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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第22話:伸し掛かる天井

第22話:伸し掛かる天井 作:

Nextに怜央が加入し初仕事となった初日、「船頭」という男の依頼によって
本日中に彼の母親の店を襲ったチームを止めなければならなくなった。
14万サークというかつてない大金が懸っており、
子供達の居場所を作るための1歩目として必ず成功させなければならない。

そのチームの名は「GREMLINZ」。
かつてUnchained Hound Dogsと対を成すチームであったが、
怜央達が力を失ったことにより、再び勢力を伸ばし始めているのだ。
遊次達はそのチームを止めるべく、GREMLINZのメンバーをスパイとして寝返らせ情報を得ることで、
奴らの動きや居場所を掴み、リーダーである「ギャリガン」に勝負をしかける算段だ。

一方ギャリガンは、ある子供の拉致を部下に指示。
その子供とはUnchained Hound Dogsの一員である少年「リク」だった。



遊次「どうよ、GREMLINZに見えるか?」

現在時刻は午後2時前。
遊次はGREMLINZのトレードマークである緑色のパンク系の服を購入し、
サングラスもかけてチームの一員に変装する。その姿を怜央に確認してもらっている。

怜央「どっからどう見てもGREMLINZのチンピラだ。いかにも頭が悪そうでいい」

遊次「それは変装のおかげってことでいいんだよな…?
じゃあ灯の言うとおり、中央エリアに向かうとするか」

現在、灯とイーサンは中央エリアにてスパイとして寝返らせられそうなGREMLINZのメンバーを探している。
いかにもひ弱そうで、他の者とは孤立していればベストだ。

怜央「いや、俺は別のルートで向かう。俺がGREMLINZと一緒にいたらおかしいだろ」
遊次「それもそっか。
じゃあイーサンにはスパイ候補見つけたらグループ通話をかけるように言っとくよ」

電話で作戦を相談してからかれこれ1時間が経つ。
遊次と怜央は別々の道から中央エリアへと向かっている。
その途中で、イーサンから電話がかかってくる。Next全員でのグループ通話という形だ。

イーサン「遊次、ターゲットにできそうな奴を見つけた。そっちの準備はどうだ?」

遊次「バッチリだ。イーサン達はどこにいる?」

イーサン「中央の歓楽街エリアだ。今は昼間だから人はあまりいないし、裏道も多い。
いま目をつけてる奴は1人で見張りをしてるようだ。
ギャリガン様がどうとか言ってたし、GREMLINZで間違いない。顔に覇気がなくて脅しやすそうだぞ」

イーサンと灯は物陰からそのターゲットの男を見つめ、ひそひそとした声で電話口に話す。
ぼんやりと眠そうな顔をしており、細身でいかにも弱弱しそうな見た目だ。

遊次「ギャリガン"様"って…。とりあえず了解だ。
いったん歓楽街エリアに向かった後に、どこにそいつを呼び出すかとか改めて考えるよ」

灯「ターゲットの人が誰かと合流しちゃう前に、早めにね」
遊次「オッケー、走って向かうぜ!ちょっと待ってろ!」



電話から10数分後、標的となるGREMLINZメンバーに対して、
5mほど先から緑色の服を着た遊次が切羽詰まった声でその男に声をかける。
遊次の腕にはデュエルディスクが装着されている。

遊次「おい!大変だ!!今すぐこっちに来てくれ!」

GREMLINZメンバー「え!?あ、あぁ…!」

遊次は声をかけるとすぐ様向こう側の路地へと走り出す。
標的の男は急いで遊次を追いかける。
まさか遊次がGREMLINZメンバーではないとは思ってもいない様子だ。
遊次は標的の男がギリギリ自分を視認できるぐらいのタイミングで裏路地の方へと入る。
標的の男はまんまと裏路地へ入っていく。


遊次「こ、コイツが急にデュエルを仕掛けてきて、俺らのチームの情報をよこせって!」
裏路地の曲がり角の前で遊次は立ち止まり、まだGREMLINZになりきったまま、
必死の形相で標的の男に状況を説明する。
その男は急いで曲がり角を曲がり、更に路地へと入っていく。

GREMLINZメンバー「誰だ…?ん…?お、お前は…!
Unchained Hound Dogsの…鉄城怜央!?」

曲がり角の先にいたのは怜央だった。
遊次は怜央に急にデュエルを仕掛けられたGREMLINZのフリをして男を誘い込んだのだ。

怜央「おいそこのお前、俺とデュエルしろ。負けたらお前には俺のスパイになってもらう」

GREMLINZメンバー「は、はぁ!?どういうことだよ!」

遊次「早くこいつを倒してくれ!俺、新入りだしさすがに無理だ!頼むよ!」

迫真の表情で遊次はその男の足元にすがりつく。
男は足に絡みつく遊次を鬱陶しそうに払おうとしている。

GREMLINZメンバー「て、てめえ!邪魔だ!それに俺なんかが勝てるわけ…」

怜央「お前が勝てば、以前GREMLINZから奪ったエリアを全部返してやる」

GREMLINZメンバー「…!」
怜央の提示した条件に思わず驚きの表情を見せる。

遊次「なぁ頼むよ!ここで逃げたら…ギャリガン様になんて言われるか…!」
遊次は電話越しに聞いたリーダーの男の名前を咄嗟に口にした。
非道な男だという情報も加味した上でのセリフだ。
その一言によってGREMLINZの男の表情は凍りつく。どうやら効果的だったようだ。

遊次「もし勝てばアンタはチームの英雄だ!これはチャンスなんだよ!」

男はしばらく悩んだ後、覚悟を決めて怜央へと向かう。

GREMLINZメンバー「鉄城怜央…そのデュエル、受けてやる!
お前に勝って、GREMLINZの英雄になるんだ!」


GREMLINZメンバー「うわあああああああ!!!」

怜央の切り札「爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)」の一撃によって、男はあえなく敗北する。

DDAS「勝者、鉄城怜央。オースデュエルにより、チームGREMLINZの情報を求められた場合、
1分以内に鉄城怜央へ伝達する義務が発生します。また、この事は一切の他言を禁じます」

怜央が男に提示した条件は1分以内にGREMLINZの情報を提供すること。
この場で聞いた場合もすぐに答えなければならず、
もし「GREMLINZに動きがあったら教えろ」と命令していれば、
GREMLINZが動き出した1分以内に怜央に伝達しなければならないということだ。

遊次「イェーーイ!ナイス怜央ー!」
遊次は男の後ろから怜央へと駆け寄り肩を組む。怜央はそれをさらりと払いのける。

GREMLINZメンバー「お、お前…どういうことだよ…。もしかして裏切ったのか!?」
怜央と仲良さそうにする遊次を見て男の思考回路はショートする。
遊次はサングラスを上にあげ、緑色の服を脱ぎ捨てると、自前の革ジャンに着替える。

遊次「裏切ってねえよ、最初から仲間じゃねえからな。
じゃああとは怜央、尋問よろしく」

怜央に情報を伝達するという契約内容である以上、質問者は怜央になる。
怜央は腰を抜かして倒れたスパイ男の前にしゃがみ込み、威圧的な声で問いかける。

怜央「じゃあまず、ギャリガン様とやらの居場所を教えてもらおうか」

GREMLINZメンバー「そ、そんな…」

遊次「お前が答えなくても、デュエルディスクが勝手に教えてくれるからな。
契約書は見たよな?デュエルディスクを壊してもDDASがお前の記憶にアクセスして
ほしい情報を教えてくれるからな。もう諦めろ」

