、
これ以上、頭を回転させ続けることを拒む理由になっていた。


「ついにバトルが始まったぁ!しかし、ゾロの攻撃力はピラミンクスよりも低い!」
実況の多口は瞬きせずフィールドを注視し解説する。

「融合の予告状によって融合されたモンスターが相手モンスターとバトルする時、
その相手モンスターの攻撃力は0となる!」

「そんなっ…!」
マルコスは大きく目を見開く。
ゾロがサーベルをピラミンクスへ一突きすると、
ピラミンクスにヒビが入り、やがてその姿は瓦解する。
マルコスは降ってくるピラミンクスの瓦礫から、両腕で自分の身を守るようにしている。

「うわああああ!!」
マルコス LP8000 → 5200

「怪傑ゾロの効果発動!こいつがモンスターを戦闘で破壊した時、
そのモンスターを俺のフィールドに特殊召喚できる!
来い!エニグマトリクス・ピラミンクス!」

落ちてゆくピラミンクスの瓦礫が遊次のフィールドに全て集まり、
再びブロックの巨人の姿が再構築される。
マルコスはただ唖然としていたが、目の前の状況を見て、遊次に言葉をぶつける。

「でも、君のモンスターじゃ僕のルービックを超えられない!
ここまで来れたことは凄いよ。でも…それが君の限界なんだ」

マルコスの投げかけた言葉に、遊次は何も言わない。
ただ前だけを見据えている。


「…エニグマトリクス・ピラミンクスの効果発動。
相手フィールドのモンスターを、全て除外する」
遊次は右手を前に掲げ、静かに効果発動の宣言をした。

「えっ……?」
マルコスも、そして会場の観客達も、状況を把握できていなかった。


「な、何言ってるんだ!エニグマトリクス・ピラミンクスは、
墓地に同じレベルのモンスターが3体並んでいなきゃ……」

マルコスが反論している最中、頭にある記憶が浮かんだ。
それは、遊次が人知れず墓地でパズルを完成させていたと知った時に確認した、
遊次の墓地に並ぶモンスター達だ。

(俺の墓地には地属性のジロキチ、サルバトーレ、イルチメが連続して並んでる。
最初の俺のターンで、リンク3の『神出鬼没のギルトン』を召喚した時、
リンク素材にした3体だ。その時点でパズルは完成してたんだよ)

数分前の遊次の言葉が頭にこだまする。

「ま、まさか…」

「パズルなら、揃ってる!
俺の墓地には、レベル4のジロキチ、サルバトーレ、イルチメが並んでるため、
ピラミンクスの効果を使用可能!お前のフィールドのモンスターを全て除外だ!」

ピラミンクスの除外効果は名称指定の1ターンに1度の制約がある。
この除外効果はすでにマルコスが使用しているが、
使用するプレイヤーが遊次に変われば、再び使用することができる。
遊次のフィールドのピラミンクスは、胸部のピラミッドから強烈な光を放つ。

マルコスは思わず、光を防ぐように両腕を前に掲げた。

再び目を開けると、マルコスのフィールドからモンスターは消えていた。
その瞬間、脱力したように両腕がだらんと下に落ちる。

「なんということでしょうかぁーー!!!
あろうことか1度ならず2度までも、墓地でパズルを完成させ、
相手から奪った力を使いこなしたァ!!」

会場からは大歓声が上がった。
チームの子供達も立ち上がって大はしゃぎしていた。

Nextの面々は緊張の糸が解けたように、大きく一息をつく。
遊次がこんなところで負けるはずがない。心からそう思っていた。
しかし、遊次の前に立ちはだかる壁の高さが、灯やイーサン達に迷いを与えた。
だが、そんな心配は不要だった。
遊次はこんなところで負ける男ではない。それを改めて再認識させられた。


「神楽選手がこのまま2体のエニグマトリクスでダイレクトアタックすれば、
ワンターンキル成立!!神楽選手の大逆転となる!
しかしアルバレス選手には、前のターンから伏せられている罠カードがあります!
アルバレス選手が生き残る可能性は、その1枚に懸っているゥ!」

呆然としていたマルコスは、実況の声を聞いた途端、
目が覚めたように意識が鮮明になる。
そしてそれはマルコスの友人や先生も同じだった。

「マルコスにはまだあの罠カードがある!
あれを発動すれば、このターン、マルコスが負けることはないよ!」
友人の1人が皆に明るく伝える。
マルコスとの鍛錬の中で、彼のカードを知り尽くしているのだろう。

「がんばれーー!!マルコスーー!!
諦めるな!!まだ終わりじゃないっ!」
その言葉に希望を抱き、友人5人と先生はマルコスを応援する。

「…そうだ…!僕にはまだこのカードがある!
罠カード発動!『エニグマトリクス・ツイスト』!」
マルコスは満を持して、前のターンから伏せられていた罠カードを発動した。

