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86話 ティアドロップ その② 作:コングの施し
遊大「どうするもこうするもあるかよ……!!
あんただってあの人に会わなきゃなんだろ、だったら一緒に来いって、言ってんだよ!!!」
両雄は声を昂らせる。
不二原が、彼が魔女ではないのなら。彼女を救おうと踠いた結果が今の彼であるなら、彼にこそ律歌に救いの手を差し伸べるべきと叫ぶ遊大。
不二原「違う、私の責務は彼女との決別だ……!
古池の言う通りだ。救った気になっただけの私に、彼女を支える権利など、無い!!」
そして自分はただ勝手に彼女を救った気になっていただけだと、そう内心わかっているからこそ、偽の魔女として彼女や自分達と交わることなくこの凍えるような温室に居座るべきと豪語する不二原。
茉奈「……正解なんて、ないでしょう。」
……でも。……それでも。
ーTURN2(メインフェイズ)ー
不二原 千晶(ターンプレイヤー)
LP :8000
手札 :2
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《六花聖ストレナエ》《六花精エリカ》
魔法・罠 :
フィールド:《六花来々》
樋本 遊大
LP :6800
手札 :4
モンスター:《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》《羅天神将》《炎獣使いエーカ》《焔聖騎士ーローラン》
魔法・罠 :セット×1
フィールド:《大聖剣博物館》
不二原「私は、オーバーレイユニットを1つ取り除き、《ティアドロップ》の効果を発動。
______《羅天神将》をリリース……!!」
まるでウェディングドレスのような白い羽衣に身を包んだ《六花聖ティアドロップ》。彼女が口元に手をかざしその手のひらにふっと息を吹き付けると、それは遊大のフィールドに届く頃には《羅天神将》の体を白く染め上げるほどの冷気となった。凍てついた体は文字通り氷像となって重たく崩れ去る。
遊大「《ティアドロップ》……!!
モンスター1体を対象として、それをリリースする効果……だけじゃない!!」
茉奈「モンスターがリリースされるたび、攻撃力が上昇する……!!」
(ATK:3000)《六花聖ティアドロップ》
展開と除去をリリースという手段に集中させることこそが《六花》のデッキ。《六花聖ティアドロップ》はまさしくそのエースモンスターであり、彼の、不二原 千晶の切り札でもあった。かつての決闘王杯ですら、その背中を押したのはかのモンスターだった。
不二原「バトルだ。
私は《六花聖ストレナエ》で《炎獣使いエーカ》を攻撃……!!」
《六花聖ストレナエ》が傘を無邪気に開くと、無数の氷柱が天をさいてフィールドに降り注ぐ。
遊大「あんたはわかってる。
自分がやったことも、おれたちたしようとしていることも。……おれだってわかるさ。
…………だから止めてみろ、おれのカードを!!」
不二原「『止めてみろ』……?」
遊大「トラップ発動……《決別》!!」
茉奈「……え!!!」
思わず声が出てしまった。
遊大が手札から《フェニックス・ギア・ブレード》のカードを墓地に送り発動したのは《決別》のカード。相手の攻撃宣言時に手札の魔法カードをコストとして発動し、バトルフェイズの終了とターン中のモンスター効果を封じるカード。コストを考えればさほど強力というわけでは無い、……しかし。
不二原「たかがカードだ……話にならない!!
_____私は《六花のしらひめ》の墓地効果を発動!!」
《決別》の無効。
それはきっと、いや確実に、彼女との別れを否定してみろという一種の挑発だった。ただの言葉遊び、ただの児戯。ただし実際に、戦術的に見ても次のターンまで墓地に残すべきではない《六花のしらひめ》を使わせるに至っている。
不二原「攻撃中の《ストレナエ》をリリースし、墓地の《しらひめ》をデッキに戻すことで、《決別》を無効にする。」
(ATK:3200)《六花聖ティアドロップ》
真っ白に凍りついた《決別》のカードを見て、遊大は笑っていた。……いい性格をしている。ただしこれでバトルは続行、さらに《六花聖ティアドロップ》の攻撃力は上昇し、遊大に身にかかるダメージは増大の一途を辿る。
不二原「……くだらないな。
私が《決別》を無効にしたことが、そんなに可笑しいか。」
遊大「お互い様だよなあ、勝つためだったら口先なんざいくらでも曲げんのは!!」
不二原「……チッ、」
安い挑発だ。
だがこれもきっと、遊大は無計画に行なっているものでは無い。勝算があって、その上で戦術と心理戦を天秤にかけさせている。相手が戦術を取ってくるのならば、それはすなわち……。
不二原「……私はリリースされた《ストレナエ》の効果を発動。
ランク5以上の植物Xモンスター1体を、墓地の《ストレナエ》自身をオーバーレイユニットとすることでEXデッキから特殊召喚する。」
遊大「あんた勝つための一手を取ったんだ。
……だったら勝てよ、なあ……!!!」
不二原「_____現れよ、《六花聖カンザシ》!!!」
《六花聖カンザシ》(攻)
★:6 水属性・植物族/エクシーズ/効果
ATK:2400/DEF:2400
《六花聖カンザシ》。
現状存在している《六花聖》モンスターの最後の1枚。ランクは6、ローダンセを模ったそのモンスターの効果は……
不二原「勝てよ、だと?……いい加減にしろ。
私は《六花聖ティアドロップ》で《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》に攻撃。
______この瞬間、《六花精エリカ》の効果発動!!」
遊大「《六花精エリカ》……自身をリリースし、植物族1体の攻撃力を1000上昇させる効果……それに加えて!!」
不二原「モンスターがリリースされたことで《六花聖カンザシ》の効果を発動。
______墓地より甦れ、《アロマセラフィージャスミン》!!」
そう、その効果は攻守両得。
味方を効果破壊から守る効果に加え、リリース時にいずれかの墓地に存在するモンスターを特殊召喚し、植物族へと変更させる。この局面、《六花聖ティアドロップ》の攻撃宣言時に《六花精エリカ》が自身リリースしたことで効果発動。攻撃巻き戻しと同時に《六花精ヘレボラス》にリリースされた《アロマセラフィージャスミン》が再び呼び出されている。
《アロマセラフィージャスミン》(攻)
L:2 光属性・植物族/リンク/効果
ATK:1800 [↙・↘]
不二原「……無論、攻撃は続行だ。
《ティアドロップ》、……《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を無に還せ……!!」
その宣言に《六花聖ティアドロップ》はこくりとうなづく。ソリッドヴィジョンに映し出された空気が白く凍りつく。彼女のブーケから落ちた一縷の滴は震える冷気を纏って巨大な氷柱となった。
(ATK:4400)《六花聖ティアドロップ》
(ATK:1750)《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
(LP :4150)樋本 遊大
轟音と視界が真っ白に染まるほどの嵐。
そこに立っていたのは、まだ闘志の尽きない瞳を彼に向ける遊大だった。
遊大「はァ……ははは、!!
やっぱり、痛くも痒くもねえ……!!」
(ATK:1800)《アロマセラフィージャスミン》
(DEF: 200)《炎獣使いエーカ》
遊大「なあ不二原さん、やっぱあんた魔女じゃねえよ。
花の魔女なんておっかない存在が、こんなに……!!」
モンスターを砕かれ、フィールドに抱える戦力がみるみる崩されていく遊大。そんな中で、彼は目の前の不二原に語りかけていた。
(ATK:2400)《六花聖カンザシ》
(DEF: 200)《焔聖騎士ーローラン》
遊大「こんなに苦しそうに戦うわけねえだろうが……!!」
不二原「……。」
わからなかった。
優勢に立たされているのは不二原であるはずなのに、彼が負ける未来が見えなかった。遊大が、負ける未来が見えなかった。遊大はその目に闘志を灯して、闘いを楽しむみたいにデュエルをする人だ。自分との戦いの時も、蜂谷との時だって、そうだった。彼女みたいに、時和 律歌みたいに闘う人だ。
遊大「何度でも言う。
おれの目的は、デュエル部を再建して、あの人に会うことだ。別にあんたにやましい気持ちがあるわけでもなんでもない。ただ恩人だから、礼と謝罪をする。それにデュエル部が無くなったことにあの人が関係してるなら、放っとけない。
______その上で、おれと一緒に来い。あんたにだって、色々言うことあるはずだろ。」
不二原「それは_____。」
彼はそこまで言って、しばし黙り込んだ。
まるで言葉を探すみたいに、銀色の髪を靡かせて、冷気の滞留する植物園の中から天を仰いでいた。
不二原「私にだって、わからない。
嘘を言ったつもりはない。本当にどうすべきか、わからないままこの半年を過ごしてきた。
_____樋本 遊大、私はどうすれば良かったのだろうな。」
遊大「自分の理想なんて、わかってるくせによ。」
不二原「……理想は理想でしかない。
結局私は何もできなかった。救えなかったことの贖罪のように、ただ勝手に魔女を名乗っていただけだ。
その私は、彼女に何を話せばいい。何をすればいい。」
彼はそう言うと、また遊大の方へと向き直った。
空虚だった瞳は潤んでいた。まるで凍りついた涙が雪解けたように。
遊大「ずっと、そうなんだな。
そんな、どこへ行けば良いかもわかんねえまま、ずっとここまで来てたのか。」
不二原「……。」
遊大「わかるよ、何をすべきかなんて、きっとわかる。
おれたちはデュエリストなんだ。答えは闘いの中で見つけられる。それにあんたは、まだディスクを構えてるじゃないか。」
不二原はその言葉に、ぎゅっと自分のカードを握り直す。
バトルフェイズは終了し、フェイズはすでにメインフェイズ2へと突入していた。
不二原「そうだな。
私はとことん、自分のことがわからない。それでも、まだ自分の過去を否定する気持ちには、なっていないらしい。
……ディスクを、構えているからな。」
遊大「……おう。」
不二原「墓地に存在する、《蕾禍ノ武者髑髏》の効果を発動。
オーバーレイユニットを無くした《カンザシ》をEXデッキに戻し、《武者髑髏》を墓地から特殊召喚する。そして《アロマセラフィージャスミン》と《蕾禍ノ武者髑髏》をリンクマーカーへとセット……!!」
出現するサーキット。まるで這い出るかのように、畝る根を這わせながらそのモンスターはフィールドへと産み落とされた。
不二原「______リンク召喚、《廻生のベンガランゼス》!!」
《廻生のベンガランゼス》(攻)
L:4 光属性・植物族/リンク/効果
ATK:2500 [←・↑・↓・→]
遊大「満を持して《ベンガランゼス》かよ……!!」
《廻生のベンガランゼス》は、彼のデッキのリンクモンスターの中で最も強力なリンク値を持つモンスター。相手ターンにもリリースという除去をできるのが《六花聖ティアドロップ》であるなら、かのモンスターの強みは対象を手札に戻すことができるという除去手段。ただしデメリットとして手札に戻すモンスターの攻撃力分のダメージを受けるため、蘇生効果を加味しても連発は難しい。
不二原「私はカードを1枚セットし、これでターンを終了。
同時に《ティアドロップ》の攻撃力は2800へと戻り、《エリカ》の効果も解除される。」
遊大「エンドフェイズに、《マグナム・エクスカリバー》の効果にチェーンした《アンジェリカ》がフィールドへと帰還!
さらに破壊された《焔聖騎士ーローラン》の効果でデッキから《『焔聖剣ージョワユーズ』》を手札に加える。」
ーTURN3ー
樋本 遊大 (ターンプレイヤー)
LP :4150
手札 :4
モンスター:《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》
魔法・罠 :
フィールド:《大聖剣博物館》
不二原 千晶
LP :8000
手札 :1
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《廻生のベンガランゼス》
魔法・罠 :セット×1
フィールド:《六花来々》
遊大は、《焔聖騎士ーローラン》の効果で《強奪》のカードを手札に加えることは可能だった。ただし、ただのギャラリーである自分でもわかる。今の彼らに必要なのは、それじゃない。迷いながら、進んだ道を立ち止まって見返した不二原と、立ち止まることなどなくただただ進み続けることを選んだ遊大。彼らはまだデュエルを続けていて、答えをその中に委ねていたからだ。
遊大「おれは、墓地の《焔聖騎士導ーローラン》の効果を、《アンジェリカ》を対象として発動……!!」
《焔聖騎士導ーローラン》は、メインフェイズに戦士族を対象とし、墓地の自身を装備させる効果を持つ。ただし遊大も、考えなしにこの効果を発動しているわけではない。《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》には、効果対象となった時に発動できる効果が…………
不二原「《アンジェリカ》、自身を除外しデッキから炎属性・戦士族を墓地に送る効果か。」
遊大「チェーンはしないよな。
このタイミングで《ティアドロップ》か《ベンガランゼス》を使っても、どちらにせよチェーン③で《アンジェリカ》の効果は発動できる。」
不二原の判断は間違っていない。
《六花聖ティアドロップ》の効果も、《廻生のベンガランゼス》の効果も、対象を取ってしまう。ここで使っても、《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》の効果使用は免れない。しかし不二原を驚嘆させたのは、ここで取る遊大の判断であった。
(ATK:2300)《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》
不二原「……!?」
茉奈「これは……!!?」
座り込む王妃の背に、赫く染め上がった戦士の影が淡く立ち昇る。それは《焔聖騎士導ーローラン》を装備しているということであり、遊大は《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》の効果を使用しなかったということである。……一見メリットがないこの行為、その真意を探った瞬間だった。自分には、いや不二原にも、一つの考えが浮かんだ。
遊大「おれは《『焔聖剣ージョワユーズ』》を、あんたのフィールドの《ティアドロップ》を対象として発動し、さらに効果を発動。
______墓地の《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を、手札に戻す……!!」
……《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》。
フィールド・墓地の装備魔法を除外することで特殊召喚が可能が可能になる彼のエース。そしてその効果は、フィールドの装備カードを墓地へ送ることで、モンスター効果の発動を無効にし破壊する。
不二原「……成る程、そうか……そうか!!」
遊大「墓地から《フェニックス・ギア・ブレード》を除外!!
