19話　たった一つの敗因　作：名無しのゴーレム

ギルティ　LP5500 手札6 ペンデュラムゾーン 天罪姫―嫉妬のレヴィタン、天罪姫―暴食のベルーブ　モンスターゾーン　邪神龍ニーズホッグ・ジ・エンド、天罪姫の双魔メイドキャストル（表側守備表示）、天罪姫の双魔メイドポルカ（表側守備表示）
スプリント LP2700 手札5 モンスターゾーン　エクスプリンター・瞬足神アキレウス　魔法・罠ゾーン　エクスプリンター・カタパルト







ふらふらと身体を揺らしながら、懸命に立ってデュエルディスクを構えるスプリント。邪神の攻撃を二度も受けたんだ、そもそも立っているのがおかしいくらいの状態のはず。






「行くぜ……俺の、ターン！ ジャックラピッドを召喚。そしてシャドーダッシュを特殊召喚。シャドーダッシュの効果でデッキからエクスプリンターカードを手札に加える。墓地のスキルサクセサーの効果発動。墓地のこのカードを除外してアキレウスの攻撃力を800アップ。アキレウスの効果で墓地のエクスプリンターを回収。ジャックラピッドの効果で俺はもう一度召喚できる。レックレスプレスを召喚。さらにロケットキャリーを特殊召喚だ」


一気にモンスターを5体並べて見せた。しかし、これで邪神龍を倒せるのか……？


「ロケットキャリーの効果発動。俺のフィールドのエクスプリンターをレベル1に変更できる。俺はアキレウス、ジャックラピッドのレベルを1に変更する」


エクスプリンター・瞬足神アキレウス　レベル5→1

エクスプリンター・ジャックラピッド　レベル2→1


「レベル1のアキレウス、ジャックラピッド、ロケットキャリー、シャドーダッシュにレベル3のレックレスプレスをチューニング。速さを求める者たちよ、神速へ至れ！ シンクロ召喚、『エクスプリンター・武走神イダテン』！」
「無駄よ無駄！ ニーズヘッグの前ではどんな努力も無意味よ！」
「イダテンの効果発動。チューナー以外のシンクロ素材の数だけ、このカードにスプリントカウンターを乗せる。そして、イダテンの攻撃力はカウンターの数×600アップする！」


エクスプリンター・武走神イダテン　攻撃力1400→3800


「通常魔法『エクスプリンター・サプライ』発動、4枚ドローだ。そして通常魔法『インターバル』発動。墓地のアキレウス、レックレスプレスを回収する。墓地の『アクセラレイテッド・エクスプリンター』を除外して効果発動、手札のレックレスプレスを召喚する。そして手札の『エクスプリンター・ブラックノックバック』と『エクスプリンター・ラットシーフ』を特殊召喚。レベル1のブラックノックバックとラットシーフにレベル3のレックレスプレスをチューニング。再び現れろ、『エクスプリンター・俊足神アキレウス』！ アキレウスの効果発動、このカードにスプリントカウンターを2つ乗せる」


エクスプリンター・俊足神アキレウス　攻撃力2200→2800


「アキレウスの効果発動！ このカードのスプリントカウンターを1つ取り除き、ニーズヘッグを破壊する！」


エクスプリンター・俊足神アキレウス　攻撃力2800→2500


「ニーズヘッグの効果発動！ 手札を3枚捨てることで、アキレウスの効果を無効にする！」
「まだだ……アキレウスの効果発動！ ニーズヘッグを破壊する！」


エクスプリンター・俊足神アキレウス　攻撃力2500→2200


「無駄だって言ってるのが分からないの？ ニーズヘッグの効果、手札を3枚捨てて効果を無効にする！」


これでアキレウスのカウンターが尽きた。結局、邪神龍を倒しきれなかったのか……


「……この瞬間、イダテンの効果発動！ このカードのスプリントカウンターを1つ取り除いて、相手が発動した効果を無効化して破壊する！！」


エクスプリンター・武走神イダテン　攻撃力3800→3200


「なっ……なんですってぇぇ！！」
「行け、イダテン！！ 高慢ちきな邪神を……撃ち落とせぇぇぇ！！」


イダテンの一撃が、邪神の頭部に命中する。大きく揺らいだ邪神は、叫びを上げながらその姿を消していく。


「そ、そんな……ニーズヘッグが、破壊されるなんて……」
「神だろうがなんだろうが、モンスターはモンスターだ。倒せないモンスターなんて居ない……当たり前のことだ。インターバルを発動したターン、俺はバトルを行えない。カードを1枚セットしてターンエンド」


