第４３話　ホルアクティ×３　作：にしん

　高校も大学も夏休み終盤。俺はいつも通りコンビニ兼カードショップのバイトをする。毎朝のサラリーマンラッシュや商品の補充には既に慣れ、今では暇を持て余す毎日である。

そしておばあちゃんは２階の自宅で安静、恵那さんはコンビニ側のレジで宿題を黙々と進めていた。というかいかにも真面目そうなのにほとんど終わってなかったのか恵那さん。

だけど今日は・・・いや、今日から新たに念願のバイトがもう１人増えた。それは・・・


結花「っしゃあ出勤！！」
恵那「私はこの通り忙しいので、お兄さんに教えてもらってください」
結花「はーい」
要「静かでいい雰囲気だったが騒がしくなりそうだなぁ」

駅近くのファミレスでバイトしていたはずの結花だ。どうやらファミレスのバイトの人が増えすぎたらしく、結花のシフトが半減したからだとか。だけどもう１つの理由が本音のようで・・・

結花「ふっふっふ、今日からこのカードたちをあたしが自由自在に扱えると思うと・・・胸が熱いな」
要「でも外側は薄いけどな」
結花「ついでに身長も低いぞあっはっはおい」

と自虐ネタを披露しつつシングルカードのうち２０円カードを素早くかつ正確に整理していた。まぁ結花の方がデュエリスト度は上だしカードショップ側を主に任せることになりそうなので俺の負担が減る。

結花「夏休み終わったらカードショップも夕方からでしょ？その前に来てデュエるのもありだねー」
要「そうだな。発売されたパックのカードコピってダミーカード作ってデュエルもできるし最高の環境だな」
結花「どうもカードショップＢＯＸＹの店長、川澄です」
要「もう店長か」

カードショップとしてはかなり狭いので教えることはほとんどないのでさっさとコンビニの業務について教えることにした。前にエプロンのようなものを着るコンビニの制服は、結花はファミレスの時に着こなしていたからかなんというか様になっていた。

結花「そうそう恵那ちゃん。遊二って月なんぼ稼いでるの？」
要「そこは俺に聞くんじゃないのか・・・」
恵那「え、えっと・・・ホルアクティの買取価格の３倍ぐらい・・・かな？」
結花「マ！？遊二嘘ついたなー！？」
要「バレたか」

数日前に結花からこのコンビニ兼カードショップのバイトでの給料で相談に乗ったことがあるのだが、俺のシフトが減りそうだから少しというかだいぶ減らして教えた。まぁ元々遊戯王の為に稼いでいたようなものだし給料気にするのは当たり前か。それでも結花はここを選んだのは給料と遊戯王とは別に理由があるのだろう。

結花「毎朝すごい大変そうだとは思ってたけどそんなに貰えるならあたしも最初からここでバイトすればよかったなー」
恵那「ふ、古い建物だから誰も来なくって・・・お、お兄さんが初めてのバイトですし、私もカードショップ開けましたし・・・」
要「まぁカードショップはびっくりしたけどな。ちなみに俺の給料は両方分」
結花「なるへそー」


夏休みなので昼過ぎるとカードショップに子供たちが集まる。恵那さんも宿題の今日のノルマが終わったようで、結花と一緒にカードショップでティーチングサービスを行っていた。で、俺は何故かコンビニのレジで常連のおじいさん・・・加藤さんと会話していた。

加藤「知っとるかい少年、桃井のばあさん数年前、何て呼ばれてたか知ってるか？」
要「いや、知らないです」
加藤「まぁワシも知らんがな。はっはっは・・・でも、ばあさんの遊戯王っちゅーカードゲームの山札の１つが強すぎてどこかにしまったって言っておったのう。使うことないから金庫に入れたって言ってたかな」
要「金庫か・・・確かに誰も触れない金庫あったなぁ。どんなデッキなんだろう」
加藤「ワシが現役だった頃はばあさんのその山札には勝てなかったな」

ということで事務所にある謎の金庫を調べる。よくある回すタイプのロック式であり、その手のプロじゃないと開けられなさそうだ。だけど横に限穴がある。恐らくパスワード忘れた時ようの緊急の鍵があるのだろう。まずはその鍵を探すことにした。