3話 音速の銃士VS御伽の国の幻　作：名無しのゴーレム

ナーサリー 手札5枚 LP8000
マッハ 手札5枚 LP8000


「先攻は譲ってやるよ。」
「ありがとう！ 私のターン！ 手札から御伽現影（おとぎげんえい） ブリキ・ウッドカッターを召喚！」


……『御伽現影』？ 聞いたことないカードだ。やっぱりこの世界のデュエルは僕の知るものとは違うのだろうか……


「私はこれでターン終了！ さあマッハ、いっぱい遊ぼうよ！」


ナーサリー 手札4枚 LP8000 モンスターゾーン 御伽現影 ブリキ・ウッドカッター
マッハ 手札5枚 LP8000


「当たり前だ！ 俺のターン、ドロー！ M・G（マッハ・ガンナー） ステアルを召喚！ そして手札から速攻魔法、マッハ・バースト発動！ このターン、俺のM・Gが戦闘を行った後、戦闘を行ったモンスターのレベルの合計×200ポイントのダメージを互いのプレイヤーに与える！ バトルだ！ ステアルでブリキ・ウッドカッターを攻撃！」


「攻撃力は同じ1800。相討ち狙いってことかしら……」


2体のモンスターが交わり、互いを破壊する。


「この瞬間、マッハ・バーストの効果発動！ レベルの合計は8、よって1600ポイントのダメージをお互いに受ける！」

ナーサリー LP8000→6400

マッハ LP8000→6400

「さらにステアルの効果発動！ 俺が速攻魔法を発動したターンにこのモンスターが墓地に送られたとき、デッキからM・G1枚を手札に加える。俺はM・G シュンを加える！ さらにさらに、手札から速攻魔法、マッハ・ゴースト発動！ 破壊されたステアルを特殊召喚する！」


……すごい。相手モンスターを一方的に破壊して、さらに手札を増やすなんて。


「……？ ユージ、あれを見て。」
「え……？」


プリンセスさんの指差すのはナーサリーのフィールド。……あ！


「……何？ どうして破壊したはずのブリキ・ウッドカッターが？」
「御伽現影は破壊されても魔法＆罠ゾーンにその幻を残すの。けれどモンスターとしては扱われないから心配しなくてもいいよ。」


……破壊されても墓地に送られないモンスターってことか。


「そうかい、なら遠慮なく。手札のM・G シュンは俺の場にM・Gしか存在しないとき特殊召喚出来る。来い！ さあ行くぜ！ 俺はレベル4のステアルにレベル2のシュンをチューニング！ シンクロ召喚！ 駆けろ、音よりも速く！ M・G イダテン！」
「いきなりシンクロ召喚だ！ いいねマッハ！」
「お褒めに預かり光栄だよ！ だがまだ続くぜ！ イダテンのシンクロ召喚に成功したことにより、墓地のマッハ・バーストを手札に加える。さらにステアルが墓地に送られたことにより、デッキからM・G ソニックを手札に加える。ソニックの効果発動！ 墓地のマッハ・ゴーストを除外して、手札のこのモンスターを特殊召喚する！」


「……またチューナーが。ってことは……」
「マッハのやつ、最初から全力で飛ばしてるわね。まあ、早く終わらせないといけないから当然だけれど。」


「俺はレベル6のイダテンにレベル1のソニックをチューニング！ シンクロ召喚！ 我が元に勝利を運べ、M・G ヘルメス！ ヘルメスの効果発動！ このモンスターのシンクロ召喚に成功したとき、墓地のM・G1体を特殊召喚出来る。来い、ステアル！ 俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」


ナーサリー 手札4枚 LP6400 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ブリキ・ウッドカッター
マッハ 手札3枚 LP6400 モンスターゾーン M・G ヘルメス、M・G ステアル 魔法＆罠ゾーン 伏せカード1枚


「行っくよー！ 私のターン、ドロー！ 手札から通常魔法、童話開放発動！ 魔法＆罠ゾーンに存在する御伽現影1体を特殊召喚する！ 来て、ブリキ・ウッドカッター！ ブリキ・ウッドカッターの効果発動！ このモンスターが魔法＆罠ゾーンからの特殊召喚に成功したとき、このカードを手札に戻してデッキから御伽現影 ブレインレス・スケアクロウを特殊召喚出来る！ 来て、案山子さん！」


