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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第25話:守れない意志

第25話:守れない意志 作:ドクダミ2号

翔「………。」
講演って聞いていた。確かにそう言っていた。だがこれは………
翔「会議………だよな。」
一ノ瀬「ははは………確かにそうかもしれないですね。まぁでも講演もあとでやるので、大丈夫ですよ。」
翔「あっそう。……俺は何すればいい?」
一ノ瀬「うーんとですね。あれです。助言をしてくれれば良いです。」
翔「ふ〜ん。そか。中々面白そうな面子だな。」
見渡すだけでも何となく分かる。こう見えても人間観察は得意だ。
翔「ま、好きにやってちょ。適当に指摘するから。」
そう言った時、長野と言う名札を付けた男がこちらを睨んで叫んだ。
長野「貴様!ここに何しに来ている!!」
翔「うわ、めんどーな奴がいるよ。苦手なんだよな、こう言う真面目ちゃん。えーと、長野臥竜くん?言葉に気をつけろよ。」
長野「貴様等の様な奴に言葉を気を付ける必要などない!!」
翔「クッソメンドウ。誰かあいつを止めて。」
一ノ瀬「臥竜くん?あの、その……喧嘩を売らないでね?」
その場の全員が首を縦にふる。
長野「ふん!さっさと議題を出せ!」
翔「えらそーにしやがって………はいはい。ってか俺がやんのかよ……。」
長野「貴様が当事者だろう?当然だと思うのだが?まさかそんな責任がーーー」
その時、体が勝手に動いた。動いてしまった。俺は臥竜の首元に剣を突きつけていた。
翔「少し……黙れ。うるさいぞ。」
剣はカチャという音を立てる。だが臥竜の表情は変わらない。
臥竜「それで脅してるつもりか?」
男子生徒「お前ら良い加減にしろよ!!」
翔「……。悪い、感情的になりすぎた。」
一ノ瀬「先輩……相変わらずですね。」
翔「はは……乾いた笑いしかでねぇよ。」
一ノ瀬「話を戻しましょう。それで教団についてですが、現在暴走集団、リミットチェッカーズと組んでいる事が分かっています。」
翔「そうそう、忘れる前に。教団の名前をな。」
一ノ瀬「え……、分かったんですか?」
翔「ふっ実はだな………。」
ナナリアについて話していく。ナナリアは元々あちら側にいた奴だから、その事についてある程度は知っていると………
臥竜「なるほどな、お前は敵である女性を何の疑いもなく仲間に引き入れる能天気な奴だと言うのがよく分かったよ。」
翔「……ボケ殺すぞ……とにかく、その教団の名前は………ディスペアー。……あのさ、これどういう意味?」
臥竜「自分で調べるんだな。」
翔「年下が………、一ノ瀬分かる?」
一ノ瀬「……まんま絶望って意味です。」
翔「お、おう。なるほど。何ともいえねぇ……。」
男子生徒「っで、具体的にどの様な対策をとるかですが………。」
遂に本題がやって来たが………はっきり言えばこいつらはアレを甘く見ている。

翔「………はぁ。甘ちゃん共が。」
臥竜「何だと!?」
翔「………あのさぁ、普通に考えてくれ。事実を知る者を殺しにかかってくる様な連中が、そんな何だっけ?登下校するとき周りに気を配るだとか、何かもう小学生のヤツみたいな感じでどうにか出来るわきゃないだろって。」
臥竜「ならば貴様はどうするんだ?」
翔「………とにかくあれだ、頑張って戦うのさ。それしか道は無いし。」
臥竜「……やっぱりこいつはあてにならん。」
翔「……言っとけ。死にたいならな。」
麻美々「臥竜くん。その通りだよ。翔さんは直接戦ってる人物なんだよ?麻美々はそう思うな。」
彩香「私もそう思うわ。」
臥竜「ふん。知らんわ。俺は自分で何とかする。こいつなぞ当てにしてたらろくな事がなさそうだ。」
翔「かー!!メンドクセッ!!」
黒斗「………。」
一ノ瀬「黒斗?どうしたの?」
黒斗「いや………別に。」
翔「そういや黒斗ってもしかして、お前の弟か?」
一ノ瀬「え?あ、はい!そうです。」
一ノ瀬の一家とは面識がある。弟の事も知っているが………妙に暗いというか……。
翔「……クールと無口を間違ってない?」
黒斗「……いや、何が言いたい?」
翔「いやぁ何となく。まぁいい。」
その後も話し合ったが、ロクな結論は出ず………そのまま、夜になってしまった。
一ノ瀬「ふあ〜〜。あふ。どうします?」
臥竜「こいつのせいで、結論が出なかったな。」
翔「………。」
黒斗「そうでもないんじゃない…?」
臥竜「?」
黒斗「少なくとも、組織について分かったんだし………てかあんた、人のせいばっかにしてさ、恥ずかしくないの?」
臥竜「何だと!?」
翔「こーら!喧嘩すんなボケ!」
彩香「貴方が言う事ではないと思いますよ?」
翔「グググ……とにかく!明日の講演での発表はどうするんだ!?」
一ノ瀬「うーん、講演は明日の夕方から……だから、明日の朝また話し合うのはどうです?もうなんだか眠くて………。」
黒斗「賛成。これ以上は無意味だ。」
臥竜「……ふん!良いだろう!」
翔「ヤケに好戦的だなぁ……何かあったのか?」



