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第37話:禅問答 作:湯
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:5(ナンゴウ、プロメテ、儀式の予告状)
伏せカード:1(練武掌波動)
【空蝉】
LP6600 手札:1
①練武の鉄拳 バクドウ ATK3000
伏せカード:1
フィールド魔法:岩峰の修行場
永続魔法:練武の障壁、練武覚醒-穿ツ時-
--------------------------------------------------
ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選2回戦第1試合。
遊次は先行で盤石な布陣を築くも、空蝉空心(うつせみくうしん)が操る
デュアルモンスターを主軸とする「練武」デッキは、
1体のモンスターを3度召喚することで強力な効果を得るという、常識外れの性質を持っていた。
「空蝉選手のモンスターは1ターンに1度、
相手モンスターを全て破壊する強力な効果を持っています。
さらにそのモンスターはフィールド魔法によって破壊されず、
魔法・罠カードは永続魔法によって効果の対象になりません。
この盤石な布陣を崩すのは、いくら神楽選手といえど骨が折れるでしょう!」
観客達を代弁するように、実況の多口がフィールドの状況を解説する。
彼の言う通り、空蝉のフィールドはあまりに強固だ。
しかし、遊次の心は全く折れていない。
空蝉と魂の会話をするためにも、遊次はここから反撃の姿勢を見せようとしていた。
「俺のターン、ドロー!」
遊次は思い切りカードを引く。
引いたカードを手札に収め、その後、相手フィールドを見つめ思考を巡らせている。
「(相手フィールドにはモンスターが1体。
一気に攻めれば勝てるように見えるけど…そうじゃねえ)」
遊次は空蝉のフィールドに伏せられた1枚のリバースカードを見つめる。
「(あの伏せカード…さっき手札に加えてた罠カード『練武顕現』のはずだ。
もしバクドウを奪って空蝉さんの場を空けられたとしても、
あの罠カードでデッキから再度召喚した状態で練武を呼ばれる。
そうなりゃ、フィールド魔法の効果で、そのモンスターは戦闘・効果で破壊できねえ。
ってことは、このターンに攻め切ることは無理だ)」
遊次は空蝉のフィールドを見つめ、冷静に思考を巡らせる。
「(でも、もし俺の思い描いた通りにいけば、相手のモンスターがどんなに強くても…勝てる。
動くのは次のターンだ。でも、あの作戦のためには、相手のライフも削らなきゃなんねえ。
要は"バランス"だな…!)」
遊次の中で結論が出たようだ。思考した実質時間は短いが、
その中で遊次は何度も数多のルートを思い描き、1つの結論に達した。
「手札から『妖義賊-深緑のロビン』を召喚!」
■妖義賊-深緑のロビン
効果モンスター
レベル4/風/戦士/攻撃力1800 守備力500
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分の墓地のレベル4以下の「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カード1枚を捨て、
墓地の「ミスティックラン」魔法・罠1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
③:このカードがリリースされた場合、
相手フィールドの表側モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にする。
現れたのは緑色の外套を纏い弓を持った若い青年のモンスター。
首元にはシンプルなオレンジ色の緑色のマフラーが巻かれている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/PHAQB1t
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「深緑のロビンの効果発動!
墓地のレベル4以下の妖義賊を特殊召喚できる。
来い、脱出のシェパード!」
再びフィールドに、紳士服を纏ったシェパード犬のモンスターが現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mbD8bgW
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「成程。『脱出のシェパード』は、妖義賊モンスターをリリースすることで効果を発動する。
そして『深緑のロビン』は、自身がリリースされた時、拙僧のモンスター効果を無効化できる。
2体のモンスターの連携によって、バクドウの破壊効果を無に帰すというわけか」
空蝉は遊次のフィールドの2体のモンスターを見つめ、その意図を瞬時に理解する。
「ならば止めねばなるまい。『練武の鉄拳 バクドウ』の効果を発動。
1ターンに1度、相手モンスターを全て破壊する!」
バクドウが掌から波動を放つと、ロビンとシェパードは吹き飛ばされ、破壊される。
「空蝉選手さっそく、強力な全体効果を発動しましたぁ!しかし破壊したのは下級モンスター2体!
神楽選手に発動を誘導された形となります!空蝉選手にも伏せカードはあるものの、
手札が潤沢に残っている神楽選手を、かなり自由にさせてしまうことになります!」
実況の多口は冷静に状況を分析する。
モンスターが破壊されたという一見した事実だけで状況を判断せず、
どちらかといえば遊次有利の盤面であることを観客に伝えている。
「俺のモンスターが破壊された時、手札の『妖義賊-助太刀のサルバトーレ』の効果発動!
コイツを手札から特殊召喚できる!攻撃表示で特殊召喚!」
■妖義賊-助太刀のサルバトーレ
効果モンスター
レベル4/地/獣/攻撃力1700 守備力1300
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
この方法で特殊召喚した場合、
相手の墓地のモンスター1体を選び、自分フィールドに特殊召喚できる。
②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
デッキから『予告状』魔法カード1枚を手札に加える。
現れたのは短刀を携え、胸のあいた毛皮の服を纏った猿のモンスターだ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/iEwZtaH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「この効果で特殊召喚された時、さらに相手の墓地からモンスターを奪って特殊召喚できる!
アンタの墓地から『練武の迅脚 ソウジン』をいただくぜ」
遊次のフィールドに長い銀髪の筋肉質な肉体を持った戦士が攻撃表示で現れる。
「サルバトーレの効果発動!相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、
デッキから『予告状』魔法カードを手札に加えることができる。
俺は『一攫千金の予告状』を手札に加えるぜ」
「さらに手札から『妖義賊-戴火のプロメテ』をPスケールにセッティング!」
■妖義賊-戴火のプロメテ
ペンデュラムモンスター/チューナー
レベル4/火/炎/攻撃力1000 守備力200 スケール2
【P効果】
このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを効果を無効化して自分フィールドに特殊召喚する。
②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
自分のデッキの上からカードを5枚めくり、
その中から「ミスティックラン」カード1枚を選んで手札に加える。
残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。
【モンスター効果】
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
相手の除外状態のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
③:このカードがフィールドからEXデッキに表側表示で加わった場合に発動できる。
このカードをPゾーンに置く。
遊次の頭上に、一頭身の火の玉に顔のついたモンスターが現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「『戴火のプロメテ』のP効果発動!
相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、デッキの上から5枚めくり、
その中から妖義賊カード1枚を手札に加える」
遊次はデッキから5枚のカードを引き抜き、扇状に広げる。
「俺が手札に加えるのは罠カード『妖義賊の見参』!
残りのカードはデッキの一番下に戻す」
「EXデッキで表側となっている『美巧のアカホシ』の効果発動。
俺のPゾーンにカードがある時、EXデッキからこのカードを手札に加えられる」
「身を削る戦いにこそ真の成長がある。
次から次に手札を補充する小心なそなたのデュエルは、まさにその対極にある」
未だ6枚の手札を維持し続ける遊次に空蝉が苦言を呈する。
「そりゃ心外だな。俺にだって身を削る覚悟ぐらいあるぜ。
そうしなきゃアンタは倒せねえ」
遊次は毅然とした態度で言葉を返す。
「プロメテのもう1つのP効果発動!俺のフィールドに妖義賊がいる時、
Pゾーンのこのカードを、効果を無効にして特殊召喚できる!」
頭上に浮かんでいた火の玉は、遊次のもとにまでふわふわと降り立つ。
プロメテは攻撃表示だ。
「俺はスケール2『妖義賊-剛腕のナンゴウ』と、
スケール8『妖義賊-美巧のアカホシ』をセッティング!」
遊次の頭上に、白黒の渦模様が描かれた着物を纏った虎の頭を持つモンスターと、
赤い着物を纏った鳳凰のモンスターが現れる。
ナンゴウ:ttps://imgur.com/a/l0XP4F1
アカホシ:ttps://imgur.com/a/Beta2kb
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「スケールは2~8、よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能。
ペンデュラム召喚!EXデッキから現れよ『妖義賊-舞蛇のキク』!」
EXモンスターゾーンに守備表示で現れたのは、
桃色の着物を纏い白い蛇の頭を持ったモンスターだ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/tsPN11Y
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「永続魔法『妖義賊の連携陣』を発動!」
■妖義賊の連携陣
永続魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地・フィールド・EXデッキの表側から
「ミスティックラン」カードをそれぞれ1枚ずつデッキに戻し、
相手フィールドの表側カード1枚を対象として発動できる。
そのカードがモンスターカードの場合、コントロールを得て、
魔法・罠カードの場合、自分フィールドに置く。
②:元々の持ち主が相手となる自分フィールドのカード1枚を墓地へ送り、
自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、相手の効果を受けない。
③:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する限り、
自分のモンスターの守備力は倍になる。
「『妖義賊の連携陣』の効果発動!
墓地・フィールド・EXデッキの表側から1枚ずつ、
妖義賊カードをデッキに戻して、相手フィールドの表側カードを1枚奪える!
俺は墓地の『怪盗ルパン』、Pゾーンの『剛腕のナンゴウ』、
EXデッキで表側となっている『雲龍のリヘイ』をデッキに戻して、効果を使用する!」
「アンタの永続魔法『練武の障壁』は他の魔法・罠カードを守るカードだよな。
なら、そいつをいただくぜ!」
デッキへ戻ったルパン、ナンゴウ、リヘイが半透明な姿でフィールドに現れると、
3体で三角形の紋様を描き、それを指定された永続魔法へと放つ。
その攻撃を受けた空蝉のフィールドの永続魔法は一瞬にして消え、遊次のフィールドへと置かれた。
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:3(儀式の予告状、一攫千金の予告状、妖義賊の見参)
①妖義賊-助太刀のサルバトーレ ATK1700
②練武の迅脚 ソウジン ATK1400
③妖義賊-戴火のプロメテ ATK1000
④妖義賊-舞蛇のキク DEF1500
伏せカード:1(練武掌波動)
永続魔法:妖義賊の連携陣、練武の障壁
Pゾーン:妖義賊-美巧のアカホシ
【空蝉】
LP6600 手札:1
①練武の鉄拳 バクドウ ATK3000
伏せカード:1
フィールド魔法:岩峰の修行場
永続魔法:練武覚醒-穿ツ時-
--------------------------------------------------
「空蝉選手、永続魔法を1枚失ったものの、未だ盤石な布陣であることには変わりありません!
対して、神楽選手のフィールドには4体の下級モンスターが並んでいますが、
ここからどのようなハーモニーを奏でてくれるのでしょうか!」
遊次のフィールドには4体の下級モンスターが並んでいる。
様々な召喚法を駆使してきた遊次の戦い方を見た観客達にとって、
このモンスター達はいわば下準備、次なる展開への布石だと考えている。
しかし、その予想を遊次はあっさりと裏切る。
「バトルフェイズ!
『妖義賊-戴火のプロメテ』で『練武の鉄拳 バクドウ』に攻撃!」
「なっ…!わずか攻撃力1000のモンスターで、攻撃力3000のバクドウに攻撃!?
どういうことだぁー!?」
実況者や観客達は遊次の行動に目を丸くしている。
チームの子供達やアキトも同様に驚く中、Nextの面々だけは静かにフィールドを見つめている。
小さな火の玉のモンスターは、バクドウに向かって浮遊すると、
その小さな拳をバクドウにぶつけるが、バクドウによって赤子の手をひねるように軽く受け止められ、
プロメテは反撃の拳を受け、一瞬にして破壊される。
しかし、遊次は笑顔を浮かべていた。
「P召喚された『妖義賊-舞蛇のキク』がフィールドにいる限り、
俺が受ける戦闘ダメージは、代わりに相手が受ける!」
「…小癪な真似を」
空蝉 LP6600 → 4600
「だが忘れてはいるまいな?永続魔法『練武覚醒-穿ツ時-』の効果を発動。
練武モンスターが相手モンスターを戦にて葬った時、
相手フィールドのカードを1枚墓地へ送ることができる。
これ以上の追撃は許さぬ。『妖義賊-舞蛇のキク』を墓地へ」
バクドウが気合を入れてオーラを放つと、
フィールドのキクは吹き飛ばされ、そのままフィールドから消える。
一瞬、フィールドに静寂が訪れる。状況を未だ呑み込めていない者が多いためだ。
「えー…驚かされましたが、状況を整理しましょう!
神楽選手は舞蛇のキクの効果によって、戦闘ダメージを空蝉選手に反射させました。
しかし、空蝉選手の永続魔法によってキクがフィールドを離れ、
これ以上ダメージを反射させる戦術は取れないことになります。
2000のダメージは大きいですが、神楽選手はこのためだけにモンスターを展開したのでしょうか?
私のような凡人には、まだ腑に落ちないところです」
ここまでで遊次が得たメリットは、2000のダメージを与えたことだけだ。
大きなリソースを割いてその選択を取った遊次の行動を、多くの観客は理解していなかった。
「(その2000が超でけーんだよ。
まずはこれでいい。1歩ずつ、やれることをやるだけだ)」
遊次は実況に対して頭の中で言葉を返す。これも全て想定通りのようだ。
遊次の視点からは、空蝉の伏せカードが、更なる練武をデッキから呼び寄せる効果だと知っている。
その上で最大限ダメージを与えながら、次に繋げることを選んだのだろう。
「俺はこれでバトルフェイズを終了する。
俺はフィールドに残った、『妖義賊-助太刀のサルバトーレ』と
『練武の迅脚 ソウジン』でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
「エクシーズ召喚!再び現れよ『妖義賊-怪盗ルパン』!」
■妖義賊-怪盗ルパン
エクシーズモンスター
ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500
レベル4モンスター×2
元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。
②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。
自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動する。そのカードを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
前のターン破壊されたルパンが、華麗にフィールドに舞い戻る。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「怪盗ルパンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、
相手モンスター1体を、効果を無効にして奪う!
『練武の鉄拳 バクドウ』の効果を無効にして、そのコントロールを得るぜ」
ルパンが白いマントを翻しバクドウのもとへ瞬間移動すると、
マントを覆い被せ、その直後、2体とも遊次のフィールドへ移動する。
「効果を無効化したことで、デュアルによって得た効果も無効化されて、
攻撃力も元に戻る。だからバクドウは守備表示に変えさせてもらうぜ」
「なるほど!破壊できないなら奪えばいい!
これによって空蝉選手は強力なモンスターを奪われ、フィールドはガラ空き!
これを見越していたからこそ、先ほどは可能な限りダメージを与えるプレイを優先したのですね!」
実況の多口は納得したような口ぶりだが、
空蝉は目を細め、遊次のプレイにどこか違和感をおぼえていた。
「永続魔法『妖義賊の連携陣』の効果で、
相手から奪ったカードがある限り、俺のモンスターの守備力は倍になる!
これでちょっとやそっとじゃ突破できねえぜ」
妖義賊-怪盗ルパン DEF3000
練武の鉄拳 バクドウ DEF3400
「(徹底的なまでに守備を固めるか。
それに、先ほど拙僧に与えたダメージ…あやつ、何か図っておるな)」
「俺はカードを1枚伏せる。さらに手札から『一攫千金の予告状』発動!」
■一攫千金の予告状
通常魔法
①:このカードは発動後、墓地に送られる。
このカードの発動後2回目の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。
②:自分の手札が1枚以下で、このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
自分はデッキから3枚ドローする。
「このカードは予告状だ。発動した時点では何も起きねえ。
だが、墓地から除外された時に効果が発動する。そんで、それは"今"だ。
怪盗ルパンのもう1つの効果発動!
このカードが相手から奪ったカードを素材にしてる時、墓地の予告状を除外できる!
『一攫千金の予告状』を除外!」
「除外された『一攫千金の予告状』の効果発動。
自分の手札が1枚以下の時、カードを3枚ドローできる!」
遊次の1枚の手札は一気に4枚にまで増えた。
「俺はこれでターンエンドだ」
エンド宣言時、狙いすましていたかのように空蝉が声を上げる。
「エンドフェイズ時、罠カード『練武顕現』を発動。
自分フィールドにモンスターがいない時、
デッキから『練武』モンスターを特殊召喚する」
■練武顕現
通常罠
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキから「練武」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは再度召喚した状態となる。
②:墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「練武」モンスター1体を墓地に送る。
「降臨せよ、『練武の神戒 ゴウジュ』」
瞬間、空から黒い何かが空蝉の目の前に降り立ち、大地が大きくひび割れる。
ひび割れた地から立ち上がった"それ"は、他の練武モンスターとは明らかに異質だった。
全身は漆黒で覆われ、頭部から足先まで赤い螺髪状の突起が等間隔に浮き出ている。
目は妖しく赤く光り、生気を感じさせない。人間とは異なる気配を放っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/DXpimjq
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「この効果で特殊召喚されたモンスターは、再度召喚された状態となる」
ゴウジュは紫色の覇気を放つと、獣のような前傾姿勢で静止している。
「コイツが…アンタの切り札ってわけか」
その異質さと、レベル8の上級モンスターであることから、
これこそが空蝉にとって最も強力なモンスターであることを直感した。
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:4(儀式の予告状)
①妖義賊-怪盗ルパン DEF3000
②練武の鉄拳 バクドウ DEF3400
伏せカード:2(練武掌波動)
永続魔法:妖義賊の連携陣、練武の障壁
Pゾーン:妖義賊-美巧のアカホシ
【空蝉】
LP4600 手札:1
①練武の神戒 ゴウジュ ATK2500
フィールド魔法:岩峰の修行場
永続魔法:練武覚醒-穿ツ時-
--------------------------------------------------
「空蝉選手、最後に新たな練武モンスターを呼び出しました!
このモンスターも他の練武と同様、『トリプル』なのでしょうか!