「僕のフィールドに融合モンスターがいない時、
墓地から融合素材を除外することで融合召喚できる!」



「…『妖義賊-怪傑ゾロ』の効果発動。
相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、
1ターンに1度、相手の魔法・罠を無効にして、破壊する!」

ゾロがサーベルを一振りすると、マルコスのフィールドの罠カードは真っ二つに割れた。
まるで時が止まったように、マルコス、友人達、先生は
目を見開いてその光景を見つめていた。


「な、なんということでしょうかぁ!!
アルバレス選手が生き残るための唯一の頼みの綱は、あっさりと無効にされてしまったぁ!
このまま行けば、神楽選手の勝利です!!」

マルコスは呆然と立ち尽くしていた。
言葉が出なかった。頭が整理できなかった。


「(1枚1枚のカードを繋いで、あんだけの高い壁を超える…。
やっぱりデュエルってのは最高におもしれぇ…!
これこそがヴェルテクス・デュエリアだ!)」

会場の歓声と、勝利のカタルシスによって、遊次はかつてないほど高揚していた。
この瞬間のためにデュエルをしているのだと感じた。

「勝利は俺が頂いた!」

「いくぜ、マルコス!エニグマトリクス・トリオミノでダイレクトアタック!」
トリオミノが両手を合わせると、その中心から炎の球が浮かび上がる。
そしてそれはマルコスへと放たれる。

「うあああああああ!!!」
マルコス LP5200 → 2600


「これでラストだ!
エニグマトリクス・ピラミンクスで、ダイレクトアタック!」

ピラミンクスは胸部のピラミッドに光を集約させる。
その光は一直線にマルコスへ向かう。

「あああああああ!!!」
マルコス LP2600 → 0

観客達は様々な表情をしていた。
遊次の勝利に喜ぶ者。世紀の大逆転に唖然とする者。
そして、願いを託した仲間の敗北に、涙する者。


「ついに勝負は決しましたーーー!ライフ700からの大逆転ッ!!
2回戦へ駒を進めたのは、神楽遊次だぁーー!!!」

「やったぁーっ!!」
灯が両手を挙げて遊次の勝利を喜ぶ。
その喜びを内に秘めておけず、イーサンや怜央、子供達ともハイタッチをして回っている。

遊次は観客席にいる灯やイーサンに笑顔で手を振る。
そして、マルコスの方へと歩いてゆく。
握手を求めようとした時、マルコスは膝をつき、泣き崩れ始めた。

「うあああああ!!!ごめん…ごめんなさい…!
みんな…ごめんなさい…っ…!!」

遊次が伸ばした手は行き先を失い、宙で固まっている。
ただ地面に伏して嗚咽しているマルコスを、見つめることしかできなかった。

ふと、観客席のマルコスの友人達の方を見た。
子供達はみんな、涙を流して抱きしめ合っていた。
遊次の胸には、様々な感情が沸き上がった。


「(…そりゃ、負けたら死ぬほど悔しい。願いを背負ってればなおさらだ。
俺だってその気持ちは誰よりもわかる)」

「(それでも…デュエルってのは、楽しいもんじゃないのかよ。
いいデュエルだったって…今度は負けないって、笑顔で握手して…。
それじゃダメなのかよ)」

胸のざわつきがどんどんと大きくなってゆく。

「…いつか、またデュエルやろうぜ。
…楽しみにしてるからな」

マルコスは遊次の言葉など耳に入っていないかのように泣き喚き続けていた。
遊次はその言葉だけを残すと、寂しそうな顔で背を向け、フィールドを立ち去る。

「(大逆転できて、すげー嬉しいし、すげー楽しい。
今だってずっと気持ちが昂ってる。
なのに…なんなんだよ、この気持ち…)」

4年前に出場した時には感じたことのなかった感覚が、心を支配してゆく。
遊次はこのもやもやの正体に気が付いていなかった。


そんな遊次の様子を、会場から見つめる者達がいた。
紺色のロングヘアをしたメガネをかけた女性「珊玲(シャンリン)」だ。

キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/PcgqjpN
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彼女は遊次とマルコスのデュエルと同時に、他のフィールドでデュエルを行い、
早々に2回戦に勝ち進んでいた。

「(…やはり何も変わっていないんだな、神楽遊次。
その性根を…必ず私が叩き折ってみせる)」
心の中で呟くと、シャンリンは背を向け、会場の建物内へと入っていった。


同じく、遊次の姿を見つめていた者がいた。
車椅子にのった虚ろな目をした青年だ。

「(遊次君。君はまだ、この戦いの本当の意味を理解していない。
そのままだといつか…君自身がジレンマに苛まれることになる)」


「えー…未だ会場の興奮は冷めませんが、
30分後、このスタジアムで第5試合から第8試合が同時進行で行われます…」
実況の多口伝助は、先ほどとは別人のように、また覇気のない姿に戻っていた。