一ノ瀬たちに連れられ、寮のある場所に行く。見た感じ豪華でもなく、質素でもない。いたって普通に寮であった。
一ノ瀬「ここです。翔さんはこちらの部屋になります。」
翔「ありがと。……ん?ベットが二つあるな?もしかして他にも?」
一ノ瀬「はい。黒斗と同部屋です。」
黒斗「よろしく。」
翔「そうか、よろしくな!」
一ノ瀬達が去り、翔と黒斗だけになる。
翔「なぁ、お前って……いつからそんなになったんだ?」
黒斗「何がだ?」
翔「性格だよ。昔はもう少し、普通というか……そこまで暗いやつじゃなかったよな?」
黒斗「別に……どうでも良いじゃん。」
翔「………まぁでも、あの家族の中じゃ2番目にまともだったからな。信用はしてるが。」
黒斗「2番目?………あぁ、1番目はねぇちゃんか。」
翔「そ。まぁ……被害者な訳だし、まともじゃなかったら俺は知らないやつのフリをするがな。」
黒斗「あんたは………まともじゃないな。」
翔「言うよね〜。……まともじゃないか……褒め言葉だ。バーン。」
黒斗「………。」
翔「突っ込めよ……!」
黒斗「かっこいい事言えてよかったね。良い子だねー。おぉ痛い痛い………。」
翔「このやろう………。」
そんな会話が長い間続く。その中で俺は、黒斗が何度も窓を見てる事に気が付いた。
翔「雨でも降ってるのか?」
黒斗「いや……降ってない。ただ……今夜は雨が降りそうだなって。」
翔「分かるのか?」
黒斗「まぁな。何となくだが。」
翔「何だそりゃ………。まぁいい。風呂でも入ってくるか。」
黒斗「行ってらっしゃい。地獄にね。」
翔「冗談がドギツイぜ……全く。」




黒斗「行ったか………。……こちら黒斗。準備を始めよう。」
???「もう良いのね?」
黒斗「構わない。始めるぞ。」
???「分かったわ。ほら!準備始めるって!」
???「えー!?もう!?うぅ……分かったよ〜。」
黒斗「じゃぁ始めようか。彩香、麻美々……。」


翔「ふぃ〜。さっぱりした。……あ?誰もいないな。黒斗の奴どこ行った?」
少し黒斗の事が心配になり、外に出る。そきで一ノ瀬とばったり出会う。
一ノ瀬「ひゃ!びっくりしたぁ〜。驚かさないで下さいよぉ!」
翔「悪い悪い。黒斗見なかったか?」
一ノ瀬「実は私も探してるんです。もうそろそろ消灯時間になるのに……。」
翔「うーん……まぁ部屋にいれば戻ってくんだろ。」
一ノ瀬「そうですね、戻りましょう。」
戻って来る。そう思って翔達は部屋に戻った。この決断が大きな間違いだったと気づくのはすぐの事であった。