すでに罠カードによって再度召喚されています。
条件さえ満たせば、強力な奥の手が発揮されると思われます…!」
多口は現れたモンスターに視線を奪われ、畏怖の混じった声色で実況する。
遊次はデュエルディスクによって現れたモンスターの効果を把握し、次なる手を模索している。
「なんだよあのヤベー奴…!大丈夫なのかよ…」
ゴウジュの姿を見てリアムは本能的な恐怖をおぼえる。
「それに厄介なのは、練武モンスターを守るフィールド魔法ですね。
あれがある限りモンスターは破壊できず、即ち直接攻撃も敵わない。
空蝉さんのライフを削ることは難しいでしょう」
治はノートを見つめながら、冷静に状況を分析する。
「いや、もしかすりゃどかせるかもしれないよ。
その厄介なフィールド魔法をね」
隣のダニエラは治を横目に自信ありげな表情を見せる。
「『爆炎の予告状』か。1ターン目に発動されてから、
結局使いどころを失って、今の今まで墓地で放置されてるよな。
次の遊次のターンで2ターン経ったことになる」
ドモンもダニエラの言葉の意味に気付いたようだ。
治もその意味をすぐに理解し、はっとした表情をする。
しかし、すぐに新たな疑問が沸き上がったようだ。
「爆炎の予告状は、墓地から除外された時に相手フィールドのカードを全て破壊する効果ですよね。
しかし、フィールド魔法がある限り練武モンスターは破壊されず、
フィールド魔法もデュアルモンスターがいる限り、相手の効果で破壊されませんよ。
それでは、予告状を発動しても意味がないのでは?」
「でも逆に、フィールド魔法さえどうにかできれば、破壊はできるってことだよね?
そのための布石はもう打ってあるよ」
その疑問の答えのヒントを灯はほのめかす。
治は自分自身で答えに辿り着きたいはずだ。それを察してあくまでヒントに留めている。
「…!永続魔法『妖義賊の連携陣』ですね!
あのカードは相手のカードを破壊せず、そのまま奪うことができます。
次のターン、その効果でフィールド魔法を奪い、墓地の爆炎の予告状を除外すれば…」
「あのおじさんのカードはみーんな、どっかーーん!だね!」
ランランが目を輝かせながら治の言葉の続きを体いっぱいに表現する。
「遊次が防御寄りの構えにしてるのも、
予告状発動まで耐え抜くためと考えりゃ合点がいく。
それさえ決まりゃ、勝負は見えたようなもんだ」
怜央は遊次を見据える。
遊次はすでに勝利のためのルートを描いている。
これまでのデュエルでもその道が正しいことを証明してきた。
その積み重ねから、すでにNextの3人は彼の勝利を疑っていなかった。
「拙僧のターン、ドロー。
手札から『練武の鉄壁 ガンセイ』を召喚」
空蝉のターンが幕を開ける。
■練武の鉄壁 ガンセイ
デュアル/効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1400 守備力1800
①:このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。
②:フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●自分の墓地に「練武」モンスターが3体以上存在する場合に発動できる。
このカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは以下の効果を得る。
●このカードの攻撃力は元の数値に戻り、このカードの元々の攻撃力・守備力は倍になる。
●このカードの召喚時に発動できる。相手の墓地のカードを全てデッキに戻す。
●攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。
銀色の鎖帷子に身を包んだ巨体の屈強な男が姿を現す。
両腕には木の盾を装着している。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3GiY12Q
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
遊次がそのモンスターの効果を、デュエルディスクで読むと、
はっとした顔をする。その瞬間、自らのデュエルディスクに手を伸ばす。
「怪盗ルパンの効果発動!相手から奪ったモンスターを素材としている時、
墓地の予告状を除外できる!爆炎の予告状を除外!」
「えっ…!なんでここで…」
観客席のトーマスが驚きの声を上げる。
ドモン達の見立てでは、次のターン、
相手のフィールド魔法を奪って相手モンスターの耐性をなくした後、
爆炎の予告状で相手フィールドを一気に爆破する想定だった。
しかしその予想がすぐに裏切られてしまう。
「(このままじゃ、フィールド魔法と永続魔法は破壊できるけど、
肝心のゴウジュがフィールド魔法に守られちゃう。
遊次がその選択をするってことは、今召喚されたモンスターに"何か"がある)
灯は静かに遊次の思惑をはかる。爆炎の予告状によってフィールド魔法は破壊されるものの、
フィールド魔法自体は再度召喚されたデュアルモンスターを守る効果がある。
これでは空蝉の切り札を倒すに至らず、致命傷にはならないように思える。
しかし、それでもその選択を取ることに意味があるはずだ。
「除外された爆炎の予告状の効果発動!相手フィールドのカードを全て破壊する!」
フィールドを爆ぜる炎が迸る。
空蝉のフィールド魔法と永続魔法「練武覚醒-穿ツ時-」が割れ、
先ほど召喚されたガンセイも雄叫びを上げ、破壊される。
炎が消えると、聳え立っていた岩肌は消え、景色はスタジアムに戻っていた。
そこには漆黒の肉体を持つゴウジュのみが妖しく立っていた。
「神楽選手、ここで焦った様子で予告状を発動しました!
3枚のカードを破壊したものの、切り札たるゴウジュは健在です!」
「反応が速いな。ガンセイは3度目の召喚に成功した時、
相手の墓地のカードを全てデッキに戻す効果を持つ。
即ち、時を待っていても予告状はデッキへと戻る運命であった」
「あぁ。ガンセイがデュアルしちまったら、フィールド魔法の効果で破壊もできねえ。
だから、再度召喚される前に破壊するのが、一番効果的ってわけだ」
観客達は遊次の意図をそこではじめて理解した。
ガンセイが3度目の召喚を行えば、墓地の予告状カードはデッキへと戻る。
自分のターンに空蝉のフィールドを全壊させるプランは潰えたと考えた遊次は、
まだガンセイが再召喚されておらず、耐性を得ていない今、予告状の効果を使用したのだ。
やむを得なかったが故の行動であるが、空蝉に重い一撃を与えたのは事実だ。
「でも、3枚もカードを破壊されてんのに、ヘッチャラってツラだな」
空蝉は顔色一つ変えず、凛と立っている。
遊次はその表情から"まだ何かある"と思わずにはいられなかった。
「左様。そなたの一手は拙僧を崩すに至らず。
手札から『奈落の修行場』を発動!」
■奈落の修行場
フィールド魔法
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの再度召喚されたデュアルモンスターは、戦闘で破壊されず、
自分のデュアルモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
②:自分の墓地の「練武」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは再度召喚した状態となる。
③:自分のデュアルモンスターが攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
エンドフェイズまで攻撃モンスターの元々の攻撃力の半分、攻撃力を下げることで、
そのモンスターは続けて攻撃できる。
青々とした空の下の岩峰は消え、空は厚い赤黒い雲に閉ざされる。
地面は黒く焦げた岩で覆われ、無数の裂け目から赤く光る熱が漏れている。
巨大な石柱が不規則に並び、鎖が垂れ下がった鉄製の台座や、
崩れかけた石段が各所に配置されている。
修行に使用されると思われる数々の道具には、血の滲んだ跡が見られる。
空気は乾いて重く、足元の岩には焼け焦げた痕が点在している。
「別の修行場があったのか。…そういうことかよ」
遊次は修行場の効果から、これから起こることを予期した。
しかし、すでにそれを止める手段は持ち合わせていなかった。
「奈落の修行場の効果発動。墓地の練武を1体、デュアル状態で特殊召喚できる。
甦れ、『練武の鉄壁 ガンセイ』」
再びフィールドに現れたガンセイが雄叫びを上げると、周囲に衝撃が走る。
「しかし、再召喚しただけでは、我が練武は力を得ることはできぬ。
ガンセイは数多の屍を乗り越えた果てに強くなるのだ。
墓地の罠カード『練武顕現』を除外し、効果発動。
デッキから練武を1体墓地へ送ることができる。
『練武の豪拳 リョウエン』を墓地へ送る」
「そして、『練武の鉄壁 ガンセイ』の効果を発動!
自分の墓地に『練武』モンスターが3体以上存在する場合、
このカードは3度目の召喚を行うことができる!」
「もうトリプルってわけか…」
すでに3度召喚された練武の真価を知っている遊次は身構える。
ガンセイは強く雄叫びをあげ、右足を踏みしめると、大地にヒビが入る。
「3度召喚されたガンセイの攻守は倍となる」
練武の鉄壁 ガンセイ ATK2800
「さらに、召喚時効果発動!相手の墓地のカードを全てデッキに戻す」
遊次は墓地のカードを全てデッキに戻す。
これによって墓地アドバンテージも封じられたこととなる。
「いざ参らん。バトルフェイズ。
『練武の神戒 ゴウジュ』で怪盗ルパンに攻撃!」
「空蝉選手、さっそく攻撃を仕掛けたァ!
しかし神楽選手のモンスターは永続魔法により、守備力が倍となっている!
この攻撃ではルパンは突破できないはずだ!」
ゴウジュは不規則な動きで鞭のように腕をしならせ、ルパンに攻撃をしかけるが、
ルパンはそれをマントで受け止める。
「奈落の修行場の効果により、デュアルモンスターの戦闘で発生する拙僧へのダメージは0となる。
そしてこのダメージステップ終了時、奈落の修行場の効果発動。
攻撃したモンスターは、自身の元々の攻撃力の半分、攻撃力を下げ、続けて攻撃可能。
ゴウジュの攻撃力を半分とし、ルパンへ更なる追撃!」
練武の神戒 ゴウジュ ATK1350
ゴウジュは鞭のようにしなやかに足を振るいルパンに攻撃するも、再び受け止められる。
「一見無駄な攻撃に見えるけど、これもまた、3回目の召喚のための修行なんだ…」
その光景から、灯は空蝉の最初のターンにバクドウが仕掛けた連続攻撃を思い出した。
練武モンスターは鍛錬を積むことで、3度目の召喚を可能とするコンセプト。
これもその修行の一環なのだ。
「そして奈落の修行場の効果は何度でも使用可能。
ゴウジュの攻撃力を元々の攻撃力の半分下げ…再びルパンへ追撃!」
練武の神戒 ゴウジュ ATK0
ついに攻撃力を全て失ったゴウジュが腕を伸ばしてルパンへ迫るが、
力が弱まっている分、ルパンは簡単に攻撃をはらう。
その時、遊次がゴウジュへ送る視線は更に強まった。何かを覚悟したようだ。
「この瞬間、『練武の神戒 ゴウジュ』の効果が発動する!
このモンスターが攻撃力0の状態で相手モンスターに攻撃した時、3度目の召喚を行うことができる!」
「さらにダメージステップ終了時、再び奈落の修行場の効果を発動。
攻撃力を元々の攻撃力の半分下げ、相手モンスターに追撃できる」
ゴウジュは生気のない目で口を大きく開き、空気を一気に吸い込む。
そして体から紫色の瘴気を放つと、不気味な声と共にそれを一気に開放する。
「奈落の修行場の効果により、攻撃力は半分となり、再び攻撃が可能。しかし0を半分にしても0のままだ」
「そしてゴウジュの3度目の召喚時、下がっていた攻撃力は元に戻る」
練武の神戒 ゴウジュ ATK2700
「ゴウジュでルパンへ攻撃!」
「ついに空蝉選手の切り札が"トリプル"を果たしましたァ!
しかし、この攻撃もまた、怪盗ルパンの守備力には及びません!」
「このカードが戦闘を行う攻撃宣言時、3度召喚されたゴウジュの効果を発動。
1ターンに1度、このモンスターの攻撃宣言時、
相手の表側のカードを全て、手札に戻す!」
「そんなっ…!」
遊次の高い守備を無為にする強力な効果に、灯は目を見開く。
■練武の神戒 ゴウジュ
デュアル/効果モンスター
レベル8/闇/戦士/攻撃力2700 守備力1100
①:このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。
②:フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●攻撃力0のこのカードが相手モンスターに攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
このカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは以下の効果を得る。
●このカードの攻撃力は元々の数値に戻る。
●このカードは相手の効果を受けない。
●1ターンに1度、自分の「練武」モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。
相手の表側カードを全て持ち主の手札に戻す。
●1ターンに1度、自分の「練武」モンスターを対象とするカードの効果、
または「練武」カードを破壊する効果が発動した場合に発動できる。
その効果を無効にして破壊する。
ゴウジュは掌から紫色の瘴気を放つと、
遊次のフィールドのルパンとバクドウは呑み込まれ、苦しむようにしてフィールドから消える。
ルパンはEXデッキへと戻り、
さらにPゾーンのアカホシ、永続魔法「妖義賊の連携陣」も遊次の手札に戻る。
遊次が奪っていたバクドウと永続魔法「練武の障壁」は、持ち主である空蝉の手札に戻った。
「なんということでしょうかぁ!神楽選手のフィールドからモンスターが消え去ったぁ!
神楽選手のモンスターが手札に戻ったことで、バトルは巻き戻され、再び攻撃宣言が可能!
さらに、ガンセイも攻撃力を半分下げることで、2度目の攻撃が可能です!
大ダメージは避けられない!」
遊次のフィールドが空いたことで、ゴウジュと、攻撃力が倍加しているガンセイの直接攻撃が可能。
さらにフィールド魔法によって、ガンセイは攻撃力を半分にして再攻撃が可能。
このまま全ての攻撃を受ければ遊次のライフは尽きる。
「ま、まずいよ…。これじゃ遊次さんが…」
トーマスが祈るように両手を握りしめる。
「希望があるとすれば、遊次さんの伏せカード…」
星弥は存在する可能性を見逃さず、希望を見出している。
「戦闘は巻き戻る。『練武の神戒 ゴウジュ』でそなたに直接攻撃!」
運命の瞬間、観客達は固唾を飲む。
「リバースカードオープン!『妖義賊の見参』!
デッキから妖義賊モンスターを呼び出す!
来い!『妖義賊-剛腕のナンゴウ』!」
■妖義賊-剛腕のナンゴウ
ペンデュラムモンスター
レベル6/地/獣戦士/攻撃力2400 守備力1900 スケール2
【P効果】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、1度のバトルフェイズで2回攻撃できる。
【モンスター効果】
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがフィールドに存在する限り、
自分の「ミスティックラン」モンスターは戦闘で破壊されない。
②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在し、
このカード以外の自分の「ミスティックラン」モンスターが
戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。
このカードをリリースし、そのモンスターの攻撃力を2400アップする。
風と共に、フィールドに唐傘を持った虎の頭のモンスターが見参する。守備表示だ。
威風堂々たるその姿を見た子供達は、ぱっと笑顔になる。
「『妖義賊の見参』の発動時、相手から奪ったカードが俺のフィールドにあれば、
デッキから妖義賊カード1枚を手札に加えられる。
『妖義賊-雲龍のリヘイ』を手札に加えるぜ」
遊次のフィールドには、空蝉の墓地から奪った「練武掌波動」が伏せられている。
ゴウジュの効果で手札に戻ったのは表側のカードのみ。
かろうじて相手から奪った伏せカードが残っているため、この追加効果が使用可能だ。
「ゴウジュの俺のカードを手札に戻す効果は1ターンに1度だよな。
つまり、こっからはモンスター同士の真っ向勝負ってわけだ。
だが、特殊召喚されたナンゴウは、戦闘で破壊されねえ。
つまり、アンタはもうこれ以上手出しできねえってことだ」
遊次の頬に汗が流れる。
空蝉も目を細め、少し悔しさを滲ませる。
強力な効果を持つモンスターを召喚し、遊次を追い詰めたものの、
結果的に遊次のライフに傷をつけることすら叶わなかったからだ。
「…致し方無し。バトルを終了する。
先ほど手札に戻って来た永続魔法『練武の障壁』を発動させてもらう。
これにより、拙僧のフィールド魔法は効果の対象にならぬ」
「さらに『練武の障壁』のもう1つの効果を発動する。
拙僧のフィールドに再度召喚された練武モンスターがいる時、
相手のモンスターを1体、葬り去ることができる。
そなたの『剛腕のナンゴウ』を破壊!」
空蝉のフィールドから音波のような空間の揺らぎが放たれ、ナンゴウは破壊される。
「遊次…モンスターが1人もいないよ。大丈夫なの…?」
観客席のミオは熊のぬいぐるみを強く抱きしめ、心配そうに呟く。
灯は大丈夫だと答えたかったが、今の盤面から、そう断言することはできなかった。
イーサンと怜央も同じようだ。ただ黙ってフィールドを見つめることしかできずにいた。
「拙僧はこれにてターンエンド」
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:7(儀式の予告状、妖義賊-美巧のアカホシ、妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊の連携陣)
伏せカード:1(練武掌波動)
【空蝉】
LP4600 手札:1(練武の鉄拳 バクドウ)
①練武の神戒 ゴウジュ ATK2700
②練武の鉄壁 ガンセイ ATK2800
フィールド魔法:奈落の修行場
永続魔法:練武の障壁
--------------------------------------------------
「『練武の神戒 ゴウジュ』は、練武モンスターを対象とする効果、
または練武カードを破壊する効果を1ターンに1度、無効にすることが可能。
さらに、ゴウジュ自身は相手の効果を一切受け付けぬ」
「そして『練武の鉄壁 ガンセイ』は、攻撃可能な相手モンスターに攻撃を強制させる効果を持つ。
それは即ち、再びゴウジュの効果によって、
そなたのモンスターは全て手札へと還る運命にあるということだ」
「…神楽選手にとって、あまりにも絶望的な状況です…!
空蝉選手のフィールド魔法は永続魔法によって効果の対象とならず、
フィールド魔法によって、モンスターは戦闘で破壊されません。
さらにゴウジュによって、練武カードはさらに1度守られます。まさしく鉄壁!」
「攻撃を強制するガンセイがいる以上、
神楽選手の攻撃表示モンスターは必ず攻撃しなければなりません。
しかしその先には、表側カードを全て手札に戻すゴウジュの恐るべき能力が待ち受けています。
モンスターを守備表示にすれば戦闘を回避できますが、
結局、次の空蝉選手の攻撃時に同じ悲劇が起きるだけです…!」
実況の多口は、空蝉の敷いたフィールドの絶望感を余すことなく解説してゆく。
「空蝉選手のフィールドを崩すしか強制攻撃から逃れる術はなく、
しかし空蝉選手は何重にも敷かれた耐性によって、揺るぎないフィールドを誇っています。
そして最も厄介なゴウジュは、カード効果を受けない!
