turn37:意地はり　作：どらっせ

　「急げーー！！」

　遊児と明鈴はブルー寮のデュエリストを片っ端から探していた。何故ならあと7日のうちにあと41人もブルー寮の生徒を倒さなければならないからだ。
　しかし見つからない。ついさっきまでは別になんということは無かったが、先程校長に啖呵切ってしまったのである。

　「本当に大丈夫なノーネ？」

　「あぁ！元々は俺が起こしたって言ってもいいようなもんだし、それに校長は無関係なんだろ？」

　「確かにそうデスーが…」

　「安心しろって！俺がレッド寮を守ってみせるから！それに楽勝だぜ！あと41人に勝てばいいんだろ？明鈴も誠弥もいるし、皆もいる！」

　「い、いくら何でもシニョールでもその数ーは…」

　クロノス校長が言い終える前に、遊児は大急ぎでデュエル相手を探しに行ってしまった。続いて明鈴も、誠弥も。

　「困ったのぉ…。ん？41人？」

　「どうかしたノーネ、大禍津センセーイ？」

　「ひい、ふう、みい、ちょい前にレッド寮が寮対抗デュエルで8回はブルーに勝ったが、あやつら知らぬのか？」

　「なんーと！それでーは、必要勝数は33人!?…ってそれでも無理なノーネ」

　驚くクロノス校長と大禍津先生だったが、遊児達は知る由もない。そのままデュエル相手を探したが見つからず、日が暮れてしまった。

　「ちくしょーーー！！」


　夜。アカデミアの船着場にて。

　「クロノス先生に手配してもらった船が見えてきたな。まさか校長になってるなんて、やっぱりすげぇ先生だぜ。」

　教頭とのデュエルの後、その足で船着場に着いたらしい謎の男は、揺れる水面をより一層揺らし、水飛沫をあげながら向かってくる船を見つめていた。

　「それにしてもめっちゃ熱いデュエルだったぜ。久々に見たぜ。俺と同じHERO使い！今度あったらデュエルしてぇな！」

　『もちろんその時はボクも一緒さ。アイツの力、何か面白いものがあるよ。』

　「お前もそう思うだろ？そうだな、その時はお前もよろしくな！」

　悪魔のような精霊と話していると、もう一体、毛むくじゃらに羽が生えたような可愛らしい精霊も現れる。

　『クリクリ〜！』

　「もちろんお前もだぜ相棒！」

　そうこうしているうちに、船が目前に迫ってくる。男が連れている猫の口から、精霊ではない、人間の魂がふわり、と現れる。

　『そろそろ船がつくニャ〜。早くしないと乗り遅れちゃうニャ〜』

　「いっけねぇ！乗り過ごしたらまた連絡しなきゃいけないじゃん！
　…ガッチャ！遊児！また会ったらデュエルしようぜー！！」


　翌日。オシリス・レッド寮廃寮まであと6日。必要勝数50、現在17人。

　｢くそ〜ッ、結局誰一人デュエルしてくれなかった〜ッ｣

　｢こっちもだよ〜。みんななんでそんなにデュエルしてくれないのさ！｣

　とても簡単な理由である。現在、ブルー寮生徒は白く染めてしまった寮を青く塗り直しているためデュエルする余裕がないのだ。
　そんなことはどうでもいい、と物凄い剣幕で2人が迫るものだから、気圧されて誰も相手してくれないのだ。

　その頃、校長室にて。

　｢校長！校長はいるでのであるゾ!?｣

　｢ボナパルト教頭！目が覚めたノーネ！｣

　今朝、ボナパルト教頭が目覚め、真っ先に駆け寄ったのは校長室だった。

　｢クロノス校長、その節は無礼な真似をしてしまって申し訳ないのであるゾ…！私は一体、どのようなことをすればムッシュと愛すべき生徒達に罪を償わなければならないのであるゾ…！？｣

　入ってきて早々に泣き崩れるボナパルト教頭を諌め、クロノス校長は語る。

　｢教頭、アナータは生徒達のことを思い暴走し、そこを破滅の光の意思につけ込まれてしまったのではとシニョール遊児から聞いてるノーネ。
　全ては生徒達を思ってのこと。本当はどんな手を使っても、例え憎まれようート、このデュエル・アカデミアが誇れるようーナ、スプレンディードな生徒へと成長させたかったのは言わなくてもワタークシには痛いほどわかるノーネ。
　でしたらアナータがやるべき償いはただ一つ。生徒達を邪な意思から守り抜き、強く正しく成長へと導くコトーがアナータの償いなノーネ！｣

　｢こ、校長〜ッ！…決めたのであるゾ！私はオシリス・レッド廃寮の件を白紙にするのであるゾ！｣

　｢いや、それはシニョール達が待ってほしいと言っていたノーネ…｣

　その頃、誠弥は。

　｢歯ァ食いしばれ！《セリオンズ・イレギュラー》でダイレクトアタック！｣

ブルー生徒　LP1300→0

　｢うわぁーーッ！！｣

　｢これで今日3人目…！クソっ！これじゃまだまだだ…！｣

　ブルー生徒相手に3連勝したというのに不機嫌な誠弥。そんな彼の元に、不機嫌の元凶が現れる。

　｢ここにいたのか誠弥。憂さ晴らしのようにデュエルして。そんなにこの前私に負けたのが悔しいのかい？｣

　｢あったりめぇだ！負けりゃ誰だって悔しいだろうよ。…白いアレが無けりゃ俺の勝ちだったのによ｣

　遊児がボナパルト教頭に取り憑いた破滅の光と決戦をしていた際に、装介と誠弥はデュエルをしていた。デュエルの最中に破滅の光が消え、正気に戻った装介と誠弥はデュエルを続けていたが結果は装介の勝利に終わったのだ。
　本来なら消えているはずの破滅の光が宿ったカード《恐獣装　WHITEレックス》がそのまま残り、決着をつけた。しかもデュエルが終わっても消えることなく装介のデッキに入ったままである。

　｢じゃあまたデュエルしてみるかい？｣

　｢ケッ、今は止めとくよ。テメェを倒すにゃまだ力不足だ。もっと強くなって、テメェに勝ってやるよ｣

　不貞腐れながらも、口角を上げて笑う誠弥。それを見た装介も満足げだった。

　｢そういや何の用だよ？ただ駄弁りに来たわけじゃねーだろ｣

　｢そうだった。君に届け物だよ。｣

　装介が渡したのは一通の手紙。差出人には、現在プロリーグで活躍中のデュエリストの名が記されていた…。