七夕記念企画：お疲れ様会、彦星組編　作：名無しのゴーレム

ユージ「……えっと、それじゃあ……」

爆「おい、リーダーがそんな調子でどうすんだよ！ ……いいぜ、代わりに俺がやってやるよ。彦星組の勝利に、かんぱ〜い！！」






「「「…………」」」





爆「…………おい！？ なんだよ、なんで誰も合わせねえんだ！？」

龍門「……ふん、くだらん」

虎徹「悪いが、そういったことは不慣れでな……」

バニシングD「……同様だ」

ゴース「…………ぐぅ、ぐぅ……」

マスクドドラグーン「ははは……祝勝会というのは、ここまで盛り上がらないものだったかな？」

爆「ぐむむ……まあいい！ 今夜は俺があのにっくきスターの奴を負かした記念すべき日、多少のことは水に流して……」

マッハ「とても初戦で負けた奴の台詞じゃねえな」

爆「ぐっ！？」

龍門「……慢心の上に考えを顔に出しているようでは、負けるのも当然だ」

爆「ゲフッ！？」

ゴース「……まあ、あれのおかげで後もやりやすくなったよね〜……」

爆「ゴガッ！？ …………」

ユージ「は、爆さん！！」

マッハ「精神的に打ちのめされたな……ほっといても問題ないだろ。じゃあ改めて、彦星組のお疲れ様会を始めようぜ」

ユージ「そ、そうだね……と言っても、何をすればいいのか……」

虎徹「……まずは、大将を務めたユージ殿から一言というのはどうだろう？」

ユージ「え……えぇ！？ 何を言えばいいんですか！？」

マッハ「そりゃあ、まあ……今回のお祭りについてじゃないか？」

ユージ「それは分かってるよ！ うーん……みなさん、このお祭りに参加してくださって本当にありがとうございました！ みなさんの協力もあって、僕たち彦星組は見事勝利を収めることが出来ました。それを祝して……乾杯！」




「「「乾杯！！」」」




爆「……って待てぇ！ なんだ、なんでユージのにはこんなに参加するんだよ！ 嫌がらせか！？」

マッハ「よし、じゃあまずはメシでも食うか！ さっすが七夕の化身、無茶苦茶美味そうな料理を用意してくれたからな！」

ユージ「そうだね。何を食べようかな……」

虎徹「肉、肉を寄越せぇ！！」

爆「チッ……うめぇ、なんだこの肉！ 今まで食ったことねえぞ！」

虎徹「爆殿、それは真か！？ 私も食べるぞ！！」

バニシングD「……男は肉を好む。データベースに記録しておこう」

龍門「……あれは若いうちだけの話だ。儂はむしろ、油の少ない和食の方が口に合う」

バニシングD「なるほど……興味深いな」

ゴース「……ねぇ、これ何〜？ チョコレートが噴水みたいになってるけど〜……」

マスクドドラグーン「うん？ ……ああ、これは……こんな風に、串に刺した食べ物を中に入れるんだ。すると……ほら、チョコでコーティングされる。中々美味しいぞ、食べるか？」