言いたくはありませんが…神楽選手、万事休すかもしれませんッ…!」
この状況は、遊次のデッキを知っており、デュエルに関する見識が深いNextの3人でさえも、
簡単に対策を打ち出すことはできていなかった。まさしく「絶望」。
遊次は目の前の異形の姿をしたゴウジュを見つめていた。
そして、無意識に拳を強く握っている空蝉にも視線を向け、言葉を放つ。
「アンタのモンスターから、強い悲しみと…怒りを感じるぜ。
でもその怒りは、何かに向けたものってより…アンタ自身に向いてるように感じる」
「…やはり、感性だけは鋭いようだな」
空蝉は遊次の言葉を暗に肯定した。
空蝉が自分自身に怒りを抱いているという遊次の感覚は間違っていないようだ。
「アンタが欲望とか技術を憎むようになったのも、何か原因があるんだろ。
何もねえのに急にそんなことを思うわけねえからな」
空蝉の表情は変わらないが、彼の滲ませる怒りがより強くなったように遊次は感じた。
「聞かせてくれねえか、アンタの願いの原点をよ。
純粋に知りてえんだ。なんでアンタがそうなっちまったのか。
デュエルをしてれば、モンスターを通して自然と相手の心が伝わってくるんだよ。
聞かずにはいられねえんだ。
アンタと、デュエルで"魂の会話"をしたいからさ」
遊次は真っ直ぐと空蝉を見据える。
「…よかろう。そなたの瞳に宿る意思に偽りはない。
その純朴さに免じて…語ろうではないか。
拙僧が真実に辿り着くまでの道筋を」
考えをぶつけることはあれど、遊次は空蝉の考えをあしらったりはしなかった。
ここまで空蝉の考えに真っ向から向き合ってくれる者は多くなかっただろう。
だからこそ、空蝉も遊次にぶつけたくなったのだ。
これはまさしく、彼にとって「禅問答」であった。
「拙僧はその昔、技術者であった」
「…技術を憎むアンタが?」
「左様。かつての拙僧は、今と違い、
技術こそが未来を創ると信じて疑わなかった。
しかし、昔から変わらぬこともある。
それは、自然を愛する心だ」
空蝉の脳裏に、子供の頃の記憶が蘇る。
「山育ち故、拙僧は幼少から自然と共に暮らした。
木々や動物…それらの織り成す神秘の空間に身を置くことこそ、
拙僧にとって極上の至福であった。
言葉を交わさずとも、彼らと意思を交わすことができた。
それが何とも心地よく、拙僧とは切っても切り離せぬ時間であった」
空蝉は、緑の生い茂る森で、鹿や鳥と戯れる日々を思い出す。
「だが、時代が経つにつれ、自然はその姿を変えていった。
人の手によって森林が破壊されることもある。
しかし逆に、人の手が入らねば、
草木が枯れ、森は暗く閉ざされ、命の循環すら滞ることもあるのだ。
拙僧が暮らした森はまさしく、これが原因で崩壊した」
青年になった空蝉は、かつて自分が足しげく通った森に再び足を踏み入れた。
しかし、草はまばらに枯れ、地面は乾き、かつて賑やかだった鳥の声も聞こえない。
木々は鬱蒼と茂り、陽の光すら差し込まず、森は重苦しい沈黙に包まれていた。
「かつて共に生きた木々や動物は、静かに、しかし確かに…命を失いつつあった。
無力感が込み上げた。人々は何をやっているのだと。
何故こうなるまで森を放っておいたのだと」
空蝉は当時の怒りを思い出し、拳を強く握る。
遊次も、そして観客達も、今度は野次を飛ばさずに耳を傾けている。
彼の話に皆が興味があったというわけではないだろう。
しかし、自らの言葉1つで、荘厳な空気を壊す勇気ある者がこの場にいなかったのだ。
「拙僧は勉学には自信があった。
二度とあのような悲劇を招かぬためには…人々の力で森を守る必要があると考えた」
「拙僧はAI分野を専攻し、技術者となった。広大な森を人が保護するには限度がある。
拙僧は起業し、森が本来の姿を保てるよう、自律的に調整を行うシステムを構築した。
高度なAIを搭載したドローンによって森林を常に監視し、
倒木の処理、下草の管理、動物の動向把握に至るまで、
全てAIが学習し、自動で行えるようにした」
「…すげーな。どんだけ難しいことか、俺には想像できねえ」
「人が保護することで初めて守ることのできる自然は数多存在する。
これこそが拙僧の使命なのだと感じていた。
やがて拙僧らはいくつもの森を保護してゆき、プロジェクトは順調そのものであった。
だが、とある森の保護を行う中で…悲劇は起きた」
「…悲劇?」
遊次が問うと、空蝉は重苦しく口を開く。
「保護対象だったその森は、かなり衰退が進んだ時点で、
我らに保護の依頼が持ち上がったものだった。
拙僧らが介入することで改善の兆しは見られたものの、
森の復活には遠く及ばぬ状況であった」
「AIは常に自ら学習し、その考えをアップデートしてゆく。
そうして最適な処置を施し、森を管理してきた。
しかし、それが思わぬ形で暴走したのだ。
効率を重視することを学習し続けたAIは…とある判断を下した。
《この森は不要だ》と」
「なっ…!どういうことだよ」
「《この森は既に多様性を失い、回復の見込みはない》。AIはそう判断した。
結果…AIドローンはその森の木々や動物を…殲滅し始めた」
空蝉は苦しそうに俯き、目を瞑る。思い出すのもつらい光景なのだろう。
「我々は異変を察知し森に向かったが、すでに手遅れであった。
森は燃え上がり…一夜にして全焼した」
空蝉の脳裏に、当時の記憶が鮮明に蘇る。
真っ赤な炎に包まれる森を見た空蝉は、無我夢中で森の中へと入っていった。
そこには動物達の無惨な姿と、倒れゆく森の木々があった。
炎の中にも関わらず、絶望に浸り、膝をつき、泣き叫んだ。
空蝉を追ってかけつけた同僚によって森から救出されたものの、
その傷跡は未だに彼の顔に残っている。
「知っているか。25年前…この町にも、かつて雄大な森があったことを」
「いや…知らないな。…まさか、その森が…?」
「それこそ、かつて拙僧の過ちによって破壊され尽くした森だ。
その地には後にビルが経ち、今や森は見る影もない」
「ビル…」
遊次の脳裏に、ふとある記憶が蘇る。
それは今日この会場に向かう前に見た空蝉の姿だ。
数珠を持ち、ビル群一帯に向かって深々と頭を下げていた。
「(あれはもしかして…燃えちまった森があった場所に、いのりを捧げてたのか…)」
「機械は所詮機械。自然を愛する心を持たぬ。
しかし、そのような存在を我らは盲信し、あろうことか更なる力を与えた。
その結果があの惨状だ」
「拙僧はAIの責任者として懲役の罰を受けた。
そして、檻の中で拙僧は悟った。
あの業火こそ…拙僧の、そして人間の罪。
あの惨劇は、人間の独り善がりな欲望によって引き起こされたのだと」
技術によって愛する自然が滅ぼされてしまった過去。
そしてそれは空蝉自身が自然を保護しようとした顛末だった。
しかし遊次はまだ腑に落ちてはいなかった。
「…そのことが今のアンタに繋がってるんだな。
でも、欲望ってのは何のことだ?
アンタはただ自然を守ろうとしてただけだろ」
「否、それこそが欲望なのだ。
森が時と共に滅びゆくのもまた自然の摂理。
それを止めようとすることは、ただ自らが望む形を保とうとする人の業なり。
拙僧の考えは最初から誤っていたのだ」
遊次はその言葉を否定できず、複雑な表情をする。
少なくともこれまでの彼の言葉は、
長きに渡って自問自答を繰り返した結果辿り着いたものだからだ。
「技術は、人の意に反して破滅をもたらすまでに至った。
ここまで歯止めなく力を増大させた原因は、ひとえに人の欲だ」
「欲は破滅をもたらす。
故に、誰かがこの欲望の連鎖を断たねばならぬのだ。
それは、欲に打ち勝ち、自然と同化した拙僧の使命!」
会場の観客達は彼の言葉を聞いていたが、
同情はすれど、共感する者はほとんどいなかった。
しかし、その人々の視線は、空蝉にあることを痛感させた。
これは自分にしか果たせない使命なのだと。
「だからこの大会で優勝して、技術を捨てさせようってのか。
でもよ…やっぱ納得いかねえな」
遊次の中で頭の中が整理されてゆき、明確な言葉を返すことができるようになったようだ。
「技術で救われてる人だって大勢いる。
それこそ、高いレベルの医療を受けなきゃ治せねえ病気もあるだろ。
そういう人はどうするんだよ」
「言ったであろう。時と共に滅びゆくのもまた自然の摂理。
消えゆく命を間延びさせる行為もまた、人のエゴである。
病に倒れたとしても、それが本来の生命の在り方だ」
空蝉の言葉を聞いた観客席の車椅子の青年「虹野譲」は、
強く握った拳で車椅子のアームレストを強く叩いた。
「そんなの…許されない」
譲は歯を食いしばり、怒りを滲ませる。
「…うっ…ゴホ…ゴホッ…!」
急に動いたためか、譲が苦しそうに咳込み、口元を手で押さえる。
近くの席の観客が心配そうに見つめている。
譲が口元を押さえていた掌を見つめると、そこには血が飛び散っていた。
「…アンタの気持ちはよーーくわかった!
でも、わかるのは気持ちだけだ!」
遊次の表情から迷いは一切消えた。
自分の中で答えが見つかったようだ。
そしてそれは、空蝉の思想を肯定するものではなかった。
「アンタがどう思おうが、世界は未来に進み続ける。
みんな今を生きて、"次"に向かって歩いてるんだよ。
それを元に戻そうとするなんて…」
「アンタ、欲深すぎんぜ」
遊次は真剣な眼差しで人差し指を空蝉に向ける。
「拙僧が…欲深いだと…!」
空蝉は心底驚き、同時に怒りも込み上げている。
今まで自分に向けてそんな言葉を放つ者はいなかったのだろう。
「俺はアンタに勝つ。
でも、ただ倒すだけってのは性に合わねえ。
俺の思いをアンタにぶつけて、アンタも全力でぶつかってくりゃあいい。
俺はそういうデュエルがしてえ!」
「…受けて立とう。拙僧のフィールドは揺るぎない。
我が練武を倒すことなど不可能である!」
空蝉は拳法のような構えで遊次に相対する。
遊次はデッキトップに指をかける。
「俺のターン…ドロー!」
「『妖義賊-忍びのイルチメ』の効果発動!
俺のフィールドに妖義賊がいる時、手札から特殊召喚できる!」
■妖義賊-忍びのイルチメ
効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1500 守備力1200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カードを1枚捨てて発動できる。
相手の手札を確認し、その中からレベル4以下のモンスター1体を選ぶ。
そのモンスターを効果を無効化し、自分フィールドに特殊召喚する。
現れたのは紫色の忍び装束を身に纏い、長い髪を後ろで束ねたくノ一だ。
右手にはクナイを持っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/xBnMfae
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「イルチメの効果発動。手札の予告状を捨てて、
相手の手札のレベル4以下のモンスターを、俺のフィールドに特殊召喚できる。
手札の『儀式の予告状』を捨てて、
アンタの手札の『練武の鉄拳 バクドウ』をいただくぜ」
「(…拙僧のゴウジュの効果で、あやつのフィールドから手札に戻したことを逆手に取ったか)」
バクドウは前のターン、ゴウジュの効果で遊次のフィールドから空蝉の手札に戻ったカードだ。
逆に言えば、ゴウジュの効果で手札に戻さなければ、
イルチメの効果でバクドウが奪われることもなかったことになる。
遊次のフィールドに、鉄球ほどもある拳を持つ仁王像のような顔の屈強な戦士が現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3igThBl
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「俺のフィールドに練武がいることで、発動できるカードがある。
リバースカードオープン!『練武掌波動』!
俺のフィールドに通常モンスターが存在する場合、
相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」
デュアルモンスターは再度召喚しない限り通常モンスターとして扱われるため、この効果が使用可能だ。
遊次のフィールドのバクドウが掌から衝撃波を放つ。
「小癪!『練武の神戒 ゴウジュ』の効果発動!
1ターンに1度、練武カードを破壊する効果を無効にする!」
バクドウが放った衝撃波を、ゴウジュは片手を一振りするだけで打ち消す。
「『練武掌波動』が決まれば、
練武に戦闘耐性を付与するフィールド魔法と、
魔法・罠に対象耐性を付与する永続魔法を破壊できていましたが、
ゴウジュによって防がれてしまったぁ!
これにより、まだなおも練武モンスターは強力な耐性を持っています!」
フィールド魔法は永続魔法により対象耐性を持ち、
練武モンスターはフィールド魔法により戦闘耐性を持つ。
ゴウジュの効果を使わせてもなお、空蝉は2重の耐性を維持している。
だが、遊次の表情は少し明るさを増した。
「俺はスケール2の『妖義賊-雲龍のリヘイ』と、
スケール8の『妖義賊-美巧のアカホシ』をPスケールにセッティング!」
遊次の頭上に、龍の頭と鳳凰の頭を持つモンスターが浮かび上がる。
「『妖義賊-雲龍のリヘイ』のP効果を発動!
手札を1枚捨てて、墓地の予告状カードを除外できる。
『妖義賊の連携陣』を捨てて、墓地の『儀式の予告状』を除外!」
捨てられた永続魔法「妖義賊の連携陣」は、
EXデッキの表側・フィールド・墓地のカードを3枚デッキに戻して、
相手のカードを奪う効果だ。
しかし空蝉の永続魔法によって、永続魔法以外の魔法・罠は効果の対象にできないため、
練武モンスターに耐性を与えるフィールド魔法を除去することはできない。
また、練武モンスターを対象とする効果を無効化するゴウジュは、
すでに「練武掌波動」に対して1ターンに1度の効果を使用しているため、
「妖義賊の連携陣」によってモンスターを奪うことが可能だ。
しかし、ゴウジュは相手の効果を受けず、もう1体のガンセイを奪うのが関の山だ。
永続魔法のコストもばかにならない以上、決定打にはならないと判断し、
手札から捨てられたのだろう。
それは、他に有用なカードが手札に存在することも意味している。
「除外された儀式の予告状の効果発動!
このカードが墓地から除外された時、モンスターを生贄に捧げ、
手札・デッキから儀式召喚モンスターを儀式召喚できる!」
「儀式召喚っ!」
「ゴエモンだー!」
観客席の子供たちの表情は、間もなく現れるヒーローに心躍らせる。
「フィールドのイルチメとバクドウをリリースして、儀式召喚を執り行う!」
フィールドに2つの灯篭が現れ、指定された2体のモンスターが光へと消えると、
灯篭に2つの炎が灯る。
「桜吹雪の舞う中に、現れたるは荒野の義賊!
儀式召喚!来い、俺の切り札!『妖義賊-ゴエモン』!」
■妖義賊-ゴエモン
儀式モンスター
レベル7/地/戦士/攻撃力2500 守備力2000
「予告状」儀式魔法カードにより降臨。
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:元々の持ち主が相手となるカードが自分フィールドに存在する限り、
自分フィールドのモンスターは相手の効果の対象にならない。
②:相手の墓地のモンスター、または魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
モンスターカードの場合、そのカードを自分フィールドに特殊召喚し、
魔法・罠カードの場合、自分フィールドにセットする。
③:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをリリースして儀式召喚された場合、以下の効果を得る。
元々の持ち主が相手となる自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動する。
そのモンスターの元々の攻撃力分、自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力をアップする。
桜吹雪と共に現れたのは、大剣を携えた戦士のモンスター。
メタリックなボディは鉄の装甲で覆われており、鎧には赤の紋様が描かれている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/YnblaqH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「…意気揚々と攻撃表示とは。
ガンセイがいる限り、攻撃可能なモンスターは必ず攻撃しなければならない。
そしてその刹那、ゴウジュの効果によってそなたのモンスターは全て手札へと還る。
わかっておるのか」
「わかってるに決まってんだろ。それでも、攻撃表示だ」
遊次は毅然と答える。その声は自信に溢れていた。
「ゴエモンの効果発動!1ターンに1度、アンタの墓地からカードを奪う!
アンタのフィールド魔法『岩峰の修行場』を奪い、セットするぜ。
そして発動!」
フィールドに大きな岩の塔がいくつも現れる。
空蝉の発動しているフィールド魔法と交わり、2つの修行場が融合している。
「なんだと…?」
岩峰の修行場は、自分の練武モンスターに耐性を与え、
3度のモンスターへの攻撃を可能とする効果だ。
一見遊次にとって無価値に見えるフィールド魔法を奪ったことに、空蝉は一抹の不安を覚える。
「俺のPスケールは2~8。よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能!」
頭上の振り子が左右に揺れ、その中から1つの光が現れる。
「ペンデュラム召喚!EXデッキから現れろ!
『妖義賊-誘惑のカルメン』!」
■妖義賊-誘惑のカルメン
ペンデュラムモンスター
レベル5/闇/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900 スケール2
【P効果】
このカード名の①②のP効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースして発動できる。
デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。
②:相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを自分の手札に加える。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地のモンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
対象の自分の墓地の「ミスティックラン」モンスターを相手フィールドに特殊召喚し、
対象の相手フィールドのモンスターのコントロールを得る。
②:このカードが「ミスティックラン」モンスターの融合・S・X・L召喚の素材となった場合、
または「ミスティックラン」モンスターの儀式召喚のリリースとして使用された場合に発動できる。
EXデッキの表側表示のこのカードを手札に加える。
EXデッキの表側からEXモンスターゾーンに、ローブを纏った妖艶なモンスターが降り立つ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dwkEFaw
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「誘惑のカルメンの効果発動!
俺の墓地のモンスターを1体、相手フィールドに特殊召喚することで、
アンタのフィールドのモンスターを1体奪うことができる。
俺の墓地のイルチメを渡して、『練武の鉄壁 ガンセイ』をいただくぜ!」
カルメンが妖艶な手つきでガンセイを誘惑すると、それに釣られ、遊次のフィールドへ移動する。
そして、くノ一のモンスター「忍びのイルチメ」が空蝉のフィールドへ特殊召喚される。
「アンタに、聞きたいことがある」
少し間が空いた後、ターンの途中、遊次はおもむろに言葉を紡ぐ。
「…よかろう」
真剣な遊次の表情から彼の強い意思を汲み取り、空蝉もそれを受け入れる。
「アンタ、自然が好きなんだろ。
自然を守りたいと思ったから、死ぬほど勉強して、技術者になったんだろ。
その時の気持ちはどこいっちまったんだよ」
遊次は、前を見据えながら真っ直ぐ空蝉に問う。
「…質問の意図を図りかねるな。自然を愛しているのは変わらぬ。
しかし、人の手を介して守るべきではないと説いておるのだ」
「そういうことじゃねえ。
アンタはなんで自然が好きなんだよ。
なんで守りたいと思ったんだ」
「…それは」
空蝉の脳裏に、幼い頃、森で過ごした時の記憶が蘇る。
「…美しかったからだ。
幼き頃、初めて鹿の親子が湧き水を飲むのを見た。
鮮やかな緑に光が差し込み、何ひとつ手を加えずとも、そこには完成された世界があった」
「そう!それだよ!!
