第１３話　ファミレスで遊戯王はできません　作：にしん

　本日の業務が終わる。雨もあがり、しばらくは曇りの予報だ。雨雲レーダーを見ても明日までは止むようだ。

コンビニの外に出ると廃棄を済ませたおばあちゃんがカギをかけ、電気を消した。夕方で薄暗いので一気に暗くなったのを感じだ。

要「さてと・・・まずは自転車取ってくるか」
恵那「じゃ、じゃあここで待ってますね」

歩いて数分。学生寮アパートに戻り、自分の自転車を出す。結花の自転車はまだないということは、まだあのファミレスだろう。休日はいつも夜に帰ってくるのですれ違うということは恐らくない。

要「いきなり現れて驚かせてやるぞ・・・くっくっく」

とかいう謎の笑いをしながら出発した。

そしてコンビニに戻り、恵那さんと合流する。緩やかな坂道をペダルをこがずにシャーっと降りていく。自転車に乗った時の楽しみの一つではあるが、帰りはこの坂道を登らなくてはならないのはもう慣れた。恵那さんは後方数メートル空けてついてきていた。確認の為に振り向くたび、目線が少しずれるのはなぜだろうか。

そしてあっという間に結花のバイト先のファミレスに到着。唯一の路線の駅近くなので場所自体は分かりやすいし、客も多い。大学や高校からも気軽に寄れる距離なので、学生も多い。今日は休日だからか家族連れ中心で駐車場が満車だった。

恵那「ファミレス・・・小学生の時に行った記憶がある・・・あの時以来かも」
要「それほどコンビニで忙しかったのか」
恵那「は、はい。おばあちゃんもあの通りなので外食は全く・・・」

まるで初めての場所に入るかのような様子であたりを見渡している恵那さん。まぁ俺もほとんどファミレスは行ったことないので若干緊張はしている。

入店する。結花は・・・厨房か？とりあえず別のスタッフに誘導され、俺たちは席についた。とりあえずメニューを眺める。

要（そういえばこれ、なんかデートっぽいよな・・・）

と頭の片隅で思いつつ、今日の俺のおなかを満たす料理を選ぶ。恵那さんは・・・

恵那「・・・・・」

真剣な顔でメニューを眺めていた。

要「俺は決まったけど、恵那さんは決まった？」
恵那「ひゃっ！？ご、ごめんなさいっ」
要「まだみたいだな。ゆっくり選んでいいよ」
恵那「は、はい・・・」

びっくりするほどメニューに夢中だったようだ。


・・・


　恵那さんの注文が決まるまでに数分かかった。かなーり迷ってたみたいだ。途中でメニューをぺらぺらめくっておろおろしているように迷っていたのがなんだか和む。ということで呼び出しボタンを押す。

するといつも通りのパーマがかかったかのようなツインテールの髪をした、どこか見たことのあるウェイトレスさんがやってきた。

結花「はーい！ご注文はお決まりでしょうか！」
要「んーと、俺はこのステーキセット。ライス大盛り」
恵那「わ、私は・・・って、えぇっ！？川澄さん？」
結花「おおう！誰かと思えば遊二と恵那ちゃん！びっくりしたなぁ」

というか気づいていなかったのか。

結花「なになに？でーと？」
恵那「でででで、でっ！でーと！？た、確かにお兄さんと二人だし・・・そ、そうなるの？お、おっ、お兄さん・・・」
要「じゃないぞー。普通に晩飯目的だ」
結花「なーんだ。まぁそうだよねー遊二だしねーちぇー」
要「うっせ。仕事しろ」
恵那「で、ですよね・・・」

何故かほんの少しだけしょんぼりする恵那さんだった。そして結花のこのどや顔である。

恵那「私はパスタセットでお願いします。えと・・・パスタ特盛で・・・」
結花「りょーかい。んじゃーゆっくりしていってねっ☆あ、テーブルでデュエルはしないでね」
要「する奴おるのか・・・というか特盛？」

ゆっくりさせてきそうな顔をしながらオーダーを手元のタブレットに入力し、厨房へ戻った結花。びっくりさせることはできたが直後にからかってくるあたりやっぱりいつもの結花だった。そしてこのクソ忙しそうなバイトなのに余裕の態度と表情ということは慣れているということなんだろう。俺たちの相手をした後もてきぱきと他の業務を元気にこなしていた。

それよりも恵那さん、あまり食べなさそうな見た目なのに特盛とはいったい。今は気にせずに料理が来るまで待つことにした。

恵那「あっドリンクバー・・・忘れちゃった・・・」
要「また呼ぶか。俺もコーヒー飲みたくなった」