turn29:決戦の火蓋　作：どらっせ

　デュエルで兄を倒した欠流はどこかスッキリとしていた。しかし、遊児の顔を見るなり土下座をする。

　｢済まない遊児。デュエルは他者を傷付ける道具ではないというのにあの様な事になってしまった。｣

　｢い、いやいや急に土下座されても困るぜ。それに、譲れないものがお前にあるってことなら、その想いをぶつけるのだってデュエル。俺はそう思うぜ。
　だから顔を上げてくれよ。そもそもお前、俺より歳上なんだからこっちが困るよ…。｣

　欠流は2年である。1年の遊児からしてみれば先輩にあたる。普段はそんな感じには見えないが、遊児からして見れば気味が悪い様子だ。

　｢そういえばさ、今白の結社で幻魔ってカードが出来上がっちゃってるんだっけ？｣

　｢いけない。そうだったわ。早く白の結社を止めなきゃ！｣

　｢だったらカチコミだ！行くぜ！｣

　遊児の号令で一行は白の結社の入口に立ち入る。そこで白い制服に身を包んだ見慣れた2人組を見つける。

　｢お、お前らは！｣

　｢おや遊児。噂は聞いているよ。死縞兄弟・兄を倒したそうじゃないか。弟が。｣

　先に口を開いたのは装介だ。相変わらず白の裾が長い制服を着ている。

　｢あ！もしかして…お姉ちゃん!?｣

　｢来てたんですか、明鈴さん。それに天上院先生も。｣

　もう1人は蚕先生。赤の制服からすっかり白い制服に着替えてしまって雰囲気までもがまるで別人のようだった。

　｢知っていましたからね、貴方たちがここに来ることは。私は寮長としてこのホワイト寮を守る義務があります…。世界を滅ぼす三幻魔の砦として。｣

　｢やっぱり三幻魔のカードが完成してたのかよ…。｣

　｢…遊児くん。ここは私に任せてちょうだい。蚕先生は同じ先生として、私が止めるわ！｣

　蚕先生とデュエルすることを望んだのは天上院先生だった。三幻魔を守る蚕先生を足止めしてその隙に、遊児達に三幻魔のカードをどうにかさせようとする判断だった。

　｢天上院先生よぉ、あんたにばっかいいカッコさせないぜ。装介。テメェとはこの前デュエルしたばっかだったよな。強くなってるんなら見せてみろよ！俺に！｣

　装介とデュエルを望むのは誠弥だった。天上院先生と同じ考えだが一番は強くなった装介とデュエルしたい、と言ったところだろうか。

　｢ふむ…。いいだろう。遊児の幻魔のカードを奪うのが目的だったが、君を始末してからでも遅くはないだろう。いいよ。受けて立とう。
　蚕先生、貴方は天上院先生の相手を。｣

　｢わかりましたよ。装介さん。
　天上院先生、手加減なんて生易しいことは期待しないで下さいよ？…刃向かえなくなるまで徹底的にいたぶってあげますから！｣

　場所は変わって、ホワイト寮内。遊児は明鈴と欠流の手引きでホワイト寮の奥、教頭室に向かう。

　｢おい欠流！場所わかるのか!?｣

　｢私は1度だけ赴いた事が有る。最も、下らぬ小言だったが｣

　｢それはいいから！今は早く行こうよ！いつここの生徒が来てもおかしくないんだよ！｣

　無駄に広い広間を走り抜け、教頭室に続く廊下に差し掛かる。
　しかしそこへ現れたのはホワイト寮の生徒の大群だった。

　｢見つけたぞ！侵入者め！｣

　｢レッドのドロップアウト共と白に染ってない裏切り者が何の用だ！｣

　いつの間にか取り囲まれてしまっていた。
　そこへ窓ガラスを体当たりで破壊し、見覚えのある白髪の老人が現れる！

　｢ホワイトの若造共ォォォ!!可愛い生徒3人に対してその様相はなんじゃァァァ!!｣

　現れたのは大禍津先生だった。相変わらずの高いテンションで周囲のホワイト寮生徒を黙らせる。

　｢遊児。話は天上院先生から聞いておる！
　向かうのだろう!?破滅の光を倒すために教頭を止めに！｣

　｢遊児。私は大禍津先生と共に戦う。教頭室はその廊下を抜けてすぐだ！｣

　｢おい欠流！｣

　｢遊児！今は2人に任せて進もうよ！｣

　欠流と大禍津先生を残して、2人は廊下を突き進む。
　とうとう教頭室のドアが見えた、その時。
　ホワイト寮生徒の女子がドアの前に立ちはだかる。

　｢ここは通さないわ。明津　遊児！｣

　｢くそっ、あと一歩って時に！｣

　遊児は止まることなく、そのままのスピードで教頭室のドアを突き破る！

　｢ちょっと!?遊児!?｣

　｢に、逃げるなんて卑怯よ！｣

　突き破った速度のまま、教頭室にいるボナパルト教頭を巻き込んで窓ガラスをぶち破り外に出る。

　｢教頭ォ！今日こそは許さないぞ！幻魔のカードを渡してもらうぜ！｣