綺麗だと思ったから守りたいんだろ!
その気持ちは、今も変わってねえだろ!」
空蝉は、たかが他人事にここまで熱情を込めて話す目の前の男に、
改めて不思議な感覚をおぼえた。
なぜ彼はこうも自分に無関係な物事に必死になれるのか。
心から疑問だった。故に、己の心をぶつけたいという"欲"に駆られる。
「…何が言いたい…!美しき森を愛する心は変わらぬ!故に…」
彼の熱量に引っ張られるように、空蝉も叫ぶように思いをぶつける。
彼が言葉を紡ごうとした時、遊次がそれを遮り、言葉を被せる。
「じゃあなんで、森を保護すんのを諦めちまうんだよ!」
「…は…?」
空蝉には彼の言葉の意味をすぐには理解できなかった。
「…何を言う!拙僧は美しき自然を守るために、
技術を、欲を、捨て去らねばならんと言っておるのだ!」
「でも!アンタが森を保護するのを諦めたら、
アンタの好きな美しい自然が、減ってくだろうが!
アンタはそれでいいのかって言ってんだ!」
空蝉はなおも食いかかる遊次に、呆れに近い感情を抱いた。
しかしそれと共に、今更何を蒸し返すのかと、
その先の彼の真意に耳を傾けずにはいられなかった。
「…致し方あるまい!
人が技術を捨てぬ限り、あの日のような惨劇は再びやってくる!
滅びゆくのもまた自然なり!それが世界の在るべき形なのだ!」
「いたしかたあるまいぃ!?
何十年も考えた結果がそれかよ!アンタよぉ、視野がせめーんだよ!」
遊次は声を裏返しながら指を突きつけ、空蝉に遠慮のない言葉をぶつける。
「ゆ、遊次…」
「何であんなに怒ってるんだ、アイツ…」
観客席の灯と怜央は露骨に困惑した表情をする。
彼が何故ここまで熱を込めて叫んでいるのか、灯達には理解できなかった。
他人の願いなど、はっきり言えば自分に関係のない話だ。
空蝉は遊次の倒すべき相手。
自分の願いを果たすためには、目の前の相手を倒すしかない。
自分が勝利することが前提条件である以上、
相手がどんな願いを抱いていようと、なんら関係はないのだ。
しかし、遊次はまるで自分事のように相手に魂をぶつける。
理解不能ではあるが…これこそが神楽遊次だ。
このモードに入った遊次は誰にも止められない。
それだけは確かだった。
「視野が…狭いだと…!?
禅の世界に身を置いたことのない小僧に、一体何がわかる!?」
空蝉もこれまでのような丁寧な言葉遣いを忘れ、
剥き出しの心を曝け出す。
「いーや、狭いね!
わかんねーなら、俺が今からわからせてやるよ!」
遊次はデュエルディスクに手を置き、勢いに任せてデュエルを続行する。
「ゴエモンの効果発動!
相手から奪ったモンスターを素材に儀式召喚されている時、
相手から奪ったモンスター1体をリリースすることで、
その元々の攻撃力分、俺の全てのモンスターの攻撃力をアップする!
今奪ったガンセイをリリースして、元々の攻撃力の1400、俺のモンスターの攻撃力を上げる!」
妖義賊-ゴエモン ATK3900
妖義賊-誘惑のカルメン ATK3400
桜吹雪と共に妖義賊達の攻撃力がアップする。
ただしカルメンは現在守備表示だ。
「…読めたぞ、そなたの考え。
我がゴウジュは、練武モンスターの戦闘時、相手の表側カードを全て手札に戻すことができる」
「しかし、それはあくまで拙僧の『練武』モンスターとの戦闘でのみ発動される効果。
今、拙僧のフィールドには、カルメンの効果で特殊召喚された『忍びのイルチメ』がいる。
つまり、そなたがイルチメに攻撃すれば、ゴウジュの効果でそなたのモンスターが手札に戻ることはない。
これがそなたの作戦であろう」
「しかし、ゴエモンでイルチメを攻撃したとて、
拙僧へのダメージは3400。ライフを削りきることはできぬ。
それがそなたの限界だ」
空蝉の言葉で、観客席の灯もはっとする。
このフィールドを見る限り、遊次には彼の言葉通りの狙いがあるとしか思えなかった。
「…やっぱ視野が狭いぜ、アンタ」
遊次は口角を上げ、手札のカードを1枚取り出す。
「手札から『妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル』の効果発動!
相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、
このカードを手札から捨てて、俺のモンスターと相手モンスターを入れ替える!」
■妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル
効果モンスター
レベル3/風/魔法使い/攻撃力700 守備力1200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、
このカードを手札から捨て、自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体と、
相手モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター2体のコントロールを入れ替える。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:相手モンスターが自分の「ミスティックラン」モンスターまたは
元々の持ち主が相手となるモンスターと戦闘を行う攻撃宣言時、
墓地のこのカードを除外し、攻撃対象となったモンスター以外の
自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。
「なんだと…!
しかしゴウジュは相手の効果を受けぬ!奪うことなど不可能!」
「なんでゴウジュを奪うと思い込んでんだ?
俺は、アンタのフィールドのイルチメと…
俺のフィールドのゴエモンを入れ替える」
「えっ!?」
遊次の取った思いもよらぬ行動に灯は驚愕する。
遊次の前に、全身クリーム色にオレンジ色の水玉模様がついた服を着た少年のモンスターが現れる。
光をばら撒きながら宙を舞い、指先でイルチメとゴエモンに触れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ldmy2aw
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
少年が手を叩くと、そのモンスターの位置が一瞬にして入れ替わる。
「な、なぜだぁ!?神楽選手、せっかく攻撃力を上げたゴエモンを、相手に渡してしまったぁ!?」
「ただゴエモンでイルチメを攻撃するだけなら、
アンタの墓地からフィールド魔法を奪う必要ねーだろ。
俺の答えは、もっと先にある」
そう言うと遊次は、手札から1枚のカードをゆっくりと取り出す。
灯、イーサン、怜央、譲…その視線は1枚のカードに集中する。
「魔法カード発動。『死者蘇生』」
「死者…蘇生…」
長きデュエルモンスターズの歴史において、
数々のデュエリスト達を支えてきたカード。
ここにきてそのカードが、この戦いの終局を飾ることとなる。
「俺の墓地にモンスターはいねえ。
復活させるのは…アンタの墓地の『練武の鉄拳 バクドウ』だ」
遊次のフィールドにみたび、大きな拳を持つ屈強な戦士が現れる。
「気付いてるか?俺はまだ、通常召喚を残してる」
「まさか、そなたは…」
空蝉の中でも、少しずつ点と点が線で繋がり始めていた。
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:1
①妖義賊-忍びのイルチメ ATK1500
②妖義賊-誘惑のカルメン DEF1900
③練武の鉄拳 バクドウ ATK1500
フィールド魔法:岩峰の修行場
Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-美巧のアカホシ
【空蝉】
LP4600 手札:0
①練武の神戒 ゴウジュ ATK2700
②妖義賊-ゴエモン ATK3900
フィールド魔法:奈落の修行場
永続魔法:練武の障壁
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「『練武の鉄拳 バクドウ』はデュアルモンスター。
1度召喚しただけじゃ通常モンスター扱いだが、もう1度召喚することで効果を得る。
バクドウを再度召喚だ!」
バクドウが気合を入れると、オレンジ色の覇気が放たれる。
その瞬間、空蝉は地に膝をつき、信じられないといった表情で、
目を見開き、拳を震わせる。
「バクドウを神楽選手がデュアルした瞬間、
空蝉選手が項垂れました…!まるで…敗北を悟ったかのように…!」
実況の多口や観客達には、まだその理由がわかっていなかった。
「…いつからだ。いつから、この光景を思い描いていた」
空蝉は地に視線を落としながら遊次に問う。
「最初のアンタのターンで罠カードが伏せられた時だ。
伏せられたカードは、そのターンにアンタが手札に加えた『練武顕現』だとわかる。
つまり、次の俺のターン、アンタが練武を呼び出すことは確定してたわけだ」
遊次が空蝉の問いに答え始める。
「アンタのフィールドは何重にも守られてて、簡単には突破できない状態だった。
だから俺は、アンタがどんなモンスターを呼び出そうが、
勝つことができるルートを見つけようとした。その答えが…これだ」
その瞬間、実況の多口は遊次の思い描いていた勝利のルートに気付き、瞬時に言語化する。
「練武モンスターはデュアルを超えたトリプルモンスター。3度の召喚が可能です。
バクドウの3度目の召喚の条件は、相手モンスターに2回以上攻撃すること。
そして…その土壌は既に整っています!」
遊次が空蝉の墓地から奪ったフィールド魔法「岩峰の修行場」。
それは、自分のデュアルモンスターを破壊から守り、
モンスターへの3度の攻撃を可能とする効果。
これこそ、バクドウの3度目の召喚の条件に必要なカードだった。
「そしてバクドウは、3度目の召喚が行われると、
そのターンに受けたダメージを相手に与える効果を得ます。
もしバクドウが空蝉選手のフィールドにいるゴエモンに連続攻撃し、
3度目の召喚で、そのダメージを全て空蝉選手に反射すれば…」
多口の言葉によって、観客達も次第に答えにたどり着いてゆく。
「お前の視野が広すぎるんだ、遊次…」
イーサンは遊次の勝利を確信し、小さな笑みを浮かべ、一言呟く。
「神楽遊次よ。示してくれ、そなたの答えを」
空蝉は立ち上がり、遊次にまっすぐと向かい合う。
「さっきアンタは、ゴエモンでイルチメに攻撃するのが俺の作戦だって読んだよな。
練武モンスター以外に攻撃すれば、ゴウジュの効果で俺のカードが手札に戻ることはねえからだ」
「…半分は正解だ。でも、半分だけだぜ。
ゴエモンでイルチメを攻撃しても、アンタのライフは削りきれねえ。
せっかくチャンスがあんなら、俺はそんな中途半端なマネはしねえ。
アンタのライフを、根こそぎ持っていきてえからな」
「俺からすりゃ、アンタの願いも同じなんだよ。
半分は合ってるかもしんねえ。でも、中途半端なんだよ!」
「…どういうことだ」
空蝉はただ遊次の言葉を受け止めようとする。
「技術が暴走しないようにしたい…それがアンタの思いだろ。
それはいいと思うぜ!絶対にやった方がいい!」
「でもよ…アンタが大好きな自然を守りたいって願いを、なんで諦めちまうんだよ!
滅びるのはしょうがねえなんて言って…向き合うことから逃げてるだけじゃねえか!」
遊次は肩をいからせたまま、空蝉を真っ直ぐに見据えていた。
口調は荒かったが、その瞳にはぶれのない確かな意志が宿っていた。
言葉ではなく、想いそのものをぶつけていた。
「拙僧が…逃げているだと…?」
「あぁそうだ!技術に向き合うのがこえーだけだ!
だから、本当は守りたいと思ってるくせに、森を保護する夢を諦めて、
勝手に技術を捨てるって方向に逃げてんだろうが!」
遊次の言葉を聞いた時、空蝉の中でかつての記憶がフラッシュバックする。
「(あの事件以来…拙僧は技術に触れることを拒んだ。
山へ戻り、そこで長きに渡って自然に触れ続ける内に…
これこそが本来あるべき人の営みであると考え始めた)」
「逃げた」という遊次の言葉を、空蝉はすぐに否定できなかった。
少なくともあの事件以来、技術から目を背け山に逃げ帰ったのは事実だ。
しかし、それも空蝉の長きに渡る葛藤の末の答えだ。
空蝉自身にそれを否定することはできない。
「だが…ならばどうすればいい!
技術の危険性に見て見ぬふりを続け、性懲りなくAIに森の保護を任せろと言うのか!」
「どっちもやればいい!もっと欲張れよ!!」
遊次の一言と共に、両者の間に風が吹き、
その間、一瞬の静寂が訪れる。
空蝉は雷に打たれたような感覚だった。
唖然として口を開いたまま体は静止し、言葉を返すことができなかった。
「アンタ、美しい森が好きなんだろ。これ以上減ってほしくねえんだろ。
じゃあ、森を守りながら、技術の暴走も防げばいい!
それだけじゃねえのか!」
「俺なら、やりたいことは全部やるし、ほしいもんは全部手に入れる!
アンタにもできるはずだ!でも、怖ぇから前に進めないだけなんだろ!」
遊次は声が掠れるほどに叫び、思いを伝える。
これほどまでに空蝉に熱い言葉を投げかけた者はいなかった。
だからこそ、心を打つ。
「…俺が言えんのはここまでだ。後はアンタ次第だぜ。
ま、そもそもアンタのことだからな。俺がでしゃばることじゃねえ」
空蝉は俯き、目を瞑る。
そして一言、静かに言葉を放つ。
「…なんと、欲深い男だ。
自然を守り、技術の暴走を止める…いかに険しい道か、わかっておるのか」
「まあ、簡単じゃねえだろうな。
でも、世界から技術をなくすよりは、よっぽど簡単だろうぜ」
遊次はあっけらかんと言い放つ。
「…フ、そうかもしれぬな」
(拙僧は、入り組んだ道を歩みすぎたのかもしれぬ。
答えは…さらなる"欲"の先にあったのだ)
空蝉は静かに笑った。まるで答えを得たかのように。
(無理難題を言ってのける…。しかし、あやつはそうは思っておらん。
真に諦めることを知らぬのだ。
それに奴自身…このデュエルで不可能を可能にしてみせた)
彼自身が今後どのような身の振り方をするかは、彼にしか決められないことだ。
しかし少なくとも、遊次の言葉が、デュエルが、前に進む後押しをしたことは間違いないだろう。
「行くぜ、バトルフェイズ!
『練武の鉄拳 バクドウ』で、アンタのフィールドのゴエモンに攻撃!」
遊次がデュエルを再開する。
観客たちは再びフィールドに注力し、この戦いの行く末を見守ろうとする。
「だが、攻撃力はゴエモンの方がはるかに高い!」
空蝉も覚悟したようにフィールドに向き直り、最後まで戦いを果たそうとする。
「フィールド魔法『岩峰の修行場』の効果で、デュアルモンスターは戦闘で破壊されない!」
「だが、ダメージは受けてもらう!」
拳を握り迫るバクドウに、ゴエモンが一太刀を浴びせる。
ゴエモンの攻撃力は3900。対するバクドウは1500。その差分のダメージを遊次が受ける。
「ぐあぁっ…!!」
遊次 LP6300 → 3900
「まだだ!フィールド魔法『岩峰の修行場』によって、
デュアルモンスターは相手モンスターに3回まで攻撃可能!
もう1回、バクドウでゴエモンに攻撃ッ!」
再びバクドウがゴエモンに迫るも、ゴエモンは飛び上がってそれを華麗にかわし、
上方からバクドウに一閃を浴びせる。
「ぐっ…!」
遊次 LP3900 → 1500
大きなダメージを受けながらも遊次は未だに立っている。
「アンタとのデュエル…楽しかったぜ、空蝉さん」
遊次は最後に、別れの挨拶のように、笑顔で空蝉に告げる。
「勝利は俺が頂いた!」
「バクドウが相手モンスターに2回以上攻撃したバトルフェイズ終了時、効果発動!
このモンスターは、3度目の召喚を行い、効果を得る!」
バクドウが雄たけびと共に力を開放する。
「そしてこの瞬間、バクドウの効果発動!
このターン、俺が受けたダメージを相手に与える!
俺が受けたダメージの合計は4800!アンタのライフを上回る!」
バクドウが掌を合わせると、両の掌の間に電気のようにエネルギーが迸る。
その姿を見つめながら、空蝉は考えを巡らせる。
「(あやつはこの戦いの序盤からすでに、拙僧のモンスターと撃ち合わず、
ライフを削る策を思い描いていた)」
「(デュエル、そして拙僧との問答においても…
あやつは我が想像を遥かに上回る答えを示してきた)」
空蝉は真っ直ぐと遊次を見つめ、最後の一言を告げる。
「見事だ、神楽遊次」
空蝉の言葉に、遊次はにやりと笑う。
「(あやつなら…この大会の果てに願いを掴めるやもしれん。
否、その想像すら超える"何か"を成し遂げる…そう確信して止まぬ)」
「…拙僧も、もっと欲張らねばならんな」
バクドウが掌からオレンジ色の電のような衝撃波を放ち、
その光は空蝉を飲み込んだ。
空蝉 LP4600 → 0
「ついに勝負が決しましたぁー!!