神すら穿つ剣。勝利への天道よ、赫灼に染まれ!!
______現れろ、レベル9《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》!!」
《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》(攻)
☆9 炎属性・戦士族/効果
ATK:3500(3000)/DEF:2200
爆炎と共に轟臨する、不死鳥の剣士。
何度倒されようが、その度にまた舞い戻る、まさしく不死鳥。そしてこの状況、《焔聖騎士導ーローラン》を《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》に装備するという奇策によって、不二原の行動が大きく縛られる。
遊大「除外された《フェニックス・ギア・ブレード》の効果を発動、このカードを手札に戻す!!」
相手の不利を強制する戦略。
《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》がフィールドに呼び出された以上、公開情報だけでみれば優劣が逆転する形になった。
不二原「……やってくれるな。
《ゴッドフェニックス》の効果は、フィールドの装備カードを墓地へ送ることで発動できる効果。
…………着地時点でそれをアクティブにしてくるか……!!」
茉奈「そもそも、《アンジェリカ》を対象に取る効果を発動することは樋本くんにとってメリットでしかない……!!」
相手ターンに発動する妨害、その躱わし方が一端のデュエリストのそれではない。そして彼の恐ろしいところは、ここで止まらないことだ。相手が一歩退けば、自分は確実に一歩進む、経歴も戦歴も、謎に包まれている遊大が見せるのは、そんな攻防だった。
遊大「墓地に《焔聖騎士―オリヴィエ》の効果を発動。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を対象とし、このカードを装備する。」
その宣言に、不二原の呼吸が一瞬詰まる。
背後からでもわかった。ここが不二原にとってのターニングポイントだった。一歩一歩詰め寄ってくる遊大の刃は、彼の想定よりも早く不二原の首に届いていた。
不二原「……!!
…………罠、発動……《六花の薄氷》!!!」
追い詰められた不二原が発動したのは《六花の薄氷》。相手モンスター1体を対象とし、その効果の無効と使用をターン中一才封じる罠だった。そしてその真価は、植物モンスターをリリースして発動した場合に起こる対象のコントロール奪取にある。
遊大「……そうだよな
活かしてくるよなあ、《六花来々》の効果を!!」
発動中の《六花来々》。
《六花》カードの発動時に起こる植物族のリリースを、相手モンスター1体のリリースで肩代わりする効果を持つ。故に前のターンから遊大が最も警戒していたカードであり、その効果を同時使用することで2体のモンスターを相手取ることができる《六花の薄氷》は、まるで最後の抵抗のようでありながら、侵食する結氷のよいに、彼のフィールドを蝕んでいく。
不二原「発動時、《アンジェリカ》をリリース!
さらに《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を対象として発動することで、そのコントロールを得る……!!」
パキパキ……と、音を立てながら遊大のフィールドは銀色に染め上がる。氷漬けになってしまった王妃は地に沈み、銀の蔦に手繰り寄せられた《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》は、不二原のフィールドに縛り付けられた。
不二原「……《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備したモンスターは効果対象にならない。
そして《ティアドロップ》と《ベンガランゼス》の効果はお互いに対象を取って発動する。…………たった1枚の非公開情報を明るみにするためにここまでするか、樋本 遊大。」
遊大「《ゴッドフェニックス》には戦闘時にモンスターを装備する効果がある。このまま《オリヴィエ》の装備が完了してメインフェイズ終了を宣言すればあんたの盤面はオジャンだった。……使うしかなかっただろ?」
攻防のレベルが高い。
お互いに、対面しているこの僅かな時間でカードのテキストをすべて頭に叩き込み、息の詰まるような一進一退の闘いをしている。お互いのカードの発動1つ1つが首に届き得る。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》のコントロールを奪取され、《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》がリリースされた今、不二原の《六花聖ティアドロップ》と《廻生のベンガランゼス》が再びアクティブになっている。対する遊大のフィールドはガラ空き。《焔聖騎士ーオリヴィエ》も、効果処理時点でコントロールが相手に移ったモンスターに装備することはできない。…………しかし、
(LP :2950)樋本 遊大
遊大「おれは1200LP払い、《大聖剣博物館》の効果を発動。
……デッキから2枚目の《『焔聖剣ーデュランダル』》を手札に加え、これを《ティアドロップ》に発動!!」
不二原「……!!」
遊大「《デュランダル》、効果発動!!
……デッキから《焔聖騎士ーオジエ》を手札に加え、通常召喚!!」
《焔聖騎士ーオジエ》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:2000(1500)/DEF:2000
このターン、遊大はまだ通常召喚を行なっておらず、かつ手札の4枚も非公開情報。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》の1枚で不二原の《六花の薄氷》を使用させ、残されたカードで《六花聖ティアドロップ》と《廻生のベンガランゼス》を相手取る形になる。
遊大「《オジエ》、召喚時に効果を発動。
デッキから《愉怪な燐のきつねびゆらら》のカードを墓地へ!!」
不二原は、2回までフィールドのモンスターを除去する手段がある。《聖騎士の追想 イゾルデ》や他のシンクロモンスターのことも考えると、モンスターが並んだ瞬間、もっと言えば、装備カードを使用するデッキであることを加味しモンスターが並ぶ前に除去を放つのが理想である。しかし、そんなことなどすでに遊大は把握していた。
遊大「手札から《キリビ・レディ》の効果を発動。戦士族モンスターがいる時、このカードを特殊召喚する!」
《キリビ・レディ》(守)
☆:1 炎属性・戦士族/効果
ATK:600(100)/DEF:100
不二原「……、」
この何気ない2手で行動を制限されていた。モンスターフィールドにゼロという状況を作れない。《愉怪な燐のきつねびゆらら》は、遊大ではなく不二原のフィールド・墓地に依存する効果を持っている。除去するのが《焔聖騎士ーオジエ》であろうが、《キリビ・レディ》であろうが、墓地から《愉怪な燐のきつねびゆらら》は特殊召喚されてしまう。
遊大「……使わないのか?」
不二原「好きにすれば良い。」
逆に遊大は、不二原の狙いがモンスターをすべて捌き切ることか決定打となるモンスターへの除去効果であるとわかった瞬間に、道筋を完全に定める事ができる。
遊大「《キリビ・レディ》をリリースし、効果を発動。手札から戦士族モンスター1体を特殊召喚する。
_______《昇華騎士ーエクスパラディン》!!」
《キリビ・レディ》が手に握った火打石を甲高く打ち付けると、弾ける赤い光を弾き裂いて重厚な鎧騎士が出現する。もうもうと湧き上がる蒸気は東洋風の騎士のシルエットを描いて、その姿で初めて自分は遊大の策略に気づいた。
不二原「《焔聖騎士ーモージ》の効果でデッキに戻ったカードか。」
《昇華騎士ーエクスパラディン》と、その効果によってデッキから装備された《焔聖騎士ーテュルパン》。
おそらく不二原の言った通り、《焔聖騎士ーモージ》の効果によってデッキに戻された《昇華騎士ーエクスパラディン》をドローしての結果だ。デッキに戻ってからのドロー枚数は2枚。それを引いた彼もそうだが、それよりもこの状況を作ることを想定していた彼の先見も目を見張るものがある。
遊大「《大聖剣博物館》の効果を発動!!
________装備状態の《焔聖騎士ーテュルパン》を特殊召喚する!」
《昇華騎士ーエクスパラディン》(攻)
☆:3 炎属性・戦士族/効果
ATK:1700(1200)/DEF:200
《焔聖騎士ーテュルパン》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:1900(1400)/DEF:1700
不二原は、やはり《昇華騎士ーエクスパラディン》に《六花聖ティアドロップ》の効果も《廻生のベンガランゼス》の効果も使わなかった。装備カードだった《焔聖騎士ーテュルパン》は、装備カードを持った自分のモンスターがいれば自己蘇生可能。そして遊大の手札には公開情報の《フェニックス・ギア・ブレード》がある。頭数を減らしても、決定打にはならない。
茉菜「4体の戦士族……!!」
不二原「……だがチューナーはない。どう掻い潜るつもりだ?
どうも私の妨害をかわす様に展開をしているな。わかっているんだろうな、どれほど並べても決定打になるモンスターを呼び込まなければ戦況は動かない。」
遊大「そうすればおれのモンスターは減るし、そこに妨害を打ち込むって言いたいんだろ。
……わかってるよそんなもんは!!」
完全な拮抗状態。
遊大はEXデッキに触れれば即座に妨害を喰らい、巨大なアドバンテージ損失となる。逆に不二原は、そうなれば絶対に効果を使わなければいけない状況に立たされている。しかし、それを動かすのは……
遊大「あんただってわかってんだろ、さっきのターンに答えは見せてんだからさあ!!
おれはレベル4の戦士族、《焔聖騎士ーオジエ》と《焔聖騎士ーテュルパン》をオーバーレイ!!」
不二原「……!!」
二人の剣士はその手を合わせ、光にとなって螺旋を描く。
絡み合う道筋は渦を描き、弾けた。宙からフィールドへと突き刺さる一本の刃。そうだ。確かにそうだった。この状況を確実に動かせるカードを、1ターン前に遊大は見せている。バラバラだったピースが合致するように、問いの答え合わせの如くそのモンスターはフィールドへと襲来した。
遊大「エクシーズ召喚!!
_______ランク4、《HーCマグナム・エクスカリバー》!!」
《HーC マグナム・エクスカリバー》(攻)
★:4 光属性・戦士族/エクシーズ/効果
ATK:2000/DEF:2000
銀色の刃が、真っ直ぐに不二原へと向けられた。
その効果は、メインフェイズ中に他のモンスターの装備カードとなる効果と、戦闘時に攻撃力を倍にする効果。この局面で展開するこのモンスターこそ、不二原にとっての勝敗を別つ二択になる。
遊大「《フェニックス・ギア・ブレード》を《マグナム・エクスカリバー》に装備。
……おれは、メインフェイズを終了する。」
不二原「やはりな。」
遊大のフィールドには《HーCマグナム・エクスカリバー》と《昇華騎士ーエクスパラディン》、《愉怪な燐のきつねびゆらら》。不二原が構えている妨害は《六花聖ティアドロップ》と《廻生のベンガランゼス》。二面除去をしてもモンスターは残る。そして《廻生のベンガランゼス》と《HーCマグナム・エクスカリバー》の効果はメインフェイズでしか発動できず、仮に《廻生のベンガランゼス》の効果を使えば、遊大はメインフェイズを続行可能になる。そうなれば《焔聖騎士ーテュルパン》を絡めてさらなる展開をできる可能性があり、自己蘇生の種となる《焔聖騎士ーモージ》はまだこのターンに効果を使用していない。
茉菜「……これは…!!」
どう足掻いても不二原は追い詰められる。有利に転ぶことのない強制二択。
不二原も、おそらく先ほどの発言で気づいたのだろう。今、この戦場を支配しているのは確実に遊大だ。
不二原「お前、篤厚に見えてなかなかだな。
いいだろう乗ってやる。私もお前も、真っ直ぐには戦えないわけか……!!」
遊大「バトルに入るってことで、いいんだよな。」
フェイズの移行。
それはお互いにとって、メインフェイズ中の動きを放棄したことと同義。遊大は自分モンスターへ《HーCマグナム・エクスカリバー》は装備できず、不二原も《廻生のベンガランゼス》の効果を発動できない。よって生まれる回答はたったの1つ。
遊大「……《マグナム・エクスカリバー》で、《六花聖ティアドロップ》へ攻撃!!」
赤い鎧騎士に握られた巨大な刃。目にも止まらぬ速度で白刃は《六花聖ティアドロップ》へと迫る。《HーCマグナム・エクスカリバー》は、ダメージステップ開始時に攻撃力を2倍にする効果を持ったモンスター。《六花聖ティアドロップ》のことを容易く叩き切ることができるであろうその攻撃は_____。
不二原「……やらせるはずが無いだろう!!」
遊大の効果発動宣言よりも前に、フィールドが青白く凍り付いた。《六花聖ティアドロップ》の効果。フィールドのモンスター1体をリリースする。その効果対象となったのは、他でもない《HーC マグナム・エクスカリバー》だった。白く動かなくなった剣はぼろぼろと崩れ、二人の視線が重なる。
遊大「そうだよなあ!!
