第30話：葵と瑞樹の昔話　作：風鼠

瑞樹「クシュン…」

葵「瑞樹、風邪ひいちゃったね～」

瑞樹「うぅ…気を付けてたのに…」

ベットの上で、小さくくしゃみをする

瑞樹母「瑞樹、体温計見せて。」

瑞樹「ぅ…はい」

瑞樹は腋に挟んでいた母親に体温計を渡す

瑞樹母「…37.8℃ね。瑞樹、今日一日は安静に寝てなさいよ。」

瑞樹「…はい。」

母親は体温計に表示された数値を確認し、瑞樹の頭を優しく撫でる

葵「今日は私がつきっきりで看病してあげるからね～♪」

杏奈「僕達もいるから、何か必要だったら言ってね。」

瑞樹「…えぇ。分かったわ。」

葵と杏奈はベットの近くで優しく微笑む。

カンナ「瑞樹ちゃん、おかゆできましたよ～」

瑞樹「あ、ありがと、カンナちゃん」

葵「あ！私が食べさせてあげる～♪」

カンナが生姜入りのおかゆを鍋に入れ、部屋を訪れ、葵はその鍋を受け取る

瑞樹「もう…」

葵「はい、あ～ん♪」

瑞樹「ん…」

葵がスプーンでおかゆをすくい瑞樹の口元へと運び、瑞樹はすこし躊躇いながらも口に含む

カンナ「口に合いますか？」

瑞樹「…美味しい。」

カンナ「よかったぁ…」

カンナは瑞樹の表情を見て、胸を撫で下ろす

杏奈「とりあえず、椿ちゃんと僕とで風邪に効きそうな物買ってくるけど…何か欲しいのある？」

瑞樹「そうね…飲み物が欲しいわね。」

杏奈「分かったよ。いこ、椿ちゃん」

椿「一杯買ってくるでぇす！」

杏奈と椿は手を繋ぎながら部屋を後にする

葵「えへへ～♪弱った瑞樹も可愛いなぁ♪」

瑞樹「そ、そんなに近寄ったら、風邪うつるわよ」

葵「瑞樹からならうつってもいいもぉ～ん♪」

瑞樹「もう…葵は…」

カンナ「ふふ♪ホント仲良しですね～」

ベットで横になっている瑞樹の顔に葵は笑顔を近づける

葵「瑞樹、何かしてほしい事ある？」

瑞樹「そうね…机の上の参考書、持ってきてくれる？」

葵「うん、分かった～」

カンナ「勉強するんですか？」

瑞樹「えぇ…勉強してないと落ち着かないし…」

葵「瑞樹らしいなぁ」

瑞樹は参考書を受け取り、黄色い付箋が張られたページを開く

カンナ「難しそうな内容ですね」

瑞樹「えぇ…名門大学の問題だから、難しいわ」

葵「もう大学の事考えてるって瑞樹すごいなぁ」

瑞樹「そ、そう？」

カンナ「はい。私は稽古だけで精一杯なのに、瑞樹ちゃん数年先の事まで考えてるなんてすごいです」

葵「ね～♪」

瑞樹「そ、そんなに褒めないでよ…もう…」

カンナが笑顔で言うと瑞樹は顔を少し赤めらせる

瑞樹「…ふぅ…ん？」

葵「(すやすや…)」

十数分後、瑞樹が視線を葵に移すと葵はベットに突っ伏しながら寝息をたて眠る

カンナ「あ…葵ちゃん寝ちゃってますね…お、起こします？」

瑞樹「起こさなくていいわよ。それより毛布を掛けてあげて」

カンナ「は、はいぃ…」

葵「(みずきぃ…すきぃ…)」

葵は笑顔を浮かべ、嬉しそうに寝言を言う

瑞樹「もう…」

カンナ「葵ちゃん、ホント瑞樹ちゃんの事好きなんですね」

瑞樹「好かれ過ぎて困るわ…」

カンナ「瑞樹ちゃんと葵ちゃん、どうやって仲良くなったんですか？」

カンナは興味深そうな口調で話す

瑞樹「そうね…あれは幼稚園を卒園して直ぐの頃に酷い風邪を引いちゃってね…」

瑞樹は思い出すように昔の事を話しだす…

・－・－・－・－・－

葵(幼稚園)『みずきちゃん、だいじょうぶ？』

瑞樹（幼稚園）『ケホっ…あ…あおいちゃん…風邪…うつっちゃうよ…』

葵(幼稚園)『みずきちゃんしんじゃやだあぁ！！』

葵母『こ、こら葵！さ、騒いじゃ駄目よ。』

葵は熱を出し、咳をしながらベットで寝ている瑞樹の横で涙を流しながら喚く

瑞樹母『葵ちゃん大丈夫よ。明後日には治ってるから…』

