5話 未来都市 フォーチュンシティ　作：名無しのゴーレム

「……お、見えてきたな。」


1度プリンセスさんの屋敷に戻って準備を整えてから、僕たちは『運命の賢者』がいるという、フォーチュンシティに行くため、セバスチャンさんが運転する馬車に乗っていた。そして揺られること数時間、馬の休憩や軽食を挟んで、ようやく目的地まで辿り着くことが出来た。


「……ふぅ。だいぶ掛かったわね。」
「そうだな。俺のバイクならもっと早く着くんだが……」
「え？ マッハ、バイクに乗れるの？」
「当たり前だろ。俺はずっと世界中を旅してるんだ、バイクに乗ってな。だからここにも来たことがあるんだぜ？」
「へぇ〜……」


……僕より小さいのに、どうやって乗ってるんだろう。マッハ専用のバイクとかなのかな？


「……さて、と。それじゃあ、手分けして運命の賢者について聞いて回りましょうか。私はあっちに行くから、2人は向こうをお願いね。」
「おい、何勝手に決めて……ハァ、もう行っちまったか。」
「……ねぇマッハ、あっちって……」
「ああ、こっからでも見えるだろ？ このフォーチュンシティでも最高峰のショッピングモール、その名もフォーチュンモールだ。プリンセスのやつ、早速観光する気満々じゃねえか。」
「ハハハ……まあ、僕たちはプリンセスさんに言われたみたいに、向こうに行ってみようよ。」
「……そうだな。ならさユージ、向こうの方にあるラーメン屋に行こうか。前に1回行ったんだけど結構美味くてさ、きっとユージも満足するぜ。」
「へぇ、ラーメン屋さんか……うん、行ってみよう！」
「よし来た、それじゃ、早く乗った乗った！」


気づくとそこには一台のバイクが……バイクぅ！？


「……ん？ ユージ、何固まってんだよ。」
「……いや、何でもない。」


……もう、深く考えるのは止めておこう……




マッハのバイクに乗って目的のラーメン屋さんまで向かう。その途中、気になっていたある疑問をぶつけてみた。


「……そう言えばさ、マッハはプリンセスさんとどうやって知り合ったの？」
「ああ、それはな……思い返せば、あれは本当にヤバかったなぁ……」
「……ヤバかった？ 何があったの？」
「いや〜、それがさ。俺がプリンセスに会ったきっかけが、旅の途中でうっかりあいつの屋敷の庭に入っちまって、そこで出くわしたことなんだ。」
「へぇ〜、それで友達になったの？」
「そんな訳あるか。プリンセスのやつ、しばらく目を丸くしてたと思ったらいきなり叫びながら真剣を振り回して来たんだぜ？ あの時は命の危険を感じたな。」
「そ、そんなことが……」
「まあさ、後で聞いたんだが、あの時までプリンセスは屋敷から出たことも、セバスチャン以外の誰にも会ったことも無かったんだと。」
「……え？」


それ、なんかおかしくない？


「ねぇ、マッハ……」
「お、着いたな。……ん？」


マッハが目を向ける、その先にあるものは……


「……これって、まさか……」
「……酷いな。これじゃあ店もやってないだろうし、どうしたもんかねぇ……」


どうやら、マッハの言っていたラーメン屋さんはここらしい。しかし、そこには半壊した建物が。一体何があったんだ……？


「……前からこの辺りは治安の良い方じゃなかったけど、ここまで酷くはなかったはずだ。……多分これも、メシアの言う災いってやつなんだよな。」
「こんなに被害が出ているなんて……」
「……仕方ないか。ユージ、中心部に戻ろう。まあ、あっちにもユージに見せたいものがあるしな。」
「見せたいもの？」
「ああ。きっと驚くぜ？」


そう言うマッハの表情は、まさに子供のそれだった。





「……どうだ、驚いたか？」
「そりゃあ、もちろん……」


中心部に戻り、マッハに連れて行かれたのはこの街の中央公園だった。多くの人々がそれぞれにくつろいでいるようだ。しかしそんなことよりも、ひたすらに僕の目を引くのは……