激戦を勝ち抜き3回戦へ駒を進めたのは、神楽遊次ィーー!!!」
会場は熱狂に包まれた。
灯は子供たちと手を合わせて喜び、イーサンは静かに笑みを浮かべている。
同じく戦いを見届けた怜央は、真剣な表情で考える。
「(遊次のヤツは絶対に決勝まで上がってくる。
俺はアイツをぶっ倒して…その先にある"願い"を掴む)」
「(今まで、ドブをすすりながら生きてきた。
それでも、俺はここまで這い上がった。ここから堕ちるわけにはいかねえ。
だから…立ち塞がるヤツは誰が相手でも潰す)」
怜央は対面の観客席のある人物を睨んでいた。
車椅子に乗った青年、「虹野譲」。次の怜央の対戦相手だ。
譲は手に持った1枚のモンスターカードを見つめていた。
そのモンスターは「ビックリボー」。彼にとって愛着のあるカードなのだろう。
「(僕は必ず勝つよ。君と一緒に)」
そして、彼の視線は対面にいる怜央へと向く。
お互いの鋭い視線がぶつかり合う。
「(僕の願いに比べれば…他のどんな願いも塵同然だ。
僕にはもう…後がないんだから)」
次なる戦いの火蓋は、すでに切られている。
第37話「禅問答」 完
ヴェルテクス・デュエリア 2回戦第3試合。
怜央と相対するは、車椅子の青年「虹野譲」。
譲が操るのは、炎属性と水属性が共存する「冽灼(れっしゃく)」デッキ。
ペンデュラム召喚によって大量のモンスターを展開するそのデッキは、
まさにペンデュラムそのものを体現していた。
炎と水…相対する2つの属性の饗宴が、
まるで歌い踊るかのように、怜央を翻弄する。
次回 第38話「紅と蒼の輪舞」
【遊次】
LP6300 手札:5(ナンゴウ、プロメテ、儀式の予告状)
伏せカード:1(練武掌波動)
【空蝉】
LP6600 手札:1
①練武の鉄拳 バクドウ ATK3000
伏せカード:1
フィールド魔法:岩峰の修行場
永続魔法:練武の障壁、練武覚醒-穿ツ時-
--------------------------------------------------
ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選2回戦第1試合。
遊次は先行で盤石な布陣を築くも、空蝉空心(うつせみくうしん)が操る
デュアルモンスターを主軸とする「練武」デッキは、
1体のモンスターを3度召喚することで強力な効果を得るという、常識外れの性質を持っていた。
「空蝉選手のモンスターは1ターンに1度、
相手モンスターを全て破壊する強力な効果を持っています。
さらにそのモンスターはフィールド魔法によって破壊されず、
魔法・罠カードは永続魔法によって効果の対象になりません。
この盤石な布陣を崩すのは、いくら神楽選手といえど骨が折れるでしょう!」
観客達を代弁するように、実況の多口がフィールドの状況を解説する。
彼の言う通り、空蝉のフィールドはあまりに強固だ。
しかし、遊次の心は全く折れていない。
空蝉と魂の会話をするためにも、遊次はここから反撃の姿勢を見せようとしていた。
「俺のターン、ドロー!」
遊次は思い切りカードを引く。
引いたカードを手札に収め、その後、相手フィールドを見つめ思考を巡らせている。
「(相手フィールドにはモンスターが1体。
一気に攻めれば勝てるように見えるけど…そうじゃねえ)」
遊次は空蝉のフィールドに伏せられた1枚のリバースカードを見つめる。
「(あの伏せカード…さっき手札に加えてた罠カード『練武顕現』のはずだ。
もしバクドウを奪って空蝉さんの場を空けられたとしても、
あの罠カードでデッキから再度召喚した状態で練武を呼ばれる。
そうなりゃ、フィールド魔法の効果で、そのモンスターは戦闘・効果で破壊できねえ。
ってことは、このターンに攻め切ることは無理だ)」
遊次は空蝉のフィールドを見つめ、冷静に思考を巡らせる。
「(でも、もし俺の思い描いた通りにいけば、相手のモンスターがどんなに強くても…勝てる。
動くのは次のターンだ。でも、あの作戦のためには、相手のライフも削らなきゃなんねえ。
要は"バランス"だな…!)」
遊次の中で結論が出たようだ。思考した実質時間は短いが、
その中で遊次は何度も数多のルートを思い描き、1つの結論に達した。
「手札から『妖義賊-深緑のロビン』を召喚!」
■妖義賊-深緑のロビン
効果モンスター
レベル4/風/戦士/攻撃力1800 守備力500
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分の墓地のレベル4以下の「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カード1枚を捨て、
墓地の「ミスティックラン」魔法・罠1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
③:このカードがリリースされた場合、
相手フィールドの表側モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にする。
現れたのは緑色の外套を纏い弓を持った若い青年のモンスター。
首元にはシンプルなオレンジ色の緑色のマフラーが巻かれている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/PHAQB1t
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「深緑のロビンの効果発動!
墓地のレベル4以下の妖義賊を特殊召喚できる。
来い、脱出のシェパード!」
再びフィールドに、紳士服を纏ったシェパード犬のモンスターが現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mbD8bgW
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「成程。『脱出のシェパード』は、妖義賊モンスターをリリースすることで効果を発動する。
そして『深緑のロビン』は、自身がリリースされた時、拙僧のモンスター効果を無効化できる。
2体のモンスターの連携によって、バクドウの破壊効果を無に帰すというわけか」
空蝉は遊次のフィールドの2体のモンスターを見つめ、その意図を瞬時に理解する。
「ならば止めねばなるまい。『練武の鉄拳 バクドウ』の効果を発動。
1ターンに1度、相手モンスターを全て破壊する!」
バクドウが掌から波動を放つと、ロビンとシェパードは吹き飛ばされ、破壊される。
「空蝉選手さっそく、強力な全体効果を発動しましたぁ!しかし破壊したのは下級モンスター2体!
神楽選手に発動を誘導された形となります!空蝉選手にも伏せカードはあるものの、
手札が潤沢に残っている神楽選手を、かなり自由にさせてしまうことになります!」
実況の多口は冷静に状況を分析する。
モンスターが破壊されたという一見した事実だけで状況を判断せず、
どちらかといえば遊次有利の盤面であることを観客に伝えている。
「俺のモンスターが破壊された時、手札の『妖義賊-助太刀のサルバトーレ』の効果発動!
コイツを手札から特殊召喚できる!攻撃表示で特殊召喚!」
■妖義賊-助太刀のサルバトーレ
効果モンスター
レベル4/地/獣/攻撃力1700 守備力1300
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
この方法で特殊召喚した場合、
相手の墓地のモンスター1体を選び、自分フィールドに特殊召喚できる。
②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
デッキから『予告状』魔法カード1枚を手札に加える。
現れたのは短刀を携え、胸のあいた毛皮の服を纏った猿のモンスターだ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/iEwZtaH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「この効果で特殊召喚された時、さらに相手の墓地からモンスターを奪って特殊召喚できる!
アンタの墓地から『練武の迅脚 ソウジン』をいただくぜ」
遊次のフィールドに長い銀髪の筋肉質な肉体を持った戦士が攻撃表示で現れる。
「サルバトーレの効果発動!相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、
デッキから『予告状』魔法カードを手札に加えることができる。
俺は『一攫千金の予告状』を手札に加えるぜ」
「さらに手札から『妖義賊-戴火のプロメテ』をPスケールにセッティング!」
■妖義賊-戴火のプロメテ
ペンデュラムモンスター/チューナー
レベル4/火/炎/攻撃力1000 守備力200 スケール2
【P効果】
このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを効果を無効化して自分フィールドに特殊召喚する。
②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
自分のデッキの上からカードを5枚めくり、
その中から「ミスティックラン」カード1枚を選んで手札に加える。
残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。
【モンスター効果】
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
相手の除外状態のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
③:このカードがフィールドからEXデッキに表側表示で加わった場合に発動できる。
このカードをPゾーンに置く。
遊次の頭上に、一頭身の火の玉に顔のついたモンスターが現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「『戴火のプロメテ』のP効果発動!
相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、デッキの上から5枚めくり、
その中から妖義賊カード1枚を手札に加える」
遊次はデッキから5枚のカードを引き抜き、扇状に広げる。
「俺が手札に加えるのは罠カード『妖義賊の見参』!
残りのカードはデッキの一番下に戻す」
「EXデッキで表側となっている『美巧のアカホシ』の効果発動。
俺のPゾーンにカードがある時、EXデッキからこのカードを手札に加えられる」
「身を削る戦いにこそ真の成長がある。
次から次に手札を補充する小心なそなたのデュエルは、まさにその対極にある」
未だ6枚の手札を維持し続ける遊次に空蝉が苦言を呈する。
「そりゃ心外だな。俺にだって身を削る覚悟ぐらいあるぜ。
そうしなきゃアンタは倒せねえ」
遊次は毅然とした態度で言葉を返す。
「プロメテのもう1つのP効果発動!俺のフィールドに妖義賊がいる時、
Pゾーンのこのカードを、効果を無効にして特殊召喚できる!」
頭上に浮かんでいた火の玉は、遊次のもとにまでふわふわと降り立つ。
プロメテは攻撃表示だ。
「俺はスケール2『妖義賊-剛腕のナンゴウ』と、
スケール8『妖義賊-美巧のアカホシ』をセッティング!」
遊次の頭上に、白黒の渦模様が描かれた着物を纏った虎の頭を持つモンスターと、
赤い着物を纏った鳳凰のモンスターが現れる。
ナンゴウ:ttps://imgur.com/a/l0XP4F1
アカホシ:ttps://imgur.com/a/Beta2kb
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「スケールは2~8、よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能。
ペンデュラム召喚!EXデッキから現れよ『妖義賊-舞蛇のキク』!」
EXモンスターゾーンに守備表示で現れたのは、
桃色の着物を纏い白い蛇の頭を持ったモンスターだ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/tsPN11Y
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「永続魔法『妖義賊の連携陣』を発動!」
■妖義賊の連携陣
永続魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地・フィールド・EXデッキの表側から
「ミスティックラン」カードをそれぞれ1枚ずつデッキに戻し、
相手フィールドの表側カード1枚を対象として発動できる。
そのカードがモンスターカードの場合、コントロールを得て、
魔法・罠カードの場合、自分フィールドに置く。
②:元々の持ち主が相手となる自分フィールドのカード1枚を墓地へ送り、
自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、相手の効果を受けない。
③:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する限り、
自分のモンスターの守備力は倍になる。
「『妖義賊の連携陣』の効果発動!
墓地・フィールド・EXデッキの表側から1枚ずつ、
妖義賊カードをデッキに戻して、相手フィールドの表側カードを1枚奪える!
俺は墓地の『怪盗ルパン』、Pゾーンの『剛腕のナンゴウ』、
EXデッキで表側となっている『雲龍のリヘイ』をデッキに戻して、効果を使用する!」
「アンタの永続魔法『練武の障壁』は他の魔法・罠カードを守るカードだよな。
なら、そいつをいただくぜ!」
デッキへ戻ったルパン、ナンゴウ、リヘイが半透明な姿でフィールドに現れると、
3体で三角形の紋様を描き、それを指定された永続魔法へと放つ。
その攻撃を受けた空蝉のフィールドの永続魔法は一瞬にして消え、遊次のフィールドへと置かれた。
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:3(儀式の予告状、一攫千金の予告状、妖義賊の見参)
①妖義賊-助太刀のサルバトーレ ATK1700
②練武の迅脚 ソウジン ATK1400
③妖義賊-戴火のプロメテ ATK1000
④妖義賊-舞蛇のキク DEF1500
伏せカード:1(練武掌波動)
永続魔法:妖義賊の連携陣、練武の障壁
Pゾーン:妖義賊-美巧のアカホシ
【空蝉】
LP6600 手札:1
①練武の鉄拳 バクドウ ATK3000
伏せカード:1
フィールド魔法:岩峰の修行場
永続魔法:練武覚醒-穿ツ時-
--------------------------------------------------
「空蝉選手、永続魔法を1枚失ったものの、未だ盤石な布陣であることには変わりありません!
対して、神楽選手のフィールドには4体の下級モンスターが並んでいますが、
ここからどのようなハーモニーを奏でてくれるのでしょうか!」
遊次のフィールドには4体の下級モンスターが並んでいる。
様々な召喚法を駆使してきた遊次の戦い方を見た観客達にとって、
このモンスター達はいわば下準備、次なる展開への布石だと考えている。
しかし、その予想を遊次はあっさりと裏切る。
「バトルフェイズ!
『妖義賊-戴火のプロメテ』で『練武の鉄拳 バクドウ』に攻撃!」
「なっ…!わずか攻撃力1000のモンスターで、攻撃力3000のバクドウに攻撃!?
どういうことだぁー!?」
実況者や観客達は遊次の行動に目を丸くしている。
チームの子供達やアキトも同様に驚く中、Nextの面々だけは静かにフィールドを見つめている。
小さな火の玉のモンスターは、バクドウに向かって浮遊すると、
その小さな拳をバクドウにぶつけるが、バクドウによって赤子の手をひねるように軽く受け止められ、
プロメテは反撃の拳を受け、一瞬にして破壊される。
しかし、遊次は笑顔を浮かべていた。
「P召喚された『妖義賊-舞蛇のキク』がフィールドにいる限り、
俺が受ける戦闘ダメージは、代わりに相手が受ける!」
「…小癪な真似を」
空蝉 LP6600 → 4600
「だが忘れてはいるまいな?永続魔法『練武覚醒-穿ツ時-』の効果を発動。
練武モンスターが相手モンスターを戦にて葬った時、
相手フィールドのカードを1枚墓地へ送ることができる。
これ以上の追撃は許さぬ。『妖義賊-舞蛇のキク』を墓地へ」
バクドウが気合を入れてオーラを放つと、
フィールドのキクは吹き飛ばされ、そのままフィールドから消える。
一瞬、フィールドに静寂が訪れる。状況を未だ呑み込めていない者が多いためだ。
「えー…驚かされましたが、状況を整理しましょう!
神楽選手は舞蛇のキクの効果によって、戦闘ダメージを空蝉選手に反射させました。
しかし、空蝉選手の永続魔法によってキクがフィールドを離れ、
これ以上ダメージを反射させる戦術は取れないことになります。
2000のダメージは大きいですが、神楽選手はこのためだけにモンスターを展開したのでしょうか?
私のような凡人には、まだ腑に落ちないところです」
ここまでで遊次が得たメリットは、2000のダメージを与えたことだけだ。
大きなリソースを割いてその選択を取った遊次の行動を、多くの観客は理解していなかった。
「(その2000が超でけーんだよ。
まずはこれでいい。1歩ずつ、やれることをやるだけだ)」
遊次は実況に対して頭の中で言葉を返す。これも全て想定通りのようだ。
遊次の視点からは、空蝉の伏せカードが、更なる練武をデッキから呼び寄せる効果だと知っている。
その上で最大限ダメージを与えながら、次に繋げることを選んだのだろう。
「俺はこれでバトルフェイズを終了する。
俺はフィールドに残った、『妖義賊-助太刀のサルバトーレ』と
『練武の迅脚 ソウジン』でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
「エクシーズ召喚!再び現れよ『妖義賊-怪盗ルパン』!」
■妖義賊-怪盗ルパン
エクシーズモンスター
ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500
レベル4モンスター×2
元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。
②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。
自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動する。そのカードを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
前のターン破壊されたルパンが、華麗にフィールドに舞い戻る。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC
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「怪盗ルパンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、
相手モンスター1体を、効果を無効にして奪う!
『練武の鉄拳 バクドウ』の効果を無効にして、そのコントロールを得るぜ」
ルパンが白いマントを翻しバクドウのもとへ瞬間移動すると、
マントを覆い被せ、その直後、2体とも遊次のフィールドへ移動する。
「効果を無効化したことで、デュアルによって得た効果も無効化されて、
攻撃力も元に戻る。だからバクドウは守備表示に変えさせてもらうぜ」
「なるほど!破壊できないなら奪えばいい!
これによって空蝉選手は強力なモンスターを奪われ、フィールドはガラ空き!
これを見越していたからこそ、先ほどは可能な限りダメージを与えるプレイを優先したのですね!」
実況の多口は納得したような口ぶりだが、
空蝉は目を細め、遊次のプレイにどこか違和感をおぼえていた。
「永続魔法『妖義賊の連携陣』の効果で、
相手から奪ったカードがある限り、俺のモンスターの守備力は倍になる!
これでちょっとやそっとじゃ突破できねえぜ」
妖義賊-怪盗ルパン DEF3000
練武の鉄拳 バクドウ DEF3400
「(徹底的なまでに守備を固めるか。
それに、先ほど拙僧に与えたダメージ…あやつ、何か図っておるな)」
「俺はカードを1枚伏せる。さらに手札から『一攫千金の予告状』発動!」
■一攫千金の予告状
通常魔法
①:このカードは発動後、墓地に送られる。
このカードの発動後2回目の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。
②:自分の手札が1枚以下で、このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
自分はデッキから3枚ドローする。
「このカードは予告状だ。発動した時点では何も起きねえ。
だが、墓地から除外された時に効果が発動する。そんで、それは"今"だ。
怪盗ルパンのもう1つの効果発動!
このカードが相手から奪ったカードを素材にしてる時、墓地の予告状を除外できる!
『一攫千金の予告状』を除外!」
「除外された『一攫千金の予告状』の効果発動。
自分の手札が1枚以下の時、カードを3枚ドローできる!」
遊次の1枚の手札は一気に4枚にまで増えた。
「俺はこれでターンエンドだ」
エンド宣言時、狙いすましていたかのように空蝉が声を上げる。
「エンドフェイズ時、罠カード『練武顕現』を発動。
自分フィールドにモンスターがいない時、
デッキから『練武』モンスターを特殊召喚する」
■練武顕現
通常罠
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキから「練武」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは再度召喚した状態となる。
②:墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「練武」モンスター1体を墓地に送る。
「降臨せよ、『練武の神戒 ゴウジュ』」
瞬間、空から黒い何かが空蝉の目の前に降り立ち、大地が大きくひび割れる。
ひび割れた地から立ち上がった"それ"は、他の練武モンスターとは明らかに異質だった。
全身は漆黒で覆われ、頭部から足先まで赤い螺髪状の突起が等間隔に浮き出ている。
目は妖しく赤く光り、生気を感じさせない。人間とは異なる気配を放っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/DXpimjq
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「この効果で特殊召喚されたモンスターは、再度召喚された状態となる」
ゴウジュは紫色の覇気を放つと、獣のような前傾姿勢で静止している。
「コイツが…アンタの切り札ってわけか」
その異質さと、レベル8の上級モンスターであることから、
これこそが空蝉にとって最も強力なモンスターであることを直感した。
--------------------------------------------------
【遊次】
LP6300 手札:4(儀式の予告状)
①妖義賊-怪盗ルパン DEF3000
②練武の鉄拳 バクドウ DEF3400
伏せカード:2(練武掌波動)
永続魔法:妖義賊の連携陣、練武の障壁
Pゾーン:妖義賊-美巧のアカホシ
【空蝉】
LP4600 手札:1
①練武の神戒 ゴウジュ ATK2500
フィールド魔法:岩峰の修行場
永続魔法:練武覚醒-穿ツ時-
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「空蝉選手、最後に新たな練武モンスターを呼び出しました!
このモンスターも他の練武と同様、『トリプル』なのでしょうか!