「ふーん、魔法＆罠ゾーンとモンスターゾーンを行ったり来たりする訳ね。」
「……こんなカード、初めて見ました。」
「私もよ。さて、ここからどうなるか……」


……うん？ この世界の人でもあのカードのことは知らないのか？ やはり珍しいカードなのだろうか……


「今度は速攻魔法、メルヘン・プロローグ発動！ 手札のブリキ・ウッドカッター、そして御伽現影 ハーメルンを魔法＆罠ゾーンに置くよ！」
「……何か狙っているな。先手を打たせてもらうぞ！ リバースカードオープン！ 速攻魔法、マッハ・バースト！ さらにヘルメスの効果発動！ 相手ターンに速攻魔法を発動したとき、墓地のM・G1体を手札に加える。俺はシュンを手札に。」


速攻魔法を連発して手札を増やす、マッハのデッキも見たことないものだけど……


「プリンセスさん、マッハのデッキはここではメジャーなものなんですか？」
「……どういう意味？ M・Gはマッハしか持っていないカードだけど。」
「……えぇ！？」


つまり世界で1人しか使ってないってこと！？ 『普通に』考えたらすごいことのはずなのに、プリンセスさんはそれについて何とも思ってないみたいだ。……これも、考え方のズレなんだろうか？


「これでこのターン戦闘を行えば、お互いにダメージを受けることになる。さあ、続けるか？」
「……うーん。魔法＆罠ゾーンのブリキ・ウッドカッターを墓地に送って、御伽現影 スリーピング・ビューティーを魔法＆罠ゾーンに置くよ。これでターン終了。」


ナーサリー 手札1枚 LP6400 モンスターゾーン 御伽現影 ブレインレス・スケアクロウ（守備表示） 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ハーメルン、御伽現影 スリーピング・ビューティー
マッハ 手札3枚 LP6400 モンスターゾーン M・G ヘルメス、M・G ステアル


……今のところ、マッハがフィールドを支配している。けれど気になるのはナーサリーの御伽現影の効果。幻を増やして、そこからどうするのか……


「俺のターン、ドロー！ まだまだ飛ばすぜ！ 手札から通常魔法、戦士の生還発動！ 墓地のM・G イダテンをエクストラデッキに戻す。手札のシュンを特殊召喚！ レベル4のM・G ステアルにレベル2のシュンをチューニング！ シンクロ召喚！ 再び地を駆けろ！ M・G イダテン！ イダテンの効果で墓地のマッハ・バーストを手札に加える。マッハ・バースト発動！」


1枚の速攻魔法を何度も……今度はどう続く？


「イダテンの効果発動！ 俺が速攻魔法を発動したとき、相手に300ポイントのダメージを与える！」

ナーサリー LP6400→6100

「さらに墓地のシュンの効果発動！ 俺が速攻魔法を発動したとき、墓地のこのモンスターを特殊召喚出来る！ ……さあ、ここからが本番だぜ！ レベル6のイダテンにレベル2のシュンをチューニング！ シンクロ召喚！ 辿り着け、スピードのその先に！ M・G アキレス！」


これが、マッハのエースモンスター……


「バトルだ！ ヘルメスでブレインレス・スケアクロウを攻撃！」


ブレインレス・スケアクロウは守備表示。戦闘ダメージは入らないけれど……


「マッハ・バーストの効果で、互いに1800ポイントのダメージだ！」

ナーサリー LP6300→4500

マッハ LP6400→4600

「行け、アキレス！ ダイレクトアタックだ！」

ナーサリー LP4500→1700

「くうっ……ブレインレス・スケアクロウは幻になって場に残る。そしてこの瞬間、幻となっているスリーピング・ビューティーを特殊召喚する！ 魔法＆罠ゾーンから特殊召喚されたスリーピング・ビューティーはカード効果では破壊されない！」
「なにぃ！？」


御伽現影にはそんな効果が……だからさっきのターンに御伽現影を魔法＆罠ゾーンに置いていたのか。


「……ふん、だがそれが命取りになる！ アキレスの効果発動！ お前が特殊召喚したスリーピング・ビューティーのレベル×200ポイントのダメージを与える！ スリーピング・ビューティーのレベルは6、よって1200ポイントのダメージだ！」

ナーサリー LP1700→500

「……せっかく出したそのモンスターも守備表示。守っていてもデュエルには勝てないぞ！」
「そんなの分かってるよ。早く続けてー。」
「……俺はこれでターンエンドだ。」


ナーサリー 手札1枚 LP500 モンスターゾーン 御伽現影 スリーピング・ビューティー（守備表示） 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ハーメルン、御伽現影 ブレインレス・スケアクロウ
マッハ 手札3枚 LP4600 モンスターゾーン M・G ヘルメス、M・G アキレス