「……これ、何メートルくらいあるの？」
「えーっと、8メートルくらいだったかな？ こいつの名前はヴァルキリオンって言って、この街のヒーローみたいなものなんだ。」


僕のいた世界にもこんなロボットはあったけど、これは作り込みがすごい。まるで今すぐにでも動き出しそうな……


「まさに、未来都市って感じがするね。」
「だろ？ さてと、それじゃあ食べ歩きでもしながら、運命の賢者について……」



……バアァァァン！！



「！？ な、何！？」
「爆発か！？ 場所は……おい、あれって！？」


マッハが指差す先には一際巨大な建物が。ま、まさかあれって……


「……フォーチュンモールじゃねぇか！！ クソッ、もしかしたらプリンセスがいるかも……」


『聞こえているか、フォーチュンシティの住民どもよ！』


突如、町中のモニターに映像が映し出された。そこには銃を持った数人の男と、手足を縛られた客たちが数人。人質のつもりなのだろうか……


「……ユージ、あれ！」
「え？ あ、あれは！」


人質の中に1人、見覚えのある女性の姿が。と、言うより……


「プリンセスさん！？」
「ああ、なんでこんな時にこんなことが起きるんだよ！！」


人質がいる今の状況では、迂闊に手出しは出来ない。一体どうしたら……

『我々はフォーチュンモールを占拠した！ 人質たちの命が惜しくば、またこれ以上フォーチュンモールを爆破されたくなければ我々の要求に応えることだな！』


あんな連中の要求なんて、ロクでもないものに決まっている。どうしよう、このままじゃ……



「……おのれ、卑劣な悪党め！ 貴様らはこの私が成敗してくれる！」
「ッ！？」


中央公園に大きな声が響き渡る。だ、誰だ？


「安心してくれ、フォーチュンシティの諸君！ あそこに囚われた人質たちは、このヴァルキリオンが必ず助け出してみせる！」


……『ヴァルキリオン』！？ 声のした方を振り返ると、そこには先ほどのロボットが……


「……動いてるぅ！？」
「おっと、そこの少年は私が動くのを初めて見たのかい？ まあ、普段は太陽の光を浴びて充電しているからね。私はヴァルキリオン。正義のヒーローだ。」
「言わなかったっけか？ ヴァルキリオンはこの街のヒーローだって。」


……いや、いやいや、いやいやいや。


「……こんなこともありなの……？」
「すまないが少年、説明してする暇はない。早くこの事態の解決に向かわなければ……」
「おいヴァルキリオン、俺たちも連れて行ってくれないか？ あそこに仲間がいるんだ。」
「何だとッ！？ それは大変だ！ よし、私と共に来るがいい！」
「え？ 行くって、どうやって……？」
「決まっている。ハアッ！！」


ヴァルキリオンが叫びを上げると、その背中から翼……のような形の機械が現れる。


「へ、変形した……」
「よし、行こう。映像からして、奴らはおそらく高級レストランのエリアを根城にしている。直接そこに乗り込もう。」
「……直接？」
「どうしたユージ？ 早くヴァルキリオンに掴まれよ。」
「あ、うん。……ところで、一体どうやって…」
「危ないから、しっかり掴まっているんだよ。それでは、いざ！」


ヴァルキリオンの背中の機械の駆動する音がすると、徐々に地面が下がっていって……


「……って、飛んでる！？」
「あんまり喋るなよ、舌を噛むぜ？」


こ、こんなのって……




「聞いてないよぉ〜〜！！」




キャラクター紹介

ヴァルキリオン
モチーフ【ヴァルキリオン】作者MTGからの刺客様
熱血系巨大ロボット。我ながらどうしてこうなった。普段は動かない（充電している）が、有事の際にはそのボディに秘められた機能を最大限に発揮する。変形も可。


【ヴァルキリオン】の使用許可を下さったMTGからの刺客様、本当にありがとうございます！