第６２話　次元の裂け目を超えて　作：白金　将

～？？？　誰かの家～
？？？「一応拾ったけど」
？？？「これは一体……？」
女戦士「ヴェア……」

女戦士「ギャアアアアァァァァ！」ｶﾞﾝｶﾞﾝ
？？？「……！」
？？？（鎖で壁に縛り付けておいて正解だった……）
？？？（見た目は可憐な女戦士だけど、何かに侵食されてる……？）

女戦士「ギシャアアアアァァァァ！」
？？？「……様子見かな」



～数日後　誰かの家～
女戦士「……」
？？？（静かになったね）
？？？（流石に三日三晩叫び続けるほどの体力も残ってなかったかな）
？？？（一応食事は摂らせてるから死なないだろうけど……）
女戦士「……シャ……シュ」
？？？「……！」

女戦士「射手……ちゃん……」
？？？（その名前……まさか、この子って……！）




～ヴェルズ襲撃から数日後　朝　射手の家～
訓練生「射手ちゃん、起きてますか？」
射手「……」ｺｸﾘ
訓練生「元気ならよかった」
訓練生「ご飯、食べてる？」
射手「……」ﾌﾘﾌﾘ
訓練生「そっか……」

訓練生「ご飯食べないと元気でないよ？」
射手「いい」
訓練生「射手ちゃん……」

訓練生「また今度来るからね」
射手「……」



～朝　図書館　賢者の部屋～
賢者「訓練生の家にお姉さんが帰ってきたみたいね」
剣士「らしいな。しかし、一体あいつはどこで何してたんだか」
賢者「代わりに、女戦士さんがいなくなっちゃったけど……」
賢者「……射手の様子も心配ね」

剣士「なあ」
剣士「訓練生に様子を見に行かせてるが……」
剣士「射手と訓練生は全く真逆の立場だ。スカウト辺りに変えた方がいいんじゃないか？」
賢者「私もそう思ってるんだけど……」
賢者「訓練生のお姉さんがそう言ってるらしいわ」
剣士「ふむ……」

剣士「彼女も大分変わってたな……」
剣士「なんか変な生き物も連れてきてた……あー、名前思い出せねぇ」ｶﾘｶﾘ



～昼　射手の家～
射手「……」
射手「……」ｸﾞｽﾝ

スカ黄「射手ちゃーん」
射手「……なに？」
スカ黄「……やっぱり、元気ないね」
射手「別にいいんだし」
スカ黄「ううっ」
スカ青「……」ﾊｧ

スカ黄「これ、今日の分の買い物だよ」
スカ黄「ずっと家にこもってないで出ておいで、だって」
スカ青「……無理はしなくてもいい」
射手「……」

射手「……ありがと、なんだし」
スカ黄「それじゃ、また……ね」
スカ青「また」


射手「……何もする気が起きないんだし」
射手（なんで私だけ生き残っちゃったんだし……？）







～？？？　誰かの家～
女戦士「……」
女戦士「……あれ」
？？？「……」ｳﾄｳﾄ

女戦士「ここは……？」
女戦士（身体が鎖で拘束されて動けない……？）
女戦士（それにこの人は……）

女戦士「あの」
？？？「……あれ」ﾊﾟﾁ
？？？「落ち着きましたか」
女戦士「え？」

？？？「あなたはここに来てから数日程ずっと吠えていました」
？？？「そしてまた数日は眠りについて……」
女戦士「なんにも覚えてない……」

？？？「いったいどれ位眠ってたと思います？」
？？？「……軽く一か月ですよ」
女戦士「……！」



？？？「申し遅れました」
？？？「私の名前は鎖使い……見ての通り、アマゾネスの者です」



女戦士「アマゾネス……」
女戦士「わ、私は、女戦士です。アマゾネスの里から来ました」
鎖使い「やっぱりそうだったのね……知り合いの名前を呟いてたから薄々分かってたけど」
女戦士「知り合い？」

鎖使い「射手の名前をうわ言のように言い続けてたの」
鎖使い「私の妹……訓練生の友達だからね」
女戦士「それじゃ……あなたが、訓練生のお姉さん？」
鎖使い「そういうことになるわね」

？？？「」ﾓｹｰ
女戦士「ん？」
鎖使い「ああ、すいません。私の大切な友達で……ほら、おいで」
？？？「」ﾓｹﾓｹｰ

鎖使い「この子たちは『もけもけ』って呼ばれてるんです」
鎖使い「知り合った経緯を話すと少し長くなりますけど」
女戦士「もけもけ……かわいいねぇ」
もけもけ「」ﾓｹｹｰ

鎖使い「……そうだ。これも伝えないと」
鎖使い「女戦士さん、どうやってここに来たか覚えてます？」
女戦士「ええっと……」

女戦士「何か変な物に巻き込まれて、ですか」
鎖使い「なるほど……」


鎖使い「女戦士さん。ここは、俗に言う『異次元』の世界なんです」
女戦士「えっ……」





鎖使い「私は里を出ていろいろな世界を回っていました」
鎖使い「炎の国、氷の国……いろいろ回って、途中でもけもけの住処に寄ったんです」
鎖使い「その時に悪戯で落とし穴に落とされてしまって」

鎖使い「気が付いたらここにいました」
鎖使い「この子は巻き添えを食ったかわいそうな子です」
もけもけ「」ﾓｹｰ
鎖使い「異次元についてはいくらか文献を漁っていたのですぐにわかりました」

女戦士「そんな……」
女戦士「それじゃ、どうやって元の世界に？」
鎖使い「……」

鎖使い「あなたの話を聞いてピンときたところがあるんです」
鎖使い「おそらく……あなたは、異次元と元の世界を行き来する力を持っています」