9話 姫騎士VS揺れ動く運命　作：名無しのゴーレム

「「デュエル！！」」



プリンセス LP8000 手札5枚
ダイス LP8000 手札5枚


「私のターン！ 私は手札から姫騎士リリィを召喚！ さらに私の場に姫騎士が存在することにより、手札から姫騎士アメリアを特殊召喚！ 」


「へぇ……さっそくか。」
「さっそくって、何が？」
「ユージも見てりゃ分かるさ。」


「行くわよ！ レベル3の姫騎士アメリアにレベル3の姫騎士リリィをチューニング！ 炎を纏いし姫騎士よ、今こそ敵を焼き払え！ シンクロ召喚！ 聖姫騎士アライブ！」
「シンクロ召喚ですか……」
「まだよ！ 手札から永続魔法、姫たちのお茶会発動！ このカードが存在する限り、手札の姫騎士を墓地に送る度にカードをドローするわ。アライブの効果発動！ 手札の姫騎士を墓地に送り、デッキの上から3枚を墓地に、そしてこの効果で墓地に送られた姫騎士1枚につき500ポイントのダメージを与えるわ！ ……墓地に送られた姫騎士は2枚、よって1000ポイントのダメージよ！」

ダイス LP8000→7000

「くっ……」
「姫たちのお茶会の効果で1枚ドロー。これでターンエンドよ。」


プリンセス LP8000 手札2枚 モンスターゾーン 姫騎士アライブ 魔法・罠ゾーン 姫たちのお茶会
ダイス LP7000 手札5枚


「僕のターン、ドロー。サイコロ・プリンスを召喚！ サイコロ・プリンスの効果発動！ サイコロを振り、1が出たならデッキからレベル6以下のサイコロモンスターを特殊召喚する！ さあ、ダイスロール！」


ダイスさんが振ったサイコロ、その目は……


「……あれ、4か。よってサイコロ・プリンスの効果は発動しない。」
「……え？ 失敗したの？」


プリンセスさんの話によれば、ダイスさんはその凄まじい豪運でレストランにいたテロリストを退治してみせたらしい。確かに、それを考えれば今のは不自然に思えるけれど……


「……仕方ないか。カードを1枚セットして、ターンエンド。」


プリンセス LP8000 手札2枚 モンスターゾーン 姫騎士アライブ 魔法・罠ゾーン 姫たちのお茶会
ダイス LP7000 手札4枚 モンスターゾーン サイコロ・プリンス 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ ……来た！ 私はフィールド魔法、暁の都市ラメールを発動！ ラメールの効果発動！ 手札の姫騎士1枚を墓地に送って1枚ドローする。さらに姫たちのお茶会の効果で1枚ドロー！」


プリンセスさんは着実に場を整えている。運任せなダイスさんとは対照的な戦い方だ。


「アライブの効果発動！ 手札の姫騎士1枚を墓地に送る。……デッキから墓地に送られた姫騎士は1枚、よって500ポイントのダメージを与える！」

ダイス LP7000→6500

「姫たちのお茶会の効果で1枚ドロー。墓地の姫騎士ヴァニラの効果発動！ このカードを除外して、墓地の姫騎士ラフェンサを特殊召喚！ さらに姫騎士コークルを召喚！ ラフェンサとコークルが存在することにより、ラフェンサの攻撃力、コークルの守備力を500ポイントアップ！」

姫騎士ラフェンサ 攻撃力1900→2400

姫騎士コークル 守備力1900→2400

「バトル！ アライブでサイコロ・プリンスを攻撃！」

ダイス LP6500→4100

「アライブの効果発動！ 戦闘で破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える！」

ダイス LP4100→4000

「一気にライフを持っていかれましたか……」
「まだ終わらない！ コークルでダイレクトアタック！」

ダイス LP4000→3000

「ラフェンサでダイレクトアタック！」

ダイス LP3000→600

「う、うぅ……」


「……なんだ、呆気ないな。」
「ダイスさんの残りライフは600、それにあの場じゃ……」


「……これで分かったでしょ？ あなたの運の良さはさっき見たけれど、だからと言ってデュエルまでその運で勝てる訳じゃない。デュエルは実力の勝負よ。そこに運なんて絡まない。」
「……でも、運も実力のうちとも言いますよ？」
「それは力を出し切ったあとの話よ。初めから運任せで戦っていい訳じゃないわ。」
「……それもそうか。でも、僕はこれ以外の戦い方を知らないもので。」
「そう、ならこのまま負けなさい。私はこれでターンエンド。」