契約内容が情報提供であれば、本人が教えずとも、
DDASが知る情報は全て自動で怜央のもとへ送信されることとなる。
DDASが読み取った記憶情報はクラウド上に保存される。

もちろんデュエルディスクを破壊しても世界中の電子機器にアクセス可能なDDASが、
怜央が求めたGREMLINZに関する情報を提供するようになっている。
デュエルディスクを破壊しても保存された記憶情報をもとに情報の提供が行われることになる。
ただしDDASが教えられるのは契約者の記憶の中にある情報に限る。
当然虚偽の情報を教えることも許されない。
これほどまでに徹底されたシステムだからこそ、
オースデュエルで決した契約は何人たりとも破ることができないのだ。

GREMLINZメンバー「ク、クソ…。ギャリガン様はセンター街6番倉庫にいる」
男は観念したように聞かれた質問に答える。

怜央「そこはGREMLINZメンバーのアジトか?何人ぐらいいる?」

GREMLINZメンバー「…アジトだ。人数は…時と場合によるけど6,7人ぐらいだ…」

怜央「お前らのシマで見張りがついてない場所は?」

怜央は矢継ぎ早に淡々とほしい情報を提示していく。

GREMLINZメンバー「全部は俺もわからないけど…」

怜央「可能な限りDDASから送信させろ。お前の思考を元に地図データとして送れ」
怜央が命令すると、DDASが男の記憶を読み取り、その記憶から地図データを生成し、
怜央のデュエルディスクへと転送する。
彼の持つ記憶をもとに情報を提供することとなるが、全てが口頭で説明できるものではない。
そのため、人の持つ情報を可能な限り可視化させることがDDASには可能だ。

怜央「…大体わかった。聞きたいことがあれば順次連絡する。
それと、GREMLINZに動きがあれば逐一俺に連絡を入れろ。
オースデュエルで決まった契約は他の何よりも優先される"法"だ。逃げられると思うな」

GREMLINZメンバー「は…はい……」
突然スパイに仕立て上げられた男は怜央の威圧する眼光に屈し、彼の要求を受け入れる他なかった。
裏路地で呆然と倒れ込むスパイ男を横目に、遊次と怜央は路地を後にする。
角を曲がり、元々男が立っていた路地に出ると、イーサンと灯が出迎える。

灯「おかえり。その様子だとうまくいった?」

遊次「あぁ。無事スパイになってもらった。
今必要な情報は手に入ったから、どう突入しようか作戦を考えようぜ」

イーサン「そうだな。あまり敵の陣地にいすぎない方がいい。いったん南側で待機しよう」



イーサンの提案どおり、一同は灯の車でドミノタウンの南側へ戻り、車中で作戦会議を行った。
アジトの監視が手薄なポイントやアジトまでのルートなどをある程度割り出した。
そして時刻が15時を回る頃、スパイからある情報が送られてきた。
その文面を見て一同は衝撃を受ける。


「ドミノタウン北第二小学校の男子生徒を車で拉致する計画が進行中。
現在校門を監視してる。人気のない所に来たところをさらうとのこと」

シンプルな内容であるが、
スパイとして送り込んだ男が現状知る限りではこれの以上の情報はなかったのだろう。

遊次「拉致…?なんだこれ…!」
灯「なんであのチームがそんなこと…」

怜央「……」
怜央は思考を巡らせる。その小学校の名前には聞き覚えあがった。
そしてなぜGREMLINZがこのような強行に走るのか。
怜央はある答えに辿り着いた。

怜央「…リクが危ねえ…!灯、今すぐ小学校に向かえ!」

灯「え!?リクって、あの…?」

遊次と灯には特に聞き覚えがあった。ダニエラと戦った時に一緒にいた子供だ。

怜央「その小学校はリクの学校だ!
アイツらはリクをさらって俺との交渉材料に使うつもりだ!
それしか思い浮かばねえ!」


灯はふと数日前のダニエラの言葉を思い出す。

(リクは家がこの辺とはちょっと遠いから、たまにしか来ないのさ)

灯「(リク君の通う学校は怜央達のチームの陣地外…だから狙われたんだ…!)」

他の子供達は家や学校がUnchained Hound Dogsの陣地内である南側エリアにあるため、
オースデュエルの制約上、GREMLINZは手出しできない。
しかしリクという子供だけは北側エリアに暮らしていることを嗅ぎ付け、
怜央達が再び動き出したこのタイミングで強硬手段に出たのだろう。

手段を選ばないギャリガンが再びリーダーに返り咲いたことで、
拉致という犯罪行為にまでも手を染めることとなってしまったのだ。

イーサン「急げ!もう下校時刻だ!いや、もしかしたらすでに…」

灯「かっ飛ばすよ!捕まってて!」
イーサンの言葉を聞き、灯は赤いスポーツカーを疾走させる。




15:20 センター街6番倉庫 GREMLINZアジト


使われなくなった倉庫内に緑を基調とする服を纏った不良達が集っていた。
その中央には緑のモヒカンに耳・鼻にピアスを空けたリーダー「ギャリガン」が座していた。

部下「実行メンバーはすでに待機済。
すでに生徒達が下校を始めています。ターゲットが現れ次第報告します」

ギャリガン「……」
ギャリガンは黒のマニキュアから赤のマニキュアに一新し、満足そうに爪を眺めている。

部下「もしこれが成功すれば、
もうこの町はギャリガン様のものといっても過言ではありませんね!」

後ろにいる部下は媚びた声でギャリガンに胡麻を擦る。
ギャリガンはマニキュアを眺めるのをやめ、ぴたりと動きを止める。

部下「ギャリガン様…?わぶっ!!」
ギャリガンは突然部下に裏拳をかます。部下は鼻を押さえてうずくまる。

ギャリガン「この町は最初からアタシのモノよ。
貴方達は私の奴隷として生まれたの。そう、はじめからね。
なのに愚かにもアタシを追い出して、生ぬる~い生活に浸ってたわよね」

ギャリガンはしっとりとした口調で落ち着いて話し始める。
話終わると立ち上がり、鼻を押さえて倒れている部下を見下ろす。


ギャリガン「だぁからこんなスットコドッコイが生まれるんだろうがァ!
王に対しての礼儀すらなってないミジンコ以下のクソ虫がァ!」
ギャリガンは部下の頭を何度も踏みつけ怒りをぶつける。
その光景を見て他の部下達は青ざめた顔をしている。


ギャリガン「ところで例のガキはまだなの!?」
ギャリガンが部下の頭を踏みつけながら他の部下を問い詰める。


部下「い、いえ…まだ報告は入っていません。
常に見張っていますので、見逃している事はないはずですが…」

その瞬間、部下に通信が入る。

部下「報告が入りました。少々お待ちください。
……な、何…!?そんな…確かな情報なのか!? …わかった。すぐに報告する」

部下は学校を監視している部下からの報告を聞き、怯えた様子でギャリガンの方を向く。

部下「…少年の拉致に失敗しました…!」

ギャリガン「……はぁ!?まさか見逃したんじゃないでしょうね!?」
ギャリガンは鬼の形相で部下の顔を睨む。

部下「いえ…すでに少年は裏口から別の車に乗って逃走中…!
その車には…鉄城怜央および他3名が乗っているとのことです」

その名を聞きギャリガンは目を見開く。

ギャリガン「アタシの庭を荒らすだけでは飽き足らず、ここまでコケにされるなんてね…。
……フォオオオオオオ!!」

ギャリガンは高らかに奇声を発する。倉庫には獣のような雄叫びが響き渡った。
その声には怒りと同時に悦びの感情も含まれていた。



同時刻 ドミノタウン センター街エリア

遊次「くそっ!まだ追ってくるぞ!」

遊次は車中から顔を出し、後ろから追尾してくるGREMLINZの車を見る。
車にはNextの4人の他、怜央に抱きかかえられたリクの姿があった。
リクは怜央の顔を見つめ、まだ状況が掴めない様子で問いかける。