すでに罠カードによって再度召喚されています。
条件さえ満たせば、強力な奥の手が発揮されると思われます…!」
多口は現れたモンスターに視線を奪われ、畏怖の混じった声色で実況する。
遊次はデュエルディスクによって現れたモンスターの効果を把握し、次なる手を模索している。
「なんだよあのヤベー奴…!大丈夫なのかよ…」
ゴウジュの姿を見てリアムは本能的な恐怖をおぼえる。
「それに厄介なのは、練武モンスターを守るフィールド魔法ですね。
あれがある限りモンスターは破壊できず、即ち直接攻撃も敵わない。
空蝉さんのライフを削ることは難しいでしょう」
治はノートを見つめながら、冷静に状況を分析する。
「いや、もしかすりゃどかせるかもしれないよ。
その厄介なフィールド魔法をね」
隣のダニエラは治を横目に自信ありげな表情を見せる。
「『爆炎の予告状』か。1ターン目に発動されてから、
結局使いどころを失って、今の今まで墓地で放置されてるよな。
次の遊次のターンで2ターン経ったことになる」
ドモンもダニエラの言葉の意味に気付いたようだ。
治もその意味をすぐに理解し、はっとした表情をする。
しかし、すぐに新たな疑問が沸き上がったようだ。
「爆炎の予告状は、墓地から除外された時に相手フィールドのカードを全て破壊する効果ですよね。
しかし、フィールド魔法がある限り練武モンスターは破壊されず、
フィールド魔法もデュアルモンスターがいる限り、相手の効果で破壊されませんよ。
それでは、予告状を発動しても意味がないのでは?」
「でも逆に、フィールド魔法さえどうにかできれば、破壊はできるってことだよね?
そのための布石はもう打ってあるよ」
その疑問の答えのヒントを灯はほのめかす。
治は自分自身で答えに辿り着きたいはずだ。それを察してあくまでヒントに留めている。
「…!永続魔法『妖義賊の連携陣』ですね!
あのカードは相手のカードを破壊せず、そのまま奪うことができます。
次のターン、その効果でフィールド魔法を奪い、墓地の爆炎の予告状を除外すれば…」
「あのおじさんのカードはみーんな、どっかーーん!だね!」
ランランが目を輝かせながら治の言葉の続きを体いっぱいに表現する。
「遊次が防御寄りの構えにしてるのも、
予告状発動まで耐え抜くためと考えりゃ合点がいく。
それさえ決まりゃ、勝負は見えたようなもんだ」
怜央は遊次を見据える。
遊次はすでに勝利のためのルートを描いている。
これまでのデュエルでもその道が正しいことを証明してきた。
その積み重ねから、すでにNextの3人は彼の勝利を疑っていなかった。
「拙僧のターン、ドロー。
手札から『練武の鉄壁 ガンセイ』を召喚」
空蝉のターンが幕を開ける。
■練武の鉄壁 ガンセイ
デュアル/効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1400 守備力1800
①:このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。
②:フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●自分の墓地に「練武」モンスターが3体以上存在する場合に発動できる。
このカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは以下の効果を得る。
●このカードの攻撃力は元の数値に戻り、このカードの元々の攻撃力・守備力は倍になる。
●このカードの召喚時に発動できる。相手の墓地のカードを全てデッキに戻す。
●攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。
銀色の鎖帷子に身を包んだ巨体の屈強な男が姿を現す。
両腕には木の盾を装着している。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3GiY12Q
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
遊次がそのモンスターの効果を、デュエルディスクで読むと、
はっとした顔をする。その瞬間、自らのデュエルディスクに手を伸ばす。
「怪盗ルパンの効果発動!相手から奪ったモンスターを素材としている時、
墓地の予告状を除外できる!爆炎の予告状を除外!」
「えっ…!なんでここで…」
観客席のトーマスが驚きの声を上げる。
ドモン達の見立てでは、次のターン、
相手のフィールド魔法を奪って相手モンスターの耐性をなくした後、
爆炎の予告状で相手フィールドを一気に爆破する想定だった。
しかしその予想がすぐに裏切られてしまう。
「(このままじゃ、フィールド魔法と永続魔法は破壊できるけど、
肝心のゴウジュがフィールド魔法に守られちゃう。
遊次がその選択をするってことは、今召喚されたモンスターに"何か"がある)
灯は静かに遊次の思惑をはかる。爆炎の予告状によってフィールド魔法は破壊されるものの、
フィールド魔法自体は再度召喚されたデュアルモンスターを守る効果がある。
これでは空蝉の切り札を倒すに至らず、致命傷にはならないように思える。
しかし、それでもその選択を取ることに意味があるはずだ。
「除外された爆炎の予告状の効果発動!相手フィールドのカードを全て破壊する!」
フィールドを爆ぜる炎が迸る。
空蝉のフィールド魔法と永続魔法「練武覚醒-穿ツ時-」が割れ、
先ほど召喚されたガンセイも雄叫びを上げ、破壊される。
炎が消えると、聳え立っていた岩肌は消え、景色はスタジアムに戻っていた。
そこには漆黒の肉体を持つゴウジュのみが妖しく立っていた。
「神楽選手、ここで焦った様子で予告状を発動しました!
3枚のカードを破壊したものの、切り札たるゴウジュは健在です!」
「反応が速いな。ガンセイは3度目の召喚に成功した時、
相手の墓地のカードを全てデッキに戻す効果を持つ。
即ち、時を待っていても予告状はデッキへと戻る運命であった」
「あぁ。ガンセイがデュアルしちまったら、フィールド魔法の効果で破壊もできねえ。
だから、再度召喚される前に破壊するのが、一番効果的ってわけだ」
観客達は遊次の意図をそこではじめて理解した。
ガンセイが3度目の召喚を行えば、墓地の予告状カードはデッキへと戻る。
自分のターンに空蝉のフィールドを全壊させるプランは潰えたと考えた遊次は、
まだガンセイが再召喚されておらず、耐性を得ていない今、予告状の効果を使用したのだ。
やむを得なかったが故の行動であるが、空蝉に重い一撃を与えたのは事実だ。
「でも、3枚もカードを破壊されてんのに、ヘッチャラってツラだな」
空蝉は顔色一つ変えず、凛と立っている。
遊次はその表情から"まだ何かある"と思わずにはいられなかった。
「左様。そなたの一手は拙僧を崩すに至らず。
手札から『奈落の修行場』を発動!」
■奈落の修行場
フィールド魔法
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの再度召喚されたデュアルモンスターは、戦闘で破壊されず、
自分のデュアルモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
②:自分の墓地の「練武」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは再度召喚した状態となる。
③:自分のデュアルモンスターが攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
エンドフェイズまで攻撃モンスターの元々の攻撃力の半分、攻撃力を下げることで、
そのモンスターは続けて攻撃できる。
青々とした空の下の岩峰は消え、空は厚い赤黒い雲に閉ざされる。
地面は黒く焦げた岩で覆われ、無数の裂け目から赤く光る熱が漏れている。
巨大な石柱が不規則に並び、鎖が垂れ下がった鉄製の台座や、
崩れかけた石段が各所に配置されている。
修行に使用されると思われる数々の道具には、血の滲んだ跡が見られる。
空気は乾いて重く、足元の岩には焼け焦げた痕が点在している。
「別の修行場があったのか。…そういうことかよ」
遊次は修行場の効果から、これから起こることを予期した。
しかし、すでにそれを止める手段は持ち合わせていなかった。
「奈落の修行場の効果発動。墓地の練武を1体、デュアル状態で特殊召喚できる。
甦れ、『練武の鉄壁 ガンセイ』」
再びフィールドに現れたガンセイが雄叫びを上げると、周囲に衝撃が走る。
「しかし、再召喚しただけでは、我が練武は力を得ることはできぬ。
ガンセイは数多の屍を乗り越えた果てに強くなるのだ。
墓地の罠カード『練武顕現』を除外し、効果発動。
デッキから練武を1体墓地へ送ることができる。
『練武の豪拳 リョウエン』を墓地へ送る」
「そして、『練武の鉄壁 ガンセイ』の効果を発動!
自分の墓地に『練武』モンスターが3体以上存在する場合、
このカードは3度目の召喚を行うことができる!」
「もうトリプルってわけか…」
すでに3度召喚された練武の真価を知っている遊次は身構える。
ガンセイは強く雄叫びをあげ、右足を踏みしめると、大地にヒビが入る。
「3度召喚されたガンセイの攻守は倍となる」
練武の鉄壁 ガンセイ ATK2800
「さらに、召喚時効果発動!相手の墓地のカードを全てデッキに戻す」
遊次は墓地のカードを全てデッキに戻す。
これによって墓地アドバンテージも封じられたこととなる。
「いざ参らん。バトルフェイズ。
『練武の神戒 ゴウジュ』で怪盗ルパンに攻撃!」
「空蝉選手、さっそく攻撃を仕掛けたァ!
しかし神楽選手のモンスターは永続魔法により、守備力が倍となっている!
この攻撃ではルパンは突破できないはずだ!」
ゴウジュは不規則な動きで鞭のように腕をしならせ、ルパンに攻撃をしかけるが、
ルパンはそれをマントで受け止める。
「奈落の修行場の効果により、デュアルモンスターの戦闘で発生する拙僧へのダメージは0となる。
そしてこのダメージステップ終了時、奈落の修行場の効果発動。
攻撃したモンスターは、自身の元々の攻撃力の半分、攻撃力を下げ、続けて攻撃可能。
ゴウジュの攻撃力を半分とし、ルパンへ更なる追撃!」
練武の神戒 ゴウジュ ATK1350
ゴウジュは鞭のようにしなやかに足を振るいルパンに攻撃するも、再び受け止められる。
「一見無駄な攻撃に見えるけど、これもまた、3回目の召喚のための修行なんだ…」
その光景から、灯は空蝉の最初のターンにバクドウが仕掛けた連続攻撃を思い出した。
練武モンスターは鍛錬を積むことで、3度目の召喚を可能とするコンセプト。
これもその修行の一環なのだ。
「そして奈落の修行場の効果は何度でも使用可能。
ゴウジュの攻撃力を元々の攻撃力の半分下げ…再びルパンへ追撃!」
練武の神戒 ゴウジュ ATK0
ついに攻撃力を全て失ったゴウジュが腕を伸ばしてルパンへ迫るが、
力が弱まっている分、ルパンは簡単に攻撃をはらう。
その時、遊次がゴウジュへ送る視線は更に強まった。何かを覚悟したようだ。
「この瞬間、『練武の神戒 ゴウジュ』の効果が発動する!
このモンスターが攻撃力0の状態で相手モンスターに攻撃した時、3度目の召喚を行うことができる!」
「さらにダメージステップ終了時、再び奈落の修行場の効果を発動。
攻撃力を元々の攻撃力の半分下げ、相手モンスターに追撃できる」
ゴウジュは生気のない目で口を大きく開き、空気を一気に吸い込む。
そして体から紫色の瘴気を放つと、不気味な声と共にそれを一気に開放する。
「奈落の修行場の効果により、攻撃力は半分となり、再び攻撃が可能。しかし0を半分にしても0のままだ」
「そしてゴウジュの3度目の召喚時、下がっていた攻撃力は元に戻る」
練武の神戒 ゴウジュ ATK2700
「ゴウジュでルパンへ攻撃!」
「ついに空蝉選手の切り札が"トリプル"を果たしましたァ!
しかし、この攻撃もまた、怪盗ルパンの守備力には及びません!」
「このカードが戦闘を行う攻撃宣言時、3度召喚されたゴウジュの効果を発動。
1ターンに1度、このモンスターの攻撃宣言時、
相手の表側のカードを全て、手札に戻す!」
「そんなっ…!」
遊次の高い守備を無為にする強力な効果に、灯は目を見開く。
■練武の神戒 ゴウジュ
デュアル/効果モンスター
レベル8/闇/戦士/攻撃力2700 守備力1100
①:このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。
②:フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●攻撃力0のこのカードが相手モンスターに攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
このカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。
その場合このカードは以下の効果を得る。
●このカードの攻撃力は元々の数値に戻る。
●このカードは相手の効果を受けない。
●1ターンに1度、自分の「練武」モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。
相手の表側カードを全て持ち主の手札に戻す。
●1ターンに1度、自分の「練武」モンスターを対象とするカードの効果、
または「練武」カードを破壊する効果が発動した場合に発動できる。
その効果を無効にして破壊する。
ゴウジュは掌から紫色の瘴気を放つと、
遊次のフィールドのルパンとバクドウは呑み込まれ、苦しむようにしてフィールドから消える。
ルパンはEXデッキへと戻り、
さらにPゾーンのアカホシ、永続魔法「妖義賊の連携陣」も遊次の手札に戻る。
遊次が奪っていたバクドウと永続魔法「練武の障壁」は、持ち主である空蝉の手札に戻った。
「なんということでしょうかぁ!神楽選手のフィールドからモンスターが消え去ったぁ!
神楽選手のモンスターが手札に戻ったことで、バトルは巻き戻され、再び攻撃宣言が可能!
さらに、ガンセイも攻撃力を半分下げることで、2度目の攻撃が可能です!
大ダメージは避けられない!」
遊次のフィールドが空いたことで、ゴウジュと、攻撃力が倍加しているガンセイの直接攻撃が可能。
さらにフィールド魔法によって、ガンセイは攻撃力を半分にして再攻撃が可能。
このまま全ての攻撃を受ければ遊次のライフは尽きる。
「ま、まずいよ…。これじゃ遊次さんが…」
トーマスが祈るように両手を握りしめる。
「希望があるとすれば、遊次さんの伏せカード…」
星弥は存在する可能性を見逃さず、希望を見出している。
「戦闘は巻き戻る。『練武の神戒 ゴウジュ』でそなたに直接攻撃!」
運命の瞬間、観客達は固唾を飲む。
「リバースカードオープン!『妖義賊の見参』!
デッキから妖義賊モンスターを呼び出す!
来い!『妖義賊-剛腕のナンゴウ』!」
■妖義賊-剛腕のナンゴウ
ペンデュラムモンスター
レベル6/地/獣戦士/攻撃力2400 守備力1900 スケール2
【P効果】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、1度のバトルフェイズで2回攻撃できる。
【モンスター効果】
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがフィールドに存在する限り、
自分の「ミスティックラン」モンスターは戦闘で破壊されない。
②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在し、
このカード以外の自分の「ミスティックラン」モンスターが
戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。
このカードをリリースし、そのモンスターの攻撃力を2400アップする。
風と共に、フィールドに唐傘を持った虎の頭のモンスターが見参する。守備表示だ。
威風堂々たるその姿を見た子供達は、ぱっと笑顔になる。
「『妖義賊の見参』の発動時、相手から奪ったカードが俺のフィールドにあれば、
デッキから妖義賊カード1枚を手札に加えられる。
『妖義賊-雲龍のリヘイ』を手札に加えるぜ」
遊次のフィールドには、空蝉の墓地から奪った「練武掌波動」が伏せられている。
ゴウジュの効果で手札に戻ったのは表側のカードのみ。
かろうじて相手から奪った伏せカードが残っているため、この追加効果が使用可能だ。
「ゴウジュの俺のカードを手札に戻す効果は1ターンに1度だよな。
つまり、こっからはモンスター同士の真っ向勝負ってわけだ。
だが、特殊召喚されたナンゴウは、戦闘で破壊されねえ。
つまり、アンタはもうこれ以上手出しできねえってことだ」
遊次の頬に汗が流れる。
空蝉も目を細め、少し悔しさを滲ませる。
強力な効果を持つモンスターを召喚し、遊次を追い詰めたものの、
結果的に遊次のライフに傷をつけることすら叶わなかったからだ。
「…致し方無し。バトルを終了する。
先ほど手札に戻って来た永続魔法『練武の障壁』を発動させてもらう。
これにより、拙僧のフィールド魔法は効果の対象にならぬ」
「さらに『練武の障壁』のもう1つの効果を発動する。
拙僧のフィールドに再度召喚された練武モンスターがいる時、
相手のモンスターを1体、葬り去ることができる。
そなたの『剛腕のナンゴウ』を破壊!」
空蝉のフィールドから音波のような空間の揺らぎが放たれ、ナンゴウは破壊される。
「遊次…モンスターが1人もいないよ。大丈夫なの…?」
観客席のミオは熊のぬいぐるみを強く抱きしめ、心配そうに呟く。
灯は大丈夫だと答えたかったが、今の盤面から、そう断言することはできなかった。
イーサンと怜央も同じようだ。ただ黙ってフィールドを見つめることしかできずにいた。
「拙僧はこれにてターンエンド」
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【遊次】
LP6300 手札:7(儀式の予告状、妖義賊-美巧のアカホシ、妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊の連携陣)
伏せカード:1(練武掌波動)
【空蝉】
LP4600 手札:1(練武の鉄拳 バクドウ)
①練武の神戒 ゴウジュ ATK2700
②練武の鉄壁 ガンセイ ATK2800
フィールド魔法:奈落の修行場
永続魔法:練武の障壁
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「『練武の神戒 ゴウジュ』は、練武モンスターを対象とする効果、
または練武カードを破壊する効果を1ターンに1度、無効にすることが可能。
さらに、ゴウジュ自身は相手の効果を一切受け付けぬ」
「そして『練武の鉄壁 ガンセイ』は、攻撃可能な相手モンスターに攻撃を強制させる効果を持つ。
それは即ち、再びゴウジュの効果によって、
そなたのモンスターは全て手札へと還る運命にあるということだ」
「…神楽選手にとって、あまりにも絶望的な状況です…!
空蝉選手のフィールド魔法は永続魔法によって効果の対象とならず、
フィールド魔法によって、モンスターは戦闘で破壊されません。
さらにゴウジュによって、練武カードはさらに1度守られます。まさしく鉄壁!」
「攻撃を強制するガンセイがいる以上、
神楽選手の攻撃表示モンスターは必ず攻撃しなければなりません。
しかしその先には、表側カードを全て手札に戻すゴウジュの恐るべき能力が待ち受けています。
モンスターを守備表示にすれば戦闘を回避できますが、
結局、次の空蝉選手の攻撃時に同じ悲劇が起きるだけです…!」
実況の多口は、空蝉の敷いたフィールドの絶望感を余すことなく解説してゆく。
「空蝉選手のフィールドを崩すしか強制攻撃から逃れる術はなく、
しかし空蝉選手は何重にも敷かれた耐性によって、揺るぎないフィールドを誇っています。
そして最も厄介なゴウジュは、カード効果を受けない!