……《ティアドロップ》の効果を使わなきゃいけない状況ってわけだ!!わざわざバトルに入ってから使うってことは、《ベンガランゼス》の効果の温存だけじゃないだろ、メインフェイズ中の展開を警戒したな?」
不二原「当然だ。
よかったのか?……バトルに入っているということは、お前はもうこのターンで私のLPを詰め切ることはできない。
私の手札の1枚を、知らないはずもないだろう。」
手札の1枚は《六花絢爛》。
それは《六花聖ストレナエ》の効果で手札に戻されている《六花》の初動。すなわち、遊大がこのままターンを返せば、また不二原は持ち直すことのできる可能性が高い。一切の油断ならない状況はまだ続く。そんな手に汗が滲んでしまうような状況を裂いたのは、遊大の一声だった。
遊大「公開情報だろ、《六花絢爛》だ。
確かに《六花来々》もあるし、このままターンを返したら勝てねえかもしれないな。
_____でも、おれが……!!」
不二原「……!!」
吹き上げられたホワイトアウトの中を、赤い火花を撒き散らしながら一人の戦士が疾走する。
瞬く間に、手に握られた刃は《廻生のベンガランゼス》の体に突き立てられた。全く予想外の出来事、《昇華騎士ーエクスパラディン》が、《廻生のベンガランゼス》へと攻撃を仕掛けている。そしてその2体の攻撃力は、全くの互角の数値まで釣り上げられていた。激戦を繰り広げるモンスターの奥で、遊大のフィールドに映し出された1枚のカードに、自分と不二原は気づいた。
遊大「…………このまま終わるわけ、ねえだろうが!!」
不二原「なんだ……そのカードは!?」
(ATK:2500)《昇華騎士ーエクスパラディン》
(ATK:2500)《廻生のベンガランゼス》
遊大「昔から入ってる、おれのデッキのお守りだよ!!
______速攻魔法、《Ai打ち》ッ!!」
その巨体にざっくりと刺し込まれた刃は、赤く燃え上がり蒸気を放ちながらその鋼の色すら紅に変えていく。
臨界を超えたその鎧と刃はついに轟音ともに弾け、吹き荒れる白い嵐を一挙に晴らした。不二原は、油断をしていたわけでは決してない。メインフェイズ1の展開を警戒したからこそ《廻生のベンガランゼス》の効果を温存し、バトルフェイズに《六花聖ティアドロップ》の効果を使うことを決断した。
(LP :1650)樋本 遊大
(LP :5500)不二原 千晶
しかしそれすら、遊大にはわかっていたんだ。
《廻生のベンガランゼス》の効果をを使わせることすら無く、《昇華騎士ーエクスパラディン》もろとも盤面をこじ開けた。《Ai打ち》の効果によってLPが擦り減る二人を横目に、バトルフェイズは過ぎ去る。
不二原「強引に……突破してきたな!!」
遊大「無理やりこじ開けるのは昔から得意でね……!!
おれは《マグナム・エクスカリバー》を墓地から除外し、その効果を発動!!
墓地の戦士族モンスター3枚を対象とし、デッキに戻す!」
遊大の手に握られたのは《聖騎士の追想 イゾルデ》、《焔聖騎士帝ーシャルル》、《シャルル大帝》の3枚のカード。
表情を顰める不二原を前に、さらに遊大は2枚のカードを墓地から握り出す。
遊大「さらに墓地の《モージ》と《テュルパン》の効果を発動!!
《モージ》を装備カード扱いで《きつねびゆらら》へ装備し、《テュルパン》を特殊召喚!!」
《焔聖騎士ーテュルパン》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:1900(1400)/DEF:1700
茉菜「《テュルパン》と《きつねびゆらら》、これで……」
不二原「戦士族モンスターが2体……!!」
遊大のデッキにはある。
戦士族モンスター2体をリンク素材とするデッキの核と言えるモンスターがある。さらに《六花聖ティアドロップ》でリリースされた《HーCマグナム・エクスカリバー》の墓地効果によって、遊大のEXデッキは回復していた。
遊大「《テュルパン》と《きつねびゆらら》を、リンクマーカーにセット!!
白き指は彼の手を、黄金の糸束はその魂を撫で救う。2つの想いよ、戦火に馳せろ!!
________リンク召喚、《聖騎士の追想 イゾルデ》!!」
《聖騎士の追想 イゾルデ》(攻)
L:2 光属性・戦士族/リンク/効果
ATK:1600 [↙・↘]
姿を見せるのは、旗本に佇む2人の少女。
戦士としてはとても心許なく見えてしまうその攻撃力と容姿。だが《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》と通づるような、異質な雰囲気を放っている。
遊大「リンク召喚時、《イゾルデ》と墓地の《モージ》の効果をそれぞれ発動!!
《焔聖騎士ーローラン》、《焔聖騎士ーオリヴィエ》、《『焔聖剣ーデュランダル』》をデッキに戻し1枚ドロー!!
さらに《イゾルデ》の効果によって、《紅恋の麗傑ーブラダマンテ》を手札に加える。」
不二原「その効果によって手札に加わったモンスターは、このターン召喚も特殊召喚もできず、効果すら発動できない。
……だが《イゾルデ》にはあったな、本命と呼べる強力な効果が!!」
遊大「正解っ!!
《焔聖騎士ーオジエ》を自身の効果で装備し、《イゾルデ》の効果を発動!!
デッキからコストとして《メタルシルバー・アーマー》を墓地に送り、……来い、《焔聖騎士ーリッチャルデット》!!」
少女が御旗を掲げた。
同時にフィールドに赤い風が吹き荒れ、舞い上がる火の粉と同時に3人の戦士が膝をついて馳せ参じる。《聖騎士の追想 イゾルデ》によって特殊召喚されたのは《焔聖騎士ーリッチャルデット》のみのはず。しかし自分も不二原も、確かにそこに3体のモンスターが呼び出されていることを確認した。
茉菜「……な、なんで!?」
《焔聖騎士ーリッチャルデット》(守)
☆:1 炎属性・戦士族/チューナー/効果
ATK:1000(500)/DEF:0
《炎獣使いエーカ》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:2000(1500)/DEF:200
《焔聖騎士ーオジエ》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:2000(1500)/DEF:2000
不二原「《リッチャルデット》によって墓地の《炎獣使いエーカ》を特殊召喚し、さらにさっきのターンに《ゴッドフェニックス》を呼び出した時と同様に装備状態の《オジエ》を特殊召喚したな。
______これでモンスターは3体、合計レベルは……9!!」
遊大「おれはレベル4《炎獣使いエーカ》とレベル4《焔聖騎士ーオジエ》に、レベル1の《焔聖騎士ーリッチャルデット》をチューニング!!」
戦士達の姿は、光の粒子と鳴って霧散する。
8つの光輪は重なり合い、紅の炎がその中心を穿つ道となる。フィールドへと突き刺さる、緋色の刃。それを握るのは《焔聖騎士》たちを統べる勇士たちの王、《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》と並び、遊大の切り札となっているまさしく「皇帝」。
遊大「幾万の熾烈征するは焔の剣、天の御許に進軍せよ。
______シンクロ召喚、レベル9《焔聖騎士帝ーシャルル》!!」
《焔聖騎士帝ーシャルル》(攻)
☆9 炎属性・戦士族/シンクロ/効果
ATK:3500(3000)/DEF:200
赤く染まった剣を携え、ゆっくりとそのモンスターはフィールドへと降り立った。そして今ここに、お互いのエースモンスターが対峙する。
遊大「おれはこのエンドフェイズ、《シャルル》の効果を発動!!
墓地から《メタルシルバー・アーマー》を、さらにデッキから《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備する!!
_______行くぞ、《六花来々》を破壊!!」
それはカードを装備することで発動する《焔聖騎士帝ーシャルル》の効果。黒い鎧に身を包んだその騎士王が刃を構え、それを目にも止まらぬ速度で振り抜いた。しんと白い結晶が舞っていたフィールドは、赤いヒビを這わせながらその刃先の軌道に合わせて燃え崩れていく。
不二原「やはり《六花来々》を破壊してくるか。
だがターン終了時、私の墓地に眠る《六花のひとひら》は自身のフィールドに戻ってくる!!」
遊大「それを言うなら、《ゴッドフェニックス》だってこのエンドフェイズにコントロールはおれに戻ってくる!!
_______やろう……最終局面だ!!」
ーTURN4ー
不二原 千晶 (ターンプレイヤー)
LP :5500
手札 :1→2
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《六花のひとひら》
魔法・罠 :
フィールド:
樋本 遊大
LP :1650
手札 :3
モンスター:《聖騎士の追想 イゾルデ》《焔聖騎士帝ーシャルル》《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
魔法・罠 :《メタルシルバー・アーマー》《焔聖騎士ーオリヴィエ》
フィールド:《大聖剣博物館》
最終局面、と彼は言った。
たった4ターン、ただし2人の答えを見つけるための戦いはようやくここまで来た。状況的に見れば、LPに差はつけられているものの戦況をリードしているのは遊大だった。
不二原「……私のターン。」
コントロールが戻り、効果使用が可能になった《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》。そして再びシンクロ召喚された《焔聖騎士帝ーシャルル》。《焔聖騎士導ーローラン》を装備することで破壊効果をメインフェイズに撃ち込める上に、《メタルシルバー・アーマー》と《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備したことで、不二原は『フィールド・墓地のモンスター1体のみを対象として発動する効果』を全て封殺されており、墓地に存在する《蕾禍》のリンクモンスターの効果がそれに当たる。
遊大「……こんなに分かり易い状況はない、そうだろ。」
不二原「……ああ、」
加えて、フィールドに残された《六花聖ティアドロップ》にオーバーレイユニットは存在せず、手札の2枚のうち1枚は《六花絢爛》で公開情報。彼がいま口にしたように、この状況は二つに一つ。
不二原「……このターンでお前のLPを削り切らなければ、私の負けだと言うことだな。
_______十分だ、1ターンもあれば!!」
遊大「そうかよ……かかってきやがれ!!!」
不二原「私は、《六花のひとひら》の効果を発動。
デッキから《六花のしらひめ》を手札に加え、自身の効果で特殊召喚!!」
《六花のしらひめ》(攻)
☆:4 水属性・植物族/効果
ATK:0/DEF:0
あのカードには、手札・墓地に存在する状態で相手がモンスター効果を発動した際に、自分の植物族をリリースすることでその効果を無効にすることができる。遊大が発動できる効果は2つ、《焔聖騎士帝ーシャルル》と《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》だ。手札には《六花絢爛》がある。無効化することができずとも、彼は首にかかる勝敗を決めかねないカードに対してこの効果を使うはずだ。だがそれは不二原も承知の上、勝負の行方は、いよいよ自分にはわからなくなっていた。
《廻生のベンガランゼス》(攻)
L:4 光属性・植物族/リンク/効果
ATK:2500 [←・↑・↓・→]
不二原「墓地の《ベンガランゼス》の効果。
《アロマセラフィージャスミン》と《蕾禍ノ武者髑髏》を除外することで、墓地からこのカードを特殊召喚する。」
遊大「あんたはもうこのターンに植物族しか特殊召喚できないし、《ベンガランゼス》の効果も使えない。
……どうする気だ、このターンで勝つためにはあんたはどうしたい!?」
不二原「私は、手札から《六花絢爛》を発動。
コストとして《しらひめ》をリリースし、デッキから《六花精スノードロップ》とレベル8の《桜姫タレイア》を手札に加える。
_______『どうする気だ』と言ったか?」
その言葉に、遊大がはっとした。
遊大はきっと《六花精スノードロップ》の効果は看破していただろう。しかし彼の墓地には《六花のしらひめ》のカード、そして盤面には3体の植物族。それが意味することは……
不二原「こちらの台詞だな。
私は《六花のひとひら》をリリースし、手札の《スノードロップ》の効果を発動。このカード自身と、《六花絢爛》の効果で手札に加えた《桜姫タレイア》を特殊召喚する!!」
遊大「《ゴッドフェニックス》の効果を発動!!」
《メタルシルバー・アーマー》を墓地に送ることで、その発動を無効に___________」
不二原「墓地の《六花のしらひめ》の効果を発動。
フィールドの《ベンガランゼス》をリリースすることで、その効果を無効にする!!」
それが意味するのは、状況がすでに手遅れだということ。
遊大が最も警戒しなければならないのはレベル8のモンスターが複数体フィールドに召喚されること。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》が不二原へと振り落とした大剣は、すんでの所でぴたりと止まった。その半身は白く凍りつき、身動きを取ることのできないその様を置き去りにして、2人の花姫がゆっくりとフィールドへ降りた。
《六花精スノードロップ》(守)
☆:8 水属性・植物族/効果
ATK:1200/DEF:2600
《桜姫タレイア》(攻)
☆:8 水属性・植物族/効果
ATK:2800(3100)/DEF:1200
遊大「……2体目の《ティアドロップ》を召喚する気か、だが________」
不二原「《焔聖騎士帝ーシャルル》は《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備していることで効果対象にならない。
さらに墓地の《焔聖騎士導ーローラン》を装備することで、たとえX召喚するのが《ティアドロップ》でなくとも効果使用前に破壊できる。
………………そんなところか。」
2人の間に走る沈黙。
お互いに交差する思考。白く染まった植物園で繰り広げられたデュエルは、いよいよ最後の攻防に移ろうとしていた。不二原の手札の1枚、このターンにドローした最後の1枚であるそのカードが、その口火を切る。
不二原「私は手札の《六花精シクラン》をリリースし、効果発動。
《スノードロップ》と《桜姫タレイア》のレベルを……2つ下げてレベル6へと変動させる!!」
茉菜「…………!!」
自分はその瞬間に、1枚のカードが頭をよぎった。
それはランク6のエクシーズモンスター、《六花聖カンザシ》。モンスターが破壊されるとき、それをリリースで肩代わりする効果を持つ。つまりそれが通れば《六花聖ティアドロップ》を破壊することはできなくなる。だからこそ、その瞬間を遊大は逃さなかった。不二原がエクストラデッキへと手を伸ばすよりも早く、彼の駆る《焔聖騎士帝ーシャルル》の刃は不二原のカードへと届いていた。
(ATK:2100)《聖騎士の追想 イゾルデ》
遊大「《桜姫タレイア》がフィールドに存在する限り、他の植物族を効果破壊できない。
……でもそいつ自身は違う。それに自身をエクシーズ素材にしようってんだろ。逃さねえよ……!!」
赤く染まった刃が、まるで雷光のような軌道を描いて《桜姫タレイア》の頸を落とした。
遊大が発動した《焔聖騎士導ーローラン》の効果。墓地の自身を戦士族である《聖騎士の追想 イゾルデ》の装備カードとし、オーバーレイネットワークが構築される前に、《焔聖騎士帝ーシャルル》がその種を摘んだ。
茉菜「残ったのは……レベル6の《スノードロップ》だけ……!!」
不二原に残されたのは、オーバーレイユニットの無い《六花聖ティアドロップ》と、レベル6となった《六花精スノードロップ》のみ。手札も0、非公開情報もない。自分には、遊大が《焔聖騎士導ーローラン》と《焔聖騎士帝ーシャルル》の効果を発動した時点で、それが勝敗を決する一手に思えて仕方がなかった。しかしこの局面で、お互いに闘志が燃え尽きない彼らを、2人の決闘者を見て、それこそが自分の思考の外側にある答えなんだと理解した。……デュエルはまだ終わっていない。
不二原「……逃げるだと?