「このフィールドでは、第5試合。
『鉄城怜央 VS 花咲灯』のデュエルをお届けします」
会場の大きなスクリーンに、2人の顔が表示される。

遊次の勝利を喜んでいた灯と怜央は、それを見てお互い顔を見合わせる。

「…もうすぐあいつらのデュエルか。…気持ち切り替えねえと」
観客席に向かおうとしていた遊次も、スクリーンを見て呟く。

様々な思いが交錯するこのスタジアムで、また次の激戦が始まろうとしている。
デュエルを観に来ていた灯の父と母は、
緊張した面持ちでスクリーンを見つめていた。


第32話「究極の難題」 完



開幕する、怜央と灯のデュエル。
灯は連続シンクロを行い、怜央に対して容赦のない炎属性メタを張る。

しかし、相手の手の内を知っているのは灯だけではない。
怜央は灯の出方を予測し反撃するも、
灯のデュエルは、想像を超えた新たなる進化を遂げていた。

次回 第33話「願いの炎」
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90 【カードリスト】花咲 灯 653 0 2023-04-02 -
67 第11話:番犬の尾を踏んだ日 531 0 2023-04-02 -
67 第12話:雷の城塞 628 0 2023-04-04 -
67 第13話:平穏を脅かす者に裁きを 462 0 2023-04-06 -
59 【カードリスト】イーサン・レイノルズ 512 0 2023-04-07 -
88 第14話:決戦前夜 682 0 2023-04-09 -
79 【お知らせ】お久しぶりです。 1624 2 2024-02-09 -
42 第15話:爆焔鉄甲(スチームアーミー) 512 2 2025-01-06 -
47 第16話:魂の衝突 500 2 2025-01-13 -
43 第17話:EDEN TO HELL 429 0 2025-01-22 -
54 第18話:憤怒の白煙 510 1 2025-01-29 -
34 第19話:天に弧を描く義の心 366 2 2025-02-05 -
33 第20話:To The Next 403 1 2025-02-12 -
37 【カードリスト】鉄城 怜央 324 0 2025-02-12 -
35 第21話:踏み出す1歩目 345 0 2025-02-19 -
27 第22話:伸し掛かる天井 386 0 2025-02-26 -
33 第23話:壁に非ず 355 0 2025-03-05 -
23 第24話:滅亡へのカウントダウン 440 0 2025-03-12 -
23 セカンド・コラプス編 あらすじ 398 0 2025-03-12 -
36 第25話:アクセラレーション! 424 0 2025-03-19 -
26 第26話:虹色のサーキット 374 3 2025-03-26 -
20 第27話:ふたりの出会い 231 0 2025-04-02 -
32 第28話:親と子 238 0 2025-04-09 -
27 第29話:心の壁 300 0 2025-04-16 -
28 第30話:無償の愛 284 0 2025-04-23 -
33 第31話:開幕 ヴェルテクス・デュエリア 392 0 2025-04-30 -
36 第32話:究極の難題 474 0 2025-05-07 -
34 第33話:願いの炎 342 0 2025-05-14 -
41 第34話:ただそれだけ 381 0 2025-05-21 -
30 第35話:シークレット・ミッション 247 0 2025-05-28 -
32 【カードリスト】七乃瀬 美蘭 362 0 2025-05-28 -
33 第36話:欲なき世界 326 0 2025-06-04 -
37 第37話:禅問答 343 0 2025-06-11 -
27 第38話:紅と蒼の輪舞 191 0 2025-06-18 -
25 第39話:玉座 201 0 2025-06-25 -
30 第40話:"億"が動く裏世界 334 0 2025-07-02 -
24 第41話:生粋のギャンブラー 189 0 2025-07-09 -
30 第42話:運命のコイントス 251 0 2025-07-16 -
30 第43話:王選(レガルバロット) 212 0 2025-07-23 -
27 第44話:願いの芽を摘む覚悟 262 2 2025-07-30 -
23 第45話:答え 194 0 2025-08-06 -
21 第46話:潜入作戦 186 0 2025-08-13 -
26 第47話:心の象徴 191 0 2025-08-20 -
21 第48話:繋ぐ雷電 278 0 2025-08-27 -
23 第49話:帳が上がる時、帳は下りる 245 3 2025-09-03 -
17 第50話:影を焼き尽くす暁光 162 0 2025-09-10 -
3 第51話:夜明け 73 0 2025-09-17 -

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