第２１話　テスト勉強と遊戯王　作：にしん

　夏真っ盛り。プールの件もあり夏休みが非常に楽しみであり、この小さなコンビニと併設されているカードショップでシングルカードの値段をつけながら俺はわくわくしていた・・・つもりだった。

要「期末テストなー」

今週から九良大学は期末テスト一週間前。前期の講義がほとんど終わり、勉強以外にすることがないこの一週間。俺は別に大丈夫なのだが、心配することといえば今まさにそこのデュエルスペースで瀬戸さんと遊戯王をしている結花だ。ちなみにマイケルもいるが、彼は留学生かつ転入したばかりなので今回のテストは免除、必要最低限の単位を取得している状態だとか。

そしてコンビニ側・・・レジに座って教科書とノートを広げているあの子、恵那さんの高校もテスト週間のようで。この時間は客がいないのを利用して勉強に集中しているようだ。

静流「川澄さん、私が勝ったら今日は勉強タイムって約束したよね？」
結花「うん。したよ。でもこの状況、あたしの手札・・・あたしが勝つ確率は９９．９％！今日は遊びつくしてやるのだー」
マイケル「川澄サンのデッキは＜オーロライト＞・・・見たことないデッキデスガ、面白い動きデス。それに対して瀬戸サンのデッキはよくわからないデスガ・・・楽しくなりそうな予感がシマス」
静流「流石マイケルくん。遊戯王をやりこんだことだけはある」

その時、よほどの自信があるのか結花は超ドヤ顔で手札の一部を公開した。

結花「へっへっへ、ひそかに入れたこの手札誘発たちと伏せてあるオーロラを前に静流ちゃんは手も足もでまい・・・どや」
要「いつの間に＜幽鬼うさぎ＞なんて買ってたんだ・・・結花のバイト代じゃ厳しいはず」
静流「確かに厳しいなぁ。でも、ここで私の＜封印の黄金櫃＞と＜予見通帳＞が同時に開くわ！その瞬間、私の手札は・・・！」
マイケル「サーチアンドＤＥＡＴＨタイ・・・！」
結花「な、なん・・・だと・・・！」
静流「＜封印されしエクゾディア＞のパーツ５枚・・・と申し訳程度の＜青眼の白龍＞が揃って特殊勝利よ～！」

ああ、だから場を＜マシュマロン＞とか＜方界胤ヴィシャム＞とかで守りつつ準備を進めてきたのか。同じく準備型の＜オーロライト＞じゃ分が悪いわけだ。というわけで結花たちは勉強のため去っていった。というかこの環境で＜封印されしエクゾディア＞をガチ構成かついい感じに回せていたのは初めて見たな。流石はマイケルと同じ遊戯王オタクの瀬戸さんだ。そして安定のブルーアイズ入り。

そしてむなしく結花は瀬戸さんにどこかに連れていかれた。まぁ結花の部屋だろう。誰から見てもぎりぎりライン・・・を若干下回っている成績の結花だからこそ瀬戸さんはアメとムチを使い分けているようだ。

マイケル「ユージサン、こんな狭いカードショップ、見たことないデス」
要「アメリカはどこも広そうなイメージだなぁ」
マイケル「アメリカは広いデス。僕は一か所しか行ったことないデスカラ、もしかしたら他のショップにあるかもしれまセンネ」

マイケルは日本特有の萌え系や他作品の二次創作として作られたサプライを漁っていた。アメリカでも日本から輸入とかして売ってそうだけどどうなんだろう。

恵那「お兄さん」
要「んー？」

テスト勉強を終えたのか、コンビニの業務も終わったのか、普段着の恵那さんがカードショップ側に入ってきた。その手にはノートや教科書。ということはまだテスト勉強中か。とすると恐らくこれは・・・

恵那「テスト勉強で分からないところがあって・・・教えてもらえますか？」
要「平均的な俺の頭脳で分かる範囲なら応えよう」
恵那「わあ、ありがとうございます。あっちはおばあちゃんがいてくれるのでデュエルスペースで教えてください」

案の定の勉強のことだった。ちょうどシングルカードに値段付け終わったし、俺もちょうど暇になったからちょうどよかった。

マイケル「ユージサン、この＜ブリザードプリンセス＞のマットとスリーブくだサイ！」
要「おっ、おお。早速買うとはさすが遊戯王オタクだ」
恵那「お兄さん、この人は・・・？」
要「留学生のマイケル。瀬戸さんに負けず劣らずの遊戯王オタクらしい」
恵那「へぇ～・・・デュエルも強そうです。何か感じますっ」

その後、俺は恵那さんに勉強を教えつつ何故かマイケルとデュエルしていた。俺はデッキを持ってきていなかったので恵那さん特製のレンタルデッキを使ったが、汎用構築マスターともいうべきか、器用な動きをするマイケルの自称＜ファンデッキ＞には一勝もすることができなかった。

要「流石だなぁ」
マイケル「いつかはこれで“シノビのユージ”を倒したいデス」



後日。大学も高校も期末テストが終わり、結花だけ真っ白に燃え尽きて、まるでカードに封印されたかのような真顔になっていた。

ーーー
おまけ
本編で語られることはないので瀬戸さんとマイケルが仲良くなった理由。


瀬戸「感じるわ・・・！あなた、強いわね？」
マイケル「コノ大学に来て早速、楽しいコトが起こりそうデスネ・・・！！」

・・・デュエル後

瀬戸「いいデュエルだったわ」
マイケル「キミこそ・・・久々にパッションなデュエルを楽しめまシタ」

＜友情　ＹＵーＪＹＯ＞


瀬戸「そんな感じで出会って５秒でデュエルフレンドなの」
マイケル「ＨＡＨＡＨＡ」
要「・・・漫画かよ」