最終話　君じゃなきゃダメみたい　作：白金　将

～朝　図書館　賢者の部屋～
賢者「ZZZ……」

ｶﾞｽ

賢者「う……」
賢者「誰？　叩いて人を起こす無礼な人は……？」
剣士「私以外にいると思うのか」
賢者「まったく」

賢者「それで……ふぁぁ、朝から来てどうしたの？」
剣士「ずっと前から引っかかっていたことがあってだな」
剣士「なんでお前はラメイソンの人とつながりがあったんだ？」
賢者「？」

賢者「女王様の同人誌を刷ってもらうときにいろいろ協力してもらったり」
剣士「いやちょっと待てお前同人誌作ってたのか」ｶﾞﾀｯ
賢者「情報交換ついでに同人誌もらったり」
剣士「おいちょっと待て何の情報を交換したんだ」ｶﾞﾀｯ
賢者「王立魔法図書館から持ってくるときはエンディミオンの人にもお世話になったな」
剣士「だからその人脈はどこから」
賢者「女戦士さんや射手ちゃんや剣士や聖戦士様の同人誌とかもらうときに」
剣士「」ｶﾝｺｰﾝ

剣士「私の同人誌まであるのか？」
賢者「あ」
剣士「よーしちょっと部屋の掃除をするぞー」ｻｯｻｯ
賢者「あ、だから、部屋は自分で……！」

ｶﾞﾗｶﾞﾗﾄﾞｯｼｬｰﾝ

賢者「あっ、棚が……」
剣士「わりぃわりぃ……お、もしかしてこれか？」
賢者「はうわっ……」//
賢者「見ちゃダメー！」ﾊﾞｼﾝﾊﾞｼﾝ
剣士「いてぇ！　いてぇって！」


～朝　食堂～
調理師「朝から飲んでるのかお前らは」
格闘戦士「今日は物を運ぶ仕事がないからな」ｺﾞｸｺﾞｸ
吹き矢兵「私は気ままに暮らしているだけですよ」
格闘戦士「なくなったから代わりをくれ」ﾋｮｲ
調理師「はいはい」ﾄﾝ

調理師「それはそうと」
調理師「２か月か……大分長くかかったな……」
格闘戦士「ああ、女戦士のことか」
吹き矢兵「確かに長かったですね」ｺﾞｸｺﾞｸ

格闘戦士「さて、あいつはどうなったものか」
吹き矢兵「まだ私の近くで小さくなっていた頃が懐かしいな……」
調理師「そうか、お前にとっちゃ子供みたいなものか」
吹き矢兵「そりゃーそうだよ。我が子の一人立ちって言えばいいのかい？」

格闘戦士「一人立ち、か……」
格闘戦士「ところでお前さん、この先はずっとここで食堂やってくのか？」
調理師「俺か？」
調理師「……そうだな、お前らには言っておくか」

調理師「俺はこの里を出ることにしたよ」
格闘戦士「お前の料理が食えなくなるのか……結構寂しいなぁ」
吹き矢兵「酒も他の所から工面しないといけませんかね」
調理師「それなんだがな」

調理師「バテル……とか言ったかな。あいつが帰る前にダメもとで交渉したんだよ」
調理師「そしたら、異次元で店を開いたらどうだって言われてね」
格闘戦士「……は？」
吹き矢兵「どういうことだ？」

調理師「どうもこの辺には次元の『穴』が大量にあるらしくてな」
調理師「誰かが作ったその穴ぼこを使ってこの里とつなげることが出来るそうだ」
格闘戦士「ふむ」
調理師「一か月前にその作業が終わって、向こうの店も出来てきた頃だからな」

調理師「ま、簡単に言えば、お前らはまだまだ飲めるってことだ」
格闘戦士「それが聞けて良かったよ」
吹き矢兵「異次元で飲む酒……なかなか楽しそうですねぇ」


～朝　？？？～
訓練生「調教師さんに呼ばれてここまでやって来たけど……」ｻﾞｯｻﾞｯ
鎖使い「森の奥みたいね。普段は私たちもあまり近寄らない場所……」ｻﾞｯｻﾞｯ