ゴース「……うん、食べる〜……」

マスクドドラグーン（……幽霊でも、食事は取るんだな）

マッハ「……しっかし、こんな人数で食事するってのも久しぶりだな。ユージはどうだ？」

ユージ「僕？ ……学校だと毎日大人数で食べてるけど、こんな風かと言われると少し違う気もするなぁ……」

マッハ「ふぅん……あ、そうだ。さっきスターから伝言を頼まれたんだけどさ」

ユージ「スターちゃんから？ ……なんて？」

マッハ「いや、それがな……『何でも1つ、ユージ君の願い事を叶えてあげるから考えといてね！』……だとさ」

ユージ「何でもって……でも、今のスターちゃんなら本当にどんな願い事でも叶えちゃいそうだよね」

マッハ「まあな。この後両チームで合流するらしいから、その時までに決めておけばいいんじゃないか？」

ユージ「急にそんなこと言われたってなぁ……」

爆「おい、ユージ！！」

ユージ「！！ 爆さん、僕に何か……」

爆「お前、本当はすげえ奴なんだな！ どっからどう見ても頼りなさそうに見えたから、ぶっちゃけスターに瞬殺されると思ってたが……まさか勝っちまうとはな！」

ユージ「あ、あはは……あれは偶然で……」

虎徹「ユージ殿、自らの勝利を偶然の一言でおさめてはならないぞ。それは負けた相手に対する侮辱にもなる」

ユージ「す、すみません……」

バニシングD「……今回の祭りで、良質なデュエルデータを数多く採ることが出来た。……感謝する」

マッハ「確かに、今回のデュエルは全部かなりレベルが高かったよな。……あー、俺も出たかったなー！」

龍門「お主には荷が重い。もっと修行を積んでからにした方がお前の身のためだ」

マッハ「……ほぉ。何時まで俺をガキ扱いする気だ、龍門？」

龍門「童を童として扱って何が悪い。あと10年もしてから出直してこい」

マッハ「その時までにあんたが生きてるか心配だけどな、ジイさん？」

龍門「…………」

マッハ「…………」

マスクドドラグーン「まあまあ2人とも。ここは祝いの場、喧嘩は場違いだろう？」

虎徹「その通りだな。……それにしても、あなたのデュエルは随分個性的だったな。終始相手のカードを利用するとは……なかなか面白いデュエルだった」

マスクドドラグーン「そう言ってもらえると俺も嬉しいな。今はまだ自分らしいエンタメデュエルを模索している最中だが、先日のデュエルはかなり理想に近いものだった……」

ゴース「……確かに、あれは見てて楽しかったよね〜。最後もド派手に終わったし……」

マスクドドラグーン「だが、みんなのデュエルも大変興味深いものだったよ。普段は見ることのないデュエルスタイルもたくさん見られた……」

バニシングD「……それには同意する。龍門や虎徹のエクストラデッキを一切使わない戦術には驚かされた。通常ならば狙える戦術の数で不利となるはずだが……」

龍門「デュエルは理屈がすべてではない、というだけの話だ。己が信念を貫き通せば山札は応えてくれる……それが、真のデュエリストというものだ」

虎徹「……一理ありますな。龍門殿の言う『信念のデュエル』、私も今後実践していきたいものです」

龍門「お主には見込みがある。……きっと、いずれは名のあるデュエリストとなることだろうよ」

虎徹「……それは嬉しい限りです」

爆「……ケッ。たまたま虎徹がエクストラデッキを使わないデッキなだけだろうが」

龍門「安心しろ。例えお主がそうであっても儂は認めてはいないからな」

爆「喧嘩売ってんのか！？」

龍門「やれやら、若造は血の気が多くて仕方ない。……稽古なら付けてやるぞ？」

爆「稽古だぁ？ ……へっ、痛い目見せてやるよジジイ！」







「「デュエル！！」」







〜〜数ターン後〜〜






龍門「これで終わりだ！！」

爆「ぐわあぁぁぁ！！！」





ﾊﾞｧｧｧﾝ!!!