ギルティ　LP5500 手札0 ペンデュラムゾーン 天罪姫―嫉妬のレヴィタン、天罪姫―暴食のベルーブ　モンスターゾーン　天罪姫の双魔メイドキャストル（表側守備表示）、天罪姫の双魔メイドポルカ（表側守備表示）
スプリント LP2700 手札4 モンスターゾーン　エクスプリンター・瞬足神アキレウス、エクスプリンター・武走神イダテン　魔法・罠ゾーン　エクスプリンター・カタパルト、伏せカード1枚


「すげぇ……たった1ターンで、形勢をひっくり返しやがった」


スプリントのフィールドにはどんな効果でも無効化できるイダテンがいる。いくらペンデュラム召喚でモンスターを展開できても、効果を発動せずにイダテンを倒すのは至難の技だ。


「……私のターン、ドロー」


その声を聞くや否や、スプリントが走り出した。しかしその速度は先ほどまでと比べて明らかに遅くなっている。あれほどの攻撃を受けてまだ走れる方が驚きなのだが……


「アクションカードを取る気？ その身体でどこまで走れるかしらね。私はエクストラデッキからスドゥアとノームをペンデュラム召喚！ そしてスドゥアとノームをリリースして、『天罪姫―傲慢のルシフェール』をアドバンス召喚。リリースされたノーム、スドゥアの効果発動！ 1枚ドローして、イダテンの攻撃力を1000ダウンする！」
「イダテンの効果発動！スプリントカウンターを1つ取り除いて、スドゥアの効果を無効化する！」


エクスプリンター・武走神イダテン　攻撃力3200→2600


「これで、イダテンの攻撃力はルシフェールの攻撃力を下回った。ルシフェールはアドバンス召喚に成功したターンには攻撃できない……でも、ルシフェールが存在する限りあなたはルシフェールの攻撃力を下回るモンスターをアドバンス召喚、特殊召喚できない。ルシフェールの攻撃力は2800、よって攻撃力2800未満のモンスターはアドバンス召喚も特殊召喚も出来ない！」
「っ！！」


スプリントのデッキに入っているモンスターは全て低レベル、当然攻撃力も低い。つまりあのモンスターが存在する限り、スプリントは通常召喚以外の展開を完全に封じられる……！


「カードを1枚セットしてターンエンドよ。さあ、今度はどうやって私のモンスターを倒すのかしらね？」


ギルティ　LP5500 手札0 ペンデュラムゾーン 天罪姫―嫉妬のレヴィタン、天罪姫―暴食のベルーブ　モンスターゾーン　天罪姫―傲慢のルシフェール、天罪姫の双魔メイドキャストル（表側守備表示）、天罪姫の双魔メイドポルカ（表側守備表示）　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
スプリント LP2700 手札4 モンスターゾーン　エクスプリンター・瞬足神アキレウス、エクスプリンター・武走神イダテン　魔法・罠ゾーン　エクスプリンター・カタパルト、伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー……よし、取った！」
「自分のデッキじゃルシフェールに勝てないからってアクションカードに希望を託したの？ さあ、どんなカードを手に入れたのかしらね？」
「……バトル、イダテンでルシフェールを攻撃！」


攻撃力の低いイダテンでルシフェールを攻撃……つまり、攻撃力を上げられるアクションカードを拾ったのか？


「へぇ……させないわ！ キャストルの効果発動、攻撃を無効にする！」
「くぅっ……！」
「残念ね、この攻撃が通ったらルシフェールを倒せたのに！ あはははっ！！」
「これで、ターンエンドだ……」