リク「ねえ、どういうこと…?僕が狙われてるって」

リクは家に帰るために3階の教室から1階に向かっているところを、
学校に入った怜央とイーサンに連れられ、そのまま裏口から灯の車に乗り込んだ。
イーサンは一見すると保護者に見えるという理由で選ばれた。
表の校門はGREMLINZに見張られているため、
怜央達は裏口から校舎に入りリクの教室に向かった。柵は低かったため簡単に入ることができた。

幸いリクはまだ教室から出るところだったためすぐに見つかった。
リクは驚いたものの、怜央がいたため不信感を抱くことはなかった。
怜央はリクに彼が狙われているため逃げる必要があること、
裏口から逃げて車に乗ることを素早く伝えた。
見知らぬ男2人が突然入ってきたことから担任教師に疑いの目を向けられたが、
イーサンが両親の代理だと説明し、リクもそれを肯定することでなんとか事なきを得た。

そして裏口で待機していた灯の車に乗り込むが、GREMLINZに見つかり現在に至る。

怜央「他のチームの奴らが待ち伏せしてお前が帰る時を狙ってるって情報が入った。
とりあえず、奴らが手出しできない南側のエリアまでお前を連れてく」

南側のエリアは過去のオースデュエルにてGREMLINZは手出しできないようになっているため、
その範囲内にいれば襲われることはない。まずはリクの安全が第一だ。

イーサン「俺達が逃げていることも奴らには伝わってるはずだ。
後ろからだけじゃなく前からも詰めてくる可能性が高い。どうすれば…」

灯はどの道を進めばいいかを迷いながら一心不乱にハンドルを切る。
すると、怜央の端末に連絡が入る。

怜央「…! スパイから連絡だ。
…どうやら中央エリアから南エリアまでのルートを徹底的に潰しにくるらしい」

すると、怜央デュエルディスクに地図情報が送信されてくる。
GREMLINZのスパイが知る情報を元にDDASが地図を作り上げ怜央に送信したのだ。
遊次・イーサン・怜央は目を凝らして地図を見つめ、必死に策を考える。
しばらくするとイーサンが声を上げる。

イーサン「おそらく、このまま車で南エリアまで突き抜けるのは無理だ。
だから別の策を取るしかない」

遊次「なんかいい方法があんのかよ?」

イーサン「俺達としては、まずはリク君を南エリアに連れ帰ることができればいい。
だがリク君を車に乗せたまま南エリアまで行く事は不可能。
だったら車から降りて南エリアまで連れて行けばいい」

怜央「だが、どうやって…」

イーサン「スパイから送られて来た情報をもとに、
まずは南エリアに近くて最もガードが手薄なこの道に入る。
そこで俺とリクが車から降りて物陰に隠れる」

イーサンはデュエルディスクからソリッドヴィジョンとして映し出される地図情報を指さしながら
考えた作戦を伝える。灯は運転に集中している。

イーサン「そこからは陽動作戦だ。
降りるところさえ見られなければ、奴らは当然まだリクが車にいると思い込む。
だから車でもう1回北側に戻れば、アイツらもそれを追って北側まで来るはずだ。
そうなれば逆に南側は手薄になる。
そこでタイミングを見計らって俺がリクを南エリアまで連れていく」

遊次「なるほど、今はそれに賭けるしかなさそうだな。
イーサンが灯に道を指示してくれ。灯はなんとかアイツらをかわしてその道まで辿り着いてくれ!」

灯「…わかった!」
ハンドルを握る灯の表情は真剣さを極めている。

灯の真っ赤な車はドミノタウンを疾走する。その後ろを何台もの車が追いかける。
怒号が飛び交い、町は異様な雰囲気に包まれていた。




15:45 センター街6番倉庫 GREMLINZアジト


リクの拉致に失敗したという報告から25分が経過した頃。
怜央達を乗せた車を追跡するも、未だ彼らに追いつくことはできていなかった。
ギャリガンの怒りは頂点に達し、倉庫内には重苦しい空気が流れている。

ギャリガン「あぁもうッ!!まだ捕まらないの!?
何やってんのよあのスットコドッコイ共は…!」

部下「も、申し訳ありません…。
まるで我々のいる場所がわかっているかのように、包囲網をすり抜けていくもので…」

部下「奴らは何故か北側に引き返してきています。
それも、どうやらここに向かってきているようで…」

ギャリガン「…何ですって?」

「どけぇぇええええええ!!!!!」

その瞬間、倉庫の入り口の方から、ドスの効いた女の叫び声が聞こえる。
その声はどんどんと近づいて来る。ギャリガンが声の方を見た時には、
すでに真っ赤な車が猛スピードで倉庫に突っ込んでくるところだった。
その運転席には目を見開き鬼の形相でハンドルを握る灯の姿があった。

入り口を見張る者も倉庫内の者も、猪突猛進する車を避ける以外の選択肢はなく、
その車は真っ直ぐ倉庫の仲間で突き進み、ギャリガンの目の前でドリフトで停車する。
周りの部下達はあっけに取られるしかなかったが、
ギャリガンは猛進してくる車に動じることなく佇んでいた。

怜央が車から降り、ギャリガンと対峙する。
車の窓が開き、そこから遊次が顔を出す。
イーサンとリクは車中にいない。予定通り南エリアへ逃げることができたようだ。

遊次「ハァ…ハァ…ちょっと運転が荒すぎるぜ、灯…。大丈夫か?」
遊次は運転席の灯に目をやる。

灯「全然だいじょうぶ…!いまアドレナリンがすっごい出てるから…!」
灯はバキバキの目でハンドルを握ったまま応える。
遊次は車から身を乗り出し、後ろから近づいて来るGREMLINZのメンバー達に向かって声を上げる。

遊次「近づかないほうがいいぜ!今ウチの運転手は制御が効かねえ。
この真っ赤な暴れ馬に巻き込まれたくなきゃ、大人しくしとくんだな」

遊次は車のボディを手で叩きながら周りの男達を牽制する。
実際、先ほどこの車が人がいることなど気にせぬ勢いで猛進してきたのを見ると、
GREMLINZのメンバー達は無暗に近づくことができなかった。
彼らがここに乗り込んできたのはギャリガンと決着を着けるためだ。
オースデュエルの場を成立させるためには、周りの数の力を抑え込む必要があった。