虎「ガルル」
調教師「ふむ……お前の勘がこっちだと言ってるんだな」
訓練生「こんな朝早くに森の中を歩いてどこに行くんです？」ｻﾞｯｻﾞｯ
虎「ｸｰﾝ」ﾀｯﾀｯ

調教師「お、この匂いは……近いな」
訓練生「ん」
鎖使い「変わった匂いがしますね」
調教師「そりゃな」

鎖使い「……この匂い、どこかで嗅いだことが」
訓練生「それっぽい所があったの？」
鎖使い「うん」

虎「ガウガウ！」
調教師「お、着いたな。よーし、よくやったぞ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
虎「ｸｰﾝ♪」
訓練生「ここは……」
鎖使い「あっ」

弩弓隊２「隊長！　秘湯に別のアマゾネスが入ってきました！」
弩弓隊隊長「構わん！　温泉は皆の物だ！」
弩弓隊３「隊長の空のように広く」
弩弓隊４「異次元海溝のような深さを持った」
弩弓隊５「厚いお志に万歳！」
他「万歳！」

三人「……」

調教師「暑苦しい先客がいたな……まぁ、いわゆる『秘湯』って奴だ」
訓練生「わぁ」
鎖使い「懐かしいなぁ……私も一回入ったっけ」
調教師「よし、お前らも服を脱げ！　温泉に入るぞ！」
二人「はい！」


～朝　女王の間～
女王「そろそろ帰っちゃうのね」
エアトス「残念ですが、私には向こうでの仕事もあるので……」
聖戦士「気を付けて」
エアトス「はい」

女王「スカウト。エアトスを里の外まで送り届けなさい」
スカ黄「はい！」ｽﾀｽﾀ
スカ青「わかりました」ｽﾀｽﾀ
エアトス「ありがとうございます」ｽﾀｽﾀ



女王「最後まで堅物だったわね……」
聖戦士「彼女は真面目なのが取り柄ですから」
女王「それはそうと……この間あなたの家に行ったとき『これ』があったんだけど」
聖戦士「……！」

聖戦士「な、なんですかその卑猥極まりない下劣な本は！」ｶﾞﾀｯ
女王「卑猥なんて失礼ねぇ。あなたの部屋にあった『私』の本なのに？」
聖戦士「それは……その……」//
女王「大丈夫よ」

ｷﾞｭ

女王「私があなたを嫌いになることなんてないから」ﾁｭ
聖戦士「ぁ」

聖戦士「あ゛ああああぁぁぁぁ」
聖戦士「」
女王「あら」

女王「幸せそうな顔をして気絶するんじゃないわよ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
女王「でも、やっぱりあなたはかわいいわね……」



スカ黄「エアトスさんはどうして里から帰っちゃうの？」ｽﾀｽﾀ
エアトス「向こうでガーディアンとしての、お仕事がある……から」
スカ青「頑張って」
エアトス「うん」

エアトス（帰りたくない……）
エアトス（去年も帰った後のあの虚無感に押しつぶされそうだった）
エアトス（だから……私は……）

スカ黄「エアトスさん？」
エアトス「……大丈夫。長い別れじゃないから」
スカ青「？」

エアトス「女王様に伝えておいて」
エアトス「私、ガーディアン辞めます」
二人「……！」
エアトス「一応いろいろやらなきゃいけないことがあるから帰るだけだよ」

エアトス（この日のために手紙でいっぱい根回ししたんだから……！）


～朝　魔導書院ラメイソン～
バテル「……」
バテル「なんかまた変な物がポストに……」

「女戦士さんの受難　~second edition~」

バテル「あそこの賢者さんは本当におかしい……」
ジュノン「バテルー？　今部屋に入っていい？」
バテル「わわわっ、ちょっと待って」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ





～朝　射手の家～



ﾕｻﾕｻ




ﾕｻﾕｻ



射手「むにゃむにゃ……」




ﾕｻﾕｻ

射手「む……？」ﾑｸｯ


女戦士「おはよう」ﾆｺｯ



射手「……」


射手「お姉ちゃん……！」ｷﾞｭ
女戦士「甘えん坊さんだねぇ」ｷﾞｭ

射手「やっと起きた……お姉ちゃん……」ｸﾞｽｸﾞｽ
女戦士「あはは」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ



女戦士「ただいま！」