ギルティ　LP5500 手札0 ペンデュラムゾーン 天罪姫―嫉妬のレヴィタン、天罪姫―暴食のベルーブ　モンスターゾーン　天罪姫―傲慢のルシフェール、天罪姫の双魔メイドキャストル（表側守備表示）、天罪姫の双魔メイドポルカ（表側守備表示）　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
スプリント LP2700 手札5 モンスターゾーン　エクスプリンター・瞬足神アキレウス、エクスプリンター・武走神イダテン　魔法・罠ゾーン　エクスプリンター・カタパルト、伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ スドゥア、ノームをペンデュラム召喚！ そしてスドゥアとノームをリリースして『天罪姫―憤怒のナターシャ』をアドバンス召喚！ ノームの効果で1枚ドロー、スドゥアの効果発動、イダテンの攻撃力を1000下げる！」
「イダテンの効果、スプリントカウンターを取り除いてスドゥアの効果を無効化する！」


エクスプリンター・武走神イダテン　攻撃力2600→2000


「さあ、バトルよ！ ナターシャでイダテンを攻撃！」
「っ、アクションマジック『闘魂』発動！ イダテンの攻撃力を1000アップする！」
「リバースカードオープン.カウンター罠『姫の審判』！ ライフを1000払うことで、相手の発動した魔法・罠カードの効果を無効にする！ そしてアドバンス召喚したナターシャが相手に与える戦闘ダメージは、2倍になる！」


ギルティ　LP5500→4500

スプリント　LP2700→1300


「くっ、そぉ……！！」
「これであなたの希望も消え去った。そしてこの攻撃で更なる絶望を与えてあげる……ルシフェールでアキレウスを攻撃！」


この攻撃が通ればスプリントのフィールドからモンスターが居なくなる。ルシフェールの効果がある以上、ここからの逆転は……


「…………甘ぇよ。リバースカードオープン！ 通常罠『シンクロ・ストライク』！ シンクロモンスター1体の攻撃力を、シンクロ素材の数×500だけアップする。アキレウスの攻撃力を1500アップだ！」


エクスプリンター・俊足神アキレウス　攻撃力2200→3700


「えぇっ！？ なんで、どうして！？」
「誰がアクションカードに頼ったって？ あんなの囮だ、本命はこっちなんだよ。アキレウス、返り討ちにしろ！」


ギルティ　LP4500→3600


「そして効果の対象となったことでアキレウスの効果発動、墓地のエクスプリンターを回収する」
「……エクストラデッキの天罪姫が3種類以上存在することで、墓地のレーヴァリバーを手札に戻すわ。レーヴァリバーをナターシャに装備して、ターンエンド」


ギルティ　LP3600 手札1 ペンデュラムゾーン 天罪姫―嫉妬のレヴィタン、天罪姫―暴食のベルーブ　モンスターゾーン　天罪姫―憤怒のナターシャ、天罪姫の双魔メイドキャストル（表側守備表示）、天罪姫の双魔メイドポルカ（表側守備表示）　魔法・罠ゾーン　神殺しの魔剣・レーヴァリバー（ナターシャ装備）
スプリント LP1300 手札5 モンスターゾーン　エクスプリンター・瞬足神アキレウス　魔法・罠ゾーン　エクスプリンター・カタパルト


「俺のターン、ドロー。通常魔法『シンクロ・クラッカー』発動。アキレウスをデッキに戻して、その攻撃力以下の攻撃力を持つモンスターを全て破壊する！ キャストル、ポルカを破壊だ！」
「自分でシンクロモンスターを手放すなんて、一体何を考えているの……？」
「アキレウスの効果で墓地のエクスプリンターを回収。……なんでアキレウスをエクストラデッキに戻したかって？ すぐに分かるぜ。カタパルトの効果発動、手札のリニアーミーを特殊召喚！ リニアーミーの効果発動、自身のレベルを2に変更する」


エクスプリンター・リニアーミー　レベル3→2


「『エクスプリンター・チーターボ』を召喚。手札のロケットキャリー、そして『エクスプリンター・バーサークホイール』を特殊召喚！ バーサークホイールの効果発動。このカードの攻撃力を、自分フィールドのモンスターの数×500アップする！」


エクスプリンター・バーサークホイール　攻撃力600→2600


「これで最後だ……レベル2のチーターボ、レベル1のロケットキャリーにレベル2のリニアーミーをチューニング！ シンクロ召喚、『エクスプリンター・俊足神アキレウス』！！」
「ま、まさか……こんなことが……っ！！」


