第六十七話　アカデミア帰還当日①　作：怪盗七夜月

・有希の要望により、近くでやっている夏祭りに行く事になった咲夜。すると花火の途中で急に人気の無い所へ連れてこられ、有希から告白される。思い出に残る夏祭りとなった。


翌日。
珍しく早起きしていた咲夜は外で日の出を見ようと外へ出ていた。あたりは薄紫で、誰も起きていない。

咲「⋯⋯」
　昨日のことを思い返す。「まさか嘘だよな」と思いつつ、座り込む。

セ「クルト、おはよ」
　クルト⋯⋯？そうか、その名だったんだ。

セ「今日は早いな」
　早く起きたら不都合か？

咲「なぁ⋯⋯」
セ「⋯⋯？」
咲「何食べたらそんな背大きくなれんだ？」
　セレナは咲夜より10㎝くらい背が高い。それを地味に気にしている。

セ「さぁな。成長期がまだなんじゃない？」
咲「だったら遅すぎるよ。良いよな、身長高いヤツって」
有「⋯⋯」
　そこに有希がやって来た。本を片手に。

咲「有希か。おはよう」
有「おはよ⋯⋯」
　そう言って本を読み始める。昨日の話し方が嘘みたいだ。消え入りそうな声に戻っている。

セ「有希、おはよう」
　あたりが明るくなってきた。そろそろ日の出か？

セ「僕、朝食作っとくよ」
　そう言って小屋に戻った。

咲「早起きだね」
有「うん⋯⋯」
咲「どうしたの？」
有「別に⋯⋯ただ下腹部に痛みを感じるだけ⋯⋯」
　何が「別に」なんだ。それに腹痛って言えば良いじゃないか。

咲「お、日の出だ」
　水平線から昇る太陽はあたりを明るく照らした。

咲「綺麗だな」
有「⋯⋯」
　　そんなに本が好きなのか。ちらっと見た後、また目線を下に向ける。

咲夜は地面に寝転がった。少し肌寒かったが、気にしなかった。そして昨日の出来事を回想中。

午前10時。
朝食を済まし、部屋で暇してたアトロ、セントが来た。
ア「暇してる？」
セ「ひさりぶし！」
　何処で覚えたんだアトロ。まぁ、事実だが。セント、それを言うなら「久しぶり」だ。来日直後の外国人か。

ア「デュエルしよ！」
セ「しよ！しよ！」
　そんな訳でデュエル。結果は勝ったさ。
　そうだ。「十代のカード、返さないと」ふと思った咲夜は貰った2枚のカードをデッキから外した。

咲「今、何してんだ？」
ア「うん、ルシアスの打開策を考えてるんだ」
咲「ルシアスを⋯？」
ア「ルシアスの使うデッキとか、色々。」
咲「で、何か分かったのか？」
ア「何にも。テンでさっぱり。元部下の人なんて居ないかな～？？」
咲「⋯⋯」
　確かにイリアなら何か分かるかもしれない。

午後1時。
咲夜は帰り支度をしている。有希には昨日言ったはず。何より何も持って無い。
咲「有希、そろそろ行くよ」
有「⋯⋯」
　顔を上げて頷いた後、また本に視線を落とす。

咲「セレナ、そろそろ戻るよ」
セ「そうか。じゃあ、外で待ってて」
　言われた通りに待ってるとセレナが後ろから何かに乗ってやって来た。

セ「後ろ乗って」
　よく見るとあれだ、なんだっけ、忘れた。2人が乗った後、金属音を出して発進した。

セ「有希はアカデミアでしょ、どこまで行けばいい？」
咲「『カサミ』まで」
セ「分かった、2人共、しっかり僕に掴まって！」
　そういうとスピードを上げた。大体時速70㎞位。

有「⋯⋯」
　有希は怖くないのか、至って平然だ。女の子がスピード出して飛ばしてたらビックリだな。

セ「着いたよ」
　走り出して約1時間後。『カサミシティ』到着。時刻は午後2時半。

セ「なんかあったら電話ちょうだい」
　そう言って電話番号を書いた紙を渡した。咲夜も同様に書いて渡した。

咲「送って貰って助かった、ありがとな」
セ「じゃ、気をつけて帰って」　
　そう言ってセレナは去っていった。有希は何も言わず手を振っている。

咲「さ、行こうか」
有「うん」
　そう言って行く時に乗った鉄道のホームへ行く。車掌さんにヨハンに貰った手形を見せ、鉄道に乗り込んだ。そして出発！アカデミアまでもうちょっと！


第六十八話へ続く