一同「「「爆！！！」」」






爆「……クソッ、今のはたまたまだ！ もう一回やれば……」

龍門「その威勢だけは認めてやるが、相手との力量差も分からない愚か者では話にならないな」

爆「アアン！？」

マッハ「はいはい、もうその辺にしとけ。……爆、お前はもっと相手を警戒しろ。前のも今のも、完全に油断して負けてんじゃねえか」

爆「ぐむっ……」

ゴース「……駄目だよ、油断しちゃ。勝てる相手にも勝てなくなっちゃうからね〜……」

ユージ「……そういえば、ゴースさんのデュエルはすごかったですよね。途中からずっと相手を圧倒していて……」

ゴース「……あれは、相手の戦術の穴を突いただけだよ〜。それでも、もう少しで危ないところだったけどね〜……」

バニシングD「……戦術の穴を突く……簡単に言うが、そう容易く行えることではないだろう。……ゴース。お前は、何者だ……？」

ゴース「僕？ …………あれ、覚えてないや〜。僕、誰だっけ〜？」

マスクドドラグーン「……それは、記憶喪失の類なのか？」

ゴース「さあ、どうなんだろうね〜……」

虎徹「……謎の多い御仁だ。そも、幽霊が普通に会話しているというだけでも相当魔化不思議なのだがな……」

龍門「確かに、儂もこれまで幽霊に会ったことは一度もなかったな」

ユージ（…………あれ？ そういえば、アルムはどういう扱いになるんだろう……やっぱり幽霊？）

マスクドドラグーン「……答えの出ない話をしても仕方ないだろう。それより、もっと楽しい話をしようじゃないか！」

バニシングD「……楽しい話、とは？」

マスクドドラグーン「そうだな……ちょうど今日は七夕だ。全員の願い事、もしくは夢を言い合うなんてのはどうだ？」

マッハ「へぇ、そりゃいい……よし、やろうぜ！ まずは誰からにする？」

マスクドドラグーン「言い出しっぺの俺からにしよう……俺の夢は世界にエンタメデュエルを広め、デュエルでみんなに笑顔を届けることだ！」

ユージ「デュエルで、笑顔を……叶うといいですね」

マスクドドラグーン「ああ。そのためにも、日々努力を重ねるつもりだ……次は誰にする？」

マッハ「じゃあ俺が言おっかな。俺の夢は世界中を旅して回ることだ。まだまだ俺が行ったことのない場所は多い、だから立ち止まっちゃいられねえな！」

虎徹「……お前らしいな」

マッハ「だろ？ お前はどうなんだ、虎徹？」

虎徹「私か？ ……さらなる高みを目指すこと、か。強さに頂上などないことは承知の上だが、それでも私は修行を続ける……そのつもりだ」

龍門「……儂も同様だな」

マッハ（龍門の奴、さらっと自分の分も終わらせやがったな……）「……で、次はどうする？」

バニシングD「……ならば俺が。……俺の場合は、製造目的となるが……センパイを超えるヒーローとなることだ」

マスクドドラグーン「センパイ……確か、ヴァルキリオンのことだったか。随分大きな目標だな……」

バニシングD「……しかし、必ず成し遂げなければならない。そうでなければ、俺が製造された意味がなくなる……」

爆「……よく分かんねえが、お前も大変なんだな」

バニシングD「……そうかも、しれないな」

マッハ「……じゃ、次は……ゴース、いっとくか？」

ゴース「……えっと、願い事だっけ〜……一生のんびり過ごせたらいいよね〜……」

虎徹（その願い、もう叶っているような……そもそも、幽霊の『一生』とは何なのだ？）

ユージ「あはは……ゴースさんらしいと言うか……」

爆「ハッ、つまんねえこった。何があるのか分からねえのが楽しいってのによ」

マッハ「じゃあスターに会ったのも楽しかったことに入るのか？」

爆「あれは別枠だっての！！」

マッハ「……ま、だよな。丁度いい、そのままお前の願い事も言っとけよ」

爆「俺様の願い事か？ ……決まってる。世界一波乱に満ちた冒険をして、世界で一番強くなって、そして世界で一番有名な英雄になることだ！」



一同「「「…………」」」




爆「……なんで黙り込むんだよ」


マッハ（薄っぺらいなぁ……）

ユージ（頑張れって言う気すら起きない……）

マスクドドラグーン（まあ、思うだけなら自由ではあるが……）


爆「……おい、何か言えよ」


龍門（一生かけても不可能だろうな）

虎徹（本気で言っているのなら大したものだ）


爆「だから、誰か何か言えってば！」


ユージ「……あ、ごめんごめん」

マッハ「よし、ラストは……ユージ、いっとけ！」

ユージ「……僕の、願い事か……この世界の平和、かな？」

マスクドドラグーン「……はは。これはまた、大きく出たな」

ユージ「えっと、まあそのためにメシアさんにこの世界に呼ばれて来ましたから……」

龍門「……くだらんな」

ユージ「え？」

マッハ「……龍門。それ、どういう意味だ？」

龍門「言った通りだ。……誰かに言われたからそうする、そんなことに信念が宿るはずもない。ぐだらない話だ……」

ユージ「で、でも……」

龍門「なんだ？」

ユージ「…………その、通りです。だから僕は、自分の意思で立ち向かえるようになりたいんです……」

龍門「……そうか。ならば励むがいい。信念を持とうとする意思、若者にしては気概が見られるな」

虎徹「そのために旅をしている、ということか。……応援しているぞ」

ユージ「あ、ありがとうございます！」

マッハ「これで全員分だな。……ん、そろそろかな」

バニシングD「……そろそろ、とは？」

マッハ「ああ、この後スターたちと合流することになってるんだよ。この祭りのシメ……みたいなものをするんだと」

ゴース「……そうなんだぁ……ふぁぁ」

虎徹「ゴース殿はその前に眠ってしまいそうだな……急ごうか」

マスクドドラグーン「そうだな。……しかしシメというのは……何をする気だろうか？」

マッハ「さあ、俺も知らないけど……でもあいつのことだし、派手なことをするのは確かだな……あの流星群みたいに」

ユージ「……あれ、今も降り注いでるよね？ 色々大丈夫なのかな？」

爆「大丈夫じゃねえっつうの。何個地面に落ちて来たと思ってんだ。危うく死にかけたぞ……」

龍門「お主が勝手に爆発しただけだろうが。……それで、ここから移動するのか？」

マッハ「そうだな。そんなに歩く訳でもないらしいが……行くか！」

ユージ「うん！」