怜央「ウィリアム・ギャリガンだな。リクをさらおうとしたのはお前か?」
怜央が車からギャリガンに問いかける。

ギャリガン「……フゥ。まあ、そうだけど?」
ギャリガンは深く息を吐いた後、あっけらかんと言い放つ。その態度に怜央の目は更に鋭くなる。

ギャリガン「でも、その手間も省けたわね。貴方との交渉材料に使いたかっただけだし。
まあ、人質がいたほうがより有利に交渉できたんだけど」

遊次「それと、中央エリアの洋食店を襲ったのはお前達だな?」

ギャリガン「さあ?いちいち覚えてないわよ。
でもそうなんじゃない?アタシ達が他の奴らに中央でそんな真似させるわけないし」

遊次「なんでお前らはそんなことするんだよ。挙句の果てには子供まで拉致しやがって…」

遊次の言葉にギャリガンは眉をしかめる。

ギャリガン「はぁ?それはそこのボウヤに聞いたら?やってることは同じでしょ。
そもそも貴方は誰?何アタシと対等に口を利けると思ってるの?」
ギャリガンは顎で怜央を指し示し、心底不快そうな目で遊次を見る。

遊次「怜央はもう誰かから奪うことはしねえよ。それにお前とは違って子供に手出したりしねえ」

ギャリガン「…」
ギャリガンの表情は寂しそうな目つきに変わる。

ギャリガン「…そう。つまらない男に成り下がったのね、鉄城怜央」

怜央「意味わかんねえよ。お前と俺はこれが初対面だ」
怜央が無感情に返す。

ギャリガン「あら、寂しいわね。アタシは貴方のためにこの町に舞い戻ってきたっていうのに。
2年前、アタシはこの町に王として君臨していたわ。アタシに逆らう奴なんて誰もいなかった」

ギャリガンは遠い日を思い出すように上を見上げ語りだす。

灯「王?あなたのことなんて聞いたことなかったけど」

ギャリガン「フフ、それは貴方が無知なのよ。
足し算引き算が出来ないことを自慢する人がいるかしら?
今の貴方はそれと一緒。恥を知りなさい」

灯「(えぇ…)」
以降、灯は彼の話には口を出さないようにしようと心に決めた。

ギャリガン「2年前のことよ。よく覚えてる。その日は土砂降りの雨だったわ。
愚かなことに、チームの子達が寄ってたかってアタシを追い出したの。
お前のやり方にはついていけないってね。
確かにチームの皆にも厳しくしたわ。でもそれは崖から子を突き落とす親心よ。
愛情故なの!それを理解せずにホントもう…しょうがないボウヤ達。
でもアタシはポジティブに捉えたわ。これは子が親元を巣立ち、立派な大人に成長する時なのだとね」

ギャリガンは構わず一人で語り続ける。
口を挟めば面倒そうだと感じた遊次達はとりあえずこの時間を耐えることにした。

ギャリガン「その結果は散々だったわ。
アタシの庭はどんどん荒らされて、1年後には半分も奪われた。
でも逆にアタシは庭を荒らす野良猫ちゃんの方に興味を持ったの。それが鉄城怜央、貴方よ。
その時の貴方にはアタシが求めるシゲキがあった。
だからアタシは戻ってきたの。生ヌルい子供達を叩きなおして、貴方を倒すためにね。
なのに…そのアナタはどうやら牙の抜けた子猫に成り下がってたみたいね。運命ってホント残酷」

ギャリガンが祈るように手を合わせ目を瞑る。
数秒の沈黙が続いた後、うんざりしたように怜央が口を開く。

怜央「与太話は終わったか?一応、これでも時間に追われる社会人なんだ。
とっとと本題に入ろうぜ」

怜央はポケットから折り畳まれたデュエルディスクを腕にセットする。

ギャリガン「…いいわ。どんな形であれ、これはアタシの望んでた戦い。
これも運命の女神の思し召しなのかもね」
ギャリガンも少しスッキリとした表情でデュエルディスクを構える。


怜央「俺から提示する契約は2つ。
ドミノタウンに干渉しないことと、2度とドミノタウンに現れないことだ」

重複した契約かのように聞こえるが、
現在はGREMLINZがドミノタウンにいる以上、
追放の契約だけではそれまでの過程で町に干渉しかねない。
真に彼らに何もさせないために、怜央は2つの契約を課したのだ。
怜央の言葉を聞き、GREMLINZの部下達はざわめき立つ。
1度の勝負でこれまでチームが積み上げてきたものが全て壊れるのだ。
しかしリーダー同士の戦いとは得てしてそういうものである。

ギャリガン「アタシから提示する条件も2つ。
Unchained Hound Dogsに対する南側エリアへの不干渉の命令。
それと…鉄城怜央、貴方が未来永劫、アタシの奴隷になることよ」

遊次「なっ…」
怜央「…」
ギャリガンの思わぬ方向からの契約内容に意表を突かれる。

ギャリガン「牙が抜けたアナタはつまらないもの。アタシが徹底的に教育しなおしてあげる。
そしてまさしく立派な獅子(レオ)に育ててあげるわよ」

灯「奴隷…」
その言葉を聞き、灯は数日前の遊次と怜央との決闘で聞いた怜央の過去を思い出す。
5歳から奴隷として売られ、11歳まで暴力によって支配される日々を送って来た。
もしここで怜央が負ければ、法的契約として不可逆的な奴隷契約が行われることとなる。
そうなれば鉄城健吾の奴隷から解放された時のように、デュエルで状況を覆すこともできない。
二度と引き返すことができないのだ。

ギャリガン「奴隷って言っちゃったらDDASが承認してくれないかしら?
ならこう言い換えましょう…
"法律の範疇かつ物理に実行可能なアタシからの命令には必ず従うこと"。
さあ、受けるの?受けないの?」

法律の範疇かつ物理的に実行可能であるということは特筆しなくてもDDASはそのように契約を作成するが、
それを満たせば命令に絶対服従という点は変わらない。
自ら言い表すことでその抜け穴を突いていることを強調しているのだ。

灯「怜央…こんな滅茶苦茶な契約、受ける必要ないよ!」
灯は怜央に強く迫る。普通ならこのような理不尽な契約はただ跳ねのければいい。

怜央「いや、拒否してもアイツは条件を変えねえ。
今日どうしても奴のチームを止めなきゃいけねえのはこっちだ。主導権は向こうにある。
それに…こんな奴に負けるほど、俺が歩いてきた道はヤワじゃねえ」

その言葉に灯ははっとする。

灯「(怜央も遊次も…なんでそんな簡単に人生を懸けた戦いができるの…?私には…)」
仲間達の戦いへの覚悟の差を感じ、灯は少し暗い気持ちになる。

怜央「受けるぜ、その条件」

ギャリガン「フフ、成立ね。それじゃあ始めましょう!オースデュエルを!」
ギャリガンは左腕に装着されたデュエルディスクを高く掲げる。


DDAS「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」

プレイヤー1:鉄城怜央
条件①GREMLINZメンバーに対し、ドミノタウンへの干渉を禁ずる。
条件②GREMLINZメンバーに対し、ドミノタウンへの立ち入りを禁ずる。

プレイヤー2:ウィリアム・ギャリガン
条件①Unchained Hound Dogsメンバーに対しドミノタウン南側エリアへの干渉を禁ずる。
この契約成立に際し、
現在、鉄城怜央がGREMLINZに課している南側エリアへの組織的干渉を禁ずる契約は破棄されます。

条件②鉄城怜央に対し、ウィリアム・ギャリガンの命令に従う義務を与える。
ただし物理的・法的に可能な命令に限る。


DDASがお互いの提示する契約内容を整理し、両者の前にソリッドヴィジョンの契約書が表示される。
DDASが読み上げていない詳細な内容も全てそこに記載されている。
2人はソリッドヴィジョンの契約書に指でサインを行うと、オースデュエルが承認される。
デュエルが始まれば、世界デュエル憲章により何人たりともそれを妨害することは許されない。
周りのGREMLINZもリーダーの戦いを見守ることしかできない。

