turn21:白の尖兵　作：どらっせ

　レッド寮。遊児達はホワイト寮の生徒達に無理やり返されたため、戻ってきた。
　これからどうするにも、装介はこちら側と話すつもりはないらしい。おまけに他に宛も無い。
　遊児達は迷っていた。どうすればよいのかわどうすれば装介の目を覚ますことができるのか。
　そう悩んで寮の立て付けの悪いドアを開けると、本来ならブルー寮にいるはずの天上院先生が居た。

　「その様子だと、あなた達もホワイト寮に行ってきたようね。」

　「天上院先生…。今更、先生がここに居ることには驚かないけどさ、なんだろーな…。いや、そうじゃなくて。もしかして先生も追い出された感じですか？」

　「そんなところよ。でも安心して。私はあなた達の役に立つ情報を知っているわ。」

　「本当に!?だったら教えてくれ先生！」

　何をするのかすら決まっていなかった遊児にようやく希望が見え始め、机を叩き天上院先生を急かす。

　「勿論。いい？あのホワイト寮の生徒達は、破滅の光によってマインドコントロールされているの。」

　「え…と？マインド…なんだって？」

　「そもそも破滅の光とは何ですか？」

　長めのカタカナを理解するのが時間のかかる遊児はさておき、蚕先生達は「破滅の光」という単語は初耳だ。

　「破滅の光というのは、万物を破壊と消滅に導く概念。これに取り憑かれてしまうと、全てを光で満たして消し去ろうとしてしまうの。
　私がこの学校で生徒だった時にも現れたわ。ちょうど今みたいに、破滅の光に取り憑かれた、白い制服に身を包んだ人達が集まって、最終的には世界を滅ぼそうと衛星兵器まで動かそうとしていたわ。」

　「それって…もしかしてですが今もまた以前のように、世界が滅ぼされてしまう、ということですか!?」

　「そういうことになるわ。でも対抗する手段はあるわ。」

　「その手段とは、如何様な物で？」

　「デュエルモンスターズ。デュエルが、破滅の光と戦う手段なのよ。」

　「つまり、その破滅の光に乗っ取られたホワイトの人にデュエルで勝てば元に戻るの？なーんだ、簡単じゃん！」

　「いや、そうでもないかもしれない。あの装介が負けてしまう程に、ホワイト寮の奴らは強いんだ。
　クソっ！やっぱりどうすりゃいいんだ！」

　「明津君。大丈夫よ。あなたには破滅の光を打ち倒す力が宿っているのよ。」

　「力？それって…。」

　『うん。私達精霊が君に何時でも力を貸す。破滅の光を討ち滅ぼすためにも。』

　突如、デッキから《HERO's　シールド・バンカー》が姿を現す。遊児は驚くが、当たり前のように他の人には見えていない。

　「もしかして、今会話してた？そう、精霊の力よ。大禍津先生から聞いているわ。あなたは精霊の声が聞こえるって。」

　「精霊…そうだ、もしかしたらこのカードも役に立つのかも。」

　そう言い遊児は《幻魔の鎧》のカードを取り出す。天上院先生や誠弥達にはわからないが、とてつもなく強い精霊の力と、微かな破滅の光の影響を秘めている。

　「そいつって確か、この前アカデミア地下で見つけたカードかよ？」

　「うん。大禍津先生が言ってたんだけど、このカード、地下に封印されてたっていう幻魔の力をコピーしようとしたものの試作品らしいんだ。」

　「幻魔のコピーの試作品!?それって本当なの!?」

　「それに、これを作った奴は本当は完全な幻魔を生み出そうとしていたらしいんだ。」

　「幻魔のコピーに、ホワイト寮、破滅の光…。わかったわ、ホワイト寮が何をしようとしているのか！
　それは…。幻魔を復活させて世界を破滅させることよ。3種類の幻魔が揃ってしまうと、世界を滅ぼすことだってできてしまうわ！」

　「何だと!?だったらとっととホワイト寮の奴らをぶっ倒して止めねぇと！」

　「よせ誠弥！また突っ返されるだけだ！」

　揉めていると、レッド寮のドアを叩く音が聞こえてくる。直後にドアは開き、白い制服の男が現れる。

　「明津　遊児！お前に用がある！」

　ホワイト寮の生徒に呼ばれた遊児は、昼休みにデュエルステージに向かう。デュエルの申し込みだそうだ。しかし何故デュエルを？

　「はぁ〜あ。ブルー寮の若造共が居ないんじゃ寮対抗デュエルも面白みが無くなってしまうわい。…ん？んん!?あれは遊児にホワイト寮の若造!?
　デュエルするのか！これなら寮対抗デュエルの代わりになるぞォ！」

　退屈そうにしていた大禍津先生をよそに、遊児、ホワイト寮生徒両者はステージの定位置に着く。

　「デュエルは何時でも歓迎だけどよ、そもそもあんた誰だよ？しかも何だっていきなりなのさ？」

　「名乗ってなかったか。俺は灰垣　一成。装介様からの命令でな。お前には我らが白の結社の一員となってもらう！」

　「誰がそんな色落ちしたみたいな白制服なんか着るかっての！醤油のシミとか目立つじゃん！
　変な事考えるんだな、装介も！」

　「そう言うと思ったのでな。デュエルで貴様が負ければ嫌でも入ってもらう！」

　「いいぜ。売られたデュエルは買ってやる！制服は嫌だが、お前らなんかに負けないってこと、見せてやる！」

　「「決闘！」」

先攻　遊児　LP4000
後攻　灰垣　LP4000

　「へへっ、俺の先攻だ！手札から《融合》発動！手札の《シーフ》《ファイター》で融合召喚！いくぜ、《HERO's　シールド・バンカー》！」

《HERO's　シールド・バンカー》
星6/炎属性/岩石族/攻撃力2100

　『いくぞ、遊児！とうとう破滅の光と本格的に戦う時が来たようだ！』

　「あぁ、思い切っていくぜ！墓地に送られた《ファイター》の効果発動！デッキから《融合回収》を手札に加える！《シーフ》の効果も発動だ！」

《HERO's　シーフ》
②: このカードが融合素材となって墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「HERO's」罠カード1枚を選んで手札に加える。

　「手札に加えるのは《HERO'sルール1　5・F（ファイブ・フリーダム）》だ！そして魔法カード《融合回収》！墓地の《融合》、《シーフ》を手札に加える。そしてまた《融合》で《シーフ》《ソーサリー》を融合！融合召喚！出てよ！《HERO's　ファントム・バンデット》！」

《HERO's　ファントム・バンデット》
星6/闇属性/サイキック族/攻撃力2400
｢HERO's　シーフ｣+戦士族以外の｢HERO's｣モンスター

　「カード1枚を伏せてターンエンド！」

　『準備は万端だな。中々呼んで貰えなかった分、きっちり暴れさせてもらおうか！』

　「そう言えばそうだっけ。でも油断するなよ。相手は破滅の光の…えっと、こういうの何て言うんだっけ？」

　『尖兵、だ。』