プリンセス LP8000 手札2枚 モンスターゾーン 姫騎士アライブ 姫騎士コークル 姫騎士ラフェンサ 魔法・罠ゾーン 姫たちのお茶会 フィールド魔法 暁の都市ラメール
ダイス LP600 手札4枚 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚


「僕のターン、ドロー。手札から通常魔法、鎖印のサイコロ発動！ サイコロを振って、6ならデッキからレベル6以下のサイコロモンスターを2体特殊召喚、それ以外なら出た目以下のレベルを持つサイコロモンスターをデッキから手札に加える。さあ、ダイスロール！」


……6、だ。


「……よし、ツイてる！ 効果でデッキからサイコロ・ストラティージエクとサイコロ・プリーストを特殊召喚！ ストラティージエクの効果発動！ 手札を1枚捨てて……ダイスロール！」


コロコロコロ……2。


「よし、ストラティージエクの効果でプリンセスさんのアライブとラフェンサを破壊！ 」
「くっ！ ……ラフェンサが破壊されたことによりコークルの守備力は元に戻る。でも、まだ……」
「さらにサイコロ・プリーストの効果発動！ 手札1枚をコストにして……ダイスロール！」


コロコロコロ……5。


「プリーストの効果でプリンセスさんの魔法カードをすべて破壊します！」


……そんな。本当に運だけで逆転してしまった。


「そしてフィールド魔法、サイ・コロッサス発動！ サイ・コロッサスの効果発動！ さあ、ダイスロール！」


……6。


「これでこのターン、サイコロモンスターの攻撃力は1200ポイントアップ！」

サイコロ・ストラティージエク 攻撃力2600→3800

サイコロ・プリースト 攻撃力2000→3200

「バトル！ サイコロ・ストラティージエクで姫騎士コークルを攻撃！」

プリンセス LP8000→5200

「サイコロ・プリーストでダイレクトアタック！」

プリンセス LP5200→2000

「……やっぱり、あなたの豪運は侮れないわね。」
「お褒めにあずかり恐縮です。僕のターンはこれで終わりにします。」

サイコロ・ストラティージエク 攻撃力3800→2600

サイコロ・プリースト 攻撃力3200→2000


プリンセス LP2000 手札2枚
ダイス LP600 手札1枚 モンスターゾーン サイコロ・ストラティージエク、サイコロ・プリースト 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚 フィールド魔法 サイ・コロッサス


「……私のターン、ドロー！」


「……なあ、ユージはこのデュエル、どっちが勝つと思う？」
「うーん……今のところはダイスさんがフィールドを支配しているけれど、このターンでダイスさんのライフを削りきってしまえば、あるいは……」
「俺と同じ意見だな。ダイスのサイコロデッキは爆発力は高いが、見たところ防御性は低そうだ。となれば……」


……やられる前にやるってことか。


「……姫騎士サーシャを召喚！ サーシャの効果発動！ 墓地から姫騎士アメリアを特殊召喚！ レベル3のアメリアにレベル2のサーシャをチューニング！ 疾風を操る姫騎士よ、今こそ敵を貫け！ シンクロ召喚！ 聖姫騎士エーリカ！」


またシンクロ召喚を……


「エーリカは相手フィールドにモンスターがいてもダイレクトアタック出来る！ 行け、エーリカ！」


エーリカの攻撃力は2200。これで終わるのか……？


「させませんよ！ リバースカードオープン！ カウンター罠、賽の鉄槌！ 手札のサイコロ・スナイパーを捨ててサイコロを振り、1が出たら相手モンスターの召喚・特殊召喚を無効にし破壊する！ ……さあ、大一番だ！」


ダイスさんが投げたサイコロが地面を転がり、回る。ゆっくりと動きを止め、そして……



「……そ、そんな……」
「……1だ。運命は僕に味方した！」


天から雷が振り、現れようとしたエーリカを破壊した。


「あ、あり得ない……」
「あり得ないことを成し遂げる、それを奇跡と呼ぶんですよ！」
「……はぁ、私の負けよ。もう逆転の手はないわ。」


「……え？」
「サレンダーか。プリンセスらしいといえばらしいが。」



ーーこうして、プリンセスさんとダイスさんのデュエルは終了した。




「……さて、これで認めてくれるんですよね？」
「……そうね。一つ、質問してもいいかしら。」
「もちろん。なんでしょうか。」
「最初のターンだけ、あなたはダイスロールに失敗した。あれはたまたまなの？」
「あー、それは……」