言いたくはありませんが…神楽選手、万事休すかもしれませんッ…!」
この状況は、遊次のデッキを知っており、デュエルに関する見識が深いNextの3人でさえも、
簡単に対策を打ち出すことはできていなかった。まさしく「絶望」。
遊次は目の前の異形の姿をしたゴウジュを見つめていた。
そして、無意識に拳を強く握っている空蝉にも視線を向け、言葉を放つ。
「アンタのモンスターから、強い悲しみと…怒りを感じるぜ。
でもその怒りは、何かに向けたものってより…アンタ自身に向いてるように感じる」
「…やはり、感性だけは鋭いようだな」
空蝉は遊次の言葉を暗に肯定した。
空蝉が自分自身に怒りを抱いているという遊次の感覚は間違っていないようだ。
「アンタが欲望とか技術を憎むようになったのも、何か原因があるんだろ。
何もねえのに急にそんなことを思うわけねえからな」
空蝉の表情は変わらないが、彼の滲ませる怒りがより強くなったように遊次は感じた。
「聞かせてくれねえか、アンタの願いの原点をよ。
純粋に知りてえんだ。なんでアンタがそうなっちまったのか。
デュエルをしてれば、モンスターを通して自然と相手の心が伝わってくるんだよ。
聞かずにはいられねえんだ。
アンタと、デュエルで"魂の会話"をしたいからさ」
遊次は真っ直ぐと空蝉を見据える。
「…よかろう。そなたの瞳に宿る意思に偽りはない。
その純朴さに免じて…語ろうではないか。
拙僧が真実に辿り着くまでの道筋を」
考えをぶつけることはあれど、遊次は空蝉の考えをあしらったりはしなかった。
ここまで空蝉の考えに真っ向から向き合ってくれる者は多くなかっただろう。
だからこそ、空蝉も遊次にぶつけたくなったのだ。
これはまさしく、彼にとって「禅問答」であった。
「拙僧はその昔、技術者であった」
「…技術を憎むアンタが?」
「左様。かつての拙僧は、今と違い、
技術こそが未来を創ると信じて疑わなかった。
しかし、昔から変わらぬこともある。
それは、自然を愛する心だ」
空蝉の脳裏に、子供の頃の記憶が蘇る。
「山育ち故、拙僧は幼少から自然と共に暮らした。
木々や動物…それらの織り成す神秘の空間に身を置くことこそ、
拙僧にとって極上の至福であった。
言葉を交わさずとも、彼らと意思を交わすことができた。
それが何とも心地よく、拙僧とは切っても切り離せぬ時間であった」
空蝉は、緑の生い茂る森で、鹿や鳥と戯れる日々を思い出す。
「だが、時代が経つにつれ、自然はその姿を変えていった。
人の手によって森林が破壊されることもある。
しかし逆に、人の手が入らねば、
草木が枯れ、森は暗く閉ざされ、命の循環すら滞ることもあるのだ。
拙僧が暮らした森はまさしく、これが原因で崩壊した」
青年になった空蝉は、かつて自分が足しげく通った森に再び足を踏み入れた。
しかし、草はまばらに枯れ、地面は乾き、かつて賑やかだった鳥の声も聞こえない。
木々は鬱蒼と茂り、陽の光すら差し込まず、森は重苦しい沈黙に包まれていた。
「かつて共に生きた木々や動物は、静かに、しかし確かに…命を失いつつあった。
無力感が込み上げた。人々は何をやっているのだと。
何故こうなるまで森を放っておいたのだと」
空蝉は当時の怒りを思い出し、拳を強く握る。
遊次も、そして観客達も、今度は野次を飛ばさずに耳を傾けている。
彼の話に皆が興味があったというわけではないだろう。
しかし、自らの言葉1つで、荘厳な空気を壊す勇気ある者がこの場にいなかったのだ。
「拙僧は勉学には自信があった。
二度とあのような悲劇を招かぬためには…人々の力で森を守る必要があると考えた」
「拙僧はAI分野を専攻し、技術者となった。広大な森を人が保護するには限度がある。
拙僧は起業し、森が本来の姿を保てるよう、自律的に調整を行うシステムを構築した。
高度なAIを搭載したドローンによって森林を常に監視し、
倒木の処理、下草の管理、動物の動向把握に至るまで、
全てAIが学習し、自動で行えるようにした」
「…すげーな。どんだけ難しいことか、俺には想像できねえ」
「人が保護することで初めて守ることのできる自然は数多存在する。
これこそが拙僧の使命なのだと感じていた。
やがて拙僧らはいくつもの森を保護してゆき、プロジェクトは順調そのものであった。
だが、とある森の保護を行う中で…悲劇は起きた」
「…悲劇?」
遊次が問うと、空蝉は重苦しく口を開く。
「保護対象だったその森は、かなり衰退が進んだ時点で、
我らに保護の依頼が持ち上がったものだった。
拙僧らが介入することで改善の兆しは見られたものの、
森の復活には遠く及ばぬ状況であった」
「AIは常に自ら学習し、その考えをアップデートしてゆく。
そうして最適な処置を施し、森を管理してきた。
しかし、それが思わぬ形で暴走したのだ。
効率を重視することを学習し続けたAIは…とある判断を下した。
《この森は不要だ》と」
「なっ…!どういうことだよ」
「《この森は既に多様性を失い、回復の見込みはない》。AIはそう判断した。
結果…AIドローンはその森の木々や動物を…殲滅し始めた」
空蝉は苦しそうに俯き、目を瞑る。思い出すのもつらい光景なのだろう。
「我々は異変を察知し森に向かったが、すでに手遅れであった。
森は燃え上がり…一夜にして全焼した」
空蝉の脳裏に、当時の記憶が鮮明に蘇る。
真っ赤な炎に包まれる森を見た空蝉は、無我夢中で森の中へと入っていった。
そこには動物達の無惨な姿と、倒れゆく森の木々があった。
炎の中にも関わらず、絶望に浸り、膝をつき、泣き叫んだ。
空蝉を追ってかけつけた同僚によって森から救出されたものの、
その傷跡は未だに彼の顔に残っている。
「知っているか。25年前…この町にも、かつて雄大な森があったことを」
「いや…知らないな。…まさか、その森が…?」
「それこそ、かつて拙僧の過ちによって破壊され尽くした森だ。
その地には後にビルが経ち、今や森は見る影もない」
「ビル…」
遊次の脳裏に、ふとある記憶が蘇る。
それは今日この会場に向かう前に見た空蝉の姿だ。
数珠を持ち、ビル群一帯に向かって深々と頭を下げていた。
「(あれはもしかして…燃えちまった森があった場所に、いのりを捧げてたのか…)」
「機械は所詮機械。自然を愛する心を持たぬ。
しかし、そのような存在を我らは盲信し、あろうことか更なる力を与えた。
その結果があの惨状だ」
「拙僧はAIの責任者として懲役の罰を受けた。
そして、檻の中で拙僧は悟った。
あの業火こそ…拙僧の、そして人間の罪。
あの惨劇は、人間の独り善がりな欲望によって引き起こされたのだと」
技術によって愛する自然が滅ぼされてしまった過去。
そしてそれは空蝉自身が自然を保護しようとした顛末だった。
しかし遊次はまだ腑に落ちてはいなかった。
「…そのことが今のアンタに繋がってるんだな。
でも、欲望ってのは何のことだ?
アンタはただ自然を守ろうとしてただけだろ」
「否、それこそが欲望なのだ。
森が時と共に滅びゆくのもまた自然の摂理。
それを止めようとすることは、ただ自らが望む形を保とうとする人の業なり。
拙僧の考えは最初から誤っていたのだ」
遊次はその言葉を否定できず、複雑な表情をする。
少なくともこれまでの彼の言葉は、
長きに渡って自問自答を繰り返した結果辿り着いたものだからだ。
「技術は、人の意に反して破滅をもたらすまでに至った。
ここまで歯止めなく力を増大させた原因は、ひとえに人の欲だ」
「欲は破滅をもたらす。
故に、誰かがこの欲望の連鎖を断たねばならぬのだ。
それは、欲に打ち勝ち、自然と同化した拙僧の使命!」
会場の観客達は彼の言葉を聞いていたが、
同情はすれど、共感する者はほとんどいなかった。
しかし、その人々の視線は、空蝉にあることを痛感させた。
これは自分にしか果たせない使命なのだと。
「だからこの大会で優勝して、技術を捨てさせようってのか。
でもよ…やっぱ納得いかねえな」
遊次の中で頭の中が整理されてゆき、明確な言葉を返すことができるようになったようだ。
「技術で救われてる人だって大勢いる。
それこそ、高いレベルの医療を受けなきゃ治せねえ病気もあるだろ。
そういう人はどうするんだよ」
「言ったであろう。時と共に滅びゆくのもまた自然の摂理。
消えゆく命を間延びさせる行為もまた、人のエゴである。
病に倒れたとしても、それが本来の生命の在り方だ」
空蝉の言葉を聞いた観客席の車椅子の青年「虹野譲」は、
強く握った拳で車椅子のアームレストを強く叩いた。
「そんなの…許されない」
譲は歯を食いしばり、怒りを滲ませる。
「…うっ…ゴホ…ゴホッ…!」
急に動いたためか、譲が苦しそうに咳込み、口元を手で押さえる。
近くの席の観客が心配そうに見つめている。
譲が口元を押さえていた掌を見つめると、そこには血が飛び散っていた。
「…アンタの気持ちはよーーくわかった!
でも、わかるのは気持ちだけだ!」
遊次の表情から迷いは一切消えた。
自分の中で答えが見つかったようだ。
そしてそれは、空蝉の思想を肯定するものではなかった。
「アンタがどう思おうが、世界は未来に進み続ける。
みんな今を生きて、"次"に向かって歩いてるんだよ。
それを元に戻そうとするなんて…」
「アンタ、欲深すぎんぜ」
遊次は真剣な眼差しで人差し指を空蝉に向ける。
「拙僧が…欲深いだと…!」
空蝉は心底驚き、同時に怒りも込み上げている。
今まで自分に向けてそんな言葉を放つ者はいなかったのだろう。
「俺はアンタに勝つ。
でも、ただ倒すだけってのは性に合わねえ。
俺の思いをアンタにぶつけて、アンタも全力でぶつかってくりゃあいい。
俺はそういうデュエルがしてえ!」
「…受けて立とう。拙僧のフィールドは揺るぎない。
我が練武を倒すことなど不可能である!」
空蝉は拳法のような構えで遊次に相対する。
遊次はデッキトップに指をかける。
「俺のターン…ドロー!」
「『妖義賊-忍びのイルチメ』の効果発動!
俺のフィールドに妖義賊がいる時、手札から特殊召喚できる!」
■妖義賊-忍びのイルチメ
効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1500 守備力1200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カードを1枚捨てて発動できる。
相手の手札を確認し、その中からレベル4以下のモンスター1体を選ぶ。
そのモンスターを効果を無効化し、自分フィールドに特殊召喚する。
現れたのは紫色の忍び装束を身に纏い、長い髪を後ろで束ねたくノ一だ。
右手にはクナイを持っている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/xBnMfae
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「イルチメの効果発動。手札の予告状を捨てて、
相手の手札のレベル4以下のモンスターを、俺のフィールドに特殊召喚できる。
手札の『儀式の予告状』を捨てて、
アンタの手札の『練武の鉄拳 バクドウ』をいただくぜ」
「(…拙僧のゴウジュの効果で、あやつのフィールドから手札に戻したことを逆手に取ったか)」
バクドウは前のターン、ゴウジュの効果で遊次のフィールドから空蝉の手札に戻ったカードだ。
逆に言えば、ゴウジュの効果で手札に戻さなければ、
イルチメの効果でバクドウが奪われることもなかったことになる。
遊次のフィールドに、鉄球ほどもある拳を持つ仁王像のような顔の屈強な戦士が現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3igThBl
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「俺のフィールドに練武がいることで、発動できるカードがある。
リバースカードオープン!『練武掌波動』!
俺のフィールドに通常モンスターが存在する場合、
相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」
デュアルモンスターは再度召喚しない限り通常モンスターとして扱われるため、この効果が使用可能だ。
遊次のフィールドのバクドウが掌から衝撃波を放つ。
「小癪!『練武の神戒 ゴウジュ』の効果発動!
1ターンに1度、練武カードを破壊する効果を無効にする!」
バクドウが放った衝撃波を、ゴウジュは片手を一振りするだけで打ち消す。
「『練武掌波動』が決まれば、
練武に戦闘耐性を付与するフィールド魔法と、
魔法・罠に対象耐性を付与する永続魔法を破壊できていましたが、
ゴウジュによって防がれてしまったぁ!
これにより、まだなおも練武モンスターは強力な耐性を持っています!」
フィールド魔法は永続魔法により対象耐性を持ち、
練武モンスターはフィールド魔法により戦闘耐性を持つ。
ゴウジュの効果を使わせてもなお、空蝉は2重の耐性を維持している。
だが、遊次の表情は少し明るさを増した。
「俺はスケール2の『妖義賊-雲龍のリヘイ』と、
スケール8の『妖義賊-美巧のアカホシ』をPスケールにセッティング!」
遊次の頭上に、龍の頭と鳳凰の頭を持つモンスターが浮かび上がる。
「『妖義賊-雲龍のリヘイ』のP効果を発動!
手札を1枚捨てて、墓地の予告状カードを除外できる。
『妖義賊の連携陣』を捨てて、墓地の『儀式の予告状』を除外!」
捨てられた永続魔法「妖義賊の連携陣」は、
EXデッキの表側・フィールド・墓地のカードを3枚デッキに戻して、
相手のカードを奪う効果だ。
しかし空蝉の永続魔法によって、永続魔法以外の魔法・罠は効果の対象にできないため、
練武モンスターに耐性を与えるフィールド魔法を除去することはできない。
また、練武モンスターを対象とする効果を無効化するゴウジュは、
すでに「練武掌波動」に対して1ターンに1度の効果を使用しているため、
「妖義賊の連携陣」によってモンスターを奪うことが可能だ。
しかし、ゴウジュは相手の効果を受けず、もう1体のガンセイを奪うのが関の山だ。
永続魔法のコストもばかにならない以上、決定打にはならないと判断し、
手札から捨てられたのだろう。
それは、他に有用なカードが手札に存在することも意味している。
「除外された儀式の予告状の効果発動!
このカードが墓地から除外された時、モンスターを生贄に捧げ、
手札・デッキから儀式召喚モンスターを儀式召喚できる!」
「儀式召喚っ!」
「ゴエモンだー!」
観客席の子供たちの表情は、間もなく現れるヒーローに心躍らせる。
「フィールドのイルチメとバクドウをリリースして、儀式召喚を執り行う!」
フィールドに2つの灯篭が現れ、指定された2体のモンスターが光へと消えると、
灯篭に2つの炎が灯る。
「桜吹雪の舞う中に、現れたるは荒野の義賊!
儀式召喚!来い、俺の切り札!『妖義賊-ゴエモン』!」
■妖義賊-ゴエモン
儀式モンスター
レベル7/地/戦士/攻撃力2500 守備力2000
「予告状」儀式魔法カードにより降臨。
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:元々の持ち主が相手となるカードが自分フィールドに存在する限り、
自分フィールドのモンスターは相手の効果の対象にならない。
②:相手の墓地のモンスター、または魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
モンスターカードの場合、そのカードを自分フィールドに特殊召喚し、
魔法・罠カードの場合、自分フィールドにセットする。
③:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをリリースして儀式召喚された場合、以下の効果を得る。
元々の持ち主が相手となる自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動する。
そのモンスターの元々の攻撃力分、自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力をアップする。
桜吹雪と共に現れたのは、大剣を携えた戦士のモンスター。
メタリックなボディは鉄の装甲で覆われており、鎧には赤の紋様が描かれている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/YnblaqH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「…意気揚々と攻撃表示とは。
ガンセイがいる限り、攻撃可能なモンスターは必ず攻撃しなければならない。
そしてその刹那、ゴウジュの効果によってそなたのモンスターは全て手札へと還る。
わかっておるのか」
「わかってるに決まってんだろ。それでも、攻撃表示だ」
遊次は毅然と答える。その声は自信に溢れていた。
「ゴエモンの効果発動!1ターンに1度、アンタの墓地からカードを奪う!
アンタのフィールド魔法『岩峰の修行場』を奪い、セットするぜ。
そして発動!」
フィールドに大きな岩の塔がいくつも現れる。
空蝉の発動しているフィールド魔法と交わり、2つの修行場が融合している。
「なんだと…?」
岩峰の修行場は、自分の練武モンスターに耐性を与え、
3度のモンスターへの攻撃を可能とする効果だ。
一見遊次にとって無価値に見えるフィールド魔法を奪ったことに、空蝉は一抹の不安を覚える。
「俺のPスケールは2~8。よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能!」
頭上の振り子が左右に揺れ、その中から1つの光が現れる。
「ペンデュラム召喚!EXデッキから現れろ!
『妖義賊-誘惑のカルメン』!」
■妖義賊-誘惑のカルメン
ペンデュラムモンスター
レベル5/闇/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900 スケール2
【P効果】
このカード名の①②のP効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースして発動できる。
デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。
②:相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを自分の手札に加える。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地のモンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
対象の自分の墓地の「ミスティックラン」モンスターを相手フィールドに特殊召喚し、
対象の相手フィールドのモンスターのコントロールを得る。
②:このカードが「ミスティックラン」モンスターの融合・S・X・L召喚の素材となった場合、
または「ミスティックラン」モンスターの儀式召喚のリリースとして使用された場合に発動できる。
EXデッキの表側表示のこのカードを手札に加える。
EXデッキの表側からEXモンスターゾーンに、ローブを纏った妖艶なモンスターが降り立つ。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dwkEFaw
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「誘惑のカルメンの効果発動!
俺の墓地のモンスターを1体、相手フィールドに特殊召喚することで、
アンタのフィールドのモンスターを1体奪うことができる。
俺の墓地のイルチメを渡して、『練武の鉄壁 ガンセイ』をいただくぜ!」
カルメンが妖艶な手つきでガンセイを誘惑すると、それに釣られ、遊次のフィールドへ移動する。
そして、くノ一のモンスター「忍びのイルチメ」が空蝉のフィールドへ特殊召喚される。
「アンタに、聞きたいことがある」
少し間が空いた後、ターンの途中、遊次はおもむろに言葉を紡ぐ。
「…よかろう」
真剣な遊次の表情から彼の強い意思を汲み取り、空蝉もそれを受け入れる。
「アンタ、自然が好きなんだろ。
自然を守りたいと思ったから、死ぬほど勉強して、技術者になったんだろ。
その時の気持ちはどこいっちまったんだよ」
遊次は、前を見据えながら真っ直ぐ空蝉に問う。
「…質問の意図を図りかねるな。自然を愛しているのは変わらぬ。
しかし、人の手を介して守るべきではないと説いておるのだ」
「そういうことじゃねえ。
アンタはなんで自然が好きなんだよ。
なんで守りたいと思ったんだ」
「…それは」
空蝉の脳裏に、幼い頃、森で過ごした時の記憶が蘇る。
「…美しかったからだ。
幼き頃、初めて鹿の親子が湧き水を飲むのを見た。
鮮やかな緑に光が差し込み、何ひとつ手を加えずとも、そこには完成された世界があった」
「そう!それだよ!!