「私のターン……ドロー！！ ……よし！ 手札から通常魔法、ドリーム・トレジャー発動！ 私の魔法＆罠ゾーンに存在する御伽現影をすべて墓地に送って、その枚数分ドローする！ 墓地に送られたのはブレインレス・スケアクロウ、ハーメルンの2枚、だから2枚ドロー！」


幻が消え、そこにカードが現れる。手札増強か……


「さらに通常魔法、ブラックホール発動！ 場のモンスターすべてを破壊する！」
「なっ……まさか！？」


……ブラックホールは僕も知っているカードだ。どうやらすべてが僕の知らないカードという訳でもないらしい。ブラックホールがフィールドを包み込んだ、その後には……


「スリーピング・ビューティーはカード効果では破壊されない。」
「……やるじゃねえか。俺のモンスターだけが全滅だ。」
「ここからが私の全力だよ！ 私はチューナーモンスター、御伽現影 マーメイドを召喚！ レベル6のスリーピング・ビューティーにレベル2のマーメイドをチューニング！ 御伽の世界に舞い降りた白く美しい姫よ、その奇譚を我が世界に示せ！ シンクロ召喚！ 御伽現影 ホワイト・プリンセス！」


ナーサリーもシンクロモンスターを……しかもマッハの場はがら空き。これはまずいんじゃ。


「ホワイト・プリンセスの効果発動！ このモンスターのシンクロ召喚に成功したとき、デッキから御伽現影を1枚手札に加えて、手札の御伽現影1枚を魔法＆罠ゾーンに置く。私はデッキから御伽現影 ヘンゼルを手札に、そのまま魔法＆罠ゾーンに置くよ。」
「ちっ……また幻か。」
「ドリーム・トレジャーを発動したターン、私はバトルを行えない。これでターン終了！」


ナーサリー 手札1枚 LP500 モンスターゾーン 御伽現影 ホワイト・プリンセス（守備表示） 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ヘンゼル
マッハ 手札3枚 LP4600


「俺のターン、ドロー！ ……カードを2枚セットして、ターンエンド。」


ナーサリー 手札1枚 LP500 モンスターゾーン 御伽現影 ホワイト・プリンセス（守備表示） 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ヘンゼル
マッハ 手札2枚 LP4600 魔法＆罠ゾーン 伏せカード2枚


「さっきまでの勢いはどーしたの？」
「くっ……」


「マッハ、どうしたんだろう……」
「……恐らく、攻め手が尽きたんでしょうね。こうなっちゃえば、完全に向こうのペースだけど……」


つまり、飛ばしすぎた結果という訳か。とは言え相手のライフは残り500。後少しで倒しきれるが……


「私のターン、ドロー！ 手札から御伽現影 トランプ・ソルジャーを召喚！ バトル！ トランプ・ソルジャーでダイレクトアタック！ トランプ・ソルジャーが攻撃するとき、攻撃力をバトルの間400ポイントアップする！」

御伽現影 トランプ・ソルジャー 攻撃力1900→2300

「ぐうっ！」

マッハ LP4600→2300

御伽現影 トランプ・ソルジャー 攻撃力2300→1900

「これで終わりだよ！ ホワイト・プリンセスでダイレクトアタック！」


ホワイト・プリンセスの攻撃力は2400。これをくらえば……


「……いや、まだだ！ リバースカードオープン！ 通常罠、ガード・ブロック！ この戦闘で発生するダメージを0にして、1枚ドローする！」
「あーあ、凌がれちゃった。でも、御伽現影の効果は発動するよ！ ホワイト・プリンセスが幻に帰り、幻の御伽現影 ヘンゼルを特殊召喚！ ヘンゼルの効果でデッキの御伽現影 ピノッキオを魔法＆罠ゾーンに置く。さらにトランプ・ソルジャーも幻になり、ピノッキオを特殊召喚！ ピノッキオの効果でマッハの伏せカードを破壊！」
「させるか！ リバースカードオープン！ 通常罠、トゥルース・リインフォース！ デッキからM・G ストッパーを特殊召喚！」


……？


「……どうしてあのカードをさっき使わなかったの？ そうすれば、さっきのターンは完全に凌げたのに……」
「……たぶん、あのモンスターを場に残したかったんじゃないですか？」
「そうよね。でもあのモンスターにそんな強力な効果が……？」


