第７９話 とある勇者と龍のお話・結　作：ハカラメ

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XX年前...


セイントミネルバ「・・・すると、あら不思議。龍は人間の姿になっていたのです」

セイントミネルバ「そして、龍と勇者はめでたく結ばれ、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし...」





メイデンミネルバ「おかーさん、もう１回よんでー」

セイントミネルバ「ねぇメイ、もうそろそろ寝たほうが...」
メイ「やだー」
セイントミネルバ（絵本を読んだら子供は寝る、って子育ての本に書いてあったのに...）
メイ「ねーもう１回、もう１回！」
セイントミネルバ「だーめ。 もう１０回も読んだでしょ！ また明日ね」
メイ「むぅ～...」


セイントミネルバ「でも、メイは本当にこのお話が好きなのね」
メイ「うん、大好き！」
セイントミネルバ「ｳﾌﾌ、それはよかったわ...」
メイ「でも、どうして龍は人間になっちゃったの？」
セイントミネルバ「うーん、それはお母さんにも分からないなぁ...」
メイ「ふーん。不思議だね～」
セイントミネルバ「そうね...不思議ね...」


セイントミネルバ「でも、それはきっと勇者のお陰だと思うわ」
セイントミネルバ「勇者が龍に、あったかい感情を教えてくれたから...」


メイ「ｽｰ...ｽｰ...」


セイントミネルバ「・・・あら、寝ちゃった」
セイントミネルバ「あんなに寝るの渋ってたのに...ｳﾌﾌ」

セイントミネルバ「おやすみ、メイ...」







～～～





ｶﾞﾁｬ
セイントミネルバ「ふぅ...」

アークミカエル「お疲れさま、ミネルバ」

セイントミネルバ「あなた！ いつ帰って来たの？？」
ミカエル「ついさっきさ」
セイントミネルバ「もう...帰って来たのなら、声かけてくれればいいのに...」
ミカエル「君の素晴らしい絵本の読み聞かせに、聞き入ってしまってね」
セイントミネルバ「な、何よそれ...変な事言わないでよもう...」
ミカエル「いや、本当のことさ」
セイントミネルバ「・・・もう、バカ...」




ミカエル「それにしても、自分の子供に、自分の恋愛話の絵本を読ませるってのもどうなんだいそれは...」
セイントミネルバ「だって、メイがあの絵本気に入っちゃって...」
セイントミネルバ「それに、あの絵本書いたのあなたじゃない！」
ミカエル「やはりメイは、俺の文才を見抜ける力があるのか・・・やはり天才だな」
セイントミネルバ「なに親バカやってるのよ」
ミカエル「本当の事を言っただけさ」
セイントミネルバ「はぁ...」


セイントミネルバ「ていうか、何であんな絵本書いたのよ！？ メイがあれ見つけた時は、何て説明しようかとっても困ったんだから！」
ミカエル「ハハハ、ごめんごめん・・・つい書き残しておきたくなってね」
セイントミネルバ「あなたって、昔から変わらないわね」
ミカエル「それは君もだろう？」
セイントミネルバ「そうかしら。 昔よりは『人間』っぽくなったかしら？」
ミカエル「昔はひどかったからなぁ...」
セイントミネルバ「もう、何よその言い方！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ
ミカエル「ﾌﾟｯ、ハハハ...！」
セイントミネルバ「ﾌﾌﾌｯ...!」








セイントミネルバ「・・・」
セイントミネルバ「・・・ねぇ、１つ聞いてもいい？」
ミカエル「何だい？」


セイントミネルバ「あの時・・・初めて会った時、なんであんなこと言ったの？」


ミカエル「・・・何で、と言われてもなぁ...」
セイントミネルバ「だって、全然そんな状況じゃなかったというか...」
ミカエル「うーん、そうだなぁ...」

ミカエル「俺は、昔から本当の事しか言えないから...」
セイントミネルバ「それじゃあ答えになってないわよ」
ミカエル「そう言われても...」


セイントミネルバ「でも、あの言葉のお陰で、今の私があるような気がするわ」
ミカエル「そうかな...？」
セイントミネルバ「そうよ！ 私が言うんだから間違いないわ！」ﾌﾝｽｯ
ミカエル「・・・ハハッ、変わらないなぁ...今も昔も...」
セイントミネルバ「え？」
ミカエル「やっぱり君は...」





『　綺麗だなぁ...　』





セイントミネルバ「...あの時も、そんな事言ってたわよ」

ミカエル「言っただろ、本当の事しか言えないってね」


セイントミネルバ「もう・・・本当に、あなたって人は...バカ正直なんだから...///」












～～～









私は椅子に腰かけ、机の上のまっさらな日記と対峙していた。

ミカエルにもらったはいいが、まだ一度も使っていない物だ。

ミカエルは、自分の思ったことを書けばいいんだよと言っていたけど...

日記もまともに書けないとは、やっぱりまだまだ『人間』の世界に馴染めていないのかも...



隣からは、２人の寝息が聞こえてくる。

１人は、愛する夫。もう１人は、愛する娘...

久しぶりに家族全員が揃ったこの家は、少しうるさくて、少し温かくて...



あぁ、そうか。

「こういう事」を書けばいいのか。

「こういう気持ち」を書けばいいのか！


私はスラスラと日記のページに書き込むと、２人が寝ているベットにそっともぐりこんだ。

私は、２人の顔をそっとなでながら呟いた。



「ありがとう。私に、こんなに温かい気持ちを教えてくれて...」
















〇月Ｘ日

『この幸せな日常が、ずっとずっと続きますように...』


















とある勇者と龍のお話、完

第８０話に続く