翔「……ち。戻ってこねぇな。なんかあったのか?」
もうとっくに消灯時間は過ぎている。にも関わらず黒斗は戻って来なかった。
ミラ「………ねぇ。」
久しぶりにミラが話しかけて来た。どうやらヴァルもいる様だ。
翔「どうした?」
ヴァル「さっきなんですけど……黒斗さん、何処かと連絡を取ってたみたいですよ。」
ミラ「しかも、準備だとか始めるだとか言ってた。もしかしたら何か企んでるかも……。」
……どういう事だ?黒斗が俺が出た後にそんな連絡を……?サプライズなら良いんだが………。
翔「……外に出るか。」

ドアを開け外に出る。その瞬間、とんでもない光景を目の当たりにする。
翔「………!?火が!!クソ!まさか………。皆!起きろ!!」
火事……何だろうが、何だか怪しいというか……少なくとも事故には見えない。そもそもコンクリートの建物が燃えるなんて、故意じゃなきゃ基本的に無理だ。
一ノ瀬「何々!?何ですかこれ!?」
翔「知るか!!クソ!何で消えねぇ!」
臥竜「く……!何で火なんかが………。」
一ノ瀬「……は!黒斗は!?黒斗!!」
翔「………彩香と麻美々もいねぇぞ!!」
どうなってやがる……この状況じゃあの3人が怪しいが………クソったれ!!
黒斗「助けてくれ!!」
翔「!?」
黒斗の声がする。どうやら火の向こう側にいる様だ。
黒斗「熱い……!何でこうなった!!」
翔「……て事は、黒斗は違うって事か……!待ってろ!今助けるぞ!来い!メタルフェルグラント!!」
翔の掛け声と同時に、巨大な竜が出てくる。肩にはガトリングを携え、胸には胸当ての様なものをつけている。
翔「頼む!メタルフェルグラント!黒斗を!」
メタルフェルグラントは静かに頷くと、火のある所に手を突っ込んだ。そして勢いよく引っ込めた。手には黒斗が握られていた。
翔「よかった………!」
黒斗「おぉい!何だこれ!」
翔「説明してる暇はねぇ!早くあの2人を見つけ出すぞ!」


登戸アカデミア本館屋上にて……彩香と麻美々の2人が何かを話していた。
彩香「あらあら………うふふ。皆必死だね。」
麻美々「そうだねー。キャハハ!見てあそこ!燃えちゃってるよー!キャハハ!」
彩香「相変わらず悪趣味ね………ん!?」
麻美々「どうしたの?」
彩香「……あれは!翔!?っち!やられてなかったか!!」
麻美々「もう力尽くでやっちゃう?それでも良いよ。」
彩香「……黒斗。………裏切るつもり?」
麻美々「うっそ!?本当だ!あんな所に……いやそう言えば………。」

彩香「………それ、本当?」
麻美々「うん。麻美々はそう聞いてたけど。」
彩香「そう……じゃぁ気にする必要はないわね。行きましょう。」
麻美々「うん!」

その頃翔は、黒斗達を連れて建物からの脱出をしようとしていた。
翔「……ダメだ!ここも塞がってる!!」
黒斗「く………ここは!?」
一ノ瀬「っあ!ここなら行けそうです!」
翔「本当か!?行け!」
臥竜「言われんでも!!」
何とか見つけた道を走り出口に向かう。しかし………
翔「ハァハァ……。!?」
一ノ瀬「え?彩香ちゃん!麻美々ちゃん!!」
翔「ここにいたか………、おい!」
彩香「何?」
翔「っけ……早く出るぞ!」
麻美々「うん!」
その言葉同時に翔は彩香をホールドし首元に尖った瓦礫を近づけた。
彩香「!?」
麻美々「早い!」
翔「残念だったな。気付いてないと思ってたか。」
彩香「……黒斗!」
麻美々「………ち!」
黒斗「………。」
2人が黒斗の方を見る。不思議に思った一ノ瀬が黒斗に声をかける。
一ノ瀬「どういう………事?」
黒斗「……俺は……関係ない。そいつらの妄想じゃないか?」
その言葉に翔が反論する。
翔「……ちげーだろ。お前は確かに直前まで、こいつらの味方だった。違うか?」
黒斗「!」
一ノ瀬「え?黒斗………。」
黒斗「まぁな……だが、止めた。こんな事して何になる。」
一ノ瀬「………。」
翔「さぁて、お前らの味方はいなくなったぞ。」
彩香「く……でも、ここで私を捕まえてどうするつもり?貴方の大切なお仲間の居場所が分からなくなるだけよ?」
翔「…!アリスの居場所を知ってるのか!?」
彩香「ふふふ………。」
翔は静かに彩香を離す。しかしその手は変わらず、彩香の首に瓦礫を突きつけている。
麻美々「残念だったね。イケメン君♪もっと良い人だったら、麻美々の彼氏にしたいくらいだったのに。」
その時、壁の横側から何か触手の様な物が出てき、翔を拘束した。
麻美々「うふふ♪やっぱり私の彼氏にならない?代わりに私達の仲間になってね♪」
翔は黙り込んでいたが、やがて口を開いた。
翔「悪いな、俺はもっと良い女性を見つけたんでな。お前なんか……アウト・オブ・眼中だ!」
そう言うと翔は勢い良く身体を回転させ、拘束していた触手の様なものを剥がし、剣で切りつけた。
翔「クソったれ共!死にたくなけりゃ知ってる事を話せ!」
彩香「……く!逃げるわよ!」
麻美々「っち!ふざけやがって!!」
2人は尻尾を巻いて逃げ出すが、翔はそれを許さない。
翔「待てやコラ!」
翔に合わせ、他の人達も走り出す。……が、その瞬間激しい音とともに、意識が途絶えた………。



