第５３話　最終日　エキシビジョンマッチ①　作：白金　将

～午後　死闘場の控室～
女戦士「……いちおう、優勝は決まってるんだよね」
女戦士「それでもやっぱり緊張するなぁ……女王様とも戦うんでしょ？」
射手「そうらしいんだし」
射手「でも、女王様が戦う所は私も含めて見たことがないんだし」
射手「めちゃくちゃ強いって聞いたことがあるけど……正直どうなんだし？」

射手「それに、聖戦士さんの力は圧倒的な物があるんだし」
射手「うっかりしてるとすぐにやられるんだし」
女戦士「怖いよぉ……」
女戦士「ううっ、でも、戦う前から負けちゃ駄目だよね」

女戦士「……よしっ、準備できた！」
射手「これが最後なんだし……！」

吹き矢兵「出番だ。最後の戦い、誇り高く行け！」
２人「「はいっ！」」



～昼　死闘場～

ｷｬｰ　ﾜｰﾜｰ　ﾋﾟｭｰ　ｲｹｰ

女戦士「凄い人だかり……これがエキシビジョンマッチ……」
射手「里の仲間がほぼ全員集まってるんだし……」

女戦士「……あ、剣士さんと訓練生さんもいる」
射手「スカウトさんたちもあそこに……何だかやりづらいんだし」
女戦士「恥ずかしくない戦いをしないようにね」

ｷｬｰｷｬｰ　ﾜｰﾜｰﾜｰﾜｰ

女戦士「あれ、歓声が一気に盛り上がって……」
射手「女戦士さん、来たんだし」



聖戦士「……」ｺﾞｺﾞｺﾞ
女王「……」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞ

女戦士（す、凄い威圧感……目の前に立つだけで負けちゃいそう……！）
射手（里の中でも絶大な支持を集める二人……そりゃ客も盛り上がるんだし）
射手（女王の武器は大剣……体の大きさぐらいあるんだし）

女王「私が女王だからと手加減はいらないわよ。真剣な勝負ですから」
聖戦士「……よろしく」
女戦士「よ、よろしくお願いします！」
射手「よろしくなんだし」

女戦士（大丈夫かな大丈夫かな大丈夫かな）ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
射手（女戦士さん……完全に呑まれたんだし）
射手（そう言う私も緊張してきたんだし……）ｱｾｱｾ



格闘戦士「……お二方も準備が出来たようですね」
吹き矢兵「始めましょう」

４人「……」ｺｸﾘ

格闘戦士「アマゾネスカップ、エキシビジョンマッチ……始めぇぇぇぇ！」





～午後　死闘場～
女戦士「行くよ、射手ちゃん！」
射手「了解なんだし！」

聖戦士「女王。一人で十分です」
女王「……その言葉、期待しておくわよ」
聖戦士「はっ」

聖戦士「どこからでもかかって来い」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞ
女戦士「」ﾋﾔｰｯ

女戦士「そいやぁ！」ﾌﾞﾝｯ
ｶﾝｯ
聖戦士「……？」ﾌﾞﾝ

ｶﾞﾝｯ

格闘戦士「一本！」
女戦士「そんな……早すぎる……」
射手（聖戦士さんはおそらくアマゾネスで最強……無茶しちゃいけないんだし……！）



射手「援護するんだし」ｽﾊﾟｯ
聖戦士「……！！」ｶﾝ☆ｺｰﾝ

ﾊﾞｼｯ

聖戦士「ふぅ」
射手「あ……ああ……」

ｷｬｰｷｬｰ　ﾌﾞｺﾞｫ　ﾊﾞﾀﾝ　ｷｬｰ

女戦士「飛んでる矢を……手で掴んじゃった……」



剣士「こりゃあ聖戦士の方が何枚も上をいってるな……」
賢者「聖戦士様……今日も凛々しいお姿で……」
訓練生「一人で二人を相手に出来るなんて凄いです」
スカ黄「聖戦士さんすごいね……」
スカ青「うん」ｺｸﾘ
調教師「こりゃあ予想外だ……」
虎「ｸﾙﾙ」

剣士「賢者、お前だけなんか違う」
賢者「あら……？」



聖戦士（ああ……この感覚、一年ぶりだ。懐かしい……）
聖戦士（死闘場の真ん中で剣を持ち、相手と戦う時のこの感覚……）

聖戦士（体中に突き刺さる視線……）
聖戦士（皆の好奇な目で見られているこの感覚……）ｿﾞｸｿﾞｸ

女王「……聖戦士、大丈夫？　無理しなくてもいいわよ」
聖戦士「……」ﾎﾞｫ

女戦士「そいやぁ！」ﾌﾞﾝｯ
聖戦士「……！」ｶﾞﾝｯ
女戦士「そいやそいやそいやぁぁぁぁ！」
聖戦士（早い……向こうも剣撃の速度を上げて来たか……）

射手「援護射撃なんだし！」ｽﾊﾟｯ
聖戦士（二手から来た……！）

ｺﾝｯ

吹き矢兵「一本！」
射手「まずは一回……！」
聖戦士「……フン」



～午後　医療テント～
エアトス「久しぶりですね、カウストさん」
セイクリッド・カウスト「お久しぶりです。エアトスさん」

カウスト「このような形で会うことになって残念ですが……」
カウスト「『例の場所』の様子がこれまで以上に不穏になっております」
カウスト「おそらく、私たちが考えている最悪の事態は避けられないかと」
エアトス「そんな……」

カウスト「他のガーディアンの方たちとは連絡を取らなくて大丈夫ですか？」
エアトス「私たちの仲間は遠い所にいるので大丈夫ですが……」

エアトス「もしかしたら、ここはその影響を受けるかもしれません」
カウスト「そうですか……」

カウスト「大事な事を忘れていました」
カウスト「もうじき、我らセイクリッドの軍がここ、下界に降りてきます」
カウスト「どうか、あなたは安全な場所に避難していただきたい」
エアトス「……」

エアトス「私は、ここに残ります」
カウスト「……成程、分かりました。あなたの決意を尊重すると、上に伝えます」
エアトス「ありがとうございます」
カウスト「では、必ず、また会いましょう」ｽﾀｽﾀ



エアトス「……女王様となら、死んでも構わないんだから」ﾎﾞｿｯ