葵（幼稚園）『ホント？ホントになおる？』

瑞樹母『えぇ、治るわよ。』

葵(幼稚園)『やったぁ♪あ！わたしみずきちゃんのためにおかゆつくる～♪』

瑞樹母『あ！もう…』

葵母『ご、ごめんなさい、うちの娘が…』

数分後…

葵(幼稚園児)『みずきちゃん、おかゆできたよぉ～♪』

葵母『作ったの私だけど…』

葵(幼稚園児)『わたしがたべさせてあげる～♪』

瑞樹（幼稚園児）『ん…』

葵は元気よくおかゆをスプーンですくい、瑞樹の口へと運ぶ…

・－・－・－・－・－・－

瑞樹「この日この子人の為にここまで泣けて、役に立とうって頑張れる子なんだって…」

カンナ「葵ちゃんらしいですね」

瑞樹「そこからね。しっかりしようと心掛け始めたのも…」

葵「ふあぁ…みずき…何話してるのぉ…？」

葵は小さく欠伸をした後、目をこすりながら話す

カンナ「あ、葵ちゃん起きたんですね。」

瑞樹「カンナちゃんに幼稚園の葵との思い出を話してたのよ。」

葵「ふえ？どんな話？」

瑞樹は葵にカンナに話した内容を話す…

葵「そ、そんな事あったっけ？」

瑞樹「お、覚えてなかったのね…」

カンナ「あはは…」

杏奈「や、帰ったよ。」

椿「一杯買ってきたでぇす！」

杏奈と椿が両手に一杯商品が入った袋を持って部屋に入ってくる。

杏奈「瑞樹ちゃん、はい飲み物。」

瑞樹「ありがと、杏奈ちゃん」

杏奈は冷えた飲料を瑞樹に手渡す

椿「お薬も飲むでぇすよ？」

カンナ「しっかり寝るんですよ？」

瑞樹「…皆、ありがとう。心配してくれて…」

葵「皆、瑞樹の事好きだからね～♪」

瑞樹「もう葵は…そういう事言わないでよ…」

葵の発言に瑞樹は顔を赤めらせる
夕方…

杏奈「じゃ、長居しても悪いし、僕は帰るけど…葵ちゃん達はどうする？」

椿「…私も帰るでぇす。」

カンナ「そうですね～。私も帰ります」

葵「私はいる～♪」

杏奈「そういう事で僕達帰るから瑞樹ちゃん、早く元気になってね。」

瑞樹「えぇ分かったわ。」

そういって杏奈たちは別れの挨拶を交わし部屋を後にする

葵「えへ～♪久しぶりに瑞樹と二人っきり～♪」

瑞樹「そうね…」

葵「いろいろあったね～♪一座に入門して～♪学校行って～♪部活にも入ったよね♪」

瑞樹「…これからもっと忙しくなるわね…」

葵「もっと頑張ろうね♪」

瑞樹「えぇ…そうね。」

葵「えへへ～‥あ！瑞樹の晩御飯つくってこなきゃ～」

瑞樹「もう…」

夜
葵「ふあぁ…なんだか眠くなってきちゃった…一緒に寝よ～」

瑞樹「もう…ホントにうつるわよ…」

葵「うつってもいいもん♪その時は瑞樹に看病してもらうもん♪」

そういって葵は瑞樹に寄り添うように瑞樹のベットの中に潜り込む

翌朝…

瑞樹母「ふふ♪」

瑞樹＆葵「(すやすや…)」

次回予告？

彩愛「明日から歌舞姫制度の補欠合格の子達が来るわよ。皆よろしくね」

葵「やったぁ♪また友達増える♪」

瑞樹「もう…1か月だけど先輩なんだからしっかりしてよね。」

カンナ「どんな子が来るんでしょうか？」

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彩愛の日常

彩愛「ふぅ…やっと終わった…」

茜「や、彩愛。お仕事お疲れ。」

彩愛「茜もお疲れ様。」

茜「久しぶりに飲みにいかない？いつもの店でさ。」

彩愛「そうね。もちろん茜のおごりでね。」

茜「う…こ、今月きついからさ、わ、割り勘じゃ…駄目？」

彩愛「もう…仕方ないわね。」

1時間後…
彩愛「もうなんらのよ！わりゃしらけあんにゃにしごとおおいのよぉ！」

茜「彩愛、飲み過ぎだよ？」

彩愛「まだまんぞくしてないわよぉ！」

茜「(彩愛が酔いやすいってことすっかり忘れてた…)」