言ったはずだ、『1ターンあれば十分』だと。お前もわかっているだろう。私の墓地にある《六花精ヘレボラス》は、まだ効果を発動していない!!」
……《六花精ヘレボラス》。
彼がそのカードを指した時、はっとした。それは植物族をリリースすることで墓地から特殊召喚できるモンスター。ただし彼が狙っているのは《ティアドロップ》をリリースすることによるレベルを持ったモンスターの展開と《スノードロップ》効果によるエクシーズ召喚ではない。……その逆だ。
不二原「《スノードロップ》をリリースし、このカードを墓地から特殊召喚する!!」
《六花精ヘレボラス》(守)
☆:8 水属性・植物族/効果
ATK:2600/DEF:1200
そう、その逆。
リリースするのは《スノードロップ》。不二原の勝利条件はただ一つ、このターンでLPを削り切ること。
彼は《六花精スノードロップ》と《六花精シクラン》、そして2ターン前のバトルフェイズでの攻防の中で示した《六花聖カンザシ》の情報を使うことで真の狙いを撹乱していた。……彼の目的と狙いは1つだけ、自分は気づいてなどいなかった。このターンの攻防の間も、いやこのデュエルの間ずっと、不二原と共に闘い続けた彼のエースモンスターを。
遊大「……すげえよ、あんた。」
不二原「このターン、私がリリースしたモンスターは5体。
…………樋本 遊大、お前も強かった。これしか私には無かった。これだけ、たったのこれだけだ……!!」
(ATK:3800)《六花聖ティアドロップ》
このターン、カードの応酬の中で強化され続けていたモンスター、それは不二原のエースである《六花聖ティアドロップ》だった。
ずっとこの状況を待っていたんだ。その攻撃力は3800まで上昇している。遊大が構えるモンスターに、その攻撃力を上回っているモンスターはいない。ターンこそ返せば《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》でも《焔聖騎士帝ーシャルル》でも容易に除去はできるのだろう。ただしそれは、このターンで勝敗がつかなかった場合の話。
不二原「バトルだ。」
《六花聖ティアドロップ》の攻撃力は3800、そして遊大のフィールドには2体のエースの他に《聖騎士の追想 イゾルデ》がいる。その攻撃力は2100、発生する戦闘ダメージは1700、そして遊大のLPは……残り1650。
その攻撃が通れば、遊大の敗北と不二原の勝利で勝負がつく。息を呑んでしまうような張り詰めた空気の中で、《六花聖ティアドロップ》が構えた。
不二原「《六花聖ティアドロップ》で、《聖騎士の追想イゾルデ》を攻撃。_______氷華傘散!!」
微笑女は、その傘で空を掻き払った。
描かれえた軌道は白く染まり、凍りついた空気がまるで花吹雪のように遊大のフィールドへと押し寄せる。彼は『花の魔女』ではない。それでもソリッドヴィジョンは、現代に発展したソリッドヴィジョンは空間ではなく人体の感覚にまでヴィジョンを投影する。……だからと言うべきなのか、いやそんなわけはない。まるで悴むような、身体中を蝕むこの冷たい痛みは、不二原の思いにほから無いのだった。彼らの闘いを見ることしかできなかった自分がいて、そしてその渦中に遊大はいる。
遊大「すげえよ、……やっぱあんたは凄い。…………でもさあ!!」
茉菜「……樋本くん!!」
遊大「『花の魔女』であることが……ここに留まるあんたの決断が!!」
迫る白い嵐を前にして、遊大はその手札から1枚のカードを掴み取った。
握り込まれたそのカードは赤く燃え上がり、眼前へと迫るその雪煙に叩き込まれた。吹き荒れる白い風の中で1枚のカードが緋色に輝いて、ゆっくりと、少しずつだとしてもそれを食い破っていく。
遊大「こんなに痛くて冷たいものなら……!!!
おれが無理矢理にでも前に引っ張って行ってやる!!!凍っちまったあんたの涙なんて、おれが溶かしてやるよ!!
_______《焔聖騎士ーローラン》、効果発動!!」
茉菜「…………!!!」
(ATK:3800)《六花聖ティアドロップ》
(ATK:2600)《聖騎士の追想 イゾルデ》
(LP : 450)樋本 遊大
不二原「……そうか、引いていたのか。」
遊大が手札から発動したのは《焔聖騎士ーローラン》のカード。そこにあるはずの無いカード。
遊大が1ターン前に効果を発動した《焔聖騎士ーモージ》は、《焔聖騎士ーローラン》を含む3枚のカードをデッキへと戻し、1枚のドローというチャンスを彼に与えていた。同時に発動した《聖騎士の追想 イゾルデ》の効果で手札に加わったのは《紅恋の麗傑-ブラダマンテ》。つまり彼は20分の1以上の確率を、たった1枚のドローで掻い潜っていた。
不二原「私は、……吹雪ならよかった。」
ーTURN5ー
樋本 遊大 (ターンプレイヤー)
LP :450
手札 :3→4
モンスター:《焔聖騎士帝ーシャルル》《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
魔法・罠 :《焔聖騎士ーオリヴィエ》《フェニックス・ギア・ブレード》
フィールド:《大聖剣博物館》
不二原 千晶
LP :5500
手札 :0
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《六花精ヘレボラス》
魔法・罠 :
フィールド:
ターンの移り変わりと同時に、《焔聖騎士帝ーシャルル》の手に《フェニックス・ギア・ブレード》が握られた。
戦士はこくりと静かにうなづくと、その刃を構えてゆっくりと前へと進む。不二原は初めて、遊大の目をまっすぐに見て言葉を漏らすように口を開いた。
不二原「……悲しみも、憎しみも、愛しさも、全て冷たく染めてしまうような、白い嵐なら良かった。」
(ATK:4000)《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
(ATK:2800)《六花聖ティアドロップ》
(LP :4300) 不二原 千晶
赫い炎雷が、振り抜かれた刃が、ついに《六花聖ティアドロップ》の首を斬り落とした。描かれた軌道が白い空気と擦れて火花を撒き散らし、凍りついた白い嵐は溶けて、そこは浅い水面になる。
不二原はもう手札のないその手で目蓋を拭い、溢れて落ちた雫が静かに波紋を作った。遊大は何も言うこと無く彼の前へと歩み寄る。たった一滴、それでも頬を流れた道筋を見た彼は、ディスクから手に取った《焔聖騎士帝ーシャルル》のカードを静かに胸に押し当てた。
不二原「______白いブーケを掲ぐ……花の魔女なら、良かった。」
(ATK:4300)《焔聖騎士帝ーシャルル》
(LP : 0) 不二原 千晶
淡く流れる水面も、不二原に押し当てられた赫い炎も、デュエルの終幕と共に光を失っていく。
それでももう、冷たくなっていた植物園の天蓋は春の光をいっぱいに取り込んでいて、彼らを照らしていた。ソリッドヴィジョンの光がなくとも、そこには春の陽の光があった。……魔女は、討ち取られた。最初からここに、魔女なんていなかったのだけれど。
遊大「……そうだな。
でもきっと、あんたは本物の花の魔女より強い。……強くなれる、おれたちならもっともっと、強くなれるよ。」
彼の、不二原の頬を伝った一粒の涙。
いつだって振り向けば、何も言わなくてもずっとそばにいてくれた彼女を、彼は忘れない。彼らは忘れない。共に進むから、きっとそばにいるから、彼は今だけなら、泣いてもいいのかもしれない。
続く
あんただってあの人に会わなきゃなんだろ、だったら一緒に来いって、言ってんだよ!!!」
両雄は声を昂らせる。
不二原が、彼が魔女ではないのなら。彼女を救おうと踠いた結果が今の彼であるなら、彼にこそ律歌に救いの手を差し伸べるべきと叫ぶ遊大。
不二原「違う、私の責務は彼女との決別だ……!
古池の言う通りだ。救った気になっただけの私に、彼女を支える権利など、無い!!」
そして自分はただ勝手に彼女を救った気になっていただけだと、そう内心わかっているからこそ、偽の魔女として彼女や自分達と交わることなくこの凍えるような温室に居座るべきと豪語する不二原。
茉奈「……正解なんて、ないでしょう。」
……でも。……それでも。
ーTURN2(メインフェイズ)ー
不二原 千晶(ターンプレイヤー)
LP :8000
手札 :2
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《六花聖ストレナエ》《六花精エリカ》
魔法・罠 :
フィールド:《六花来々》
樋本 遊大
LP :6800
手札 :4
モンスター:《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》《羅天神将》《炎獣使いエーカ》《焔聖騎士ーローラン》
魔法・罠 :セット×1
フィールド:《大聖剣博物館》
不二原「私は、オーバーレイユニットを1つ取り除き、《ティアドロップ》の効果を発動。
______《羅天神将》をリリース……!!」
まるでウェディングドレスのような白い羽衣に身を包んだ《六花聖ティアドロップ》。彼女が口元に手をかざしその手のひらにふっと息を吹き付けると、それは遊大のフィールドに届く頃には《羅天神将》の体を白く染め上げるほどの冷気となった。凍てついた体は文字通り氷像となって重たく崩れ去る。
遊大「《ティアドロップ》……!!
モンスター1体を対象として、それをリリースする効果……だけじゃない!!」
茉奈「モンスターがリリースされるたび、攻撃力が上昇する……!!」
(ATK:3000)《六花聖ティアドロップ》
展開と除去をリリースという手段に集中させることこそが《六花》のデッキ。《六花聖ティアドロップ》はまさしくそのエースモンスターであり、彼の、不二原 千晶の切り札でもあった。かつての決闘王杯ですら、その背中を押したのはかのモンスターだった。
不二原「バトルだ。
私は《六花聖ストレナエ》で《炎獣使いエーカ》を攻撃……!!」
《六花聖ストレナエ》が傘を無邪気に開くと、無数の氷柱が天をさいてフィールドに降り注ぐ。
遊大「あんたはわかってる。
自分がやったことも、おれたちたしようとしていることも。……おれだってわかるさ。
…………だから止めてみろ、おれのカードを!!」
不二原「『止めてみろ』……?」
遊大「トラップ発動……《決別》!!」
茉奈「……え!!!」
思わず声が出てしまった。
遊大が手札から《フェニックス・ギア・ブレード》のカードを墓地に送り発動したのは《決別》のカード。相手の攻撃宣言時に手札の魔法カードをコストとして発動し、バトルフェイズの終了とターン中のモンスター効果を封じるカード。コストを考えればさほど強力というわけでは無い、……しかし。
不二原「たかがカードだ……話にならない!!