翔「……く。何が……起きた?」
むくりと起き、あたりを見渡す。どうやらあのアカデミアの様だが……
翔「爆発が起きたか……。……!?」
動こうとしたその時、足に違和感が起きた。恐る恐る足の方を見ると、大きな瓦礫に足が挟まっていたのだ。
翔「……痛……くそ、うごかねぇ。誰か!?いないのか!?一ノ瀬!!臥竜!!黒斗!!」
反応がない……まさか全員!?
そんな事が頭に浮かぶ。しかし、それはすぐに覆される。
翔「あれは……黒斗!!おい!」
前方……黒斗が立っているのが見える。しかし反応はない。
翔「おい!黒斗!頼む、この瓦礫をどけてくれ!!」
黒斗「……あぁ、あんたか。」
やっと反応した黒斗。しかし様子がおかしい。
黒斗「多くの学生の間で有名なあんたも今じゃその様か。いい気味だな。」
翔「何を……言ってる!早くこれを………。」
黒斗「なぁ、ねぇさんもそう思うだろ?」
翔「一ノ瀬もそこに……いるの………」
黒斗がねぇさんと言っている方を向くと、そこには確かに一ノ瀬がいた。………首がないの一ノ瀬が。
翔「っな!それは………!」
黒斗「無様だよな。どいつもこいつも……俺を馬鹿にするから………こうなるんだ。」
翔「何……?」
その言葉はまるで……自分がやったかの様に聞こえる………。
翔「おい……お前まさか………。」
黒斗「あれ?今更気付いたのか?………ははっ馬鹿じゃないの?」
その言葉と行動……翔はもう……限界だった。
翔「……黒斗おおおぉぉぉおおぉぉ!!!」
黒斗「ははは、叫びだけは一級品だ。だが今のあんたに何ができる。」
事実、足が挟まっており身動きが取れなかった。どうすることも……できなかった。
翔「ふざけやがって!!そこを……く、動くんじゃねぇ!!……チクショ、動けよ!この瓦礫!クソォ!!」
黒斗「いつまでも生きようとするのは良くないよ、良い加減引き際を覚えようか。行け……ルーン・オブ・マジシャン。」
その言葉と同時に、黒斗の後ろから姿を現したルーン・オブ・マジシャンと思われるモンスターが、近くの瓦礫を浮かせる。そして………
黒斗「殺せ。」
翔「くそ!!うわぁぁぁ!!」
大量の瓦礫が翔を襲う。そのうち翔は意識を失った。



黒斗「悪いな。俺も……あんたの言うクズなんだ。……あぁ迎えが来ちゃったか。……あんたはここで、いろんな人の思い出となって……儚く消えてくれ。さよなら。」
………次回に続く
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ター坊
裏切りの連続とは恐ろしい。
絶体絶命の状況で切れるのも味があって良いですな。 (2016-04-03 23:26)

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