第７１話 裁きの龍のお話⑥　作：ハカラメ

せっかくのクリスマスなのに、内容はどシリアスだぜぇ！
次回は特別編を予定してます。お楽しみに！
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裁きの龍が現れてから一ヶ月後...

ジェイン「おい、今日の朝刊読んだか？」

ルミナス「ブフオォッ！？」
ガロス「！？！？」

ジェイン「ど、どうしたんだよお前ら！？」
ルミナス「ジェ、ジェインが、し、新聞を読むなんて・・・！」
ガロス「明日は雪か・・・」
ジェイン「おいお前ら！何失礼なこと言ってんだ！俺だって新聞ぐらい読むわ！」
ルミナス「まず字が読めるかどうかも怪ｓ...ちょ、イタイ！やめてぇ！ほっぺつねらないで～～！！」


ルミナス「え～と、何々～？」
ガロス「『終末の時は近い...！？ 突如として現れた巨龍、裁きの龍の謎を追え！ 』・・・か。最近そんなのばっかりだな」
ジェイン「えっ、最近ずっとそうなのか！？何だ、驚いて損したぜ...」
ルミナス「ﾌﾟﾌﾟﾌﾟ...やっぱり普段から読んでないじゃ～ん！」
ジェイン「う、うるせぇ！」
ルミナス「にしても、どうして裁きの龍なんかが暴れたんだろうね～」
ガロス「さぁな。ケルビムさんやウォルフさんは、お前らは心配しなくていい、とか言ってたが、やはり気になるよな...」
ルミナス「ミネルバ様とも連絡が着かないみたいだし...」
ジェイン「何か変だよなぁ、最近のこの世界は...」



～～～



族長室で一人、私はつい１ヶ月前のことを思い返していた。

裁きの龍の声を聞いて、クリスティアと駆けつけた時には、もう裁きの龍の姿はどこにも見当たらなかった。気絶したメイたちや天使隊を運ぶために、周辺を捜している時間はなかったが、あんな大きな龍が、あの一瞬でいなくなる事などあり得るのだろうか...？もしかしたら誰かが...？


ｶﾞﾁｬ
メイデンミネルバ「ケルビムさん」

ケルビム「おぉ、メイか。どうだった？」
メイデンミネルバ「駄目でした...またホーちゃんが私が書いた手紙を持って帰ってきました...」
ケルビム「そうか...」
メイデンミネルバ「どうしたんだろう、お母さん...」
ケルビム「・・・心配いらないさ。あの人のことだ、きっと山深い村の方にまで出向いているのだろう。きっと大丈夫さ」
メイデンミネルバ「・・・そうですよね。私、もう１回手紙書いてきます！」
ﾀﾀﾀｯ

ｶﾞﾁｬﾝ



ケルビム「・・・」


・・・メイには強がってみせたものの、やはり不安なのは確かだ。
裁きの龍が現れたことは、きっとミネルバ様のお耳にも届いているはず・・・なのに連絡の１つもしてこないなんて...いくらミネルバ様でも、そんな事をしたことは今まで無かったのに...


ケルビム「・・・ハァ...」

ケルビム「・・・少し、外に出ようかな...」


ﾀｯﾀｯ
ｶﾞﾁｬﾝ



～～～



気がかりなことはもう１つある。

それは、水の国の事だ。
クリスティアの話が本当なら・・・


ー ー ー ー ー ー ー


クリスティア「それとな、ケルビム」

ケルビム「まだ何か？」

クリスティア「あの兵たちと戦った時に、ちょっと嫌な感じがしたんだ...」

ケルビム「・・・あなたの嫌な予感は、当たりますからね...」

クリスティア「まぁな...。あの兵たちは、禁忌の儀式術「影霊衣」を使ってるってのはさっき言ったよな？」

ケルビム「えぇ」

クリスティア「あの兵たちからは何だか、儀式とは別の、もっと強い力が宿ってるように感じたんだ」

ケルビム「強い力・・・？」

クリスティア「あぁ。あれは兵でも儀式術の力でもない・・・もっとドス黒くて淀んだ悪感情の塊みたいな・・・そんな力だ」

ケルビム「・・・」


クリスティア「気を付けろケルビム。この世界は、これから大きく変わるかもしれん。私たちも、そしてお前たちの日常も、全部・・・勿論、悪い意味でな...」



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もし水の国が、どこか別の国と共謀しているとしたら...
もし、また争いを始めようとしているとしたら...
私たちは、これから一体どうなってしまうのだろうか...


気が付くと私は、壊れた塔の前に立っていた。

昔は、この塔はなんで立っているのだろうかと、よくミネルバ様にお尋ねしたなぁ・・・ミネルバ様は、なぜか笑って答えてくれなかったが...


「ホー！」

鳴き声がした方へ目を向けると、そこには１羽のフクロウ・・・あれはメイの召喚獣のホーちゃんだ。

おいでおいでと手招きをすると、ホーちゃんはスッと飛んできて私の腕にとまった。足には、メイが書いた手紙が巻き付いている。


「ホーちゃん、どうか、ミネルバ様の居場所を見つけてくれ...」


私はつい、ポロリと感情の一片をホーちゃんに投げかけていた。
するとホーちゃんは、「ホーッ！」と強く鳴くと、私の腕からサッと離れ、大きく羽ばたいた。
そして、もう１度グンと強く羽ばたくと、一気に空へと舞い上がっていった。


どんどん上へ上へ・・・まるで、壊れた塔の軌跡を辿るかのように・・・


そしてホーちゃんはそのまま一直線に真上に飛んで行き、視界から消えた。




もしかしたら・・・

もしかしたら、ホーちゃんはすでにミネルバ様の居場所をしっているんじゃないか。そんな考えが私の頭の中に響いた。

それは全くもって根拠のない考えだったが、その時の私は、それが正しいことだとどこか直観的に分かっていたのかも知れない。



『あら、私は意外とあなた達の近くにいるのよ？』


いつかのミネルバ様の言葉が聞こえた気がした。





「ミネルバ様・・・」


私は、ホーちゃんが飛んで行った軌跡をなぞるように、壊れた塔を見上げて呟いた...







裁きの龍のお話、完

第７２話に続く