_____私は《六花のしらひめ》の墓地効果を発動!!」
《決別》の無効。
それはきっと、いや確実に、彼女との別れを否定してみろという一種の挑発だった。ただの言葉遊び、ただの児戯。ただし実際に、戦術的に見ても次のターンまで墓地に残すべきではない《六花のしらひめ》を使わせるに至っている。
不二原「攻撃中の《ストレナエ》をリリースし、墓地の《しらひめ》をデッキに戻すことで、《決別》を無効にする。」
(ATK:3200)《六花聖ティアドロップ》
真っ白に凍りついた《決別》のカードを見て、遊大は笑っていた。……いい性格をしている。ただしこれでバトルは続行、さらに《六花聖ティアドロップ》の攻撃力は上昇し、遊大に身にかかるダメージは増大の一途を辿る。
不二原「……くだらないな。
私が《決別》を無効にしたことが、そんなに可笑しいか。」
遊大「お互い様だよなあ、勝つためだったら口先なんざいくらでも曲げんのは!!」
不二原「……チッ、」
安い挑発だ。
だがこれもきっと、遊大は無計画に行なっているものでは無い。勝算があって、その上で戦術と心理戦を天秤にかけさせている。相手が戦術を取ってくるのならば、それはすなわち……。
不二原「……私はリリースされた《ストレナエ》の効果を発動。
ランク5以上の植物Xモンスター1体を、墓地の《ストレナエ》自身をオーバーレイユニットとすることでEXデッキから特殊召喚する。」
遊大「あんた勝つための一手を取ったんだ。
……だったら勝てよ、なあ……!!!」
不二原「_____現れよ、《六花聖カンザシ》!!!」
《六花聖カンザシ》(攻)
★:6 水属性・植物族/エクシーズ/効果
ATK:2400/DEF:2400
《六花聖カンザシ》。
現状存在している《六花聖》モンスターの最後の1枚。ランクは6、ローダンセを模ったそのモンスターの効果は……
不二原「勝てよ、だと?……いい加減にしろ。
私は《六花聖ティアドロップ》で《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》に攻撃。
______この瞬間、《六花精エリカ》の効果発動!!」
遊大「《六花精エリカ》……自身をリリースし、植物族1体の攻撃力を1000上昇させる効果……それに加えて!!」
不二原「モンスターがリリースされたことで《六花聖カンザシ》の効果を発動。
______墓地より甦れ、《アロマセラフィージャスミン》!!」
そう、その効果は攻守両得。
味方を効果破壊から守る効果に加え、リリース時にいずれかの墓地に存在するモンスターを特殊召喚し、植物族へと変更させる。この局面、《六花聖ティアドロップ》の攻撃宣言時に《六花精エリカ》が自身リリースしたことで効果発動。攻撃巻き戻しと同時に《六花精ヘレボラス》にリリースされた《アロマセラフィージャスミン》が再び呼び出されている。
《アロマセラフィージャスミン》(攻)
L:2 光属性・植物族/リンク/効果
ATK:1800 [↙・↘]
不二原「……無論、攻撃は続行だ。
《ティアドロップ》、……《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を無に還せ……!!」
その宣言に《六花聖ティアドロップ》はこくりとうなづく。ソリッドヴィジョンに映し出された空気が白く凍りつく。彼女のブーケから落ちた一縷の滴は震える冷気を纏って巨大な氷柱となった。
(ATK:4400)《六花聖ティアドロップ》
(ATK:1750)《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
(LP :4150)樋本 遊大
轟音と視界が真っ白に染まるほどの嵐。
そこに立っていたのは、まだ闘志の尽きない瞳を彼に向ける遊大だった。
遊大「はァ……ははは、!!
やっぱり、痛くも痒くもねえ……!!」
(ATK:1800)《アロマセラフィージャスミン》
(DEF: 200)《炎獣使いエーカ》
遊大「なあ不二原さん、やっぱあんた魔女じゃねえよ。
花の魔女なんておっかない存在が、こんなに……!!」
モンスターを砕かれ、フィールドに抱える戦力がみるみる崩されていく遊大。そんな中で、彼は目の前の不二原に語りかけていた。
(ATK:2400)《六花聖カンザシ》
(DEF: 200)《焔聖騎士ーローラン》
遊大「こんなに苦しそうに戦うわけねえだろうが……!!」
不二原「……。」
わからなかった。
優勢に立たされているのは不二原であるはずなのに、彼が負ける未来が見えなかった。遊大が、負ける未来が見えなかった。遊大はその目に闘志を灯して、闘いを楽しむみたいにデュエルをする人だ。自分との戦いの時も、蜂谷との時だって、そうだった。彼女みたいに、時和 律歌みたいに闘う人だ。
遊大「何度でも言う。
おれの目的は、デュエル部を再建して、あの人に会うことだ。別にあんたにやましい気持ちがあるわけでもなんでもない。ただ恩人だから、礼と謝罪をする。それにデュエル部が無くなったことにあの人が関係してるなら、放っとけない。
______その上で、おれと一緒に来い。あんたにだって、色々言うことあるはずだろ。」
不二原「それは_____。」
彼はそこまで言って、しばし黙り込んだ。
まるで言葉を探すみたいに、銀色の髪を靡かせて、冷気の滞留する植物園の中から天を仰いでいた。
不二原「私にだって、わからない。
嘘を言ったつもりはない。本当にどうすべきか、わからないままこの半年を過ごしてきた。
_____樋本 遊大、私はどうすれば良かったのだろうな。」
遊大「自分の理想なんて、わかってるくせによ。」
不二原「……理想は理想でしかない。
結局私は何もできなかった。救えなかったことの贖罪のように、ただ勝手に魔女を名乗っていただけだ。
その私は、彼女に何を話せばいい。何をすればいい。」
彼はそう言うと、また遊大の方へと向き直った。
空虚だった瞳は潤んでいた。まるで凍りついた涙が雪解けたように。
遊大「ずっと、そうなんだな。
そんな、どこへ行けば良いかもわかんねえまま、ずっとここまで来てたのか。」
不二原「……。」
遊大「わかるよ、何をすべきかなんて、きっとわかる。
おれたちはデュエリストなんだ。答えは闘いの中で見つけられる。それにあんたは、まだディスクを構えてるじゃないか。」
不二原はその言葉に、ぎゅっと自分のカードを握り直す。
バトルフェイズは終了し、フェイズはすでにメインフェイズ2へと突入していた。
不二原「そうだな。
私はとことん、自分のことがわからない。それでも、まだ自分の過去を否定する気持ちには、なっていないらしい。
……ディスクを、構えているからな。」
遊大「……おう。」
不二原「墓地に存在する、《蕾禍ノ武者髑髏》の効果を発動。
オーバーレイユニットを無くした《カンザシ》をEXデッキに戻し、《武者髑髏》を墓地から特殊召喚する。そして《アロマセラフィージャスミン》と《蕾禍ノ武者髑髏》をリンクマーカーへとセット……!!」
出現するサーキット。まるで這い出るかのように、畝る根を這わせながらそのモンスターはフィールドへと産み落とされた。
不二原「______リンク召喚、《廻生のベンガランゼス》!!」
《廻生のベンガランゼス》(攻)
L:4 光属性・植物族/リンク/効果
ATK:2500 [←・↑・↓・→]
遊大「満を持して《ベンガランゼス》かよ……!!」
《廻生のベンガランゼス》は、彼のデッキのリンクモンスターの中で最も強力なリンク値を持つモンスター。相手ターンにもリリースという除去をできるのが《六花聖ティアドロップ》であるなら、かのモンスターの強みは対象を手札に戻すことができるという除去手段。ただしデメリットとして手札に戻すモンスターの攻撃力分のダメージを受けるため、蘇生効果を加味しても連発は難しい。
不二原「私はカードを1枚セットし、これでターンを終了。
同時に《ティアドロップ》の攻撃力は2800へと戻り、《エリカ》の効果も解除される。」
遊大「エンドフェイズに、《マグナム・エクスカリバー》の効果にチェーンした《アンジェリカ》がフィールドへと帰還!
さらに破壊された《焔聖騎士ーローラン》の効果でデッキから《『焔聖剣ージョワユーズ』》を手札に加える。」
ーTURN3ー
樋本 遊大 (ターンプレイヤー)
LP :4150
手札 :4
モンスター:《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》
魔法・罠 :
フィールド:《大聖剣博物館》
不二原 千晶
LP :8000
手札 :1
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《廻生のベンガランゼス》
魔法・罠 :セット×1
フィールド:《六花来々》
遊大は、《焔聖騎士ーローラン》の効果で《強奪》のカードを手札に加えることは可能だった。ただし、ただのギャラリーである自分でもわかる。今の彼らに必要なのは、それじゃない。迷いながら、進んだ道を立ち止まって見返した不二原と、立ち止まることなどなくただただ進み続けることを選んだ遊大。彼らはまだデュエルを続けていて、答えをその中に委ねていたからだ。
遊大「おれは、墓地の《焔聖騎士導ーローラン》の効果を、《アンジェリカ》を対象として発動……!!」
《焔聖騎士導ーローラン》は、メインフェイズに戦士族を対象とし、墓地の自身を装備させる効果を持つ。ただし遊大も、考えなしにこの効果を発動しているわけではない。《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》には、効果対象となった時に発動できる効果が…………
不二原「《アンジェリカ》、自身を除外しデッキから炎属性・戦士族を墓地に送る効果か。」
遊大「チェーンはしないよな。
このタイミングで《ティアドロップ》か《ベンガランゼス》を使っても、どちらにせよチェーン③で《アンジェリカ》の効果は発動できる。」
不二原の判断は間違っていない。
《六花聖ティアドロップ》の効果も、《廻生のベンガランゼス》の効果も、対象を取ってしまう。ここで使っても、《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》の効果使用は免れない。しかし不二原を驚嘆させたのは、ここで取る遊大の判断であった。
(ATK:2300)《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》
不二原「……!?」
茉奈「これは……!!?」
座り込む王妃の背に、赫く染め上がった戦士の影が淡く立ち昇る。それは《焔聖騎士導ーローラン》を装備しているということであり、遊大は《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》の効果を使用しなかったということである。……一見メリットがないこの行為、その真意を探った瞬間だった。自分には、いや不二原にも、一つの考えが浮かんだ。
遊大「おれは《『焔聖剣ージョワユーズ』》を、あんたのフィールドの《ティアドロップ》を対象として発動し、さらに効果を発動。
______墓地の《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を、手札に戻す……!!」
……《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》。
フィールド・墓地の装備魔法を除外することで特殊召喚が可能が可能になる彼のエース。そしてその効果は、フィールドの装備カードを墓地へ送ることで、モンスター効果の発動を無効にし破壊する。
不二原「……成る程、そうか……そうか!!」
遊大「墓地から《フェニックス・ギア・ブレード》を除外!!
神すら穿つ剣。勝利への天道よ、赫灼に染まれ!!
______現れろ、レベル9《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》!!」
《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》(攻)
☆9 炎属性・戦士族/効果
ATK:3500(3000)/DEF:2200
爆炎と共に轟臨する、不死鳥の剣士。
何度倒されようが、その度にまた舞い戻る、まさしく不死鳥。そしてこの状況、《焔聖騎士導ーローラン》を《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》に装備するという奇策によって、不二原の行動が大きく縛られる。
遊大「除外された《フェニックス・ギア・ブレード》の効果を発動、このカードを手札に戻す!!」
相手の不利を強制する戦略。
《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》がフィールドに呼び出された以上、公開情報だけでみれば優劣が逆転する形になった。
不二原「……やってくれるな。
《ゴッドフェニックス》の効果は、フィールドの装備カードを墓地へ送ることで発動できる効果。
…………着地時点でそれをアクティブにしてくるか……!!」
茉奈「そもそも、《アンジェリカ》を対象に取る効果を発動することは樋本くんにとってメリットでしかない……!!」
相手ターンに発動する妨害、その躱わし方が一端のデュエリストのそれではない。そして彼の恐ろしいところは、ここで止まらないことだ。相手が一歩退けば、自分は確実に一歩進む、経歴も戦歴も、謎に包まれている遊大が見せるのは、そんな攻防だった。
遊大「墓地に《焔聖騎士―オリヴィエ》の効果を発動。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を対象とし、このカードを装備する。」
その宣言に、不二原の呼吸が一瞬詰まる。
背後からでもわかった。ここが不二原にとってのターニングポイントだった。一歩一歩詰め寄ってくる遊大の刃は、彼の想定よりも早く不二原の首に届いていた。
不二原「……!!