ギルティが急に辺りを見回し、そして後方に向かって走り出した。


「アクションカードがあれば、この状況だって……」









「お前が拾いたかったアクションカードってのは、これのことか？」
「！？」


……目の前で、あり得ないことが起きた。さっきまで確かにギルティの前に立っていたスプリントが、今は彼女の後方に回り彼女が取ろうとしていたアクションカードを持っている。まるで瞬間移動したとしか思えないような、ありえない速度での移動を見せた。


「な、なんで……その怪我で、立っているのもやっとのはずなのに！！」
「『立っているのもやっと』？ そりゃ何を見て決めたんだよ。まさかとは思うが、敵であるこの俺が何の意味もなく、お前の前で分かりやすく弱った姿を見せていたとでも？」
「演技、だったのね……！！」
「嘘と本当も見極められないようなガキには負けねぇさ。アキレウスにスプリントカウンターを2つ置く。そして1つを取り除いてナターシャを破壊する」


エクスプリンター・俊足神アキレウス　攻撃力2800→2500


「バトル、アキレウスでダイレクトアタック！」


ギルティ　LP3600→1100


「これで終わりだ！ バーサークホイールでダイレクトアタック！！」
「嫌よ、私が負けるなんて……いやぁぁぁ！！！」









ギルティ　LP1100→0













「……俺の勝ちだな」
「わ、たしが……負けるなんて」
「お前の敗因はたった一つだ。……何もかもが、遅すぎた。ただそれだけだ」
「遅い……私が……」
「さて、まずは警備隊の本部に連行させてもらう……」


「そうは、させないわよぉ？」


スプリントがギルティに近付こうとした時、突然一人の女性が姿を現した。


「お前は……カーミラ！」
「あらぁ、そこの坊やは前に会ったかしら。確か……真っ先に私の罠にかかった、おバカな坊やよねぇ？」
「クソっ……」
「……マッハの知り合いだろうが、今ここでは関係ねぇな。そいつは街をここまで壊したんだ、単独にせよ仲間がいるにせよ、このままはいさようならとはいかない。……それに、お前がこいつの仲間なんだろう？」
「ええ、そうよぉ。可愛い可愛いギルティちゃんがお外で遊びたがっていたから、ここで遊んでもらってたの。私の用事も一段落したから、こうしてお迎えに来たってわけ」
「よくも堂々と言ってくれるもんだなぁおい。じゃあ話は簡単だ、テメェも一緒に来てもらうぜ」
「お断りするわぁ。私をお誘いするならもっと情熱的に、ドラマティックじゃないとねぇ」
「言ってろ。嫌だってんなら力尽くでも……な、なんだこれは！？ 足が……動かねぇ！」


カーミラたちの方へ詰め寄ろうとしたスプリントだったが、足を上げることができない。これは、カーミラの蜘蛛の糸……！


「ウフフ。隙だらけだったから、つい。その糸の粘着力はしつこいわよぉ？ 全身ボロボロのあなたに振り払うことが出来るかしらぁ？」
「チッ……マッハ！」
「おう！！ カーミラ、俺が相手になってやる！」
「だからぁ、そんなお誘いには乗らないって言ってるでしょう？ ……それに、良いのぉ？ 今頃、私たちのボスがユージ君のところへ向かってるわよぉ？」
「なっ……ユージが！？」
「ボスは強いわよぉ？ ユージ君を倒して、その後どうしちゃうかしらねぇ？」
「っ…………マッハ！ こいつらはいい、早く仲間のところへ行け！」
「はぁっ！？ 馬鹿野郎、こいつらを放っておけって言ってんのか！？」
「そうだ！！ ……一番大切なのは敵を倒すことじゃねえ、仲間を守ることだ。そこを間違えるな！」
「イイこと言うじゃない。それじゃ、私たちはこれで失礼させてもらうわねぇ。ギルティちゃん、行きましょうか」
「……あんた、あんただけは絶対に許さない！ 次に会ったら全力で叩き潰してやるんだから！！」


捨て台詞を吐きながら、カーミラたちは歩き去っていく……


「マッハ、早く行け。俺はこの糸をどうにかしたらあいつらを追う。……大丈夫、かならず追い付いてやるさ」
「……任せたぜ、スプリント」


スプリントを残し、ユージがデュエルを行っていた場所に向かって走り出す……













「無事でいろよ、ユージ……！！」