DDAS「契約内容を承認します。
デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」

怜央・ギャリガン「デュエル!」

2人がデュエル開始を宣言すると、ギャリガンのデュエルディスク中央のランプが点灯する。
ギャリガンが先行だ。

ギャリガン「アタシのターン。『グレムリフト・スパークス』を召喚」


■グレムリフト・スパークス
 効果モンスター
 レベル1/闇/悪魔/攻撃力400 守備力500
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚した場合に発動できる。
 このカードよりも攻撃力の低い「グレムリフト」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
 ②:このカードが墓地から特殊召喚された場合に発動できる。
 自分はデッキから1枚ドローする。


そのモンスターは背丈が小さく、濃いオレンジ色の皮膚を持っている二足歩行の悪魔だ。
黄色い鋭い目と大きなコウモリのような耳があり、頭には細長い触覚を持つ。
両手は細長く、指先から常に小さな火花が散っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/NKSXqNj
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ギャリガン「『グレムリフト・スパークス』の効果発動。
召喚成功時、デッキから自分より攻撃力が低い『グレムリフト』を特殊召喚できるわ。
おいでなさい『グレムリフト・ギアジャム』」


■グレムリフト・ギアジャム
 効果モンスター
 レベル1/闇/悪魔/攻撃力300 守備力600
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 このカード以外の自分の「グレムリフト」モンスターは
 自身の攻撃力より高い攻撃力を持つ相手モンスターの効果の対象にならない。
 ②:このカードが墓地に存在し、
 自分フィールドに「グレムリフト」モンスターが存在する場合、手札を1枚捨てて発動できる。
 墓地のこのカードを特殊召喚する。


現れたモンスターはスパークスと同様、二足歩行の小型の悪魔だ。黒色の肌を持つ。
鋭い目と耳を持ち、両手の爪が長く伸びている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/TSKBl2n
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わずかレベル1の攻守の低いモンスターだが、そのモンスターが2体揃ったことから、
怜央達はこの後何が起きるかはおよそ察しがついた。

ギャリガン「さあお披露目よ。
アタシはレベル1の『グレムリフト・スパークス』と『グレムリフト・ギアジャム』で
オーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

2体のモンスターが地面から現れた黒い渦に飛び込んでゆく。

ギャリガン「小さき体躯で押し支える天、その狭き門を守り来る者を拒め」

ギャリガン「エクシーズ召喚!ランク1!『グレムリフト・マッドグリッパー』!」


■グレムリフト・マッドグリッパー
 エクシーズモンスター
 ランク1/闇/悪魔/攻撃力500 守備力300
 レベル1モンスター×2
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:「グレムリフト・マッドグリッパー」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
 ②:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
 デッキから『グリムリフト』モンスター1体を手札に加える。
 ③:このモンスターがモンスターゾーンに存在する限り、
 自分フィールドのフィールド魔法カードは、1ターンに1度相手の効果で破壊されない。


攻撃表示で現れたのは、焦げ茶色の肌を持ち、下級モンスターよりも少し図体の大きい悪魔だ。
小さな体を優に超えるほど大きな両腕を持っている。
耳は尖っているが羽のように折れ曲がっており、そこには紫色の棘が生えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/qOpODsB
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遊次「攻撃力たった500のモンスターを攻撃表示…?」
未だ見えぬギャリガンのデッキに遊次は警戒の色を示す。

ギャリガン「『グレムリフト・マッドグリッパー』の効果を発動。
オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから『グレムリフト』モンスター1体を手札に加える。
アタシは『グレムリフト・スプリッター』を手札に加えるわ」

ギャリガン「『グレムリフト・スプリッター』は
他の『グレムリフト』がいる時手札から特殊召喚できる」


■グレムリフト・スプリッター
 効果モンスター
 レベル1/闇/悪魔/攻撃力400 守備力200
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに「グレムリフト」モンスターが存在する場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外し、
 墓地の「グレムリフト」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。


現れたのは腕に刃のついた緑色の悪魔だ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/khxPsvu
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ギャリガン「更に墓地の『グレムリフト・ギアジャム』の効果発動。
フィールドに『グレムリフト』がいる時、手札を1枚捨ててこの子を墓地から特殊召喚できる」

「グレムリフト・マッドグリッパー」の効果によってX素材として取り除かれた
「グレムリフト・ギアジャム」が墓地から特殊召喚される。

灯「またレベル1モンスターが2体…」

ギャリガン「レベル1の『グレムリフト・スプリッター』と『グレムリフト・ギアジャム』で
オーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

ギャリガン「小さき悪魔達の領域、愚かにもその入り口へ踏み込みし者に強大なる試練を与えよ」

ギャリガン「エクシーズ召喚!ランク1!『グレムリフト・ウィキッドディスターバー』!」


■グレムリフト・ウィキッドディスターバー
 エクシーズモンスター
 ランク1/闇/悪魔/攻撃力500 守備力300
 レベル1モンスター×2
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:「グレムリフト・ウィキッドディスターバー」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
 ②:このカードのX素材を1つ取り除き、
 相手フィールドの守備表示モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを破壊し、そのモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与える。
 ③:このモンスターがモンスターゾーンに存在する限り、
 自分フィールドの「グレムリフト」モンスターは1ターンに1度戦闘・効果で破壊されない。


現れたのは「マッドグリッパー」と同様に大きな腕を持つ悪魔。
赤褐色の肌をしており、額には大きく太い角が一本生えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/rMSpYza
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遊次「もうエクシーズモンスターが2体並んだけど、どっちも攻撃力は500…。
どういうデッキなんだ…?」

ギャリガン「ここからがアタシのデッキの真骨頂よ。
フィールド魔法『グレムリフト・オーガシーリング』を発動」


■グレムリフト・オーガシーリング
 フィールド魔法
 このカードのコントローラーは、自分スタンバイフェイズ毎に
 自分フィールドに存在する「グレムリフト」モンスターの数×1000LPを払う。
 ①:このカードがフィールドゾーンに存在し、
 自分フィールドに「グレムリフト」モンスターが存在する限り、
 お互いのプレイヤーは、
 フィールドで最も攻撃力の高いモンスター以下の攻撃力を持つモンスターしか
 召喚・特殊召喚・反転召喚できない。
 ②:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
 自分は「グレムリフト」モンスターしか召喚・特殊召喚・反転召喚できず、
 「グレムリフト」Xモンスターでしか直接攻撃できない。
 また、自分フィールドの「グレムリフト」Xモンスターの元々の攻撃力は、
 自分フィールドの「グレムリフト」モンスターの数×500の数値になり、
 攻撃力はアップしない。


ギャリガンはフィールド魔法を発動すると、辺りは石造りの地下神殿のような場所へと変わる。
所々に蝋燭の灯が点いているが周りは暗く、狭苦しい印象だ。
そして突然、上から巨大な石の天井がフィールドへと落ちてくる。
その天井には激昂した真っ赤な鬼の顔が描かれている。
ちょうどモンスターゾーンと同じ面積の天井だ。

怜央「…!」
怜央は思わず上から高速落下してくる天井に驚かされる。

落ちてきた天井を、ギャリガンのフィールドのモンスターが重厚な音と共に両腕で受け止める。
天井が「グレムリフト」モンスターと共鳴し引き寄せられたようだ。
ギャリガンのモンスターの背丈は1m程度であり、天井もそれと同じ高さとなっているため、
天井と地面との間に空いたわずかな隙間だけが、モンスターが戦うフィールドということになる。