…………罠、発動……《六花の薄氷》!!!」
追い詰められた不二原が発動したのは《六花の薄氷》。相手モンスター1体を対象とし、その効果の無効と使用をターン中一才封じる罠だった。そしてその真価は、植物モンスターをリリースして発動した場合に起こる対象のコントロール奪取にある。
遊大「……そうだよな
活かしてくるよなあ、《六花来々》の効果を!!」
発動中の《六花来々》。
《六花》カードの発動時に起こる植物族のリリースを、相手モンスター1体のリリースで肩代わりする効果を持つ。故に前のターンから遊大が最も警戒していたカードであり、その効果を同時使用することで2体のモンスターを相手取ることができる《六花の薄氷》は、まるで最後の抵抗のようでありながら、侵食する結氷のよいに、彼のフィールドを蝕んでいく。
不二原「発動時、《アンジェリカ》をリリース!
さらに《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を対象として発動することで、そのコントロールを得る……!!」
パキパキ……と、音を立てながら遊大のフィールドは銀色に染め上がる。氷漬けになってしまった王妃は地に沈み、銀の蔦に手繰り寄せられた《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》は、不二原のフィールドに縛り付けられた。
不二原「……《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備したモンスターは効果対象にならない。
そして《ティアドロップ》と《ベンガランゼス》の効果はお互いに対象を取って発動する。…………たった1枚の非公開情報を明るみにするためにここまでするか、樋本 遊大。」
遊大「《ゴッドフェニックス》には戦闘時にモンスターを装備する効果がある。このまま《オリヴィエ》の装備が完了してメインフェイズ終了を宣言すればあんたの盤面はオジャンだった。……使うしかなかっただろ?」
攻防のレベルが高い。
お互いに、対面しているこの僅かな時間でカードのテキストをすべて頭に叩き込み、息の詰まるような一進一退の闘いをしている。お互いのカードの発動1つ1つが首に届き得る。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》のコントロールを奪取され、《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》がリリースされた今、不二原の《六花聖ティアドロップ》と《廻生のベンガランゼス》が再びアクティブになっている。対する遊大のフィールドはガラ空き。《焔聖騎士ーオリヴィエ》も、効果処理時点でコントロールが相手に移ったモンスターに装備することはできない。…………しかし、
(LP :2950)樋本 遊大
遊大「おれは1200LP払い、《大聖剣博物館》の効果を発動。
……デッキから2枚目の《『焔聖剣ーデュランダル』》を手札に加え、これを《ティアドロップ》に発動!!」
不二原「……!!」
遊大「《デュランダル》、効果発動!!
……デッキから《焔聖騎士ーオジエ》を手札に加え、通常召喚!!」
《焔聖騎士ーオジエ》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:2000(1500)/DEF:2000
このターン、遊大はまだ通常召喚を行なっておらず、かつ手札の4枚も非公開情報。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》の1枚で不二原の《六花の薄氷》を使用させ、残されたカードで《六花聖ティアドロップ》と《廻生のベンガランゼス》を相手取る形になる。
遊大「《オジエ》、召喚時に効果を発動。
デッキから《愉怪な燐のきつねびゆらら》のカードを墓地へ!!」
不二原は、2回までフィールドのモンスターを除去する手段がある。《聖騎士の追想 イゾルデ》や他のシンクロモンスターのことも考えると、モンスターが並んだ瞬間、もっと言えば、装備カードを使用するデッキであることを加味しモンスターが並ぶ前に除去を放つのが理想である。しかし、そんなことなどすでに遊大は把握していた。
遊大「手札から《キリビ・レディ》の効果を発動。戦士族モンスターがいる時、このカードを特殊召喚する!」
《キリビ・レディ》(守)
☆:1 炎属性・戦士族/効果
ATK:600(100)/DEF:100
不二原「……、」
この何気ない2手で行動を制限されていた。モンスターフィールドにゼロという状況を作れない。《愉怪な燐のきつねびゆらら》は、遊大ではなく不二原のフィールド・墓地に依存する効果を持っている。除去するのが《焔聖騎士ーオジエ》であろうが、《キリビ・レディ》であろうが、墓地から《愉怪な燐のきつねびゆらら》は特殊召喚されてしまう。
遊大「……使わないのか?」
不二原「好きにすれば良い。」
逆に遊大は、不二原の狙いがモンスターをすべて捌き切ることか決定打となるモンスターへの除去効果であるとわかった瞬間に、道筋を完全に定める事ができる。
遊大「《キリビ・レディ》をリリースし、効果を発動。手札から戦士族モンスター1体を特殊召喚する。
_______《昇華騎士ーエクスパラディン》!!」
《キリビ・レディ》が手に握った火打石を甲高く打ち付けると、弾ける赤い光を弾き裂いて重厚な鎧騎士が出現する。もうもうと湧き上がる蒸気は東洋風の騎士のシルエットを描いて、その姿で初めて自分は遊大の策略に気づいた。
不二原「《焔聖騎士ーモージ》の効果でデッキに戻ったカードか。」
《昇華騎士ーエクスパラディン》と、その効果によってデッキから装備された《焔聖騎士ーテュルパン》。
おそらく不二原の言った通り、《焔聖騎士ーモージ》の効果によってデッキに戻された《昇華騎士ーエクスパラディン》をドローしての結果だ。デッキに戻ってからのドロー枚数は2枚。それを引いた彼もそうだが、それよりもこの状況を作ることを想定していた彼の先見も目を見張るものがある。
遊大「《大聖剣博物館》の効果を発動!!
________装備状態の《焔聖騎士ーテュルパン》を特殊召喚する!」
《昇華騎士ーエクスパラディン》(攻)
☆:3 炎属性・戦士族/効果
ATK:1700(1200)/DEF:200
《焔聖騎士ーテュルパン》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:1900(1400)/DEF:1700
不二原は、やはり《昇華騎士ーエクスパラディン》に《六花聖ティアドロップ》の効果も《廻生のベンガランゼス》の効果も使わなかった。装備カードだった《焔聖騎士ーテュルパン》は、装備カードを持った自分のモンスターがいれば自己蘇生可能。そして遊大の手札には公開情報の《フェニックス・ギア・ブレード》がある。頭数を減らしても、決定打にはならない。
茉菜「4体の戦士族……!!」
不二原「……だがチューナーはない。どう掻い潜るつもりだ?
どうも私の妨害をかわす様に展開をしているな。わかっているんだろうな、どれほど並べても決定打になるモンスターを呼び込まなければ戦況は動かない。」
遊大「そうすればおれのモンスターは減るし、そこに妨害を打ち込むって言いたいんだろ。
……わかってるよそんなもんは!!」
完全な拮抗状態。
遊大はEXデッキに触れれば即座に妨害を喰らい、巨大なアドバンテージ損失となる。逆に不二原は、そうなれば絶対に効果を使わなければいけない状況に立たされている。しかし、それを動かすのは……
遊大「あんただってわかってんだろ、さっきのターンに答えは見せてんだからさあ!!
おれはレベル4の戦士族、《焔聖騎士ーオジエ》と《焔聖騎士ーテュルパン》をオーバーレイ!!」
不二原「……!!」
二人の剣士はその手を合わせ、光にとなって螺旋を描く。
絡み合う道筋は渦を描き、弾けた。宙からフィールドへと突き刺さる一本の刃。そうだ。確かにそうだった。この状況を確実に動かせるカードを、1ターン前に遊大は見せている。バラバラだったピースが合致するように、問いの答え合わせの如くそのモンスターはフィールドへと襲来した。
遊大「エクシーズ召喚!!
_______ランク4、《HーCマグナム・エクスカリバー》!!」
《HーC マグナム・エクスカリバー》(攻)
★:4 光属性・戦士族/エクシーズ/効果
ATK:2000/DEF:2000
銀色の刃が、真っ直ぐに不二原へと向けられた。
その効果は、メインフェイズ中に他のモンスターの装備カードとなる効果と、戦闘時に攻撃力を倍にする効果。この局面で展開するこのモンスターこそ、不二原にとっての勝敗を別つ二択になる。
遊大「《フェニックス・ギア・ブレード》を《マグナム・エクスカリバー》に装備。
……おれは、メインフェイズを終了する。」
不二原「やはりな。」
遊大のフィールドには《HーCマグナム・エクスカリバー》と《昇華騎士ーエクスパラディン》、《愉怪な燐のきつねびゆらら》。不二原が構えている妨害は《六花聖ティアドロップ》と《廻生のベンガランゼス》。二面除去をしてもモンスターは残る。そして《廻生のベンガランゼス》と《HーCマグナム・エクスカリバー》の効果はメインフェイズでしか発動できず、仮に《廻生のベンガランゼス》の効果を使えば、遊大はメインフェイズを続行可能になる。そうなれば《焔聖騎士ーテュルパン》を絡めてさらなる展開をできる可能性があり、自己蘇生の種となる《焔聖騎士ーモージ》はまだこのターンに効果を使用していない。
茉菜「……これは…!!」
どう足掻いても不二原は追い詰められる。有利に転ぶことのない強制二択。
不二原も、おそらく先ほどの発言で気づいたのだろう。今、この戦場を支配しているのは確実に遊大だ。
不二原「お前、篤厚に見えてなかなかだな。
いいだろう乗ってやる。私もお前も、真っ直ぐには戦えないわけか……!!」
遊大「バトルに入るってことで、いいんだよな。」
フェイズの移行。
それはお互いにとって、メインフェイズ中の動きを放棄したことと同義。遊大は自分モンスターへ《HーCマグナム・エクスカリバー》は装備できず、不二原も《廻生のベンガランゼス》の効果を発動できない。よって生まれる回答はたったの1つ。
遊大「……《マグナム・エクスカリバー》で、《六花聖ティアドロップ》へ攻撃!!」
赤い鎧騎士に握られた巨大な刃。目にも止まらぬ速度で白刃は《六花聖ティアドロップ》へと迫る。《HーCマグナム・エクスカリバー》は、ダメージステップ開始時に攻撃力を2倍にする効果を持ったモンスター。《六花聖ティアドロップ》のことを容易く叩き切ることができるであろうその攻撃は_____。
不二原「……やらせるはずが無いだろう!!」
遊大の効果発動宣言よりも前に、フィールドが青白く凍り付いた。《六花聖ティアドロップ》の効果。フィールドのモンスター1体をリリースする。その効果対象となったのは、他でもない《HーC マグナム・エクスカリバー》だった。白く動かなくなった剣はぼろぼろと崩れ、二人の視線が重なる。
遊大「そうだよなあ!!
……《ティアドロップ》の効果を使わなきゃいけない状況ってわけだ!!わざわざバトルに入ってから使うってことは、《ベンガランゼス》の効果の温存だけじゃないだろ、メインフェイズ中の展開を警戒したな?」
不二原「当然だ。
よかったのか?……バトルに入っているということは、お前はもうこのターンで私のLPを詰め切ることはできない。
私の手札の1枚を、知らないはずもないだろう。」
手札の1枚は《六花絢爛》。
それは《六花聖ストレナエ》の効果で手札に戻されている《六花》の初動。すなわち、遊大がこのままターンを返せば、また不二原は持ち直すことのできる可能性が高い。一切の油断ならない状況はまだ続く。そんな手に汗が滲んでしまうような状況を裂いたのは、遊大の一声だった。
遊大「公開情報だろ、《六花絢爛》だ。
確かに《六花来々》もあるし、このままターンを返したら勝てねえかもしれないな。
_____でも、おれが……!!」
不二原「……!!」
吹き上げられたホワイトアウトの中を、赤い火花を撒き散らしながら一人の戦士が疾走する。
瞬く間に、手に握られた刃は《廻生のベンガランゼス》の体に突き立てられた。全く予想外の出来事、《昇華騎士ーエクスパラディン》が、《廻生のベンガランゼス》へと攻撃を仕掛けている。そしてその2体の攻撃力は、全くの互角の数値まで釣り上げられていた。激戦を繰り広げるモンスターの奥で、遊大のフィールドに映し出された1枚のカードに、自分と不二原は気づいた。
遊大「…………このまま終わるわけ、ねえだろうが!!」
不二原「なんだ……そのカードは!?」
(ATK:2500)《昇華騎士ーエクスパラディン》
(ATK:2500)《廻生のベンガランゼス》
遊大「昔から入ってる、おれのデッキのお守りだよ!!
______速攻魔法、《Ai打ち》ッ!!」
その巨体にざっくりと刺し込まれた刃は、赤く燃え上がり蒸気を放ちながらその鋼の色すら紅に変えていく。
臨界を超えたその鎧と刃はついに轟音ともに弾け、吹き荒れる白い嵐を一挙に晴らした。不二原は、油断をしていたわけでは決してない。メインフェイズ1の展開を警戒したからこそ《廻生のベンガランゼス》の効果を温存し、バトルフェイズに《六花聖ティアドロップ》の効果を使うことを決断した。
(LP :1650)樋本 遊大
(LP :5500)不二原 千晶
しかしそれすら、遊大にはわかっていたんだ。
《廻生のベンガランゼス》の効果をを使わせることすら無く、《昇華騎士ーエクスパラディン》もろとも盤面をこじ開けた。《Ai打ち》の効果によってLPが擦り減る二人を横目に、バトルフェイズは過ぎ去る。
不二原「強引に……突破してきたな!!」
遊大「無理やりこじ開けるのは昔から得意でね……!!
おれは《マグナム・エクスカリバー》を墓地から除外し、その効果を発動!!