「うーん……私はこれでターン終了！」


ナーサリー 手札1枚 LP500 モンスターゾーン 御伽現影 ヘンゼル（守備表示）、御伽現影 ピノッキオ（守備表示） 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ホワイト・プリンセス、御伽現影 トランプ・ソルジャー
マッハ 手札3枚 LP2300 モンスターゾーン M・G ストッパー（守備表示）


「俺のターン、ドロー！ ……カードを2枚セット。ターンエンド。」


「え～、さっきとおんなじじゃん！ つまんないよ～。」
「ハッ、言ってな！ 勝負はまだまだこれからだぜ！」


……こちらから見ても、マッハは完全に手詰まりだ。それでも、マッハはまだ諦めてはいないようだ。逆転の策があるのか……？


ナーサリー 手札1枚 LP500 モンスターゾーン 御伽現影 ヘンゼル（守備表示）、御伽現影 ピノッキオ（守備表示） 魔法・罠ゾーン 御伽現影 ホワイト・プリンセス、御伽現影 トランプ・ソルジャー
マッハ 手札2枚 LP2300 モンスターゾーン M・G ストッパー（守備表示） 魔法＆罠ゾーン 伏せカード2枚


「むー、いいよ。このターンで終わらせちゃうから。私のターン、ドロー！ 手札から御伽現影 グレーテルを召喚！ レベル4のヘンゼルにレベル3のグレーテルをチューニング！ 御伽の世界に舞い降りた、運命に愛された少女よ！ その奇跡を我が世界に示せ！ シンクロ召喚！ 御伽現影 サンドリヨン！」
「……またシンクロ召喚か。」
「マッハに言われたくないよ！ サンドリヨンの効果発動！ ストッパーの効果を無効にする！」


これで、ストッパーの効果には頼れなくなった。頼みの綱は2枚の伏せカードだけれど……


「……リバースカードオープン！ 速攻魔法、マッハ・ショット！ 俺のデッキの上から1枚をめくり、そのカードがモンスターなら、そのレベル×100ポイントのダメージを与える！」
「え！？ それじゃあ……」
「ああ、俺のデッキにある唯一の上級モンスター、M・G クラッチを引ければ、500ポイントのダメージで俺の勝ちだ。さあ、運試しと行こうぜ！」


……マッハはこれを狙っていたのか。でもこの場でそのカードを引く確率は……


「……さあ、来い！」




マッハがめくった、そのカードは……？





「……罠カード、バーバリアン・レイジ。よってダメージは発生しない。」
「……なーんだ。神様もマッハを見放したみたいだね。」
「ハァ、まったくだ。本当ならストッパーの効果でこのターンは凌げるところだったんだが……」


万事休す、なのか……


「じゃあ終わらせるよ！ バトル！ ピノッキオでストッパーを攻撃！」


これが通ればマッハの場にモンスターはなくなる。そうなれば……





「……なんてな！！ この瞬間、リバースカードオープン！ 通常罠、バーバリアン・ハウリング！ 相手の俺の戦士族モンスターへの攻撃宣言時発動でき、攻撃してきたモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える！」
「へ？ ……うっそぉ！？」


ストッパーがピノッキオの攻撃を受け止める。そしてそのまま……


「ストッパー、投げ返してやれ！」
「えっ、ちょっ、……いやぁぁ！！」





――その瞬間、デュエルは終了した。


「……え？ デュエルは？ まだナーサリーのライフは0になってないけど……」
「途中で止めたのよ。当たり前でしょ？」


……すみません、プリンセスさん。その『当たり前』が分からないんですけど。


「……ふぅ。ちょっとヤバかったかな。どうだナーサリー。楽しめたか？」
「……うん！ 楽しかったよ、マッハ！」
「そうか。ならもう……」
「次は誰が遊んでくれるの？ 私はどっちでもいいよ！」


……はぁ。ナーサリーが許可してくれない限り、僕たちはこの森を抜けられない。なら彼女に付き合うしか……





「ナーサリー。何があったのですか？」


僕たちの後ろから、女性の声がした。一体誰の……？


「……げっ、メシアだ。」


ナーサリーが嫌そうな顔で声を上げる。……え？


「……あなたが、メシア？」
「はい。待っていましたよ、マッハ、プリンセス、そして……」




「異界の勇者様。私がメシアと申します。ようこそお越しくださいました。」



…………へ？




キャラクター紹介

メシア
モチーフ：【救世者】作者：ター坊様
マッハたちの住む世界を統治する女性。プリンセス曰く『神様みたいなもの』。


【救世者】の使用許可を下さったター坊様、本当にありがとうございます！