第３１話　サービスシーンはありません　作：にしん

　今日の天気は晴れ。真夏の暑さと温泉の相性はよくはないのだけれど、ここの温泉では一部の風呂で温め設定にしているようで。内湯は洗面台、サウナ、冷水、白湯。そして露天風呂にそのぬるめ、あつあつの源泉、打たせ湯、石窯などなど・・・

というわけで俺もマイケルもぬるめの温泉へ。

マイケル「アメリカではこんなオシャレな温泉なかったデス」
要「というと？」
マイケル「アメリカの温泉はプールデスネ」

温水プールみたいだ。でも温泉に浸かりながら泳いだり浮き輪で浮いたりできるのは冬とかによさそうだけど、日本人としての性なのか今みたいに落ち着いて入る方がいいと思った。

要「プールなら前プール行ったときみたいにエアデュエルしながら温泉楽しめるな」
マイケル「防水スリーブカード持ち込んでできそうデス。四角形で平べったい浮き輪を用意しまショ」
要「それでもひっくり返ったら大惨事だな」

１００枚以上のカードが温泉に浮かび、下手したら排水溝へボッシュート。回収も大変そうだ。そういえば温水プールとかでチェスやってる国あったな。その気になれば専用ボード使ってプールや温泉デュエルも夢じゃないのかもな。

温泉が心地いいのでしばらくお互いうとうとしながら程よいぬるま湯を堪能する。聞こえる自然の音。風、木々、虫、水、そばにある川・・・とマイケルが何かひらめいたようなリアクションの音。

要「どうしたマイケル」
マイケル「いい事思いつきマシタ！それはデスネ・・・」


―――
同時刻。女湯では静流と恵那が、結花がいない影響で、ものすごく静かで温泉を１００％楽しめる快適なひと時を過ごしていた。おしゃべり好きな人が固まって話題を盛り上げているぐらいで普段の結花やマイケルのような騒がしさと忙しさはない。

恵那「初めて来たけど・・・いい湯ですね～」
静流「そうねぇ・・・あとはデュエルできれば完璧だけど、流石に密封パックカードじゃデュエルできないわね」
恵那「あはは・・・そもそもカードを置くスペースすらないです」
静流「それにしても、川澄さんがいないだけでこんなに静かなのね」
恵那「嵐のような人ですからね・・・」

この時、静流はデュエルの事ばかり考えている影響で、その恵まれたスタイルを恵那にまじまじと見られていることに気づいていないのである。

そして何かを思いついたようで、身体を預けていた岩からがばっと起こす。

静流「そうだわ。いいこと思いついたの。恵那ちゃん協力いい？」
恵那「えっ？な、何でしょう、か？」
静流「それはね・・・」


・・・


　温泉を堪能し、すっきりした俺たち。どうやら女性陣も同時に出てきたようで。コーヒー牛乳やらアイスやらを買い、休憩所で余韻に浸る。時折聞こえるテレビの音と子供たちが遊んでいる遊戯王の音が心地よい。

そして夕方まで温泉施設をたっぷり堪能した俺たちは働きまくってる結花のバイト先へ行くことにした。