墓地の戦士族モンスター3枚を対象とし、デッキに戻す!」
遊大の手に握られたのは《聖騎士の追想 イゾルデ》、《焔聖騎士帝ーシャルル》、《シャルル大帝》の3枚のカード。
表情を顰める不二原を前に、さらに遊大は2枚のカードを墓地から握り出す。
遊大「さらに墓地の《モージ》と《テュルパン》の効果を発動!!
《モージ》を装備カード扱いで《きつねびゆらら》へ装備し、《テュルパン》を特殊召喚!!」
《焔聖騎士ーテュルパン》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:1900(1400)/DEF:1700
茉菜「《テュルパン》と《きつねびゆらら》、これで……」
不二原「戦士族モンスターが2体……!!」
遊大のデッキにはある。
戦士族モンスター2体をリンク素材とするデッキの核と言えるモンスターがある。さらに《六花聖ティアドロップ》でリリースされた《HーCマグナム・エクスカリバー》の墓地効果によって、遊大のEXデッキは回復していた。
遊大「《テュルパン》と《きつねびゆらら》を、リンクマーカーにセット!!
白き指は彼の手を、黄金の糸束はその魂を撫で救う。2つの想いよ、戦火に馳せろ!!
________リンク召喚、《聖騎士の追想 イゾルデ》!!」
《聖騎士の追想 イゾルデ》(攻)
L:2 光属性・戦士族/リンク/効果
ATK:1600 [↙・↘]
姿を見せるのは、旗本に佇む2人の少女。
戦士としてはとても心許なく見えてしまうその攻撃力と容姿。だが《聖剣を巡る王妃アンジェリカ》と通づるような、異質な雰囲気を放っている。
遊大「リンク召喚時、《イゾルデ》と墓地の《モージ》の効果をそれぞれ発動!!
《焔聖騎士ーローラン》、《焔聖騎士ーオリヴィエ》、《『焔聖剣ーデュランダル』》をデッキに戻し1枚ドロー!!
さらに《イゾルデ》の効果によって、《紅恋の麗傑ーブラダマンテ》を手札に加える。」
不二原「その効果によって手札に加わったモンスターは、このターン召喚も特殊召喚もできず、効果すら発動できない。
……だが《イゾルデ》にはあったな、本命と呼べる強力な効果が!!」
遊大「正解っ!!
《焔聖騎士ーオジエ》を自身の効果で装備し、《イゾルデ》の効果を発動!!
デッキからコストとして《メタルシルバー・アーマー》を墓地に送り、……来い、《焔聖騎士ーリッチャルデット》!!」
少女が御旗を掲げた。
同時にフィールドに赤い風が吹き荒れ、舞い上がる火の粉と同時に3人の戦士が膝をついて馳せ参じる。《聖騎士の追想 イゾルデ》によって特殊召喚されたのは《焔聖騎士ーリッチャルデット》のみのはず。しかし自分も不二原も、確かにそこに3体のモンスターが呼び出されていることを確認した。
茉菜「……な、なんで!?」
《焔聖騎士ーリッチャルデット》(守)
☆:1 炎属性・戦士族/チューナー/効果
ATK:1000(500)/DEF:0
《炎獣使いエーカ》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:2000(1500)/DEF:200
《焔聖騎士ーオジエ》(攻)
☆:4 炎属性・戦士族/効果
ATK:2000(1500)/DEF:2000
不二原「《リッチャルデット》によって墓地の《炎獣使いエーカ》を特殊召喚し、さらにさっきのターンに《ゴッドフェニックス》を呼び出した時と同様に装備状態の《オジエ》を特殊召喚したな。
______これでモンスターは3体、合計レベルは……9!!」
遊大「おれはレベル4《炎獣使いエーカ》とレベル4《焔聖騎士ーオジエ》に、レベル1の《焔聖騎士ーリッチャルデット》をチューニング!!」
戦士達の姿は、光の粒子と鳴って霧散する。
8つの光輪は重なり合い、紅の炎がその中心を穿つ道となる。フィールドへと突き刺さる、緋色の刃。それを握るのは《焔聖騎士》たちを統べる勇士たちの王、《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》と並び、遊大の切り札となっているまさしく「皇帝」。
遊大「幾万の熾烈征するは焔の剣、天の御許に進軍せよ。
______シンクロ召喚、レベル9《焔聖騎士帝ーシャルル》!!」
《焔聖騎士帝ーシャルル》(攻)
☆9 炎属性・戦士族/シンクロ/効果
ATK:3500(3000)/DEF:200
赤く染まった剣を携え、ゆっくりとそのモンスターはフィールドへと降り立った。そして今ここに、お互いのエースモンスターが対峙する。
遊大「おれはこのエンドフェイズ、《シャルル》の効果を発動!!
墓地から《メタルシルバー・アーマー》を、さらにデッキから《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備する!!
_______行くぞ、《六花来々》を破壊!!」
それはカードを装備することで発動する《焔聖騎士帝ーシャルル》の効果。黒い鎧に身を包んだその騎士王が刃を構え、それを目にも止まらぬ速度で振り抜いた。しんと白い結晶が舞っていたフィールドは、赤いヒビを這わせながらその刃先の軌道に合わせて燃え崩れていく。
不二原「やはり《六花来々》を破壊してくるか。
だがターン終了時、私の墓地に眠る《六花のひとひら》は自身のフィールドに戻ってくる!!」
遊大「それを言うなら、《ゴッドフェニックス》だってこのエンドフェイズにコントロールはおれに戻ってくる!!
_______やろう……最終局面だ!!」
ーTURN4ー
不二原 千晶 (ターンプレイヤー)
LP :5500
手札 :1→2
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《六花のひとひら》
魔法・罠 :
フィールド:
樋本 遊大
LP :1650
手札 :3
モンスター:《聖騎士の追想 イゾルデ》《焔聖騎士帝ーシャルル》《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
魔法・罠 :《メタルシルバー・アーマー》《焔聖騎士ーオリヴィエ》
フィールド:《大聖剣博物館》
最終局面、と彼は言った。
たった4ターン、ただし2人の答えを見つけるための戦いはようやくここまで来た。状況的に見れば、LPに差はつけられているものの戦況をリードしているのは遊大だった。
不二原「……私のターン。」
コントロールが戻り、効果使用が可能になった《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》。そして再びシンクロ召喚された《焔聖騎士帝ーシャルル》。《焔聖騎士導ーローラン》を装備することで破壊効果をメインフェイズに撃ち込める上に、《メタルシルバー・アーマー》と《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備したことで、不二原は『フィールド・墓地のモンスター1体のみを対象として発動する効果』を全て封殺されており、墓地に存在する《蕾禍》のリンクモンスターの効果がそれに当たる。
遊大「……こんなに分かり易い状況はない、そうだろ。」
不二原「……ああ、」
加えて、フィールドに残された《六花聖ティアドロップ》にオーバーレイユニットは存在せず、手札の2枚のうち1枚は《六花絢爛》で公開情報。彼がいま口にしたように、この状況は二つに一つ。
不二原「……このターンでお前のLPを削り切らなければ、私の負けだと言うことだな。
_______十分だ、1ターンもあれば!!」
遊大「そうかよ……かかってきやがれ!!!」
不二原「私は、《六花のひとひら》の効果を発動。
デッキから《六花のしらひめ》を手札に加え、自身の効果で特殊召喚!!」
《六花のしらひめ》(攻)
☆:4 水属性・植物族/効果
ATK:0/DEF:0
あのカードには、手札・墓地に存在する状態で相手がモンスター効果を発動した際に、自分の植物族をリリースすることでその効果を無効にすることができる。遊大が発動できる効果は2つ、《焔聖騎士帝ーシャルル》と《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》だ。手札には《六花絢爛》がある。無効化することができずとも、彼は首にかかる勝敗を決めかねないカードに対してこの効果を使うはずだ。だがそれは不二原も承知の上、勝負の行方は、いよいよ自分にはわからなくなっていた。
《廻生のベンガランゼス》(攻)
L:4 光属性・植物族/リンク/効果
ATK:2500 [←・↑・↓・→]
不二原「墓地の《ベンガランゼス》の効果。
《アロマセラフィージャスミン》と《蕾禍ノ武者髑髏》を除外することで、墓地からこのカードを特殊召喚する。」
遊大「あんたはもうこのターンに植物族しか特殊召喚できないし、《ベンガランゼス》の効果も使えない。
……どうする気だ、このターンで勝つためにはあんたはどうしたい!?」
不二原「私は、手札から《六花絢爛》を発動。
コストとして《しらひめ》をリリースし、デッキから《六花精スノードロップ》とレベル8の《桜姫タレイア》を手札に加える。
_______『どうする気だ』と言ったか?」
その言葉に、遊大がはっとした。
遊大はきっと《六花精スノードロップ》の効果は看破していただろう。しかし彼の墓地には《六花のしらひめ》のカード、そして盤面には3体の植物族。それが意味することは……
不二原「こちらの台詞だな。
私は《六花のひとひら》をリリースし、手札の《スノードロップ》の効果を発動。このカード自身と、《六花絢爛》の効果で手札に加えた《桜姫タレイア》を特殊召喚する!!」
遊大「《ゴッドフェニックス》の効果を発動!!」
《メタルシルバー・アーマー》を墓地に送ることで、その発動を無効に___________」
不二原「墓地の《六花のしらひめ》の効果を発動。
フィールドの《ベンガランゼス》をリリースすることで、その効果を無効にする!!」
それが意味するのは、状況がすでに手遅れだということ。
遊大が最も警戒しなければならないのはレベル8のモンスターが複数体フィールドに召喚されること。《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》が不二原へと振り落とした大剣は、すんでの所でぴたりと止まった。その半身は白く凍りつき、身動きを取ることのできないその様を置き去りにして、2人の花姫がゆっくりとフィールドへ降りた。
《六花精スノードロップ》(守)
☆:8 水属性・植物族/効果
ATK:1200/DEF:2600
《桜姫タレイア》(攻)
☆:8 水属性・植物族/効果
ATK:2800(3100)/DEF:1200
遊大「……2体目の《ティアドロップ》を召喚する気か、だが________」
不二原「《焔聖騎士帝ーシャルル》は《焔聖騎士ーオリヴィエ》を装備していることで効果対象にならない。
さらに墓地の《焔聖騎士導ーローラン》を装備することで、たとえX召喚するのが《ティアドロップ》でなくとも効果使用前に破壊できる。
………………そんなところか。」
2人の間に走る沈黙。
お互いに交差する思考。白く染まった植物園で繰り広げられたデュエルは、いよいよ最後の攻防に移ろうとしていた。不二原の手札の1枚、このターンにドローした最後の1枚であるそのカードが、その口火を切る。
不二原「私は手札の《六花精シクラン》をリリースし、効果発動。
《スノードロップ》と《桜姫タレイア》のレベルを……2つ下げてレベル6へと変動させる!!」
茉菜「…………!!」
自分はその瞬間に、1枚のカードが頭をよぎった。
それはランク6のエクシーズモンスター、《六花聖カンザシ》。モンスターが破壊されるとき、それをリリースで肩代わりする効果を持つ。つまりそれが通れば《六花聖ティアドロップ》を破壊することはできなくなる。だからこそ、その瞬間を遊大は逃さなかった。不二原がエクストラデッキへと手を伸ばすよりも早く、彼の駆る《焔聖騎士帝ーシャルル》の刃は不二原のカードへと届いていた。
(ATK:2100)《聖騎士の追想 イゾルデ》
遊大「《桜姫タレイア》がフィールドに存在する限り、他の植物族を効果破壊できない。
……でもそいつ自身は違う。それに自身をエクシーズ素材にしようってんだろ。逃さねえよ……!!」
赤く染まった刃が、まるで雷光のような軌道を描いて《桜姫タレイア》の頸を落とした。
遊大が発動した《焔聖騎士導ーローラン》の効果。墓地の自身を戦士族である《聖騎士の追想 イゾルデ》の装備カードとし、オーバーレイネットワークが構築される前に、《焔聖騎士帝ーシャルル》がその種を摘んだ。
茉菜「残ったのは……レベル6の《スノードロップ》だけ……!!」
不二原に残されたのは、オーバーレイユニットの無い《六花聖ティアドロップ》と、レベル6となった《六花精スノードロップ》のみ。手札も0、非公開情報もない。自分には、遊大が《焔聖騎士導ーローラン》と《焔聖騎士帝ーシャルル》の効果を発動した時点で、それが勝敗を決する一手に思えて仕方がなかった。しかしこの局面で、お互いに闘志が燃え尽きない彼らを、2人の決闘者を見て、それこそが自分の思考の外側にある答えなんだと理解した。……デュエルはまだ終わっていない。
不二原「……逃げるだと?