ギャリガン「フィールド魔法の効果で、『グレムリフト』Xモンスターの攻撃力は、
フィールドの『グレムリフト』の数×500の数値になる。
今は2体だから、アタシの2体のXモンスターの攻撃力は両方1000になるわ」

灯「(それでもたったの1000。でも、あの天井に何かが…)」

ギャリガン「このフィールド魔法が存在し、場に『グレムリフト』モンスターがいる時、
お互いにフィールドの攻撃力が一番高いモンスターを越える攻撃力のモンスターを
召喚・特殊召喚・反転召喚できない。
つまり、アタシのモンスターの攻撃力1000を超えるモンスターを
貴方は呼び出すことができないってことよ」

遊次「なんだって…!それじゃ、怜央は…」
怜央に限らず、大抵のデッキは攻撃力1000以上のモンスターで構成されることが多い。
それを越える攻撃力のモンスターを召喚できないとなると、思い通りの展開はできなくなる。
この効果はギャリガンにも適用されるが、ギャリガンは攻撃力500以下の小型モンスターが主であり、
毎ターンライフを支払うこと以外、ほとんどデメリットはないといえる。

怜央「王とか言っといて、随分せせこましい戦法だな」
しかし怜央はこの程度では動じず次の手を冷静に考えながら、ギャリガンを煽る。

ギャリガン「アタシ、獲物はジワジワといたぶる方が好きなの。
アタシはこれでターンエンドよ。
『マッドグリッパー』がいる限り1ターンに1度フィールド魔法は破壊されず、
『ウィキッドディスターバー』がいる限りモンスターは1ターンに1度戦闘・効果で破壊されないわ。
さあ、貴方の番よ。せいぜい足掻いてみなさい」
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【ギャリガン】
LP8000 手札:2

①グレムリフト・マッドグリッパー ATK1000 X素材1
②グレムリフト・ウィキッドディスターバー ATK1000 X素材2

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 ①  
□□□②□

フィールド魔法:1


【怜央】
LP8000 手札:5
魔法罠:0
----------------------------------------------------------------------------------------------------------

怜央「俺のターン、ドロー!」
怜央はドローしたカードを手札に加え、思考を凝らす。
怜央の手札には「RUM(ランクアップマジック)」という魔法カードが1枚存在している。
エクシーズモンスターを更にランクの高いモンスターへとランクアップさせる効果だ。
だがモンスターすらまともに召喚できない今、エクシーズ召喚すら困難であり、
その魔法カードも活躍の場がない。

怜央「(フィールド魔法の効果で攻撃力1000以下のモンスターしか場に出せねえ。
デッキにはいるが、ただ召喚するだけじゃ無意味だ)」

怜央「(アイツのフィールド魔法は『グレムリフト』の数によって
Xモンスターの攻撃力を上げる効果があるが、その代わりXモンスターでしか攻撃できねえ効果もある。
だから次のターンに一気にモンスターを並べても、
元々の攻撃力も低い分ワンターンキルとはいかねえはずだ」

怜央「(それに、あのフィールド魔法にはスタンバイフェイズに
『グレムリフト』の数×1000のライフを払わなきゃいけない効果がある。
仮に5体並べりゃ、次のターンにライフを5000払わなきゃならない。
大量にモンスターを並べても、俺を殺し切れなきゃ、次のターン自分の首を絞めることになる。
だが…今は耐えるしかねえ)」

怜央は一瞬にしてギャリガン視点での思考を組み立てると、1枚のカードを手札から取り出す。

怜央「俺はモンスターを裏側守備表示でセットする」

遊次「(攻撃力1000以下のモンスターを召喚・特殊召喚できないけど、セットならできる。
やっぱ今はそれしかねえよな…)」
ギャリガンのフィールドは1ターンに1度のフィールド魔法への破壊耐性と、
1ターンに1度のモンスターへの破壊耐性が付与されている。
召喚が制限されている中で、その布陣をそう簡単に崩せるはずもない。

怜央「これでターンエンドだ」

ギャリガン「(アタシのモンスターが守備表示モンスターを破壊できることは知ってるはず。
それでも守備表示で出さざるを得ないのね。
それはすなわち攻撃力1000以下のモンスターが手札にいないということよ)」

ギャリガンは自らの策略にはまる獲物を見つめ、舌なめずりをするようにニヒルな笑みを浮かべる。

ギャリガン「フフ…手も足も出ないようね。でもまだまだ涼しい顔してる。
もっと苦しみなさい。そして無様にもがきなさい!」

ギャリガンは手を広げ醜悪な笑顔で怜央の嘲笑う。
しかし怜央は動じることはなく、ただ静かに内なる炎を燃やし続ける。
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【ギャリガン】
LP8000 手札:2

①グレムリフト・マッドグリッパー ATK1000
②グレムリフト・ウィキッドディスターバー ATK1000

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 ①  
□□□②□

フィールド魔法:1


【怜央】
LP8000 手札:5

①裏守備モンスター

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 □  
□□□①□

魔法罠:0
----------------------------------------------------------------------------------------------------------

ギャリガン「アタシのターン、ドロー。スタンバイフェイズ、
フィールド魔法の効果により『グレムリフト』の数×1000のライフを払うわ」
LP8000 → 6000

遊次「(あのフィールド魔法、相手にかける制約はデカいけど、その分コストもでかいってわけか。
ジワジワいたぶるとか言ってたけど、アイツ自身もそこまでの時間の余裕はないはずだ)

プレイヤーでない遊次はカードの効果が見えているわけではないため、
ここでフィールド魔法のデメリットを初めて知る。


ギャリガン「『グレムリフト・マッドグリッパー』の効果。
オーバーレイユニットを使い、『グレムリフト』モンスターを手札に加えるわ。
そして手札に加えた『グレムリフト・ピック』を召喚」



■グレムリフト・ピック
 効果モンスター
 レベル1/闇/悪魔/攻撃力200 守備力800
 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを破壊する。
 自分フィールドに「グレムリフト」フィールド魔法が存在している場合、
 この効果に対して相手は効果を発動できない。
 ②:自分フィールドの「グレムリフト」Xモンスター1体を対象として発動できる。
 このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。


現れたのは薄いピンク色の小さな悪魔。長い指には吸盤のようなものがついている。
そのモンスターは天井と床の隙間に現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/GYRlLQl
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天井を支えているのはフィールドで最も攻撃力の高いXモンスターの2体であり、
グレムリフト・ピックは天井を押さえるといったことは一切していない。
このフィールドは攻撃力が最も高いモンスターが天井を支えなければならない仕組みなのだろう。

ギャリガン「『グレムリフト・ピック』が召喚されたことで、
フィールド魔法の効果により2体のXモンスターの攻撃力は1500に上がるわ」
ギャリガンの2体のXモンスターの図体は更に一回り大きくなる。
それによって天井も少し上に持ち上げられ、地面との隙間が広がった。


ギャリガン「オーバーレイユニットを1つ使い、
『グレムリフト・ウィキッドディスターバー』の効果発動。
相手の守備表示モンスター1体を破壊して、元々の守備力分ダメージを与える。
貴方のセットモンスターを破壊するわ」

ウィキッドディスターバーの角から光線が放たれると、
怜央の裏側守備表示モンスターはあえなく破壊される。
セットされていたのは『爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)』だ。

