第３５話　一日前　宴の準備と光の来客　作：白金　将

～午前　市場～
聖戦士「……」
聖戦士（今夜は女王の酒に付き合わなければいけない……）
聖戦士（何か肴になるものはあるだろうか……そう言えば女王は乾きものが好きだった）

格闘戦士「いらっしゃい」
聖戦士「魚屋に聞くのもなんだが……酒に合う物を探してるんだ」
格闘戦士「酒に合う、ねぇ……そうだ、こいつがある」
格闘戦士「ビック・ジョーズの身を乾燥させたもの……『とば』とも言うらしいがな」
聖戦士「とば、か……初めて聞く言葉だ」
格闘戦士「それを細切れに切った奴を袋詰めにして売ってる。一本食ってみろ」
聖戦士「ふむ……」ﾊﾟｸｯ

聖戦士「なるほど、噛めば噛むほど味が出る」
聖戦士「貰って行こうかな」
格闘戦士「あいよ……今夜のつまみか？」
聖戦士「そんなところだな……女王が喜ぶといいが」
格闘戦士「コレが嫌いなやつは聞いたことがない。自信を持って持っていきな」
聖戦士「感謝する」



～昼　広間～
賢者「この時期はやっぱり人が多いわね……」
賢者「今夜の準備をしておかないと」
訓練生「あ、賢者さん」
賢者「あら、妹さんじゃない。こんな所でどうしたの？」
訓練生「手伝いをしようかと思って……」
賢者「それじゃ、薪を運ぶのを手伝ってくれる？」
訓練生「はい！」

賢者「お姉さんがいなくなって二か月だけど、もう慣れた？」
訓練生「うーん……たまに思い出して、寂しくなりますね」
訓練生「女戦士さんが入れ違いでやって来たけど、やっぱりたまに会いたくて」
賢者「彼女はどこを旅してるのかしらね……」
訓練生「なんだか、『もけもけ』を見に行くんだって言ってましたね」
賢者「もけもけ、ね……そう言えばお姉さんはかわいい物好きだったかな」
賢者「いたずら好きの四角い天使、だったかしら」
訓練生「私も見てみたいですね……もけもけ」

訓練生「そう言えば、賢者さんはトーナメントの期間なにしてるんですか？」
賢者「私は食堂の手伝いね。食べ物の注文が多くなるから」
賢者「会場の近くに屋台を構えるから、お腹が空いたときは来なさい？」
訓練生「ありがとうございます！　是非行かせてもらいますね」



～昼　射手の家～
女戦士「ＺＺＺ……」
射手「ＺＺＺ……」

女戦士「むにゃ……ＺＺＺ……」ｷﾞｭ



～午後　女王の間～
女王「……」
女王「……」
女王「……宴が待ち遠しい」
女王「毎年トーナメントの宴の為に生きてるって本当ね」
女王「もっともそれじゃあ為政者としては失格かもしれないけれど……」
？？？「ごもっともです」
女王「相変わらず堅苦しいのね、エアトス」
ガーディアン・エアトス「……そうですか？」

女王「せっかく一年ぶりに来たんだからもっとゆっくりしていきなさいよ」
エアトス「む……女王といると相変わらず調子狂わされます」
女王「心外ね」
エアトス「私の仕事は負傷者の治療なんですから」
エアトス「女王とお酒を飲むことじゃありません」ﾂｰﾝ
女王「一年経ってもあなたは頑固……ま、それがいいんだけど」
エアトス「何の話です？」
女王「なんでも」ﾆｺﾆｺ

※エアトスさんは風属性ですが光の国に関わる人、ということになっています