言ったはずだ、『1ターンあれば十分』だと。お前もわかっているだろう。私の墓地にある《六花精ヘレボラス》は、まだ効果を発動していない!!」
……《六花精ヘレボラス》。
彼がそのカードを指した時、はっとした。それは植物族をリリースすることで墓地から特殊召喚できるモンスター。ただし彼が狙っているのは《ティアドロップ》をリリースすることによるレベルを持ったモンスターの展開と《スノードロップ》効果によるエクシーズ召喚ではない。……その逆だ。
不二原「《スノードロップ》をリリースし、このカードを墓地から特殊召喚する!!」
《六花精ヘレボラス》(守)
☆:8 水属性・植物族/効果
ATK:2600/DEF:1200
そう、その逆。
リリースするのは《スノードロップ》。不二原の勝利条件はただ一つ、このターンでLPを削り切ること。
彼は《六花精スノードロップ》と《六花精シクラン》、そして2ターン前のバトルフェイズでの攻防の中で示した《六花聖カンザシ》の情報を使うことで真の狙いを撹乱していた。……彼の目的と狙いは1つだけ、自分は気づいてなどいなかった。このターンの攻防の間も、いやこのデュエルの間ずっと、不二原と共に闘い続けた彼のエースモンスターを。
遊大「……すげえよ、あんた。」
不二原「このターン、私がリリースしたモンスターは5体。
…………樋本 遊大、お前も強かった。これしか私には無かった。これだけ、たったのこれだけだ……!!」
(ATK:3800)《六花聖ティアドロップ》
このターン、カードの応酬の中で強化され続けていたモンスター、それは不二原のエースである《六花聖ティアドロップ》だった。
ずっとこの状況を待っていたんだ。その攻撃力は3800まで上昇している。遊大が構えるモンスターに、その攻撃力を上回っているモンスターはいない。ターンこそ返せば《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》でも《焔聖騎士帝ーシャルル》でも容易に除去はできるのだろう。ただしそれは、このターンで勝敗がつかなかった場合の話。
不二原「バトルだ。」
《六花聖ティアドロップ》の攻撃力は3800、そして遊大のフィールドには2体のエースの他に《聖騎士の追想 イゾルデ》がいる。その攻撃力は2100、発生する戦闘ダメージは1700、そして遊大のLPは……残り1650。
その攻撃が通れば、遊大の敗北と不二原の勝利で勝負がつく。息を呑んでしまうような張り詰めた空気の中で、《六花聖ティアドロップ》が構えた。
不二原「《六花聖ティアドロップ》で、《聖騎士の追想イゾルデ》を攻撃。_______氷華傘散!!」
微笑女は、その傘で空を掻き払った。
描かれえた軌道は白く染まり、凍りついた空気がまるで花吹雪のように遊大のフィールドへと押し寄せる。彼は『花の魔女』ではない。それでもソリッドヴィジョンは、現代に発展したソリッドヴィジョンは空間ではなく人体の感覚にまでヴィジョンを投影する。……だからと言うべきなのか、いやそんなわけはない。まるで悴むような、身体中を蝕むこの冷たい痛みは、不二原の思いにほから無いのだった。彼らの闘いを見ることしかできなかった自分がいて、そしてその渦中に遊大はいる。
遊大「すげえよ、……やっぱあんたは凄い。…………でもさあ!!」
茉菜「……樋本くん!!」
遊大「『花の魔女』であることが……ここに留まるあんたの決断が!!」
迫る白い嵐を前にして、遊大はその手札から1枚のカードを掴み取った。
握り込まれたそのカードは赤く燃え上がり、眼前へと迫るその雪煙に叩き込まれた。吹き荒れる白い風の中で1枚のカードが緋色に輝いて、ゆっくりと、少しずつだとしてもそれを食い破っていく。
遊大「こんなに痛くて冷たいものなら……!!!
おれが無理矢理にでも前に引っ張って行ってやる!!!凍っちまったあんたの涙なんて、おれが溶かしてやるよ!!
_______《焔聖騎士ーローラン》、効果発動!!」
茉菜「…………!!!」
(ATK:3800)《六花聖ティアドロップ》
(ATK:2600)《聖騎士の追想 イゾルデ》
(LP : 450)樋本 遊大
不二原「……そうか、引いていたのか。」
遊大が手札から発動したのは《焔聖騎士ーローラン》のカード。そこにあるはずの無いカード。
遊大が1ターン前に効果を発動した《焔聖騎士ーモージ》は、《焔聖騎士ーローラン》を含む3枚のカードをデッキへと戻し、1枚のドローというチャンスを彼に与えていた。同時に発動した《聖騎士の追想 イゾルデ》の効果で手札に加わったのは《紅恋の麗傑-ブラダマンテ》。つまり彼は20分の1以上の確率を、たった1枚のドローで掻い潜っていた。
不二原「私は、……吹雪ならよかった。」
ーTURN5ー
樋本 遊大 (ターンプレイヤー)
LP :450
手札 :3→4
モンスター:《焔聖騎士帝ーシャルル》《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
魔法・罠 :《焔聖騎士ーオリヴィエ》《フェニックス・ギア・ブレード》
フィールド:《大聖剣博物館》
不二原 千晶
LP :5500
手札 :0
モンスター:《六花聖ティアドロップ》《六花精ヘレボラス》
魔法・罠 :
フィールド:
ターンの移り変わりと同時に、《焔聖騎士帝ーシャルル》の手に《フェニックス・ギア・ブレード》が握られた。
戦士はこくりと静かにうなづくと、その刃を構えてゆっくりと前へと進む。不二原は初めて、遊大の目をまっすぐに見て言葉を漏らすように口を開いた。
不二原「……悲しみも、憎しみも、愛しさも、全て冷たく染めてしまうような、白い嵐なら良かった。」
(ATK:4000)《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
(ATK:2800)《六花聖ティアドロップ》
(LP :4300) 不二原 千晶
赫い炎雷が、振り抜かれた刃が、ついに《六花聖ティアドロップ》の首を斬り落とした。描かれた軌道が白い空気と擦れて火花を撒き散らし、凍りついた白い嵐は溶けて、そこは浅い水面になる。
不二原はもう手札のないその手で目蓋を拭い、溢れて落ちた雫が静かに波紋を作った。遊大は何も言うこと無く彼の前へと歩み寄る。たった一滴、それでも頬を流れた道筋を見た彼は、ディスクから手に取った《焔聖騎士帝ーシャルル》のカードを静かに胸に押し当てた。
不二原「______白いブーケを掲ぐ……花の魔女なら、良かった。」
(ATK:4300)《焔聖騎士帝ーシャルル》
(LP : 0) 不二原 千晶
淡く流れる水面も、不二原に押し当てられた赫い炎も、デュエルの終幕と共に光を失っていく。
それでももう、冷たくなっていた植物園の天蓋は春の光をいっぱいに取り込んでいて、彼らを照らしていた。ソリッドヴィジョンの光がなくとも、そこには春の陽の光があった。……魔女は、討ち取られた。最初からここに、魔女なんていなかったのだけれど。
遊大「……そうだな。
でもきっと、あんたは本物の花の魔女より強い。……強くなれる、おれたちならもっともっと、強くなれるよ。」
彼の、不二原の頬を伝った一粒の涙。
いつだって振り向けば、何も言わなくてもずっとそばにいてくれた彼女を、彼は忘れない。彼らは忘れない。共に進むから、きっとそばにいるから、彼は今だけなら、泣いてもいいのかもしれない。
続く
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72 | 25話 焼け野原 その② | 645 | 0 | 2022-11-11 | - | |
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69 | 28話 憧れゆえの | 636 | 2 | 2023-04-15 | - | |
68 | 29話 黒い暴虐 | 410 | 0 | 2023-07-20 | - | |
93 | 30話 決闘の導火線 | 646 | 2 | 2023-07-30 | - | |
63 | 登場人物紹介 〜光妖中編〜 | 487 | 0 | 2023-08-03 | - | |
56 | 31話 開幕!決闘王杯! | 387 | 0 | 2023-08-12 | - | |
65 | 32話 ガムシャラ | 611 | 2 | 2023-08-25 | - | |
52 | 33話 目覚める龍血 その① | 386 | 2 | 2023-09-02 | - | |
63 | 34話 目覚める龍血 その② | 427 | 2 | 2023-09-06 | - | |
83 | 35話 雨中の戎 その① | 550 | 4 | 2023-09-19 | - | |
54 | 36話 雨中の戎 その② | 357 | 2 | 2023-09-23 | - | |
56 | 37話 チャレンジャー | 491 | 2 | 2023-09-30 | - | |
73 | 38話 心に傘を | 491 | 2 | 2023-10-07 | - | |
52 | 39話 龍の瞳に映るのは その① | 449 | 3 | 2023-10-22 | - | |
57 | 40話 龍の瞳に映るのは その② | 442 | 2 | 2023-10-26 | - | |
68 | 41話 花と薄暮 | 503 | 2 | 2023-10-30 | - | |
58 | 42話 燃ゆる轍 その① | 515 | 2 | 2023-11-07 | - | |
52 | 43話 燃ゆる轍 その② | 372 | 1 | 2023-11-09 | - | |
51 | 44話 襷 | 360 | 1 | 2023-11-14 | - | |
55 | 45話 星を賭けた戦い | 485 | 3 | 2023-11-17 | - | |
54 | 46話 可能性、繋いで その① | 418 | 2 | 2023-11-28 | - | |
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50 | 48話 揺れろ。魂の… | 347 | 2 | 2023-12-28 | - | |
49 | 49話 エンタメデュエル | 379 | 2 | 2024-01-07 | - | |
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92 | 51話 Show Me!! | 461 | 0 | 2024-02-01 | - | |
54 | 52話 モノクロの虹彩 | 482 | 1 | 2024-02-08 | - | |
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52 | 54話 火の暮れる場所 その① | 331 | 0 | 2024-03-02 | - | |
91 | 55話 火の暮れる場所 その② | 494 | 2 | 2024-03-07 | - | |
53 | 56話 赫灼の剣皇 | 522 | 2 | 2024-03-11 | - | |
79 | 57話 金の卵たち | 378 | 2 | 2024-03-18 | - | |
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48 | 72話 親と子 | 269 | 2 | 2024-09-09 | - | |
60 | 73話 血断の刃 | 338 | 2 | 2024-10-10 | - | |
61 | 74話 血威の弾丸 | 349 | 2 | 2024-10-17 | - | |
49 | 75話 炉心 | 389 | 0 | 2024-11-01 | - | |
47 | 76話 ひとりじゃない | 347 | 2 | 2024-11-03 | - | |
52 | 77話 春風が運ぶもの | 410 | 2 | 2024-11-06 | - | |
42 | 78話 天道虫 その① | 478 | 2 | 2024-11-19 | - | |
42 | 79話 天道虫 その② | 373 | 2 | 2024-11-21 | - | |
54 | 80話 花の海 | 541 | 2 | 2024-12-03 | - | |
45 | 81話 寂しい生き方 | 305 | 2 | 2024-12-16 | - | |
47 | 82話 飛べない鳥の見た景色 | 314 | 2 | 2024-12-24 | - | |
36 | 83話 意思の足跡 | 347 | 2 | 2025-01-24 | - | |
31 | 84話 種 | 223 | 1 | 2025-02-08 | - | |
36 | 85話 ティアドロップ その① | 299 | 0 | 2025-07-17 | - | |
16 | 86話 ティアドロップ その② | 258 | 2 | 2025-08-27 | - |
更新情報 - NEW -
- 2025/09/12 新商品 LIMITED PACK GX -オシリスレッド- カードリスト追加。
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- 09/18 17:26 評価 10点 《ミミグル・ダンジョン》「単純に(3)でミミグルのサーチ・サルベ…
- 09/18 17:23 評価 9点 《デーモンとの駆け引き》「バーサークデッドドラゴンを持ってなか…
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- 09/18 17:17 評価 10点 《ミミグル・ドラゴン》「ミミグルの魔法罠サーチャー。 特に《…
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- 09/18 14:07 評価 7点 《天霆號アーゼウス》「エクシーズが入るならほぼ100で入る優れ者 …
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- 09/18 13:43 評価 9点 《原始生命態ニビル》「空いたら1枚入れておくくらいでも役に立っ…
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。




とにもかくにも二人の戦術の高さに脱帽ですね。敢えて展開の可能性を残しつつ、ベンガランゼスを使わせないまま突入するバトルフェイズ。そこで遊大のここぞを支える《AI打ち》による盤面打破。特に上手いと思ったのは、スノードロップの強化によるライフ0を狙った不二原ですねぇ。如何せん強化倍率が×200と大きくないので、ちゃんと意識してないと洩れてしまいそうな強化倍率。MDみたいに露骨に数値が見えるような環境でもなければ、気づきにくい強化の仕方でもありますよね。そんな見逃しがちな強化を遊大に気づかれる事無く完遂し、遊大のライフを削り切ってのフィニッシュ……。
と思われましたが、遊大が500パンプするローランをしっかりと引き込んだ事で、イゾルデが破壊されるもライフが削り切られる事無く耐えきり勝利!
律歌の為にと自ら花の魔女を自称し、彼女に対して決別の選択を取った不二原。たくさんの感情に苛まれていましたが……遊大とのデュエルを通じて、涙を流す姿からも律歌の存在が再び胸に刻まれた様に感じますね。 (2025-09-18 03:44)