ギャリガン「守備力は1000ね。なら1000ポイントのダメージを受けなさい」
角から放たれたビームは怜央の身体を貫く。

怜央「ッ…!」
LP8000 → 7000

灯「裏守備モンスターの守備力が高ければ凌げるかと思ったけど、
破壊効果があるならそうもいかない…」
灯は車の中で呟く。

ギャリガン「さあ、バトルフェイズよ。貴方のフィールドはガラ空き。
私と貴方を隔てる物は何もないの。アタシ、この光景が大好き。
さあ『グレムリフト・マッドグリッパー』、鉄城怜央にダイレクトアタックよ!」

攻撃の指示を受けたマッドグリッパーは、その巨大な腕で怜央に殴りかかる。

怜央「ぐッ…!」
LP7000 → 5500

ギャリガン「『グレムリフト・ウィキッドディスターバー』で追撃よ!」
ウィキッドディスターバーは怜央にアッパーで殴りかかる。

怜央「ぐああっ…!」
LP5500 → 4000

まるでサンドバッグのように、怜央は太い腕で2体のモンスターに一方的に殴られる。
遊次と怜央はその姿を指をくわえて見ているしかなかった。

ギャリガン「フィールド魔法の効果でXモンスターでしか攻撃できないから、
残念ながらバトルフェイズはこれでオシマイ」


ギャリガン「『グレムリフト・ピック』の効果発動。
この子は『グレムリン』Xモンスターの素材になれるの。
『グレムリフト・マッドグリッパー』の素材に変換よ」

「グレムリフト・ピック」は光の球へと変わりマッドグリッパーの周囲を漂う。

ギャリガン「『グレムリフト』モンスターの数が減ったことで、
Xモンスターの攻撃力は1000に戻るわ。これでまた貴方は攻撃力1000以下しか出せないわよ」

攻撃力が1500に上がった時に次のターンには行動できるのではないかと僅かな期待があったが、
それもあっけなく打ち破られた。
2体のXモンスターの図体は再び一回り小さくなり、天井もそれに連れて下へと落ちる。

ギャリガン「ターンエンドよ。さあ、いつまで持つかしらね子猫ちゃん」

遊次「クソッ、またさっきと状況は変わらねえ…。このままだと怜央は殴られっぱなしだ」
灯「打開策はあるの、怜央…」

ギャリガンの戦術は、デッキによっては全く成す術なく一方的に敗北する可能性もあり得るものだ。
果たして怜央にそれを破る方法はあるのか、そのカードを引き当てられるのか、それは神のみぞ知る。

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【ギャリガン】
LP6000 手札:3

①グレムリフト・マッドグリッパー ATK1000 X素材1
②グレムリフト・ウィキッドディスターバー ATK1000 X素材1

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 ①  
□□□②□
□□□□□

フィールド魔法:1

【怜央】
LP4000 手札:5
魔法罠:0
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怜央「(…あのカードをここで引き当てる以外に勝ち目はねえ。
俺のライフは4000…もしアイツが次のターン、フィールドにモンスターを4体並べれば、
フィールド魔法の効果で2体のXモンスターの攻撃力は2000になる。
その2体で攻撃されりゃ俺は終わりだ)」

怜央「(だが…妙な気分だ。追い詰められてるはずなのに、ここで終わる気がしねえ)」

(鉄城怜央、貴方が未来永劫、アタシの奴隷になることよ)

怜央の頭の中にギャリガンの言葉がフラッシュバックする。

怜央「(…まさか俺がまた奴隷になるかもしれない時が来るとはな。
だが、そんなことはどうとも思わねえ。俺が許せねえのは…)

怜央は薄ら笑いを浮かべるギャリガンを見つめる。

怜央「(俺の"家族"に手ェ出しやがったあのゴミが、いつまでもこの町でのさばる事だ…!)」

遊次「…!」

怜央に怒りの炎が宿る。遊次はたった今、怜央の雰囲気が変わったことに気づいたようだ。

俺の「俺のターン…ドロー!」
怜央が引いたカードをめくる。それは永続罠カードだった。
そのカードを手札に加えると、怜央は迷いなくプレイを始める。

怜央「魔法カード『爆焔鉄甲豪烈熱風(スチームアーミー・フレアブラスト)』を発動!
墓地の装備カード扱いとなった場合の効果を持つ『スチームアーミー』モンスターを除外し、
枚数分、相手の魔法罠カードを破壊する」


■爆焔鉄甲豪烈熱風(スチームアーミー・フレアブラスト)
 通常魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の墓地に存在する装備カード扱いとなった場合の効果を持つ
 「スチームアーミー」モンスターを任意の枚数除外して発動できる。
 除外した枚数分、相手フィールドの魔法・罠カードを破壊する。
 ②:墓地のこのカードを除外して発動できる。
 手札の「スチームアーミー」モンスター1体を召喚する。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


怜央「墓地の『爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を除外して1枚破壊だ」

ギャリガン「あら、ようやく動き出したわね。でも残念。
アタシのフィールド魔法はマッドグリッパーの効果で1ターンに1度破壊されないわよ」

怜央「…フィールド魔法を破壊だ」
炎の渦はギャリガンのフィールドに襲い掛かるが、マッドグリッパーが両手でその渦を防ぐ。

ギャリガン「(ただのお馬鹿さんじゃないはず。何が目的なの…?)」
破壊できないフィールド魔法を迷いなく破壊しようとした怜央に、ギャリガンは警戒心を抱く。

怜央「俺はフィールド魔法『爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)』を発動!」


■爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)
 フィールド魔法
 このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードの発動時の処理として、「スチームアーミー」モンスター1体をデッキから手札に加えることができる。
 ②:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
 お互いのプレイヤーは、自分のモンスターが1体以上存在する場合、
 自分のモンスターと同じ縦列または隣のモンスターゾーンにしかモンスターを召喚・特殊召喚・セットできない。
 ③:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その位置を他の相手のメインモンスターゾーンに移動する。

フィールドは赤黒い空に覆われ、四方が鉄柵に覆われた密集地帯へと変わる。
ギャリガンの発動しているフィールド魔法と同時に存在しているため、
暗き宮殿を有刺鉄線が囲い、フィールドは息苦しさを増す。

怜央「このフィールド魔法がある限り、
お互いに自分のモンスターの隣か同じ縦列にしか召喚することができない」

ギャリガン「ふぅん…貴方も随分せせっこましいじゃない」
怜央「なんだ、気にしてたのか?デュエルと一緒で心も狭苦しいらしいな」
ギャリガン「(このガキ…いちいち癪に触るわね…!)」

怜央「フィールド魔法発動時、デッキから『スチームアーミー』を手札に加えることができる。
俺は『爆焔鉄甲 鍵発射弾(キー・ロケットボム)』を手札に加える。そしてそのまま召喚!」


■爆焔鉄甲 鍵発射弾(キー・ロケットボム)
 効果モンスター
 レベル4/炎/機械/攻撃力900 守備力1800
 このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 このカードは魔法&罠ゾーンに1枚しか存在できない。
 ①:このカードが手札から墓地に送られた場合、
 自分の墓地の「スチームアーミー」カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。
 ②:このカードの装備モンスターは自身と同じ縦列のモンスターしか攻撃対象に選択できない。
 ③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
 破壊された装備モンスターをコントロールするプレイヤーの同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。