綺麗だと思ったから守りたいんだろ!
その気持ちは、今も変わってねえだろ!」
空蝉は、たかが他人事にここまで熱情を込めて話す目の前の男に、
改めて不思議な感覚をおぼえた。
なぜ彼はこうも自分に無関係な物事に必死になれるのか。
心から疑問だった。故に、己の心をぶつけたいという"欲"に駆られる。
「…何が言いたい…!美しき森を愛する心は変わらぬ!故に…」
彼の熱量に引っ張られるように、空蝉も叫ぶように思いをぶつける。
彼が言葉を紡ごうとした時、遊次がそれを遮り、言葉を被せる。
「じゃあなんで、森を保護すんのを諦めちまうんだよ!」
「…は…?」
空蝉には彼の言葉の意味をすぐには理解できなかった。
「…何を言う!拙僧は美しき自然を守るために、
技術を、欲を、捨て去らねばならんと言っておるのだ!」
「でも!アンタが森を保護するのを諦めたら、
アンタの好きな美しい自然が、減ってくだろうが!
アンタはそれでいいのかって言ってんだ!」
空蝉はなおも食いかかる遊次に、呆れに近い感情を抱いた。
しかしそれと共に、今更何を蒸し返すのかと、
その先の彼の真意に耳を傾けずにはいられなかった。
「…致し方あるまい!
人が技術を捨てぬ限り、あの日のような惨劇は再びやってくる!
滅びゆくのもまた自然なり!それが世界の在るべき形なのだ!」
「いたしかたあるまいぃ!?
何十年も考えた結果がそれかよ!アンタよぉ、視野がせめーんだよ!」
遊次は声を裏返しながら指を突きつけ、空蝉に遠慮のない言葉をぶつける。
「ゆ、遊次…」
「何であんなに怒ってるんだ、アイツ…」
観客席の灯と怜央は露骨に困惑した表情をする。
彼が何故ここまで熱を込めて叫んでいるのか、灯達には理解できなかった。
他人の願いなど、はっきり言えば自分に関係のない話だ。
空蝉は遊次の倒すべき相手。
自分の願いを果たすためには、目の前の相手を倒すしかない。
自分が勝利することが前提条件である以上、
相手がどんな願いを抱いていようと、なんら関係はないのだ。
しかし、遊次はまるで自分事のように相手に魂をぶつける。
理解不能ではあるが…これこそが神楽遊次だ。
このモードに入った遊次は誰にも止められない。
それだけは確かだった。
「視野が…狭いだと…!?
禅の世界に身を置いたことのない小僧に、一体何がわかる!?」
空蝉もこれまでのような丁寧な言葉遣いを忘れ、
剥き出しの心を曝け出す。
「いーや、狭いね!
わかんねーなら、俺が今からわからせてやるよ!」
遊次はデュエルディスクに手を置き、勢いに任せてデュエルを続行する。
「ゴエモンの効果発動!
相手から奪ったモンスターを素材に儀式召喚されている時、
相手から奪ったモンスター1体をリリースすることで、
その元々の攻撃力分、俺の全てのモンスターの攻撃力をアップする!
今奪ったガンセイをリリースして、元々の攻撃力の1400、俺のモンスターの攻撃力を上げる!」
妖義賊-ゴエモン ATK3900
妖義賊-誘惑のカルメン ATK3400
桜吹雪と共に妖義賊達の攻撃力がアップする。
ただしカルメンは現在守備表示だ。
「…読めたぞ、そなたの考え。
我がゴウジュは、練武モンスターの戦闘時、相手の表側カードを全て手札に戻すことができる」
「しかし、それはあくまで拙僧の『練武』モンスターとの戦闘でのみ発動される効果。
今、拙僧のフィールドには、カルメンの効果で特殊召喚された『忍びのイルチメ』がいる。
つまり、そなたがイルチメに攻撃すれば、ゴウジュの効果でそなたのモンスターが手札に戻ることはない。
これがそなたの作戦であろう」
「しかし、ゴエモンでイルチメを攻撃したとて、
拙僧へのダメージは3400。ライフを削りきることはできぬ。
それがそなたの限界だ」
空蝉の言葉で、観客席の灯もはっとする。
このフィールドを見る限り、遊次には彼の言葉通りの狙いがあるとしか思えなかった。
「…やっぱ視野が狭いぜ、アンタ」
遊次は口角を上げ、手札のカードを1枚取り出す。
「手札から『妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル』の効果発動!
相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、
このカードを手札から捨てて、俺のモンスターと相手モンスターを入れ替える!」
■妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル
効果モンスター
レベル3/風/魔法使い/攻撃力700 守備力1200
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、
このカードを手札から捨て、自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体と、
相手モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター2体のコントロールを入れ替える。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:相手モンスターが自分の「ミスティックラン」モンスターまたは
元々の持ち主が相手となるモンスターと戦闘を行う攻撃宣言時、
墓地のこのカードを除外し、攻撃対象となったモンスター以外の
自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。
「なんだと…!
しかしゴウジュは相手の効果を受けぬ!奪うことなど不可能!」
「なんでゴウジュを奪うと思い込んでんだ?
俺は、アンタのフィールドのイルチメと…
俺のフィールドのゴエモンを入れ替える」
「えっ!?」
遊次の取った思いもよらぬ行動に灯は驚愕する。
遊次の前に、全身クリーム色にオレンジ色の水玉模様がついた服を着た少年のモンスターが現れる。
光をばら撒きながら宙を舞い、指先でイルチメとゴエモンに触れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ldmy2aw
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
少年が手を叩くと、そのモンスターの位置が一瞬にして入れ替わる。
「な、なぜだぁ!?神楽選手、せっかく攻撃力を上げたゴエモンを、相手に渡してしまったぁ!?」
「ただゴエモンでイルチメを攻撃するだけなら、
アンタの墓地からフィールド魔法を奪う必要ねーだろ。
俺の答えは、もっと先にある」
そう言うと遊次は、手札から1枚のカードをゆっくりと取り出す。
灯、イーサン、怜央、譲…その視線は1枚のカードに集中する。
「魔法カード発動。『死者蘇生』」
「死者…蘇生…」
長きデュエルモンスターズの歴史において、
数々のデュエリスト達を支えてきたカード。
ここにきてそのカードが、この戦いの終局を飾ることとなる。
「俺の墓地にモンスターはいねえ。
復活させるのは…アンタの墓地の『練武の鉄拳 バクドウ』だ」
遊次のフィールドにみたび、大きな拳を持つ屈強な戦士が現れる。
「気付いてるか?俺はまだ、通常召喚を残してる」
「まさか、そなたは…」
空蝉の中でも、少しずつ点と点が線で繋がり始めていた。
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【遊次】
LP6300 手札:1
①妖義賊-忍びのイルチメ ATK1500
②妖義賊-誘惑のカルメン DEF1900
③練武の鉄拳 バクドウ ATK1500
フィールド魔法:岩峰の修行場
Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-美巧のアカホシ
【空蝉】
LP4600 手札:0
①練武の神戒 ゴウジュ ATK2700
②妖義賊-ゴエモン ATK3900
フィールド魔法:奈落の修行場
永続魔法:練武の障壁
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「『練武の鉄拳 バクドウ』はデュアルモンスター。
1度召喚しただけじゃ通常モンスター扱いだが、もう1度召喚することで効果を得る。
バクドウを再度召喚だ!」
バクドウが気合を入れると、オレンジ色の覇気が放たれる。
その瞬間、空蝉は地に膝をつき、信じられないといった表情で、
目を見開き、拳を震わせる。
「バクドウを神楽選手がデュアルした瞬間、
空蝉選手が項垂れました…!まるで…敗北を悟ったかのように…!」
実況の多口や観客達には、まだその理由がわかっていなかった。
「…いつからだ。いつから、この光景を思い描いていた」
空蝉は地に視線を落としながら遊次に問う。
「最初のアンタのターンで罠カードが伏せられた時だ。
伏せられたカードは、そのターンにアンタが手札に加えた『練武顕現』だとわかる。
つまり、次の俺のターン、アンタが練武を呼び出すことは確定してたわけだ」
遊次が空蝉の問いに答え始める。
「アンタのフィールドは何重にも守られてて、簡単には突破できない状態だった。
だから俺は、アンタがどんなモンスターを呼び出そうが、
勝つことができるルートを見つけようとした。その答えが…これだ」
その瞬間、実況の多口は遊次の思い描いていた勝利のルートに気付き、瞬時に言語化する。
「練武モンスターはデュアルを超えたトリプルモンスター。3度の召喚が可能です。
バクドウの3度目の召喚の条件は、相手モンスターに2回以上攻撃すること。
そして…その土壌は既に整っています!」
遊次が空蝉の墓地から奪ったフィールド魔法「岩峰の修行場」。
それは、自分のデュアルモンスターを破壊から守り、
モンスターへの3度の攻撃を可能とする効果。
これこそ、バクドウの3度目の召喚の条件に必要なカードだった。
「そしてバクドウは、3度目の召喚が行われると、
そのターンに受けたダメージを相手に与える効果を得ます。
もしバクドウが空蝉選手のフィールドにいるゴエモンに連続攻撃し、
3度目の召喚で、そのダメージを全て空蝉選手に反射すれば…」
多口の言葉によって、観客達も次第に答えにたどり着いてゆく。
「お前の視野が広すぎるんだ、遊次…」
イーサンは遊次の勝利を確信し、小さな笑みを浮かべ、一言呟く。
「神楽遊次よ。示してくれ、そなたの答えを」
空蝉は立ち上がり、遊次にまっすぐと向かい合う。
「さっきアンタは、ゴエモンでイルチメに攻撃するのが俺の作戦だって読んだよな。
練武モンスター以外に攻撃すれば、ゴウジュの効果で俺のカードが手札に戻ることはねえからだ」
「…半分は正解だ。でも、半分だけだぜ。
ゴエモンでイルチメを攻撃しても、アンタのライフは削りきれねえ。
せっかくチャンスがあんなら、俺はそんな中途半端なマネはしねえ。
アンタのライフを、根こそぎ持っていきてえからな」
「俺からすりゃ、アンタの願いも同じなんだよ。
半分は合ってるかもしんねえ。でも、中途半端なんだよ!」
「…どういうことだ」
空蝉はただ遊次の言葉を受け止めようとする。
「技術が暴走しないようにしたい…それがアンタの思いだろ。
それはいいと思うぜ!絶対にやった方がいい!」
「でもよ…アンタが大好きな自然を守りたいって願いを、なんで諦めちまうんだよ!
滅びるのはしょうがねえなんて言って…向き合うことから逃げてるだけじゃねえか!」
遊次は肩をいからせたまま、空蝉を真っ直ぐに見据えていた。
口調は荒かったが、その瞳にはぶれのない確かな意志が宿っていた。
言葉ではなく、想いそのものをぶつけていた。
「拙僧が…逃げているだと…?」
「あぁそうだ!技術に向き合うのがこえーだけだ!
だから、本当は守りたいと思ってるくせに、森を保護する夢を諦めて、
勝手に技術を捨てるって方向に逃げてんだろうが!」
遊次の言葉を聞いた時、空蝉の中でかつての記憶がフラッシュバックする。
「(あの事件以来…拙僧は技術に触れることを拒んだ。
山へ戻り、そこで長きに渡って自然に触れ続ける内に…
これこそが本来あるべき人の営みであると考え始めた)」
「逃げた」という遊次の言葉を、空蝉はすぐに否定できなかった。
少なくともあの事件以来、技術から目を背け山に逃げ帰ったのは事実だ。
しかし、それも空蝉の長きに渡る葛藤の末の答えだ。
空蝉自身にそれを否定することはできない。
「だが…ならばどうすればいい!
技術の危険性に見て見ぬふりを続け、性懲りなくAIに森の保護を任せろと言うのか!」
「どっちもやればいい!もっと欲張れよ!!」
遊次の一言と共に、両者の間に風が吹き、
その間、一瞬の静寂が訪れる。
空蝉は雷に打たれたような感覚だった。
唖然として口を開いたまま体は静止し、言葉を返すことができなかった。
「アンタ、美しい森が好きなんだろ。これ以上減ってほしくねえんだろ。
じゃあ、森を守りながら、技術の暴走も防げばいい!
それだけじゃねえのか!」
「俺なら、やりたいことは全部やるし、ほしいもんは全部手に入れる!
アンタにもできるはずだ!でも、怖ぇから前に進めないだけなんだろ!」
遊次は声が掠れるほどに叫び、思いを伝える。
これほどまでに空蝉に熱い言葉を投げかけた者はいなかった。
だからこそ、心を打つ。
「…俺が言えんのはここまでだ。後はアンタ次第だぜ。
ま、そもそもアンタのことだからな。俺がでしゃばることじゃねえ」
空蝉は俯き、目を瞑る。
そして一言、静かに言葉を放つ。
「…なんと、欲深い男だ。
自然を守り、技術の暴走を止める…いかに険しい道か、わかっておるのか」
「まあ、簡単じゃねえだろうな。
でも、世界から技術をなくすよりは、よっぽど簡単だろうぜ」
遊次はあっけらかんと言い放つ。
「…フ、そうかもしれぬな」
(拙僧は、入り組んだ道を歩みすぎたのかもしれぬ。
答えは…さらなる"欲"の先にあったのだ)
空蝉は静かに笑った。まるで答えを得たかのように。
(無理難題を言ってのける…。しかし、あやつはそうは思っておらん。
真に諦めることを知らぬのだ。
それに奴自身…このデュエルで不可能を可能にしてみせた)
彼自身が今後どのような身の振り方をするかは、彼にしか決められないことだ。
しかし少なくとも、遊次の言葉が、デュエルが、前に進む後押しをしたことは間違いないだろう。
「行くぜ、バトルフェイズ!
『練武の鉄拳 バクドウ』で、アンタのフィールドのゴエモンに攻撃!」
遊次がデュエルを再開する。
観客たちは再びフィールドに注力し、この戦いの行く末を見守ろうとする。
「だが、攻撃力はゴエモンの方がはるかに高い!」
空蝉も覚悟したようにフィールドに向き直り、最後まで戦いを果たそうとする。
「フィールド魔法『岩峰の修行場』の効果で、デュアルモンスターは戦闘で破壊されない!」
「だが、ダメージは受けてもらう!」
拳を握り迫るバクドウに、ゴエモンが一太刀を浴びせる。
ゴエモンの攻撃力は3900。対するバクドウは1500。その差分のダメージを遊次が受ける。
「ぐあぁっ…!!」
遊次 LP6300 → 3900
「まだだ!フィールド魔法『岩峰の修行場』によって、
デュアルモンスターは相手モンスターに3回まで攻撃可能!
もう1回、バクドウでゴエモンに攻撃ッ!」
再びバクドウがゴエモンに迫るも、ゴエモンは飛び上がってそれを華麗にかわし、
上方からバクドウに一閃を浴びせる。
「ぐっ…!」
遊次 LP3900 → 1500
大きなダメージを受けながらも遊次は未だに立っている。
「アンタとのデュエル…楽しかったぜ、空蝉さん」
遊次は最後に、別れの挨拶のように、笑顔で空蝉に告げる。
「勝利は俺が頂いた!」
「バクドウが相手モンスターに2回以上攻撃したバトルフェイズ終了時、効果発動!
このモンスターは、3度目の召喚を行い、効果を得る!」
バクドウが雄たけびと共に力を開放する。
「そしてこの瞬間、バクドウの効果発動!
このターン、俺が受けたダメージを相手に与える!
俺が受けたダメージの合計は4800!アンタのライフを上回る!」
バクドウが掌を合わせると、両の掌の間に電気のようにエネルギーが迸る。
その姿を見つめながら、空蝉は考えを巡らせる。
「(あやつはこの戦いの序盤からすでに、拙僧のモンスターと撃ち合わず、
ライフを削る策を思い描いていた)」
「(デュエル、そして拙僧との問答においても…
あやつは我が想像を遥かに上回る答えを示してきた)」
空蝉は真っ直ぐと遊次を見つめ、最後の一言を告げる。
「見事だ、神楽遊次」
空蝉の言葉に、遊次はにやりと笑う。
「(あやつなら…この大会の果てに願いを掴めるやもしれん。
否、その想像すら超える"何か"を成し遂げる…そう確信して止まぬ)」
「…拙僧も、もっと欲張らねばならんな」
バクドウが掌からオレンジ色の電のような衝撃波を放ち、
その光は空蝉を飲み込んだ。
空蝉 LP4600 → 0
「ついに勝負が決しましたぁー!!
激戦を勝ち抜き3回戦へ駒を進めたのは、神楽遊次ィーー!!!」
会場は熱狂に包まれた。
灯は子供たちと手を合わせて喜び、イーサンは静かに笑みを浮かべている。
同じく戦いを見届けた怜央は、真剣な表情で考える。
「(遊次のヤツは絶対に決勝まで上がってくる。
俺はアイツをぶっ倒して…その先にある"願い"を掴む)」
「(今まで、ドブをすすりながら生きてきた。
それでも、俺はここまで這い上がった。ここから堕ちるわけにはいかねえ。
だから…立ち塞がるヤツは誰が相手でも潰す)」
怜央は対面の観客席のある人物を睨んでいた。
車椅子に乗った青年、「虹野譲」。次の怜央の対戦相手だ。
譲は手に持った1枚のモンスターカードを見つめていた。
そのモンスターは「ビックリボー」。彼にとって愛着のあるカードなのだろう。
「(僕は必ず勝つよ。君と一緒に)」
そして、彼の視線は対面にいる怜央へと向く。
お互いの鋭い視線がぶつかり合う。
「(僕の願いに比べれば…他のどんな願いも塵同然だ。
僕にはもう…後がないんだから)」
次なる戦いの火蓋は、すでに切られている。
第37話「禅問答」 完
ヴェルテクス・デュエリア 2回戦第3試合。
怜央と相対するは、車椅子の青年「虹野譲」。
譲が操るのは、炎属性と水属性が共存する「冽灼(れっしゃく)」デッキ。
ペンデュラム召喚によって大量のモンスターを展開するそのデッキは、
まさにペンデュラムそのものを体現していた。
炎と水…相対する2つの属性の饗宴が、
まるで歌い踊るかのように、怜央を翻弄する。
次回 第38話「紅と蒼の輪舞」
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