ダイスさんは頭をポリポリと書き、少し恥ずかしそうな顔をした。


「……実は、僕ってピンチのときだけ幸運を呼ぶんですよ。だから……」
「……最初のは普通に失敗した、と？」
「そう、なりますね……」
「……あ、だからあんなにやられ放題になっていたのか。わざとピンチになるために……」


……なるほど。例えば最後のカウンター罠。あれは最初から伏せてあったけれど、プリンセスさんの猛攻を受けた際には一切使用しなかった。それも幸運を呼ぶために、わざと使わなかったんだ。


「……つまり、あなたは自分の体質を利用した戦い方をしていたっていうわけ？」
「良く言えばそうですね。悪く言えばあなたの言った通り運任せの戦術ではありますが。」


プリンセスさんは少し考え込んだ後、ゆっくりとため息を吐いた。


「……分かったわ。私には理解できないけれど、それも立派な戦い方なんでしょう。それなら、あなたも知略を尽くして戦う、立派なデュエリストよ。……そんな人の話なら、信じてあげてもいいわ。」
「……ふぅ。これでようやく本題に入れますね。」




ーー僕たちはダイスさんに事の経緯をすべて話した。



「……つまり、君たちは水鏡に会いたいんだね？」
「はい。それで、ダイスさんに水鏡さんの居場所を教えてもらいに……」
「分かった。少し待っていてくれるかい？ 準備をしてくるから。」


そう言い残して、ダイスさんはどこかに走っていった。


「……準備？ 儀式でもするのか？」
「なんだか、嫌な予感がするわ……」


数分後、ダイスさんが戻ってきた。その手に持っていたのは……


「……それ、何ですか？」
「これはこの辺りの地図だよ。」
「なら、この矢印は？ 数字が振られてるみたいだが……」
「……ダイス、あなたまさか……」
「さて、それじゃあ始めましょうか。」


……あ、あれは！


「それは確か……神のダイス、だったかしら？」
「はい。それでは……ダイスロール！」
「「「！！？？」」」


突如振られたサイコロは、やがて一つの目を示した。


「えーと、13か。だったら……」
「ま、待ってください！ なんなんですか今の！？」
「何って……水鏡の居場所が知りたいんだろ？ だから今調べたんだけど？」
「調べたって……サイコロ投げただけじゃない！ しかもあなたさっき言ってたでしょ！ 『ピンチでないと幸運を呼べない』って！」
「そうですけど……これはそれとは別ですよ。神のダイスは常に僕の望む答えを示します。今なら水鏡の居場所を、ね。……ほら、こっちみたいですよ。」


地図に『13』と書かれた矢印。その方向に水鏡さんが……？


「……これは、いくらなんでも……」
「信じられないと言われても困りますよ。何の手がかりもなく歩き回るよりはマシだと思いますけどね。」
「くっ……いいわよ、あなたの言う通りにしてあげるわよ！」






「もう行ってしまうんですか？ 少しはゆっくりしていけばいいのに……」
「そうもいかないわよ。メシアとの約束だし、早く水鏡のところに行きたいの。」
「……残念です。叶うのならば僕も同行したいのですが、この街のこともありますから……」
「心配すんなって。プリンセスは俺とユージで面倒見るからさ。」
「……マッハ。それ、どういう意味かしら？」
「え？ だから、もうプリンセスが独断行動しないようにしっかりと見張って……」
「誰があなたなんかに面倒見られるか！ ……もういいわ、早く馬車に乗りなさい！」
「へいへい。……ユージ、行こうぜ。」
「う、うん。」
「……ユージ君、少しいいかい？」


……？ ダイスさんに呼び止められ、僕は足を止めた。


「何かありましたか？」
「いや、どうってことではないんだけどね……気をつけなよ。ここから先、きっと厳しい戦いになる。しかも君はまだ戦う力を持たない。だから……仲間を、大切にするんだ。彼らなら、最後まで君の支えになってくれるだろうから。」
「……はい！」
「これだけだよ。……この世界のこと、任せたよ。」


「ユージ！ 何やってるのよ！」


「……プリンセスさんも呼んでるし、早く行ってあげてくれ。」
「はい。……本当に、ありがとうございました！」





ーーこうして、僕らはフォーチュンシティを後にした。いよいよ、水鏡さんのところに……