召喚されたのは鍵の形を模したロケット弾のモンスターだ。
黒く煤けた外殻に覆われ、先端部は鍵の形をしており、鋭い歯が複雑に配置されている。
ロケットの胴体にはパイプやチューブが絡み合い、動力を供給するための仕組みが見て取れる。
背面には小型のフィンが配置されており、小さな歯車で動かされる。
尾部には三つの小型のノズルがあり、細かいバネやボルトがその動きを支えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dDgA2VA
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ギャリガン「アラ、ようやくモンスターを召喚できたのね!おめでとう!
でも攻撃力900じゃアタシのモンスターを倒すことは叶わないわね」

怜央「焦ってる奴ほどよく喋る。たまにはどっしりと構えたらどうだ?」
煽り返す怜央にギャリガンは内心では苛つきをおぼえた。

怜央「フィールド魔法『爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)』の効果発動。
1ターンに1度、相手モンスター1体の位置を変更できる。
『グレムリフト・ウィキッドディスターバー』を『グレムリフト・マッドグリッパー』の真下に変更だ」

EXモンスターゾーンにいるマッドグリッパーと同じ縦列に、ウィキッドディスターバーが移動する。


怜央「更に永続魔法『爆焔鉄甲補給戦線(スチームアーミー・サプリングバトルライン)』を発動!」


■爆焔鉄甲補給戦線(スチームアーミー・サプリングバトルライン)
 永続魔法
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在し、
 自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する限り、
 このカード以外の自分フィールドの魔法・罠カードは相手のカードの効果で破壊されない。
 ②:自分フィールドのX素材の無い「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として発動できる。
 墓地・除外状態のモンスターを2体まで選び、そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
 ③:装備モンスターが破壊された事で自分の「スチームアーミー」モンスターが墓地へ送られた場合に発動できる。
 自分はデッキから1枚ドローする。


怜央「このカードがある限り俺の他の魔法・罠カードは相手によって破壊されない。
俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

怜央はフィールド魔法と伏せカードを永続魔法によって守る形でターンを譲り渡す。
モンスターゾーンは便りないものの、着実に布石を打つことができた。

ギャリガン「あら、バトルはしないのね。いいのかしら?次で貴方、終わるかもよ」

怜央「お前こそ自分の心配をしたらどうだ?次のターンにはお前のライフは元の半分だ」

ギャリガン「優しいのね。でも安心して。貴方が私の死に顔を見る事はないわ。
その前に貴方の命が尽きるもの」

ギャリガンは勝利を確信したように余裕の表情を見せる。
実際、怜央自身がギャリガンのライフを削ったことはない。
このままギャリガンが押し切り、次のターンで勝負がつく可能性が高いと考えているのだ。

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【ギャリガン】
LP6000 手札:3

①グレムリフト・マッドグリッパー ATK1000 X素材1
②グレムリフト・ウィキッドディスターバー ATK1000 X素材1

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 ①  
□②□□□
□□□□□

フィールド魔法:1


【怜央】
LP4000 手札:2

①爆焔鉄甲 鍵発射弾(キー・ロケットボム) ATK900

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 □  
□①□□□
■□□□▲

フィールド魔法:1
▲永続魔法:1
■伏せカード:1
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ギャリガン「アタシのターン、ドロー!
スタンバイフェイズ時、フィールド魔法の効果でアタシは2000のライフを失うわ」
LP6000 → 4000

ギャリガン「魔法カード『グレムリフトの宴』を発動。
墓地から『グレムリフト』モンスターを復活させるわ。
アタシのライフが貴方のライフ以下の時、2体復活させられるわよ。
アタシと貴方のライフは同じ。ギリギリセーフね」

ギャリガン「復活させるのは『グレムリフト・スパークス』『グレムリフト・ピック』!」
オレンジ色とピンク色の小悪魔が攻撃表示で再びフィールドへ舞い戻る。

ギャリガン「『グレムリフト・スパークス』の効果発動。
墓地から復活した時、カードを1枚ドローできる」

ギャリガン「『グレムリフト・ピック』の効果発動。
相手の魔法・罠カード1枚を破壊する。
その永続魔法があると他のカードに手出しできないみたいね。
ならその『爆焔鉄甲補給戦線(スチームアーミー・サプリングバトルライン)』を破壊よ。
『グレムリフト』フィールド魔法がある時、この効果に貴方はチェーンできないわ」

グレムリフト・ピックは怜央のフィールドまで飛び跳ねると、
永続魔法を掴み、くしゃっと丸めるように破壊する。

ギャリガン「更に墓地の『グレムリフト・ギアジャム』の効果発動よ!
手札を1枚捨てて墓地から復活する!」

黒き小悪魔も場に現れ、フィールドのグレムリフトは5体となる。

ギャリガン「更に手札から捨てられた『グレムリフト・クランク』の効果発動。
『グレムリフト』の効果で手札から捨てられた時、
デッキから『グレムリフト』魔法カードを手札に加える。
アタシが加えるのは『グレムリフト・イービルサンダー』よ」


ギャリガン「アタシのフィールドの『グレムリフト』モンスターは合計5体。
つまり、2体のエクシーズモンスターの攻撃力は2500となるわ!」

ギャリガンの2体のXモンスターが天井を両腕で支えている。
鬼の描かれた天井からエネルギーが2体のXモンスターへと伝わり、
赤きオーラが2体のモンスターを纏う。
2体のモンスターの図体は攻撃力の上昇と共に、ギャリガンの背丈をも超える大きさとなり、
その分、天井も未だないほどの高さまで上がる。

遊次「まずい…!このまま攻撃が通れば…」
灯「怜央のライフは…」

ギャリガンのフィールド魔法の効果により、Xモンスターでしか直接攻撃できない。
怜央のフィールドの攻撃力900のモンスターとの戦闘もXモンスターでしか担えない。
それでも、合計戦闘ダメ―ジは4100。怜央のライフを削るには十分だった。

フィールドに伸し掛かる天井。
怜央のあらゆるプレイを制限し、常にギャリガンの有利な盤面で戦わなければならない。
窮屈さを極めるフィールドがより鬱屈とした感情を強めてゆく。
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【ギャリガン】
LP4000 手札:4

①グレムリフト・マッドグリッパー ATK2500 X素材1
②グレムリフト・ウィキッドディスターバー ATK2500 X素材1
③グレムリフト・スパークス ATK400
④グレムリフト・ピック ATK200
⑤グレムリフト・ギアジャム ATK300


カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 ①  
④②③⑤□
□□□□□

フィールド魔法:1


【怜央】
LP4000 手札:2

①爆焔鉄甲 鍵発射弾(キー・ロケットボム) ATK900

カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
 □  
□①□□□
■□□□□

フィールド魔法:1
----------------------------------------------------------------------------------------------------------


怜央は今、"永遠の奴隷契約"という、引き返すことのできない地獄への片道切符を握っている。
敗北すれば、同時に子供達の居場所も奪われることとなる。
怒りの連鎖から抜け出し、踏み出した1歩目の先…そこには崖が広がっていた。
その狭間を飛び越え、向こう側へと渡らなければ、
自分にとっても、子供達にとっても、文字通り未来はないのだ。


第22話「伸し掛かる天井」 完



襲い来る「グレムリフト」デッキの猛攻。
怜央は必死に抵抗し活路を見出すが、激昂したギャリガンは真の切り札を呼び出す。
小さき邪気は集いて巨悪となる。
僅かな命を繋ぎながら、怜央の内なる怒りの炎は沸々とその温度を高めていた。


次回 第23話「壁に非ず」
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